源氏物語 第34帖 若菜上(15)
紫の上に打ち明ける
源氏は、紫の上にどう打ち明けたものかと思い乱れる。紫の上は噂を耳にしていたが、朝顔の前斎院の時のように実現しないだろうと思って、何も尋ねない。翌日、雪の降る中、源氏は、朱雀院に頼まれて断りきれなかったと話し、自分の心は変わらないから気にしないでほしいと言う。紫の上は、穏やかに、女三の宮の母女御の縁で自分も親しくしていただけるだろうかと答える。源氏は、あまりにあっさり許されるのも気がかりだと言い、人の噂に惑わされないようにと諭す。紫の上は、心の内では、空から降ってきたような避けられない話であり、恨みがましく見せて世の笑い者にはなるまいと思い、継母の式部卿宮の北の方が何と言うかと思うと、穏やかな人の心にもわだかまりが生まれる。それでも表面はただ穏やかにふるまう。

- 1六六ろく條條じょう院院いんはははなまなまなま心苦心苦こころぐるしうしうしゅうさまざまさまざまさまざまおぼしおぼしおぼし亂亂みだるるる。。。紫紫むらさきののの上上うえもももかゝるかゝるかかる御御おん定定さだめめめなどなどなどかねてかねてかねてもももほのほのほのぎゝぎゝぎき給給たまひひいけれけれけれどどど、、、さしもさしもさしもあらあらあらじじじ、、、前前さき齋齋さい院院いんをををもももねんごろねんごろねんごろににに聞聞きこえええ給給たまふふうやうやうようなりなりなりしかしかしかどどど、、、わざとわざとわざともももおぼしおぼしおぼし遂遂とげげげずずずなりなりなりにににしししをををなどなどなどおぼしおぼしおぼしててて、、、さるさるさることことことやややあるあるあるともともともとひとひとい聞聞きこえええ給給たまははわずずず何何なに心心ごころもももなくなくなくててておはするおはするおわするにににいとほしくいとほしくいとおしく、、、このこのこの事事ことをををいかにいかにいかにおぼさおぼさおぼさむむん、、、我我わががが心心こころはははつゆつゆつゆももも變變かわるるるまじくまじくまじく、、、さるさるさることことことあらあらあらむむんにににつけつけつけてててはははなかなかなかなかなかなかいとゞいとゞいとど深深ふかさささこそこそこそまさらまさらまさらめめめ、、、見見み定定さだめめめ給給たまははわざらざらざらむむん程程ほどいかにいかにいかに思思おもひひい疑疑うたがひひい給給たまははわむむんなどなどなど安安やすからからからずずずおぼさおぼさおぼさるるる。。。今今いまののの年年とし比比ごろとととなりなりなりてててはははましてましてましてかたみかたみかたみにににへだてへだてへだて聞聞きこえええ給給たまふふうことことことなくなくなく、、、あはれあはれあわれなるなるなる御御おん中中なかなれなれなればばば、、、しばししばししばし心心こころににに隔隔へだててて殘殘のこしししたるたるたることことことあらあらあらむむんもももいぶせきいぶせきいぶせきををを、、、そのそのその夜夜よははは打打うちちち休休やすみみみてててあかしあかしあかし給給たまひひいつつつ。。。
- 2又又またののの日日ひ雪雪ゆき打打うちちち降降ふりりり空空そらののの氣色氣色けしきももも物物もの哀哀あわれににに過過すぎぎぎにににししし方方かた行行ゆくくく先先さきののの御御おん物語物語ものがたり聞聞きこえええかはしかはしかわし給給たまふふう。。。「「「院院いんのののたのもしげたのもしげたのもしげなくなくなくなりなりなり給給たまひひいにににたるたるたる御御おんとぶらひとぶらひとぶらいににに參參まいりりりててて哀哀あわれなるなるなる事事ことどもどもどものののありありありつるつるつるかなかなかな。。。女女おんな三三さんののの宮宮みやののの御御おんことことことをををいといといと捨捨すてててがたげがたげがたげにににおぼしおぼしおぼしてててしかじかしかじかしかじかなむなむなんのたまはせのたまはせのたまわせつけつけつけしかしかしかばばば、、、心苦心苦こころぐるしくしくしくててて得得え聞聞きこえええいなびいなびいなびずずずなりなりなりにににしししををを、、、ことごとしくことごとしくことごとしくぞぞぞ人人ひとはははいひいひいいなさなさなさむむんかしかしかし。。。今今いまはははさやうさやうさようのののことことこともももうひうひしくうひうひしくういういしくすさまじくすさまじくすさまじく思思おもひひいなりなりなりにににたれたれたればばば、、、人人ひとづてづてずてににに氣色氣色けしきばまばまばませせせ給給たまひひいしししにににははは、、、とかくとかくとかく遁遁のがれれれ聞聞きこえええしししををを、、、對對たい面面めんのののついでついでついでににに心心こころふかきふかきふかきさまさまさまなるなるなることことことゞもゞもどもをををのたまひのたまひのたまいつゞけつゞけつづけしししにににははは、、、えええすくずくしくすくずくしくすくずくしくもももかへさひかへさひかえさい申申もうさささでででなむなむなん。。。深深ふかききき御御おん山山やまずみずみずみにににうつろひうつろひうつろい給給たまははわむむん程程ほどにににこそこそこそははは、、、わたしわたしわたし奉奉たてまつらららめめめ。。。あぢきなくあぢきなくあじきなくややや思思おぼさささるるるべきべきべき。。。いみじきいみじきいみじきことことことありありありともともともさだめさだめさだめあるあるある世世よににに變變かわるるることことことははは更更さらにににあるあるあるまじきまじきまじきををを、、、心心こころなななおきおきおき給給たまひひいそそそよよよ。。。かのかのかの御御おんためためためこそこそこそ心苦心苦こころぐるしからしからしからめめめ。。。それそれそれもももかたはかたはかたわならならならずずずもてなしもてなしもてなしてててむむん。。。たれたれたれもももたれたれたれももものどかのどかのどかにてにてにて過過すぐしぐしぐし給給たまははわゞゞば」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
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現代語訳
六条院は、何となく心苦しく、さまざまにお思い乱れになる。紫の上も、このようなお取り決めなどを、以前からほのかに聞いていらっしゃったけれど、「まさかそうではあるまい。前斎院(朝顔の姫君)にも熱心に言い寄っていらっしゃったようだったが、とうとう思いをお遂げにならずにしまったのだから」などとお思いになって、そういうことがあるのかともお尋ね申し上げなさらず、無心でいらっしゃるので、源氏はお気の毒に思い、「このことをどうお思いになるだろう。私の心は少しも変わるはずはなく、そういうことがあったら、かえっていっそう愛情が深まるだろうが、それを見届けなさらないうちは、どんなに疑いなさるだろう」などと、心穏やかでなくお思いになる。今の年頃となっては、まして互いに隔て申し上げなさることもなく、しみじみとした仲なので、しばらくでも心に隔てを残していることがあるのも気が晴れないけれど、その夜はお休みになって明かしなさった。
翌日、雪が降って、空の様子もしみじみとしているので、過ぎ去ったことやこれからのことのお話を交わしなさる。「院が頼りなくなっていらっしゃったお見舞いに参上して、しみじみとしたことがあったよ。女三の宮のことを、たいそう捨てがたくお思いになって、これこれとお頼みになったので、お気の毒で、お断り申し上げることができなくなってしまったが、人は大げさに言い立てるだろうね。今はそのようなことも気恥ずかしく、興ざめに思うようになったので、人づてにご意向をほのめかされた時には、何かと逃れ申し上げていたのだが、対面のついでに、心深いご様子のことをおっしゃり続けたので、すげなくお断りすることもできなくて。院が深い山住まいにお移りになるころに、お迎え申し上げることになるだろう。おもしろくなくお思いになるだろうか。どんなことがあっても、あなたとの仲が今と変わることはまったくないはずだから、気を悪くなさらないでくださいよ。あちらの宮のためにこそ、気の毒なことになるだろう。それも見苦しくなく扱おう。誰も彼も穏やかに過ごしてくださるならば」などと申し上げなさる。
ちょっとした浮気の慰みごとでさえ、不愉快なものとお思いになって、心穏やかでないご気性なので、どうお思いになるだろうかと源氏はお思いになるが、紫の上はたいそう平静に、「しみじみとしたお譲りでございますこと。私は、どのような隔て心をお持ち申し上げましょうか。目障りだ、こうしてここにいるのは、などと咎められないのでしたら、安心しておりましょうが、あの母女御の御縁からも、疎遠でなく、私を数のうちに入れていただけるでしょうか」と、へりくだりなさるので、源氏は、「あまりにこう打ち解けてくださるお許しも、どうしてだろうと気がかりだよ。本当は、そのようにお許しくださって、自分も相手も心得て、穏やかに過ごしてくださるなら、いっそういとしく思うだろう。ありもしないことを申し上げたりする人の言うことを、聞き入れなさるな。すべて世の人の口というものは、誰が言い出したということもなく、自然と人の仲などを曲げて、思いがけないことが出てくるもののようだから、自分の心ひとつに収めて、成り行きに従うのがよい。早まって騒いで、つまらない恨みごとをなさるな」と、たいそうよく教え申し上げなさる。
紫の上は、心の内でも、「このように空から降ってきたようなことで、源氏も逃れようのないことなのだから、憎らしげにも申し上げまい。私に遠慮なさり、私の諫めることにお従いになるような、当人同士の心から起こった恋でもなく、せき止めようもないことなのに、愚かしく思い沈んでいる様子を、世の人に漏らすまい。式部卿の宮の大北の方(紫の上の継母)が、いつも呪わしいようなことをおっしゃっては、つまらない左大将(鬚黒)のことでさえ、妙に恨み嫉んでいらっしゃるそうだから、このことを聞いて、どんなにはっきりと思い当たったとお思いになるだろう」などと、おっとりした人のお心といっても、どうしてこれほどのわだかまりがないことがあろうか。「今はいくら何でもと、自分の身を思い上がって、安心しきって過ごしてきた夫婦仲が、世の物笑いになるだろう」ということを、心の中では思い続けていらっしゃるけれど、たいそう穏やかにばかりふるまっていらっしゃった。
意訳
源氏は紫の上に女三の宮の降嫁を打ち明け、自分の心は変わらないと言う。紫の上は穏やかに受け入れ、源氏は噂に惑わされるなと諭す。
紫の上は、心の内では世の物笑いになることを恐れ、継母の噂を思って苦しむが、表面はただ穏やかにふるまう。
語釈・文法注
文法
- 禁止の「な…そ」(心なおき給ひそよ)
- 「気を悪くなさいますな」。「な」と「そ」で挟んで、やわらかな禁止を表す。
- 「ひげ」(ひげし給ふを)
- 卑下。へりくだること。
- 反語の「いかでかは…む」(いかでかはかばかりのくまはなからむ)
- 「どうしてこれほどのわだかまりがないことがあろうか、いや、ある」。「くま」は、心の陰、わだかまり。
解説
紫の上の平静な応答は、この巻の中心的な場面の一つである。紫の上は「かの母女御の御かたさまにても」と、女三の宮の母が藤壺の妹であり、自分も藤壺の姪であることから、親しくしていただけるかと言う。これは表向きの謙遜であると同時に、自分も女三の宮も同じ「ゆかり」にすぎないことを、鋭く言い当てている。
紫の上は、北の方として揺るぎない地位にあると思っていたが、正式な妻としての地位は、身分の高い女三の宮に奪われることになる。「世の人笑へならむこと」を恐れながら、表面は「いとおいらかにのみ」ふるまう紫の上の姿は、以後、深い苦悩を内に秘めたまま続いていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、602–605頁(コマ12–13)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日