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源氏物語 第34帖 若菜上(14)

後見の承諾

登場人物:朱雀院・光源氏・女三の宮

朱雀院は、そう思ってもふさわしい人はなかなかいないと言い、昔は盛りの帝でさえ皇女の婿を選んだ例が多いが、自分は出家の身で、病も重くなり、心がせくと語る。そして、この幼い内親王を源氏が引き取って育て、しかるべき縁も定めて預けてほしいと頼み、夕霧が独り身のうちに打診すべきだった、太政大臣に先を越されて残念だと言う。源氏は、夕霧は実直だがまだ経験が浅い、自分が深い心で後見し、院の代わりとしてお世話したいが、ただ自分も先が短く、途中でお世話できなくなるのではないかと気がかりだと言って、引き受ける。夜になり、院の前で精進の宴が催され、源氏は夜更けに帰る。院は、雪で風邪が加わって苦しいが、宮のことを決めて安心する。

雪の降る夜、朱雀院の御所で、法衣の朱雀院が源氏に女三の宮のことを頼み、源氏が深くうなずいて引き受けている場面(AI生成)
雪の降る夜、朱雀院の御所で、法衣の朱雀院が源氏に女三の宮のことを頼み、源氏が深くうなずいて引き受けている場面
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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

院は、「そのように思い寄ることもありますが、それも難しいことでございました。昔の例を聞きましても、世を治める盛りの帝でさえ、婿を選んで、そのようなことをなさった例が多かったのです。まして、このようにもう最後とこの世を離れる時に、仰々しく考えるべきでもないけれど、またこうして捨てる中にも捨てがたいことがあって、さまざまに思い悩んでおります間に、病は重くなっていきます。また取り返すことのできない月日が過ぎていくので、心が落ち着かなくて。気の毒なお願いですが、この幼い内親王一人を、とりわけお育てくださって、しかるべき縁をも、お心にお決めになってお預けくださいと申し上げたいのですが、権中納言(夕霧)などが独り身でいた間に、こちらから進んで話を持ちかけるべきでした。太政大臣に先を越されて、残念に思われます」と申し上げなさる。

源氏は、「中納言の朝臣は、まじめな点では、たいそうよくお仕えするはずでございますが、何事もまだ未熟で、思慮も足りないことでございましょう。恐れ多いことながら、私が深い心でご後見申し上げますならば、院がいらっしゃるおかげに代わったとはお思いになるでしょうが、ただ私も将来が短くて、途中でお仕えできなくなることがありはしないかと、それだけが気がかりでございましょう」と、お引き受け申し上げなさった。

夜に入ったので、主人の院方の人々も、客の上達部たちも、皆院の御前で饗応のことがあり、精進料理で、格式ばらず優雅におさせになった。院の御前に、浅香の懸盤に御鉢など、昔と変わって差し上げるのを、人々は涙をぬぐいなさる。しみじみとした筋のこともあるが、煩わしいので書かない。夜が更けて源氏はお帰りになる。禄などを次々にお与えになる。別当の大納言(藤大納言)もお見送りに参上なさる。主人の院は、今日の雪のためにいっそうお風邪が加わって、気分も乱れて苦しくお思いになるが、この宮のことを申し決めたのを、安心にお思いになった。

意訳

朱雀院は、源氏に女三の宮を引き取って後見してほしいと頼み、源氏はこれを引き受ける。

院の前で精進の宴があり、院は病の苦しさの中にも、宮のことが決まって安心する。

語釈・文法注

文法

「せんせられて」(おほいまうちぎみにせんせられて)
「先ず」に受身の「らる」が付いた形。「先を越されて」。
「仕うまつりさす」(仕うまつりさすことや侍らむ)
「さす」は、途中でやめる意を表す接尾語。「お仕えするのを途中でやめてしまう」。
草子地「うるさければかゝず」(哀なるすぢのことゞもあれどうるさければかゝず)
語り手が物語の中に顔を出して、省略を断る言葉。草子地と呼ばれる。

解説

朱雀院は、はっきりと女三の宮を源氏に託す。源氏が「深き心にて後見聞えさせ侍らむ」と引き受けたのは、院への恩義とともに、藤壺のゆかりへの関心があったからである。しかしこの決断は、紫の上の立場を根底から揺るがすことになる。

院の前に出される精進の膳や、雪の中を帰る源氏の姿には、出家と病の陰りが重なっている。語り手は「哀なるすぢのことゞもあれどうるさければかゝず」と省略するが、それがかえって場面のしみじみとした雰囲気を強めている。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、600–603頁(コマ11–12)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日