源氏物語 第34帖 若菜上(13)
源氏の見舞い
朱雀院の病状が少しよくなったと聞いて、源氏は見舞いに参上する。准太上天皇でありながら儀式ばらず、簡素な車で訪れる。院は喜んで、苦しい身を励まして対面する。出家した院の姿を見て、源氏は涙をこらえられず、自分も出家の本意がありながら心弱くためらってきたことを恥じる。院は、余命が短くとも念仏だけはと思い、ためらってきたことを語り、女宮たちの中でも後見のない女三の宮が気がかりだと、それとなく打ち明ける。源氏は、東宮もいるので宮の行く末を案じることはないが、帝は女性の私的な後見にはなりにくいので、しかるべき人と結婚させ、ひそかに後見を定めておくのがよいと奏上する。

- 1六六ろく條條じょう院院いんももも少少すこししし御御おん心地心地ここちよろしくよろしくよろしくととと聞聞きききき奉奉たてまつらららせせせ給給たまひひいててて參參まいりりり給給たまふふう。。。御御おんたうばりたうばりとうばりのののみふみふみふなどなどなどこそこそこそ皆皆みな同同おなじじじごとごとごとおりゐおりゐおりいののの帝帝みかどとととひとしくひとしくひとしく定定さだまりまりまり給給たまへへえれれれどどど、、、まことまことまことののの太太だい上上じょう天天てん皇皇のうののの儀儀ぎ式式しきにににはははうけばりうけばりうけばり給給たまははわずずず。。。世世よのののもてなしもてなしもてなし思思おもひひい聞聞きこえええたるたるたるさまさまさまなどなどなどははは心心こころことことことなれなれなれどどど、、、殊殊こと更更さらにににそぎそぎそぎ給給たまひひいててて、、、例例れいのののことごとしからことごとしからことごとしからぬぬぬ御御おん車車くるまににに奉奉たてまつりりりててて上達部上達部かんだちめなどなどなどさるべきさるべきさるべきかぎりかぎりかぎり車車くるまにてにてにてぞぞぞ仕仕つかうまつりうまつりうまつり給給たまへへえるるる院院いんにににはははいみじくいみじくいみじく待待まちちち悅悅よろこびびび聞聞きこえええさせさせさせ給給たまひひいててて、、、苦苦くるしきしきしき御心御心みこころをををおぼしおぼしおぼしつよりつよりつよりててて御御おん對對たい面面めんありありあり。。。麗麗うるわしきしきしきさまさまさまならならならずずず唯唯ただおはしますおはしますおわします方方かたにににおましおましおましよそひよそひよそいくはへくはへくわえててて入入いれれれ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。
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現代語訳
六条院(源氏)も、院のご気分が少しよいとお聞き申し上げなさって、参上なさる。源氏は、御封などは皆、退位した帝と同じように定まっていらっしゃるけれど、本当の太上天皇の儀式のようには振る舞いなさらない。世間の扱いやお思い申し上げている様子などは格別だけれど、ことさらに簡略になさって、いつものように仰々しくないお車にお乗りになって、上達部なども、しかるべき人々だけが車でお供申し上げなさった。院は、たいそう待ち喜び申し上げなさって、苦しいお気持ちを強いて励まして、ご対面がある。格式ばった様子ではなく、ただ院のいらっしゃる方に御座所を設け加えて、お入れ申し上げなさる。
源氏は、変わっておしまいになった院のお姿を拝見なさると、過去も将来も真っ暗になって、悲しく涙をとどめがたくお思いになるので、こらえることがおできにならない。「故院に先立たれ申し上げたころから、この世が無常に思われましたので、出家の本意が深く進んでおりましたのに、心弱く思われまして、ためらってばかりおりまして、とうとうこのようなお姿を拝見するまで、院に後れ申し上げてしまった心のふがいなさを、恥ずかしく存じます。自分の身にとっては、何でもないことのように思い立ちます折々もありますが、やはりたいそう忍びがたいことが多いに違いないことでございました」と、慰めがたくお思いになっている。
院も、何となく心細くお思いになるので、気強くもいられず、涙ぐみなさりながら、昔や今のお話をたいそう弱々しく申し上げなさって、「今日か明日かと思われながら、さすがに時が経ってしまったのに気がゆるんで、深い本意の端でさえも遂げられずに終わってしまうのではないかと、思い立ちましてね。こうしても、残りの寿命がなかったら、修行の志もかなわないだろうけれど、まずひとまず心を落ち着けておいて、念仏だけでもと思っております。頼りない身でありながら、この世に生き長らえていることも、ただこの志のために引きとどめられているのだとわからないでもないのに、今まで勤めを怠っていることさえ気が気でなくて」とおっしゃって、お考えになっていることなどを詳しくおっしゃるついでに、「女宮たちを大勢捨てて行ってしまうでしょうが、気の毒な中でも、またほかに任せる人がいない者を、とりわけ後見に困っております」と、はっきりとではないご様子を、源氏はお気の毒にと拝見なさる。
お心の中でも、やはり心ひかれるご様子なので、そのまま聞き過ごしがたくて、「おっしゃるとおり、臣下の娘よりも、このような皇女の方は、私的なご後見がないのは残念なことでございます。東宮がこうしていらっしゃるので、たいそう立派な末の世の皇太子として、天下の頼みどころと仰ぎ申し上げておりますのに、まして院が、この宮のことを、とお頼みおきになることは、一つとして、おろそかに軽んじ申し上げなさるはずはございませんので、まったく将来のことをお悩みになるべきでもございませんが、なるほど何かと限りがありますので、帝となられて、天下の政治がお心のままになるとはいっても、女の御身のためには、どれほどはっきりとしたお世話がありましょうか。すべて、女の御身のためには、さまざまに本当のご後見とすべきものは、やはりしかるべき縁で契りを交わし、避けられない務めとしてお育て申し上げる、守り役のような夫がおりますのが、安心できることでございますのに、なおしいて後の世のご心配が残るようでしたら、ふさわしい者をお選びになって、ひそかにしかるべきお預け先を定めておかれるのがよいでしょう」と奏上なさる。
意訳
源氏は朱雀院を見舞い、出家した院の姿に涙し、自分の出家の遅れを恥じる。
院は女三の宮のことが気がかりだとほのめかし、源氏は、しかるべき夫を定めておくのがよいと答える。
語釈・文法注
文法
- 「おりゐの帝」(同じごとおりゐの帝とひとしく)
- 退位した帝。上皇。源氏は准太上天皇として、上皇と同じ待遇を受けている。
- 「まほにはあらぬ」(まほにはあらぬ御氣色)
- 「まほ」は、まともであること、はっきりしていること。はっきりとは言わない、遠回しなご様子。
- 「え去らぬ」(えさらぬことにはぐゝみ聞ゆる)
- 避けることができない。ここでは、夫としての逃れられない務め。
解説
源氏は准太上天皇でありながら、儀式ばらずに簡素な車で見舞う。院への敬意と、兄弟としての親しみが表れている。出家した院の姿に涙する源氏の心には、自分自身の出家の願いもまた重なっている。
源氏は「しかるべき夫を定めるのがよい」と一般論を述べるが、それはすでに自分が引き受けることを予想した答えである。院の遠回しな言葉と、源氏の慎重な返答との間で、降嫁の話が少しずつ形をなしていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、598–601頁(コマ10–11)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日