源氏物語 第34帖 若菜上(9)
求婚者たちと夕霧
院の内々の言葉が自然と広まり、女三の宮に心を寄せる人々が多くなる。太政大臣は、皇女でなければ妻にしないと言う柏木のために、朧月夜を通じて院に願い出る。北の方を失った蛍兵部卿宮も、心を動かして思い焦がれる。藤大納言は、院の出家後の頼りとして、宮の後見を熱心に望む。夕霧も、院の意向を直接聞いていたので心が動くが、ようやく結ばれた雲居雁を悲しませることはできず、高貴な妻を迎えて気苦労するのもつらいと思い、口には出さずにいる。東宮も、臣下では限りがあるので、源氏に親代わりとして譲るのがよいと、院に意見を伝える。

- 1かやうかやうかようにににもももおぼしおぼしおぼしよらよらよらぬぬぬ姉姉あね宮宮みや達達たちをををばばばかけかけかけてててももも聞聞きこえええなやましなやましなやまし給給たまふふう人人ひともももなしなしなし。。。怪怪あやしくしくしく內內うち々々うちにににのたまはするのたまはするのたまわする御御おんさゝめきさゝめきささめきごとごとごとゞもゞもどもののの、、、おのづからおのづからおのずからことことことひろごりひろごりひろごりててて心心こころををを盡盡つくすすす人々人々ひとびと多多おおかりかりかりけりけりけり。。。おほきおほきおおきおとゞおとゞおとどもももこのこのこの衛衛え門門もん督督かみののの今今いままでまでまで一一ひと人人りのみのみのみありありありててて御御み子子こ達達たちならならならずずずはははえええじじじととと思思おもへへえるるるををを、、、かゝるかゝるかかる御御おん定定さだめめめどもどもども出出いででで來來きたなるたなるたなる折折おりににに、、、さやうさやうさようにににもももおもむけおもむけおもむけ奉奉たてまつりりりててて召召めしししよせよせよせられられられたらたらたらむむん時時とき、、、いかばかりいかばかりいかばかり我我わががが爲爲ためにににもももめんぼくめんぼくめんぼくありありありててて嬉嬉うれしからしからしからむむんとととおぼしおぼしおぼしのたまひのたまひのたまいててて、、、內內ない侍侍しのののかんかんかんののの君君きみにににはははかのかのかの姉姉あねののの北北きたののの方方かたしししててて傳傳つたへへえ申申もうししし給給たまふふうなりなりなりけりけりけり。。。よろづよろづよろずかぎりかぎりかぎりなきなきなき言言ことののの葉葉はををを盡盡つくしししててて奏奏そうせせせさせさせさせ御御おん氣色氣色けしきたまはらたまはらたまわらせせせ給給たまふふう。。。兵兵ひょう部部ぶ卿卿きょう宮宮のみやははは左左さ大大だい將將しょうののの北北きたののの方方かたををを聞聞きこえええはづしはづしはずし給給たまひひいててて聞聞きききき給給たまふふうらむらむらん所所ところもももありありあり。。。かたほかたほかたおならならならむむんことことことはははとととえりえりえり過過すぐしぐしぐし給給たまふふうにににいかゞいかゞいかがははは御心御心みこころののの動動うごかかかざらざらざらむむん。。。限限かぎりなくなくなくおぼしおぼしおぼしいらいらいられれれたりたりたり。。。藤藤とう大大だい納納な言言ごんははは年年とし比比ごろ院院いんのののべたうべたうべとうにてにてにて親親おやしくしくしく仕仕つかうまつりうまつりうまつりててて侍侍さぶらひひいなれなれなれにににたるたるたるををを、、、御御おん山山やま籠籠ごもりりりししし給給たまひひいなむなむなん後後のち、、、よりよりより所所どころなくなくなく心心こころぼそかるぼそかるぼそかるべきべきべきををを、、、このこのこの宮宮みやののの御御おんうしろみうしろみうしろみにににことことことよせよせよせてててかへりみかへりみかえりみさせさせさせ給給たまふふうべくべくべく、、、御御おん氣色氣色けしきせちせちせちにににたまはりたまはりたまわり給給たまふふうなるなるなるべしべしべし。。。
- 2權權ごん中中ちゅう納納な言言ごんもももかゝるかゝるかかることことことゞもゞもどもををを聞聞きききき給給たまふふうににに、、、人人ひとづてづてずてにににもももあらあらあらずずずさばかりさばかりさばかりおもむけおもむけおもむけさせさせさせ給給たまへへえりりりししし御御おん氣色氣色けしきををを見見み奉奉たてまつりりりてててしかしかしかばばば、、、おのづからおのづからおのずからたよりたよりたよりにににつけつけつけててて漏漏もらしらしらし聞聞きこししし召召めさささするするする事事こともももあらあらあらばばば、、、よもよもよももてもてもてはなれはなれはなれてててはははあらあらあらじじじかしかしかしととと心心こころ時時ときめきめきめきもももしししつつつべけれべけれべけれどどど、、、女女おんな君君ぎみののの今今いまはははととと打打うちちち解解とけけけててて賴賴たのみみみ給給たまへへえるるるををを年年とし比比ごろつらきつらきつらきにににもももことづけことづけことずけつつつべかりべかりべかりしししほどほどほどだにだにだに、、、ほかほかほかざまざまざまののの心心こころもももなくなくなくててて過過すぐしぐしぐしてててしししををを、、、あやにくあやにくあやにくににに今今いま更更さらににに立立たちちちかへりかへりかえりにはかにはかにはかにににものものものをををややや思思おもははわせせせ聞聞きこえええむむん。。。なのめなのめなのめならならならずずずやんどなきやんどなきやんどなき方方かたにににかゝづらひかゝづらひかかずらいなななばばば、、、何事何事なにごとももも思思おもふふうまゝまゝままならならならででで左左ひだりみぎみぎみぎににに安安やすからからからずずずははは、、、我我わががが身身みももも苦苦くるしくしくしくこそこそこそはははあらあらあらめめめ。。。もとよりもとよりもとよりすきずきしからすきずきしからすきずきしからぬぬぬ心心こころなれなれなればばば、、、思思おもひひいしづめしづめしずめつゝつゝつつ打打うちちち出出いでででねねねどどど、、、さすがにさすがにさすがにほかほかほかざまざまざまににに定定さだまりまりまりはてはてはて給給たまははわむむんもももいかにいかにいかにぞぞぞややや覺覺おぼえええててて耳耳みみはははとまりとまりとまりけりけりけり。。。
- 3春宮春宮とうぐうにににもももかゝるかゝるかかる事事ことどもどもども聞聞きこししし召召めしししてててさしさしさしあたりあたりあたりたるたるたる只只ただ今今いまのののことことことよりよりよりももも後後のちののの世世よのののためしためしためしととともももなるなるなるべきべきべきことことことなるなるなるをををよくよくよくおぼしめしおぼしめしおぼしめし廻廻めぐらすらすらすべきべきべきことことことなりなりなり。。。人人ひとがらがらがらよろしよろしよろしとととてててもももたゞたゞただ人人ひとはははかぎりかぎりかぎりあるあるあるををを、、、なほなほなおしかしかしかおぼしおぼしおぼしたつたつたつことことことならならならばばばかのかのかの六六ろく條條じょう院院いんにににこそこそこそ親親おやざまざまざまににに讓讓ゆずりりり聞聞きこえええさせさせさせ給給たまははわめめめとととなむなむなん、、、わざとわざとわざとののの御御おんせうそこせうそこしょうそこにににはははあらあらあらねねねどどど、、、御御おん氣色氣色けしきありありありけるけるけるををを、、、まちまちまち聞聞きかかかせせせ給給たまひひいてててもももげにげにげにさるさるさることことことなりなりなり。。。
現代語訳
このようにも院がお思い寄りにならない姉宮たちのことは、まったく求婚申し上げて悩ませなさる人もいない。不思議と、院が内々におっしゃるおささやきごとが、自然と広まって、女三の宮に心を尽くす人々が多かった。太政大臣も、この衛門督(柏木)が今まで独り身のままで、皇女でなければ妻にしないと思っているのを、このようなご縁談が持ち上がった折に、そのようにお願い申し上げて、召し寄せられたら、どれほど自分にとっても面目があってうれしいだろうとお思いになりおっしゃって、尚侍の君(朧月夜)には、あの姉の北の方(柏木の母)を通じてお伝え申し上げなさるのだった。尚侍の君は、この上ない言葉を尽くして院に奏上させ、ご意向をお伺いになる。兵部卿の宮は、左大将の北の方(玉鬘)を得そこなっておしまいになって、玉鬘がどう聞いているかと気になるところもある。不十分な縁談ではと選り好みしてお過ごしになっているので、どうしてお心が動かないことがあろうか。この上なく思い焦がれていらっしゃる。藤大納言は、長年院の別当として親しくお仕えし慣れているので、院が山籠もりなさった後、頼るところがなく心細いだろうから、この宮の御後見にかこつけて、自分を顧みていただけるように、ご意向を熱心にお伺いしているのであろう。
権中納言(夕霧)も、このようなことをお聞きになると、人づてでもなく、あれほど院がほのめかしなさったご様子を拝見していたので、自然と何かのついでに申し上げて院のお耳に入れることがあれば、まさか退けられることはあるまいと、心がときめきもしそうだけれど、女君(雲居雁)が今はと打ち解けて頼りにしていらっしゃるのを、長年つらかったことにかこつけてもよかったころでさえ、ほかに心を移すこともなく過ごしてきたのに、あいにく今さら逆戻りして、急に物思いをさせ申し上げることができようか。並々でなく高貴なお方にかかわり合ったら、何事も思うままにならず、どちらにも気苦労するとしたら、自分の身もつらいことだろう。もともと浮気な心ではないので、思いを静めながら口には出さないけれど、さすがに宮がほかに縁づいておしまいになるのも、どうだろうかと思われて、耳はとまるのだった。
東宮にも、このようなことをお聞きになって、「さしあたっての今のことよりも、後の世の先例ともなるはずのことなので、よくお考えめぐらしになるべきことです。人柄がよいといっても、臣下には限りがあるので、やはりそのようにお思い立ちになるのでしたら、あの六条院にこそ、親代わりとしてお譲り申し上げなさるのがよいでしょう」と、改まったお手紙ではないけれど、ご意見があったのを、院は待ち受けてお聞きになっても、なるほどそのとおりだ、
意訳
院の意向が広まり、柏木、蛍兵部卿宮、藤大納言がそれぞれ女三の宮を望む。
夕霧も心が動くが、雲居雁を思って口に出さず、東宮は源氏に託すのがよいと院に伝える。
語釈・文法注
文法
- 「たなる」(出で來たなる折に)
- 完了の「たる」+伝聞の「なる」の「たるなる」が撥音便「たんなる」となり、「ん」が表記されない形。「出てきたという折に」。
- 反語の「いかゞは…む」(いかゞは御心の動かざらむ)
- 「どうしてお心が動かないことがあろうか、いや、動く」。
- 「よも…じ」(よももてはなれてはあらじ)
- 「まさか…ないだろう」。強い打消推量。
解説
女三の宮の縁談に、柏木、蛍兵部卿宮、藤大納言、そして夕霧までもが心を動かす。とりわけ柏木の「御子達ならずはえじ」という思いは、皇女を妻にしたいという強い自負を示しており、のちの悲劇の根となる。
夕霧は、雲居雁を思って求婚を口に出さない。夕霧の実直さは「まめ人」として繰り返し語られるが、その一方で「耳はとまりけり」と、心の揺れも描かれている。
東宮の意見は決定的である。「たゞ人はかぎりある」と、臣下ではなく准太上天皇の源氏こそがふさわしいとする。こうして女三の宮の降嫁は、源氏へと方向づけられる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、594–597頁(コマ8–9)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日