源氏物語 第34帖 若菜上(4)
夕霧を見る朱雀院
まだ二十歳にもならない夕霧の、整った美しい姿に目をとめた朱雀院は、女三の宮の後見にこの人をと、ひそかに考える。院は、夕霧が太政大臣家の婿に落ち着いたことを惜しむような口ぶりを見せ、夕霧は院の意向を察しながらも、はぐらかして答える。女房たちが夕霧の美しさを褒めそやすと、年配の女房は若い頃の源氏には及ばないと言う。院は、源氏の比類のない魅力を語り、夕霧の昇進の速さと才覚をたたえ、女三の宮を安心して預けられる人を得たいと語る。

- 1二二はた十十ちにににもももまだまだまだ僅僅わずかなるなるなる程程ほどなれなれなれどどどいといといとよくよくよく整整ととのひひいすぐしすぐしすぐしてててかたちかたちかたちももも盛盛さかりににににほひにほひにおいててていみじくいみじくいみじく淸淸きよらららなるなるなるををを、、、御御おん目目めにににとゞめとゞめとどめてててうちうちうちまもらまもらまもらせせせ給給たまひひいつゝつゝつつ、、、このこのこのもてもてもて煩煩わずらははわせせせ給給たまふふう姫姫ひめ宮宮みやののの御御おんうしろみうしろみうしろみにににこれこれこれをををやややなどなどなど人人ひと知知しれれれずずずおぼしおぼしおぼしよりよりよりけりけりけり。。。「「「おほきおほきおおきおとゞおとゞおとどのののわたりわたりわたりににに今今いまははは住住すみみみつかつかつかれれれにににたりたりたりとととななな年年とし頃頃ごろ心得心得こころえぬぬぬさまさまさまににに聞聞ききききしししがががいとほしかりいとほしかりいとおしかりしししををを、、、耳耳みみやすきやすきやすきものものものからからからさすがにさすがにさすがに妬妬ねたくくく思思おもふふうことことことこそこそこそあれあれあれ」」」とととのたまはするのたまはするのたまわする御御おん氣色氣色けしきををを、、、いかにいかにいかにのたまはするのたまはするのたまわすることことことにににかかかとととあやしくあやしくあやしく思思おもひひい廻廻めぐらすらすらすににに、、、このこのこの姫姫ひめ宮宮みやをををかくかくかくおぼしおぼしおぼしあつかひあつかひあつかいてててさるべきさるべきさるべき人人ひとあらあらあらばばばあづけあづけあずけててて心心こころ安安やすくくく世世よをををももも思思おもひひい離離はなれれればやばやばやとととなむなむなんおぼしおぼしおぼしのたまはするのたまはするのたまわするととと、、、おのづからおのづからおのずから漏漏もりりり聞聞きききき給給たまふふうたよりたよりたよりありありありけれけれければばばさやうさやうさようのののすぢすぢすじにににやややとととははは思思おもひひいよれよれよれどどどふとふとふと心得心得こころえ顏顏かおにににももも何何なににににかはかはかはいらへいらへいらえ聞聞きこえええさせさせさせむむん。。。「「「唯唯ただはかばかしくはかばかしくはかばかしくももも侍侍はべらららぬぬぬ身身みにににはははよるべよるべよるべもももさぶらひさぶらひさぶらい難難かたくくくのみのみのみなむなむなん」」」とととばかりばかりばかり奏奏そうしししててて止止やみみみぬぬぬ。。。
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現代語訳
夕霧は二十歳にもまだわずかに足りない年頃であるが、たいそうよく整って大人びていて、容貌も盛りに照り映えて、たいそう清らかであるのを、院はお目にとめて、じっとお見つめになりながら、この扱いに困っていらっしゃる姫宮の御後見に、この人をどうだろうかなどと、人知れずお思い寄りになった。「太政大臣のところに、今は落ち着いてしまったそうだね。長年、納得のいかない様子だと聞いていたのが気の毒だったが、それは耳に安心なことではあるものの、やはり残念に思うこともあるのだ」とおっしゃるご様子を、どういうおつもりでおっしゃるのかと不思議に思いめぐらすと、院がこの姫宮をこのように扱いかねていらっしゃって、しかるべき人がいたら預けて、安心して世を捨てたいと、お考えになりおっしゃっていると、自然と漏れ聞きなさる機会があったので、そういう筋のことであろうかとは思い当たるけれど、すぐにわかったような顔をして、何とお答え申し上げられようか。「ただ、頼りない身では、妻を得ることもなかなか難しくて」とだけ奏上して、それきりになった。
女房たちは、のぞいて拝見して、「たいそうめったにないほどお見えになるご容貌と心づかいですこと。ああ、すばらしい」などと集まって申し上げるのを、年老いた女房は、「いいえ、そうはいっても、あの院(源氏)がこの年頃でいらっしゃったご様子には、とても肩を並べられないでしょう。本当にまばゆいほど、お美しくていらっしゃいましたよ」などと言い合っているのを、院はお聞きになって、「本当に、あの人はたいそう格別な人だった。今はまた、あの頃よりも年を重ねて立派になって、光るとはこのことを言うのであろうかと見える美しさが、いっそう加わっている。きちんとして公の方面で見ると、威厳があって鮮やかで、目もまばゆい気持ちがするのに、また打ち解けて冗談を言ったりふざけたりすると、その方面では比べるものもなく、愛嬌があって親しみやすく、かわいらしいことが並ぶものもないのは、世にめったにないことだ。何事につけても、前世の因縁が推し量られて、珍しい人の様子である。
宮中で生い育って、帝王(桐壺院)がこの上なくいとしいものとなさり、あれほどかわいがって大切にし、わが身にかえて思っていらっしゃったけれど、心のままに驕ることもなく、へりくだって、二十歳までには納言にもならないでしまったのだ。二十一で宰相として大将を兼ねていらっしゃったのだったか。それに比べて、この人(夕霧)がずっと昇進が早いのは、次々の代に家の声望がまさってきたのであろう。本当に、立派な方面の学才や心づかいなどは、この人も決して劣るまいし、まちがっても成長してまさっている評判が、たいそう格別であるようだ」などと、おほめになる。「姫宮がたいそうかわいらしく、若く無邪気なご様子であるのを拝見するにつけても、引き立ててお世話し、一方ではまた未熟なところを見隠して教えてさしあげられるような、安心できる人に預け申し上げたい」などとおっしゃる。
意訳
朱雀院は、夕霧の美しさに目をとめ、女三の宮の後見にと考えて意向をほのめかすが、夕霧ははぐらかす。
院は源氏の比類ない魅力と夕霧の才覚をたたえ、女三の宮を安心して預けられる人を求める。
語釈・文法注
文法
- 反語の「かは…む」(何にかはいらへ聞えさせむ)
- 「何とお答え申し上げられようか、いや、申し上げられない」。
- 「ざめり」(えなずらへきこえ給はざめり)
- 打消の「ざる」+推定の「めり」の「ざるめり」の撥音便「ざんめり」の「ん」が表記されない形。「肩を並べ申し上げなさることはできないようだ」。
- 「けむ」(大將かけ給へりけむ)
- 過去推量。「大将を兼ねていらっしゃったのだったか」。
解説
朱雀院は夕霧を婿にと考えて意向をほのめかすが、夕霧は雲居雁との結婚を果たしたばかりで、その意を汲みながら、さりげなくかわす。院の言葉の「耳やすきものからさすがに妬く思ふことこそあれ」には、遅すぎたという悔しさがにじんでいる。
年老いた女房が「かの院」の若い頃と比べるのを受けて、朱雀院自身が源氏の美しさと人柄を手放しで称賛する。この称賛は、院の心が夕霧から源氏その人へと移っていく伏線となっている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、588–591頁(コマ5–6)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日