源氏物語 第34帖 若菜上(2)
東宮の見舞い
東宮は、朱雀院が出家を考えていると聞いて、母の承香殿の女御とともに見舞いに訪れる。院は、世を治める心構えなどを東宮に教え、女宮たちの行く末、とりわけ幼い女三の宮のことを、涙ながらに頼む。女御にも心をこめて頼むが、かつて女三の宮の母と女御とは寵を競い合った仲なので、女御が心から女三の宮の世話をしようとまでは思わないだろうと推し量られる。

- 1春宮春宮とうぐうははは、、、かゝるかゝるかかる御御おんなやみなやみなやみににに添添そへへえててて世世よをををそむかそむかそむかせせせ給給たまふふうべきべきべき御御おん心心こころづかひづかひずかいににになむなむなんととときかきかきかせせせ給給たまひひいててて渡渡わたらららせせせ給給たまへへえりりり。。。母母はは女御女御にょうごももも添添そひひい聞聞きこえええさせさせさせ給給たまひひいててて參參まいりりり給給たまへへえりりり。。。すぐれすぐれすぐれたるたるたる御御おんおぼえおぼえおぼえにににしもしもしもあらあらあらざりざりざりしかしかしかどどど、、、宮宮みやのののかくかくかくててておはしますおはしますおわします御御おんすくせすくせすくせののの限限かぎりなくなくなくめでたけれめでたけれめでたければばば、、、年年とし比比ごろののの御御おん物語物語ものがたり細細こまやかやかやかににに聞聞きこえええかはさかはさかわさせせせ給給たまひひいけりけりけり。。。宮宮みやにににもももよろづよろづよろずののの事事こと世世よををを保保たもちちち給給たまははわむむん御御おん心心こころづかひづかひずかいなどなどなど聞聞きこえええ知知しらららせせせ給給たまふふう。。。御御おん年年としのののほどほどほどよりよりよりはははいといといとよくよくよくおとなびおとなびおとなびさせさせさせ給給たまひひいててて、、、御御おん後見後見うしろみどもどもどもゝゝも此此こ方方なた彼彼か方方なたかろがろしからかろがろしからかろがろしからぬぬぬなからひなからひなからいににに物物ものししし給給たまへへえばばば、、、いといといとうしろやすくうしろやすくうしろやすく思思おもひひい聞聞きこえええさせさせさせ給給たまふふう。。。
- 2「「「このこのこの世世よにににうらみうらみうらみ殘殘のこるるることことことももも侍侍はべらららずずず。。。女女おんな宮宮みや達達たちのののあまたあまたあまた殘殘のこりりりとゞまるとゞまるとどまる行行ゆくくくさきさきさきををを思思おもひひいやるやるやるなむなむなんさらぬさらぬさらぬ別別わかれにににもももほだしほだしほだしなりなりなりぬぬぬべかりべかりべかりけるけるける。。。さきざきさきざきさきざき人人ひとのののうへうへうえににに見見み聞聞ききききしししにににももも、、、女女おんなははは心心こころよりよりよりほかほかほかにににあはあはしくあはあはしくあわあわしく人人ひとにににおとしめおとしめおとしめらるゝらるゝらるるすくせすくせすくせあるあるあるなむなむなんいといといと口惜口惜くちおしくしくしく悲悲かなしきしきしき。。。いづれいづれいずれをををももも思思おもふふうやうやうようならならならむむん御御おん世世よにににははは、、、さまざまさまざまさまざまにににつけつけつけててて御心御心みこころとゞめとゞめとどめててておぼしおぼしおぼし尋尋たずねねねよよよ。。。そのそのその中中なかにににうしろみうしろみうしろみなどなどなどあるあるあるはははさるさるさる方方かたにににももも思思おもひひいゆづりゆづりゆずり侍侍はべりりり。。。三三さんののの宮宮みやなむなむなんいはけなきいはけなきいわけなきよはひよはひよわいにてにてにて唯唯ただ一一ひと人人りをををたのもしきたのもしきたのもしきものものものとととならひならひならいててて、、、うちうちうち捨捨すてててゝゝてむむん後後のちののの世世よにににたゞよひたゞよひただよいさすらへさすらへさすらえむむんことことこといとゞいとゞいとどうしろめたくうしろめたくうしろめたく悲悲かなしくしくしく侍侍はべりりり」」」ととと、、、御御おん目目めおしおしおしのごひのごひのごいつゝつゝつつ聞聞きこえええ知知しらららせせせ給給たまふふう。。。
- 3女御女御にょうごにににももも心心こころうつくしきうつくしきうつくしきさまさまさまににに聞聞きこえええ告告つげげげさせさせさせ給給たまふふう。。。されどされどされど母母はは女御女御にょうごののの人人ひとよりよりよりはははまさりまさりまさりててて時時ときめきめきめき給給たまひひいしししににに、、、皆皆みないどみいどみいどみかはしかはしかわし給給たまひひいししし程程ほど、、、御御おんなからひなからひなからいどもどもどもえええうるはしからうるはしからうるわしからざりざりざりしかしかしかばばば、、、そのそのその名名な殘殘ごりにてにてにてげにげにげに今今いまはははわざとわざとわざとにくしにくしにくしとととはははなくなくなくともともとも、、、誠誠まことににに心心こころとゞめとゞめとどめててて思思おもひひいうしろみうしろみうしろみむむんまでまでまではははおぼさおぼさおぼさずずずもももやややとととぞぞぞ推推おししし量量はからららるゝるゝるるかしかしかし。。。
現代語訳
東宮は、院がこのようなご病気に加えて、世をお捨てになるはずのお心づもりでいらっしゃると、お聞きになって、お越しになった。母女御(承香殿の女御)もご一緒に参上なさった。女御は、院の格別のご寵愛を受けていらっしゃったわけではなかったが、東宮がこうしていらっしゃるご宿縁がこの上なくめでたいので、院は長年のお話を細やかにお交わしになった。東宮にも、何かにつけて世をお治めになるお心構えなどをお教え申し上げなさる。東宮はお年のわりにたいそうよく大人びていらっしゃって、ご後見の人々も、あちらこちら軽々しくない間柄の人々でいらっしゃるので、院はたいそう安心にお思い申し上げなさる。
「この世に恨みが残ることもございません。ただ、女宮たちが大勢残っていく行く末を思いやることが、避けられない死出の別れにも妨げとなってしまいそうです。これまで人の身の上を見聞きしたところでも、女は心ならずも軽々しく人に見下される宿縁があるのが、たいそう残念で悲しいものです。どの宮も、あなたが思いどおりに治める御代には、さまざまにつけてお心にとめて、お世話をしてください。その中で後見などがある者は、その方に任せましょう。三の宮は、まだ幼い年頃で、ただ私一人を頼もしいものと思い慣れて、私が見捨ててしまった後の世に、たださまよい落ちぶれるようなことが、いっそう気がかりで悲しいのです」と、お目をぬぐいながら、お言い聞かせになる。
女御にも、心をこめたご様子でお頼み申し上げなさる。けれども、女三の宮の母女御が人よりもまさって寵愛を受けていらっしゃったので、皆が張り合っていらっしゃったころ、お二人の仲はうまくいかなかったので、その名残で、なるほど今はことさら憎いということはなくても、本当に心にとめてお世話しようとまではお思いにならないのではないかと、推し量られることである。
意訳
東宮と母女御が見舞いに訪れ、朱雀院は涙ながらに女宮たち、とりわけ女三の宮の行く末を頼む。
しかし女御は、かつて女三の宮の母と寵を争った仲なので、心から世話をするとは思えない。
語釈・文法注
文法
- 「さらぬ別れ」(さらぬ別にもほだしなりぬべかりける)
- 避けられない別れ、すなわち死別。「ほだし」は、出家や往生の妨げとなるもの。
- 係り結び「なむ…ける」(ほだしなりぬべかりける)
- 「なむ」に応じて連体形「ける」で結ぶ。
- 「もや」(おぼさずもやとぞ推し量らるゝ)
- 「…ないのではないか」という危ぶみの気持ち。下に「あらむ」などが省略されている。
解説
朱雀院は、女宮たちの中でも女三の宮だけを取り分けて頼んでいる。母を亡くし、後見となる外戚もいない女三の宮は、院が亡くなれば頼る者がいない。物語は、皇女であっても後見のない女性がいかに危うい立場にあるかを、繰り返し語っていく。
語り手は、承香殿の女御が女三の宮の世話を心から引き受けることはないだろうと推し量る。後宮での寵愛の争いが、次の世代にまで影を落としている。こうして院は、女御や東宮ではない、別の後見を探さざるを得なくなる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、586–587頁(コマ4)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日