古典ライブラリー

源氏物語 第28帖 野分(7)

玉鬘と源氏、花散里

登場人物:光源氏・玉鬘・夕霧・花散里

源氏が西の対を訪れると、玉鬘は恐ろしい一夜を明かして寝過ごし、今ちょうど鏡を見ていた。源氏はいつものように戯れかかり、玉鬘が、こんなにつらいので昨夜の風に吹かれてどこかへ行ってしまいたかったと拗ねると、源氏は笑ってたしなめる。その様子を、夕霧は隅の間の御簾から覗き見て、親子とは思えない二人の親密さに驚く。夕霧は、玉鬘の美しさを、露のかかった八重山吹の夕映えにたとえる。玉鬘が「吹き乱る」の歌を詠み、源氏が返歌する。源氏はそれから東の花散里を訪れる。花散里のもとでは、老女房たちが裁縫をし、若い女房たちが綿を広げている。源氏は、花散里の染め物の色の美しさに感心し、夕霧の衣装を褒めて帰る。

野分の翌朝の西の対で、源氏が玉鬘に親しげに語りかけ、夕霧が離れた廊からその様子をうかがう場面(AI生成)
野分の翌朝の西の対で、源氏が玉鬘に親しげに語りかけ、夕霧が離れた廊からその様子をうかがう場面
  1. 1西にし西にしにしののの對たい對たいたいにににははは恐おそろ恐おそろおそろしししととと思おも思おもおもひひい明あか明あかあかししし給たま給たまたまひひいけるけるける名殘なごり名殘なごりなごりににに寢ね寢ねねすぐしすぐしすぐしててて、、、今いま今いまいまぞぞぞ鏡かゞみ鏡かゞみかがみなどなどなど見み見みみ給たま給たまたまひひいけるけるける。。。「「「ことごとしくことごとしくことごとしくさきさきさきなななおひおひおいそそそ」」」とととののの給たま給たまたまへへえばばば、、、殊こと殊ことことににに音おと音おとおともももせせせででで入い入いいりりり給たま給たまたまふふう。。。屏風びやうぶ屏風びやうぶびょうぶなどなどなどももも皆みな皆みなみな疊たゝ疊たゝたたみみみよせよせよせててて物もの物ものものしどけなくしどけなくしどけなくしなししなししなしたるたるたるににに日ひ日ひひののの華はな華はなはなやかやかやかにににさしさしさし出い出いいでででたるたるたる程ほど程ほどほど、、、けざけざけざけざけざけざととと物もの物ものもの淸きよ淸きよきよげげげなるなるなるさまさまさましししててて居ゐ居ゐい給たま給たまたまへへえりりり。。。
  2. 2近ちか近ちかちかくくく居ゐ居ゐい給たま給たまたまひひいててて例れい例れいれいののの風かぜ風かぜかぜにににつけつけつけてててももも同おな同おなおなじじじすぢすぢすじにににむづかしうむづかしうむずかしゅう聞きこ聞きこきこえええ戯たはぶ戯たはぶたわぶれれれ給たま給たまたまへへえばばば、、、堪た堪たたへへえずずずうたてうたてうたてととと思おも思おもおもひひいててて「「「かうかうこう心こころ心こころこころ憂う憂ううけれけれければばばこそこそこそ今宵こよひ今宵こよひこよいののの風かぜ風かぜかぜにににもももあくがれあくがれあくがれなななまほしくまほしくまほしく侍はべ侍はべはべりりりつれつれつれ」」」とととむづかりむづかりむずかり給たま給たまたまへへえばばば、、、いといといとよくよくよくうちうちうち笑わら笑わらわらひひい給たま給たまたまひひいててて「「「風かぜ風かぜかぜにににつきつきつきてててあくがれあくがれあくがれ給たま給たまたまははわむむんやややかろがろしからかろがろしからかろがろしからむむん。。。さりともさりともさりともとまるとまるとまる方かた方かたかたありありありなむなむなんかしかしかし。。。やうやうやうやうようようかゝるかゝるかかる御心みこころ御心みこころみこころむけむけむけこそこそこそ添そ添そそひひいにににたれたれたれ。。。ことわりことわりことわりややや」」」とととののの給たま給たまたまへへえばばば、、、
  3. 3げにげにげにうちうちうち思おも思おもおもふふうまゝまゝままににに聞きこ聞きこきこえええてててけるけるけるかなかなかなとととおぼしおぼしおぼしててて自みづか自みづかみずからららもももうちうちうちゑみゑみえみ給たま給たまたまへへえるるる、、、いといといとをかしきをかしきおかしき色いろ色いろいろあひあひあいつらつきつらつきつらつきなりなりなり。。。ほゝづきほゝづきほほずきとととかかかいふいふいうめるめるめるやうやうようにににふくらかふくらかふくらかにてにてにて髮かみ髮かみかみのののかゝれかゝれかかれるるるひまひまひまひまひまひま美うつく美うつくうつくしうしうしゅう覺おぼ覺おぼおぼゆゆゆ。。。まみまみまみのののいといといとあまりあまりあまりわらゝかわらゝかわららかなるなるなるぞぞぞいといといとしもしもしも品しな品しなしな高たか高たかたかくくく見み見みみえええざりざりざりけるけるける。。。そのそのその外ほか外ほかほかはははつゆつゆつゆ難なん難なんなんつくつくつくべくべくべくもももあらあらあらずずず。。。
  4. 4中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょう、、、いといといと細こま細こまこまやかやかやかににに聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふうをををいかでいかでいかでこのこのこの御おん御おんおんかたちかたちかたち見み見みみてててしがしがしがなななととと思おも思おもおもひひい渡わた渡わたわたるるる心地ここち心地ここちここちにてにてにて、、、隅すみ隅すみすみのののまままののの御簾みす御簾みすみすののの几帳きちやう几帳きちやうきちょうははは添そ添そそひひいながらながらながらしどけなきしどけなきしどけなきをををやをらやをらやおらひきひきひきあげあげあげててて見み見みみるるるににに紛まぎ紛まぎまぎるゝるゝるるものものものどもどもどもゝゝも取と取ととりりりやりやりやりたれたれたればばばいといといとよくよくよく見み見みみゆゆゆ。。。かくかくかく戯たはぶ戯たはぶたわぶれれれ給たま給たまたまふふう氣色けしき氣色けしきけしきのののしるきしるきしるきををを、、、あやしあやしあやしのののわざわざわざややや、、、親おや親おやおやととと聞きこ聞きこきこえええながらながらながらかくかくかくふところふところふところはなれはなれはなれずずず物もの物ものもの近ちか近ちかちかかるかるかるべきべきべき程ほど程ほどほどかかかはははととと目め目めめとまりとまりとまりぬぬぬ。。。
  5. 5見み見みみやややつけつけつけ給たま給たまたまははわむむんととと恐おそろ恐おそろおそろしけれしけれしけれどどど怪あや怪あやあやしきしきしきににに心こころ心こころこころももも驚おどろ驚おどろおどろきききてててなほなほなお見み見みみれれればばば、、、柱はしら柱はしらはしらがくれがくれがくれににに少すこ少すこすこしししそばみそばみそばみ給たま給たまたまへへえりりりつるつるつるををを引ひ引ひひきききよせよせよせ給たま給たまたまへへえるるるにににみぐしみぐしみぐしのののなみなみなみよりよりよりてててはらはらはらはらはらはらとととこぼれこぼれこぼれかゝりかゝりかかりたるたるたる程ほど程ほどほど女をんな女をんなおんないといといとむつかしくむつかしくむつかしく苦くる苦くるくるしししととと思おも思おもおもひひい給たま給たまたまへへえるるる氣色けしき氣色けしきけしきながらながらながら、、、さすがにさすがにさすがにいといといとなごやかなごやかなごやかなるなるなるさまさまさましししてててよりよりよりかゝりかゝりかかり給たま給たまたまへへえるるるはははことことことゝゝとなれなれしきなれなれしきなれなれしきにににこそこそこそあああめれめれめれ、、、いでいでいであなあなあなうたてうたてうたて、、、いかなるいかなるいかなるにににかかかあらあらあらむむん、、、思おも思おもおもひひいよらよらよらぬぬぬ隈くま隈くまくまなくなくなくおはしおはしおわしけるけるける御心みこころ御心みこころみこころにてにてにてもとよりもとよりもとより見み見みみ馴な馴ななれれれおふしおふしおおしたてたてたて給たま給たまたまははわぬぬぬはははかゝるかゝるかかる御おん御おんおん思おも思おもおもひひいももも添そ添そそひひい給たま給たまたまへへえるるるなななめりめりめり、、、うべうべうべなりなりなりけりけりけりややや。。。あなあなあなうとましうとましうとましととと思おも思おもおもふふう心こころ心こころこころもももはづかしはづかしはずかし。。。
  6. 6女をんな女をんなおんなののの御おん御おんおんさまさまさまげにげにげにはらからはらからはらからととといふいふいうともともとも少すこ少すこすこししし立た立たたちちちのきのきのきてててことことことはらはらはらぞぞぞかしかしかしなどなどなど思おも思おもおもははわむむんははは、、、などなどなどかかか心こころ心こころこころあやまちあやまちあやまちもももせせせざらざらざらむむんととと覺おぼ覺おぼおぼゆゆゆ。。。昨日きのふ昨日きのふきのう見み見みみししし御おん御おんおんけはひけはひけわいにににはははけけけおとりおとりおとりたれたれたれどどど見み見みみるるるにににゑまゑまえまるゝるゝるるさまさまさまははは立た立たたちちちもももならびならびならびぬぬぬべくべくべく見み見みみゆゆゆ。。。八や八やや重へ重へえ山やま山やまやま吹ぶき吹ぶきぶきののの咲さ咲ささききき亂みだ亂みだみだれれれたるたるたるさかりさかりさかりににに露つゆ露つゆつゆかゝれかゝれかかれるるる夕ゆふ夕ゆふゆうばえばえばえぞぞぞふとふとふと思おも思おもおもひひい出い出いいでででらるゝらるゝらるる。。。折をり折をりおりにににあはあはあわぬぬぬよそへよそへよそえなれなれなれどどど猶なほ猶なほなおうちうちうち覺おぼ覺おぼおぼゆるゆるゆるやうやうようよよよ。。。花はな花はなはなははは限かぎ限かぎかぎりりりこそこそこそあれあれあれ、、、そゝけそゝけそそけたるたるたるしべしべしべなどなどなどもももうちうちうちまじるまじるまじるかしかしかし。。。人ひと人ひとひとののの御おん御おんおんかたちかたちかたちのののよきよきよきははは譬たと譬たとたとへへえむむん方かた方かたかたなきなきなきものものものなりなりなりけりけりけり。。。
  7. 7おまへおまへおまえににに人ひと人ひとひとももも出い出いいででで來こ來ここずずずいといといとこまやかこまやかこまやかににに打う打ううちちちさゝめきさゝめきささめき語かた語かたかたらひらひらい聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふうににに、、、いかゞいかゞいかがあらあらあらむむん、、、まめだちまめだちまめだちてててぞぞぞ立た立たたちちち給たま給たまたまふふう。。。女君をんなぎみ女君をんなぎみおんなぎみ、、、「「「吹ふ吹ふふききき亂みだ亂みだみだるるる風かぜ風かぜかぜのののけしきけしきけしきにににをみなへしをみなへしおみなえししをれしをれしおれしぬしぬしぬべきべきべき心ここ心ここここちちちこそこそこそすれすれすれ」」」。。。委くは委くはくわしくしくしくももも聞きこ聞きこきこえええぬぬぬににに、、、うちうちうちずじずじずじ給たま給たまたまふふうをををほのほのほの聞き聞ききくくくににに、、、にくきにくきにくきものものものゝゝのをかしけれをかしけれおかしければばば、、、猶なほ猶なほなお見み見みみはてはてはてまほしけれまほしけれまほしけれどどど、、、近ちか近ちかちかかりかりかりけりけりけりととと見み見みみえええ奉たてまつ奉たてまつたてまつらららじじじととと思おも思おもおもひひいててて、、、立た立たたちちち去さ去ささりりりぬぬぬ。。。
  8. 8御おん御おんおんかへしかへしかへし、、、「「「したしたしたつゆつゆつゆににに靡なび靡なびなびかかかましかましかましかばばば女郞花をみなへし女郞花をみなへしおみなえしあらきあらきあらき風かぜ風かぜかぜにににはははしをれしをれしおれざらざらざらましましまし。。。なよなよなよををを見み見みみ給たま給たまたまへへえかしかしかし」」」などなどなどひがひがひがみゝみゝみみにににやややありありありけむけむけん聞き聞きききききよくよくよくもももあらあらあらずずずぞぞぞ。。。
  9. 9ひんがしひんがしひんがしののの御おん御おんおん方かた方かたかたへへへこれこれこれよりよりよりぞぞぞ渡わた渡わたわたりりり給たま給たまたまふふう。。。けさけさけさののの朝あさ朝あさあさ寒ざむ寒ざむざむなるなるなるうちうちうち解と解ととけけけわざわざわざにににややや、、、物もの物ものものたちたちたちなどなどなどするするするねびねびねびごごごたちたちたち、、、御前おまへ御前おまへおまえにににあまたあまたあまたしししててて細ほそ細ほそほそ櫃びつ櫃びつびつめくめくめくものものものににに綿わた綿わたわたひきひきひきかけかけかけてててまさぐるまさぐるまさぐる若わか若わかわか人うど人うどうどどもどもどもゝゝもありありあり。。。いといといと淸きよ淸きよきよらららなるなるなる朽くち朽くちくち葉ば葉ばばのののうすものうすものうすものいまやういまやういまよう色いろ色いろいろのののににになくなくなく打う打ううちちちたるたるたるなどなどなどひきひきひきちらしちらしちらし給たま給たまたまへへえりりり。。。
  10. 10「「「中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうののの下襲したがさね下襲したがさねしたがさねかかか、、、御前おまへ御前おまへおまえののの壺つぼ壺つぼつぼ前せん前せんせん栽ざい栽ざいざいののの宴えん宴えんえんもももとまりとまりとまりぬぬぬらむらむらんかしかしかし。。。かくかくかく吹ふ吹ふふききき散ち散ちちらしらしらしてててむむんにににははは何事なにごと何事なにごとなにごとかかかせせせられられられむむん。。。すさまじかるすさまじかるすさまじかるべきべきべき秋あき秋あきあきなななめりめりめり」」」などなどなどのたまひのたまひのたまいててて、、、何なに何なになににににかかかあらあらあらむむん樣々さまざま樣々さまざまさまざまなるなるなるものものものゝゝの色いろ色いろいろどもどもどものののいといといと淸きよ淸きよきよらららなれなれなればばば、、、かやうかやうかようなるなるなる方かた方かたかたははは南みなみ南みなみみなみののの上うへ上うへうえにににももも劣おと劣おとおとらららずずずかしかしかしとととおぼすおぼすおぼす。。。御おん御おんおん直衣なほし直衣なほしのうしけもんけもんけもんをををこのこのこの頃ころ頃ころころ摘つ摘つつみみみ出いだ出いだいだしししたるたるたる花はな花はなはなしてしてしてはかなうはかなうはかのう染そ染そそめめめ出い出いいででで給たま給たまたまへへえるるるいといといとあらまほしきあらまほしきあらまほしき色いろ色いろいろしししたりたりたり。。。「「「中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうにににこそこそこそかやうかやうかようにてにてにてははは着き着ききせせせ給たま給たまたまははわめめめ。。。若わか若わかわかききき人ひと人ひとひとのののにてにてにてめやすかめやすかめやすかめりめりめり」」」などなどなどやうやうようののの事こと事ことことををを聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまひひいててて渡わた渡わたわたりりり給たま給たまたまひひいぬぬぬ

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

西の対では、玉鬘が恐ろしいと思いながら夜を明かしなさった名残で寝過ごして、今ちょうど鏡などをご覧になっていた。源氏が「仰々しく先払いをするな」とおっしゃるので、特に音も立てずにお入りになる。屏風なども皆たたんで寄せて、何となく取り散らかしているところに、日が華やかに差し出した頃、くっきりと清らかな様子で座っていらっしゃった。

源氏は近くに座りなさって、いつものように、風の見舞いにかこつけても、同じ筋の面倒なことを冗談めかして申し上げなさるので、玉鬘は耐えられず嫌だと思って、「このようにつらいので、昨夜の風にも、どこかへ吹かれて行ってしまいたかったのです」と拗ねなさると、源氏はたいそう楽しそうにお笑いになって、「風について行ってしまわれるのは軽々しいだろう。それでも行き着く所はきっとあるのでしょうね。だんだんこのようなお気持ちが加わってきたのだね。もっともなことだ」とおっしゃるので、

本当に思うままに申し上げてしまったことだとお思いになって、ご自分もほほえんでいらっしゃるのは、たいそう美しい顔色や頬の様子である。鬼灯とかいうもののようにふっくらとして、髪がかかっている隙間隙間が美しく思われる。目元があまりにも明るく華やかなのが、それほど品高くは見えなかった。そのほかは、少しも欠点をつけようがない。

中将は、源氏がたいそう細やかに話しかけなさるのを、何とかしてこのお方の容貌を見たいものだと思い続けていた気持ちから、隅の間の御簾の、几帳は添えてあるもののしどけなく置かれているのを、そっと引き上げて見ると、さえぎる物なども片付けてあるので、たいそうよく見える。このように戯れなさる様子がはっきりしているのを、妙なことだ、親と申し上げながら、このように懐から離れず、物近くにいるべき年頃だろうかと、目がとまった。

見つけなさるのではないかと恐ろしいけれど、不審なことに心も驚いて、なおも見ると、柱の陰に少し横を向いていらっしゃったのを源氏が引き寄せなさると、御髪が波打って寄って、はらはらとこぼれかかっている時、玉鬘はたいそうわずらわしくつらいとお思いになっている様子ながら、それでもたいそう穏やかな様子で寄りかかっていらっしゃるのは、格別になれなれしい間柄であるようだ。いや、ああ嫌なことだ、どういうことだろう、抜け目なく何事にも思い及ばない所のないお心で、もともと見慣れてお育てにならなかった娘なので、このようなお思いも加わっているのだろう、もっともなことだ。ああ、うとましいと思う自分の心も恥ずかしい。

女君のご様子は、本当に、姉弟だとはいっても、少し離れて、腹違いだなどと思うとしたら、どうして心の過ちもしないことがあろうかと思われる。昨日見た紫の上のご様子には劣っているけれど、見るとつい笑みがこぼれる様子は、肩を並べるほどに見える。八重山吹の咲き乱れた盛りに、露がかかっている夕映えが、ふと思い出される。季節に合わないたとえだけれど、やはりそう思われる様子であるよ。花には限りがあって、乱れたしべなども混じるものだ。人のご容貌の美しさは、たとえようのないものであった。

御前には女房も出て来ず、源氏がたいそう細やかにささやいてお話し申し上げなさると、どうしたことか、玉鬘はまじめな顔をしてお立ちになる。女君は、「吹き乱る風のけしきにをみなへししをれしぬべき心ちこそすれ(吹き乱れる風の様子に、女郎花は萎れて死んでしまいそうな気持ちがします)」。詳しくは聞こえないが、源氏が口ずさみなさるのをほのかに聞くと、憎らしいものの興味深いので、なおも最後まで見たいけれど、近くにいたと見られ申し上げまいと思って、立ち去った。

源氏のご返歌は、「したつゆに靡かましかば女郎花あらき風にはしをれざらまし(下露になびいていたならば、女郎花は荒い風には萎れないでしょうに)。なよ竹をご覧なさいよ」などと、聞き違いだったのだろうか、聞いて気持ちのよいものでもなかった。

東の御方(花散里)へは、ここからお渡りになる。今朝の朝寒さのための、くつろいだ仕事であろうか、裁縫などをする年配の女房たちが御前に大勢いて、細櫃のようなものに綿を引き掛けていじっている若い女房たちもいる。たいそう美しい朽葉色の薄物や、今様色の、またとないほど見事に打ってつやを出したものなどを、取り散らかしていらっしゃった。

源氏は「中将の下襲ですか。御前の壺前栽の宴も、きっと取りやめになったでしょう。このように吹き散らしてしまっては、何ができましょう。興ざめな秋になりそうだ」などとおっしゃって、何であろうか、さまざまな物の色がたいそう美しいので、このような方面は南の上(紫の上)にも劣らないことよとお思いになる。御直衣の固紋の綾を、この頃摘み取った花で、さりげなく染め出していらっしゃるのは、たいそう理想的な色をしている。「中将にこそ、このようなものは着せてやりなさい。若い人の物として見苦しくないようだ」などということを申し上げなさって、お渡りになった。

意訳

源氏は西の対で玉鬘に戯れかかり、夕霧はその様子を隅の間の御簾から覗き見て、親子とは思えない二人の親密さに驚く。夕霧は、玉鬘の美しさを、露のかかった八重山吹の夕映えにたとえる。

玉鬘と源氏が歌を交わした後、源氏は東の花散里を訪れる。源氏は、花散里の染め物の色の美しさに感心し、夕霧の衣装を褒めて帰る。

語釈・文法注

なよ竹
しなやかな竹。風に逆らわずになびくので、折れることがない。源氏が、自分に素直に従えば苦しまずにすむと、玉鬘に言いかけたもの。
けもんれう
固紋綾(かたもんりょう)の略という。文様を固く織り出した綾織物。

文法

願望の「しがな」(御かたち見てしがな)
「見たいものだ」。自己の願望を表す。
反実仮想の「ましかば…まし」(靡かましかば…しをれざらまし)
「なびいていたならば、萎れないだろうに」。事実に反する仮定。

解説

夕霧は、紫の上に続いて玉鬘をも垣間見る。玉鬘を姉と信じている夕霧には、源氏と玉鬘の親密さは理解しがたく、「あなうとまし」と感じる。夕霧の目を通して、源氏の玉鬘への恋情が浮き彫りになる。

紫の上を春の樺桜、玉鬘を八重山吹にたとえるのは、野分の巻の特徴である垣間見の連続の中で、六条院の女君たちを花に見立てて描き分ける趣向である。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、500–503頁(コマ255–256)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日