源氏物語 第28帖 野分(5)
源氏の言葉と中宮への使い
源氏が自ら格子を開けると、夕霧は控える。源氏は大宮の様子を尋ね、大宮はもう長くないだろうから心を込めてお仕えせよと言い、内大臣は華やかで男らしいが、情の深さに欠ける人だと評する。源氏は夕霧を使いにして、秋好中宮に野分の見舞いを申し上げる。夕霧が秋の町に参上すると、夜明けの薄明かりの中、御簾を巻き上げて若い女房たちが集まり、童女たちが庭に下りて虫籠に露をやっている。紫苑や撫子の衵に女郎花の汗衫を着た童女たちが草むらを歩き回る姿は、霧の中で優艶に見える。夕霧が姿を見せると女房たちは奥に入り、夕霧は中宮への御消息を伝え、宰相の君や内侍と語らいながら、気高い秋の町の様子に物思いにふける。

- 1みみみ格子格子こうしををを御手御手みてづからづからずからひきひきひきあけあけあけ給給たまへへえばばばけぢかきけぢかきけじかき傍傍かたわらいたさいたさいたさににに立立たちちちのきのきのきててて侍侍さぶらひひい給給たまふふう。。。「「「いかにいかにいかにぞぞぞ。。。よべよべよべ宮宮みやはははまちまちまち喜喜よろこびびび給給たまひひいきききややや」」」、、、「「「しかしかしか、、、はかなきはかなきはかなきことことことにににつけつけつけてててももも淚淚なみだもろもろもろにににものしものしものし給給たまへへえばばばいといといとふびんふびんふびんにににこそこそこそ侍侍はべれれれ」」」ととと申申もうししし給給たまへへえばばば、、、
- 2笑笑わらひひい給給たまひひいててて「「「今今いまいくばくいくばくいくばくもももおはせおはせおわせじじじ。。。まめやかまめやかまめやかににに仕仕つかうまつりうまつりうまつり見見みえええ奉奉たてまつれれれ。。。內內うちのののおとゞおとゞおとどははは、、、こまかこまかこまかにににしもしもしもあるあるあるまじうまじうまじゅうとととこそこそこそ憂憂うれへへえ給給たまひひいしかしかしか。。。人人ひとがらがらがらあやしうあやしうあやしゅう華華はなやかやかやかににに雄々雄々おおしきしきしき方方かたににによりよりよりててて、、、親親おやなどなどなどののの御御おんけうけうきょうをををもももいかめしきいかめしきいかめしきかたかたかたざまざまざまをををばばばたてたてたてゝゝて人人ひとにににももも見見み驚驚おどろかさかさかさむむんののの心心こころありありあり。。。誠誠まことにににしみしみしみててて深深ふかききき所所ところはははなきなきなき人人ひとににになむなむなんものせものせものせられられられけるけるける。。。さるはさるはさるは心心こころのののくまくまくま多多おおくくくいといといと賢賢かしこききき人人ひとののの末末すえののの世世よにににあまるあまるあまるまでまでまでざえざえざえたぐひたぐひたぐいなくなくなくうるさうるさうるさながらながらながら、、、人人ひととしてとしてとしてかくかくかく難難なんなきなきなきことことことははは難難かたかりかりかりけるけるける」」」などなどなどののの給給たまふふう。。。
- 3「「「いといといとおどろおどろしかりおどろおどろしかりおどろおどろしかりつるつるつる風風かぜににに、、、中宮中宮ちゅうぐうにににはかばかしきはかばかしきはかばかしきみやみやみやづかさづかさずかさなどなどなど侍侍さぶらひひいつつつらむらむらんややや」」」とてとてとてこのこのこの君君きみしてしてして御御おんせうそこせうそこしょうそこ聞聞きこえええ給給たまふふう「「「よるよるよるののの風風かぜののの音音おとはははいかゞいかゞいかが聞聞きこししし召召めしししつつつらむらむらん。。。吹吹ふきききみだりみだりみだり侍侍はべりりりしししにににおこりおこりおこりあひあひあい侍侍はべりりりててていといといと堪堪たへへえがたきがたきがたきにににためらひためらひためらい侍侍はべるるる程程ほどににになむなむなん」」」ととと聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 4中將中將ちゅうじょうおりおりおりてててなかなかなかののの廊廊ろうののの戶戶とよりよりより通通とおりりりててて參參まいりりりたまふたまふたまう。。。朝朝あさぼらけぼらけぼらけのののかたちかたちかたちいといといとめでたくめでたくめでたくをかしげをかしげおかしげなりなりなり。。。ひんがしひんがしひんがしののの對對たいののの南南みなみのののそばそばそばににに立立たちちちててて御前御前おまえののの方方かたををを見見み遣遣やりりり給給たまへへえばばばみみみ格子格子こうしふたふたふたまままばかりばかりばかりあげあげあげてててほのかほのかほのかなるなるなる朝朝あさぼらけぼらけぼらけののの程程ほどににに御簾御簾みす卷卷まきききあげあげあげててて人々人々びと居居いたりたりたり。。。高高こう欄欄らんにににもももおしおしおしかゝりかゝりかかりててて若若わかやかやかやかなるなるなるかぎりかぎりかぎりあまたあまたあまた見見みゆゆゆ。。。
- 5打打うちちち解解とけけけたるたるたるはははいかゞいかゞいかがあらあらあらむむん、、、さやかさやかさやかならならならぬぬぬ明明あけけけぐれぐれぐれのののほどほどほどいろいろいろいろいろいろなるなるなる姿姿すがたはははいづれいづれいずれとととなくなくなくをかしをかしおかし。。。わらはべわらはべわらわべおろさおろさおろさせせせ給給たまひひいてててのののこどもこどもこどもににに露露つゆかはかはかはせせせ給給たまふふうなりなりなりけりけりけり。。。紫苑紫苑しおん瞿麥瞿麥なでしこののの濃濃こききき薄薄うすききき衵衵あこめどもどもどもににに女郞花女郞花おみなえしのののかざみかざみかざみなどなどなどやうやうようののの時時ときににに逢逢あひひいたるたるたるさまさまさまにてにてにて四五人四五人しごにんばかりばかりばかりつれつれつれてててこゝかしここゝかしこここかしこののの草草くさむらむらむらににによりよりよりててていろいろいろいろいろいろのののこどもこどもこどもをををもてもてもてさまよひさまよひさまよい、、、瞿麥瞿麥なでしこなどなどなどのののいといといと哀哀あわれげげげなるなるなる枝枝えだどもどもども取取とりりりもてもてもて參參まいるるる霧霧きりのののまよひまよひまよいはははいといといと艶艶えんにににぞぞぞ見見みえええけるけるける
- 6吹吹ふきききくるくるくる追風追風おいかぜはははことごとにことごとにことごとに匂匂におふふう空空そらももも、、、香香かのののかをりかをりかおりもももふればひふればひふればい給給たまへへえるるる御御おんけはひけはひけわいにににやややととといといといと思思おもひひいやりやりやりめでたくめでたくめでたく、、、心心こころげさうげさうげそうせせせられられられててて立立たちちち出出いでででにくけれにくけれにくけれどどど、、、忍忍しのびやかびやかびやかにににうちうちうちおとなひおとなひおとないててて步步あゆみみみ出出いででで給給たまへへえるるるににに、、、人々人々びとけざやかけざやかけざやかににに驚驚おどろききき顏顏がおにににはははあらあらあらねねねどどど皆皆みなすべりすべりすべり入入いりりりぬぬぬ。。。
- 7御御おんまゐりまゐりまいりのののほどほどほどなどなどなどわらはわらはわらわにてにてにて入入いりりり立立たちちち馴馴なれれれ聞聞きこえええ給給たまへへえれれればばば、、、女房女房にょうぼうなどなどなどもももいといといとけうとくけうとくきょうとくはははあらあらあらずずず。。。御御おんせうそこせうそこしょうそこ啓啓けいせせせさせさせさせ給給たまひひいててて、、、宰相宰相さいしょうののの君君きみ內侍內侍ないしなどなどなどのののけはひけはひけわいすれすれすればばば私私わたくし事事ごとももも忍忍しのびやかびやかびやかににに語語かたらひらひらい給給たまふふう。。。これこれこれはたはたはたさささいへいへいえどどど氣氣け高高だかくくく住住すみみみたるたるたるけはひけはひけわいありさまありさまありさまををを見見みるるるにににもももさまざまさまざまさまざま物物もの思思おもひひい出出いでででらるらるらる。。。
現代語訳
源氏が御格子をご自身で引き開けなさると、夕霧はお近くにいるのも気が引けて、立ち退いて控えていらっしゃる。「どうだった。昨夜、大宮はお待ち受けになって喜ばれたか」、「はい。ちょっとしたことにつけても涙もろくていらっしゃるので、たいそうお気の毒でございます」と申し上げなさると、
源氏はお笑いになって、「もう長くはいらっしゃるまい。心を込めてお仕えして、お目にかかり申し上げなさい。内大臣は、細やかにはお世話申し上げないようだと、大宮は嘆いていらっしゃった。内大臣は、人柄が妙に華やかで男らしい方に偏っていて、親への孝養なども、いかめしい方面を立てて、人の目を驚かそうという心がある。本当に心にしみるような深いところはない人でいらっしゃる。そうはいっても、心の奥が深く、たいそう賢い人で、この末世には余るほど学才は比類なく、わずらわしいところはあるものの、人としてこれほど欠点のないことは、めったにないものだ」などとおっしゃる。
「たいそう恐ろしかった風に、中宮のもとには、しっかりした宮司などがお仕えしていただろうか」と言って、この君(夕霧)を使いにして、お便りを申し上げなさる。「夜の風の音は、どのようにお聞きになったでしょうか。吹き荒れておりましたところに、風邪の発作が起こりまして、たいそう耐えがたいので、休んでおります間でございまして」と申し上げなさる。
中将は下りて、中の廊の戸から通って、中宮のもとに参上なさる。夜明けの薄明かりの中の姿は、たいそうすばらしく美しい。東の対の南の端に立って、中宮の御前の方をご覧になると、御格子を二間ほど上げて、ほのかな夜明けの頃に、御簾を巻き上げて女房たちが座っている。高欄に寄りかかって、若々しい者ばかりが大勢見える。
くつろいでいる様子はどうだろうか、はっきりしない明け方の薄暗さの中で、色とりどりの姿は、どれということなく趣深い。童女たちを庭に下ろしなさって、虫籠に露をやらせていらっしゃるのであった。紫苑や撫子の、濃い色や薄い色の衵に、女郎花の汗衫など、季節に合った装いで、四、五人ほど連れ立って、あちこちの草むらに寄って、いろいろの虫籠を持ってさまよい、撫子などのたいそうかわいそうな枝を取って持って参る、その霧の中に見え隠れする様子は、たいそう優艶に見えた。
吹いてくる追い風は、紫苑がことごとく匂う空も、中宮が触れなさったお香の薫りのせいであろうかと、たいそう想像されてすばらしく、心づかいされて出て行きにくいけれど、そっと声をかけて歩み出なさると、女房たちは、目立って驚いた顔をするわけではないが、皆すべるように奥に入ってしまった。
中宮の入内の頃などに、夕霧は童として御簾の内に出入りし馴れ申し上げていらっしゃったので、女房たちもたいそう疎遠ではない。源氏のお便りを中宮に申し上げさせなさって、宰相の君や内侍などの気配がするので、個人的な話もひそやかにお話しなさる。こちらはこちらで、何といっても気高く住んでいる様子や有様を見るにつけても、さまざまに物思いが思い出される。
意訳
源氏は、大宮はもう長くないだろうから心を込めてお仕えせよと夕霧に言い、内大臣は華やかで賢いが、情の深さに欠ける人だと評する。源氏は夕霧を使いにして、秋好中宮に野分の見舞いを申し上げる。
夕霧が秋の町に参上すると、夜明けの霧の中、童女たちが庭に下りて虫籠に露をやっている。夕霧は、宰相の君や内侍と語らいながら、気高い秋の町の様子に物思いにふける。
語釈・文法注
- 蟲のこども
- 「こども」は「籠ども」で、虫籠のこと。秋の野で捕らえた虫を籠に入れて飼い、露をやって鳴き声を楽しんだ。
- しをに
- 紫苑(しおん)。秋に薄紫の花を咲かせるキク科の草。
文法
- 「まじう」(こまかにしもあるまじう)
- 打消推量「まじ」の連用形のウ音便。「細やかにはお世話しないようだ」。
- 「はた」(これはたさいへど)
- 「こちらはこちらでまた」。春の町と比べる気持ちを表す。
解説
源氏が内大臣を「まことにしみて深き所はなき人」と評する言葉には、雲居雁との仲を裂かれた夕霧への配慮と、長年の競争相手への複雑な思いがにじんでいる。それでも、内大臣の学才と人柄の欠点のなさは認めている。
霧の中で童女たちが虫籠に露をやる場面は、野分の後の秋の町の静かな美しさを描く。前の場面の春の町の紫の上の華やかさと対照的に、秋好中宮の気高さが、女房や童女たちの姿を通して描かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、498–499頁(コマ254)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日