源氏物語 第28帖 野分(4)
翌朝の見舞い
明け方、風が少し収まって村雨のように雨が降り出し、六条院では離れた建物が倒れたという。夕霧は、人の少ない東の町を心配して、夜明けに六条院に戻る。夕霧は、紫の上を思う自分の心をあってはならないことだと打ち消しながら、まず花散里を見舞い、修繕を指示してから、春の町に参上する。まだ格子も上がっておらず、夕霧が高欄にもたれて荒れた庭を眺め、涙をぬぐって咳払いをすると、源氏が起き出す。源氏は紫の上に、昔も知らなかった暁の別れを今になって覚えるのはつらいだろうと戯れ、夕霧は二人の仲睦まじさを聞いている。

- 1曉曉あかつきがたがたがたににに風風かぜ少少すこししししめりしめりしめりててて村村むら雨雨さめのののやうやうようににに降降ふりりり出出いづづず。。。六條院六條院ろくじょういんにににははは離離はなれれれたるたるたる屋屋やどもどもども倒倒たおれれれたりたりたりなどなどなど人々人々びと申申もうすすす。。。風風かぜののの吹吹ふきききまふまふまうほどほどほど廣廣ひろくくくそこらそこらそこら高高たかききき心地心地ここちするするする院院いんににに人々人々びとはははたたたおはしますおはしますおわします。。。
- 2おとゞおとゞおとどのののあたりあたりあたりにににこそこそこそ繁繁しげけれけれけれ、、、ひんがしひんがしひんがしののの町町まちなどなどなどははは人人ひとずくなずくなずくなにににおぼさおぼさおぼされれれつつつらむらむらんととと驚驚おどろききき給給たまひひいてててまたまたまたほのぼのほのぼのほのぼのとととするするするににに參參まいりりり給給たまふふう。。。道道みちののの程程ほど橫橫よこざまざまざま雨雨あめいといといと冷冷ひややかやかやかににに吹吹ふききき入入いるるる。。。
- 3空空そらののの氣色氣色けしきもももすごきすごきすごきににに怪怪あやしくしくしくあくがれあくがれあくがれたるたるたる心地心地ここちしししててて、、、何事何事なにごとぞぞぞややや又又また我我わが心心こころににに思思おもひひい加加くわはれはれわれるるるよよよととと思思おもひひい出出いづれづれずれどどど、、、いといといとにげなきにげなきにげなき事事ことなりなりなりけりけりけり。。。あなあなあなものぐるほしものぐるほしものぐるおしととと、、、とざまとざまとざまかうざまかうざまこうざまににに思思おもひひいつゝつゝつつ
- 4ひんがしひんがしひんがしののの御御おん方方かたにににまづまづまずまうでまうでもうで給給たまへへえれれればばば、、、おぢおぢおじこうじこうじこうじててておはしおはしおわしけるけるけるにににとかくとかくとかく聞聞きこえええ慰慰なぐさめめめててて、、、人人ひと召召めしししててて所々所々ところどころ繕繕つくろははわすすすべきべきべきよしよしよしなどなどなどいひいひいいおきおきおきててて南南みなみのののおとゞおとゞおとどににに參參まいりりり給給たまへへえれれればばば、、、まだまだまだみみみ格子格子こうしももも參參まいらららずずず。。。
- 5おはしますおはしますおわしますにににあたれあたれあたれるるる高高こう欄欄らんにににおしおしおしかゝりかゝりかかりててて見見み渡渡わたせせせばばば、、、山山やまののの木木きどもどもどもゝゝも吹吹ふききき靡靡なびかしかしかしててて枝枝えだどもどもども多多おおくくく折折おれれれ伏伏ふしししたりたりたり。。。草草くさむらむらむらははは更更さらにににもももいはいはいわずずず、、、ひはだひはだひわだ、、、瓦瓦かわら、、、所々所々ところどころののの立立たて、、、すいがいすいがいすいがいなどなどなどやうやうようのののものものもの亂亂みだりりりがはしがはしがわし。。。
- 6日日ひののの僅僅わずかにににさしさしさし出出いでででたるたるたるににに、、、うれへうれへうれえがほがほがおなるなるなる庭庭にわののの露露つゆきらきらきらきらきらきらとととしししててて空空そらはははいといといとすごうすごうすごうきりきりきり渡渡わたれれれるるるににに、、、そこはかとなくそこはかとなくそこはかとなく淚淚なみだののの落落おつるつるつるをををおしおしおしのごひのごひのごい隱隱かくしししててて打打うちちちしはぶきしはぶきしわぶき給給たまへへえれれればばば
- 7「「「中將中將ちゅうじょうのののこわづくるこわづくるこわずくるにににぞぞぞあああなるなるなる。。。夜夜よはははまだまだまだ深深ふかからからからむむんははは」」」とてとてとて起起おききき給給たまふふうなりなりなり。。。何事何事なにごとにににかかかあらあらあらむむん聞聞きこえええ給給たまふふう聲聲こえはははせせせででで、、、おとゞおとゞおとど打打うちちち笑笑わらひひい給給たまひひいててて「「「古古いにしえだにだにだに知知しらせらせらせ奉奉たてまつらららずずずなりなりなりにににししし曉曉あかつきのののわかれわかれわかれよよよ、、、今今いまならひならひならい給給たまははわむむんににに心苦心苦こころぐるしからしからしからむむん」」」とてとてとて、、、とばかりとばかりとばかり語語かたらひらひらい聞聞きこえええ給給たまふふうけはひけはひけわいどもどもどもいといといとをかしをかしおかし。。。
- 8女女おんなののの御御おんいらへいらへいらえははは聞聞きこえええねねねどどどほのぼのほのぼのほのぼのかやうかやうかようににに聞聞きこえええ戯戯たわぶれれれ給給たまふふう言言ことののの葉葉はののの趣趣おもむきにににゆるびゆるびゆるびなきなきなき御御おんなからひなからひなからいかなかなかなととと聞聞きききき居居い給給たまへへえりりり。。。
現代語訳
明け方に、風が少し収まって、村雨のように雨が降り出した。六条院では、離れた建物が倒れたなどと人々が申し上げる。風が吹き荒れる間、広々として、たいそう高い感じのする院に、人々は、それにしてもいらっしゃる。
大臣のいらっしゃるあたりこそ人が多いけれど、東の町などは人が少なくて心細くお思いになったろうと、夕霧は驚きなさって、まだほのぼのと明けるころに参上なさる。道中、横殴りの雨がたいそう冷たく吹き込んでくる。
空の様子もものすごいので、妙に心が浮き立つような気持ちがして、何事だろう、また自分の心に何か思いが加わったのかと思い出すけれど、まったくふさわしくないことであった。ああ、狂おしいことだと、あれこれと思いながら、
東の御方(花散里)にまず参上なさると、怖がって弱りきっていらっしゃったので、あれこれと申し上げてお慰めして、人を呼んで、あちこち修繕すべきことなどを言いつけて、南の御殿に参上なさると、まだ御格子も上げていない。
源氏のいらっしゃる部屋に面した高欄にもたれて見渡すと、築山の木々も吹き倒されて、枝が多く折れ伏している。草むらは言うまでもなく、檜皮や瓦、あちこちの立蔀や透垣などのようなものが散乱している。
日がわずかに差し出したところに、悲しげな庭の露がきらきらとして、空はたいそうものすごく霧が立ちこめているので、何ということもなく涙が落ちるのをぬぐい隠して、咳払いをなさると、
「中将が咳払いをしているようだ。夜はまだ深いだろうに」と言って、源氏はお起きになるようだ。何と申し上げなさったのか、紫の上のお声は聞こえないで、大臣はお笑いになって、「昔さえ経験させ申し上げなかった暁の別れよ。今になって慣れなさるのは、つらいことでしょう」と言って、しばらくお話し申し上げなさる様子が、たいそう趣深い。
女君のお返事は聞こえないけれど、ほのかに、このように冗談を申し上げなさる言葉の調子に、隙のないお仲だなあと、夕霧は聞いていらっしゃった。
意訳
明け方、風が収まり、夕霧は人の少ない東の町を心配して六条院に戻る。紫の上を思う自分の心を打ち消しながら、まず花散里を見舞い、修繕を指示してから、春の町に参上する。
夕霧が荒れた庭を眺めて涙をぬぐい、咳払いをすると、源氏が起き出す。源氏は紫の上に、暁の別れを今になって覚えるのはつらいだろうと戯れ、夕霧は二人の仲睦まじさを聞いている。
語釈・文法注
- 立部
- 立蔀(たてじとみ)。格子の裏に板を張った衝立。屋外に立てて目隠しにした。
文法
- 伝聞の「なる」(こわづくるにぞあなる)
- 「咳払いをしているようだ」。「あるなる」の撥音便無表記。
- 「だに」(古だに知らせ奉らずなりにし)
- 「昔さえ経験させ申し上げなかった」。
解説
野分の過ぎた朝の荒れた庭の描写は、夕霧の乱れた心を映している。夕霧が流す涙は、紫の上への思いと、それを抑えなければならない苦しさの表れでもある。
源氏と紫の上の睦まじい会話を聞く夕霧は、二人の間に入り込む余地のないことを悟る。「ゆるびなき御なからひ」という感想には、夕霧の複雑な思いがにじんでいる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、496–499頁(コマ253–254)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日