源氏物語 第25帖 蛍(6)
花散里との夜
騎射が終わり、人々が帰った後、源氏は花散里のもとに泊まる。源氏が兵部卿宮の人柄を褒めると、花散里は、宮は昔より立派になったが、帥の宮(源氏の異母弟)には品格が劣ると評する。源氏は、花散里の目の確かさに感心するが、人の悪口を言うことを嫌う花散里らしく、それ以上は語らない。今は寝所も別にして、穏やかな夫婦の仲である。花散里は、珍しく騎射の催しがあって、この町が晴れがましくなったことを喜び、菖蒲の歌を詠み、源氏も応える。源氏は寝床を花散里に譲り、几帳を隔てて休む。

- 1舍人舍人とねりどもどもどもののの祿祿ろく品々品々しなじなたまはるたまはるたまわる。。。いたくいたくいたく更更ふけけけててて人々人々びと皆皆みなあかれあかれあかれ給給たまひひいぬぬぬ。。。おとゞおとゞおとどはははこなたこなたこなたににに御殿御殿おおとの籠籠ごもりりりぬぬぬ。。。
- 2物語物語ものがたりなどなどなど聞聞きこえええ給給たまひひいててて、、、「「「兵部卿兵部卿ひょうぶきょうののの宮宮みやののの、、、人人ひとよりよりよりはははこよなくこよなくこよなく物物ものししし給給たまふふうかなかなかな。。。かたちかたちかたちなどなどなどはははすぐれすぐれすぐれねねねどどど用意用意よういけしきけしきけしきなどなどなどいといといとよしよしよしありありあり、、、あいぎやうづきあいぎやうづきあいぎょうずきたるたるたる君君きみなりなりなり。。。忍忍しのびびびててて見見み給給たまひひいつつつややや。。。よしよしよしととといへいへいえどどどなほなほなおこそこそこそあれあれあれ」」」とととのたまふのたまふのたまう。。。
- 3「「「御御おん弟弟おとうとにこそにこそにこそものしものしものし給給たまへへえどどどねびねびねびまさりまさりまさりてててぞぞぞ見見みえええ給給たまひひいけるけるける。。。年年としごろごろごろかくかくかくをりをりおり過過すぐさぐさぐさずずず渡渡わたりりりむつびむつびむつび聞聞きこえええ給給たまふふうととと聞聞きききき侍侍はべれれれどどど、、、昔昔むかしのののうちうちうちわたりわたりわたりにてにてにてほのほのほのみみみ奉奉たてまつりりりししし後後のちおぼつかなしおぼつかなしおぼつかなしかしかしかし。。。いといといとよくよくよくこそこそこそかたちかたちかたちなどなどなどねびねびねびまさりまさりまさり給給たまひひいにににけれけれけれ。。。のののみこみこみこよくよくよく物物ものししし給給たまふふうめれめれめれどどどけはひけはひけわい劣劣おとりりりててて大君大君おおきみののの氣色氣色けしきにににぞぞぞものしものしものし給給たまひひいけるけるける」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、
- 4ふとふとふと見見み知知しりりり給給たまひひいにににけりけりけりとととおぼせおぼせおぼせどどどほゝゑみほゝゑみほほえみててて、、、なほなほなおあるあるあるをををばばば善善よしししともともとも惡惡あしししともともともかけかけかけ給給たまははわずずず、、、人人ひとののの上上うえをををなむなむなんつけつけつけおとしめおとしめおとしめざまざまざまのののことことこといふいふいう人人ひとをををばばばいとほしきいとほしきいとおしきものものものにににししし給給たまへへえばばば、、、
- 5右大將右大將うだいしょうなどなどなどをををだにだにだに心心こころにくきにくきにくき人人ひとにににすすすめるめるめるををを何何なにばかりばかりばかりかかかはははあるあるある。。。近近ちかきききよすがよすがよすがにてにてにて見見みむむんははは飽飽あかかかぬぬぬ事事ことにににやややあらあらあらむむんととと見見み給給たまへへえどどど、、、ことことことにににあらはしあらはしあらわしてててももものたまはのたまはのたまわずずず。。。
- 6今今いまははは唯唯ただ大大おおかたかたかたののの御御おんむつびむつびむつびにてにてにておましおましおましなどなどなどもももことことことことことことにてにてにて大殿大殿おおとのごもるごもるごもる。。。「「「などなどなどてててかくかくかくはなれはなれはなれそめそめそめしししぞぞぞ」」」ととと殿殿とのははは苦苦くるしがりしがりしがり給給たまふふう。。。
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- 8「「「そのそのそのこまこまこまもももすさめすさめすさめぬぬぬ草草くさととと名名なにににたてたてたてるるる汀汀みぎわのののあやめあやめあやめ今日今日きょうやややひきひきひきつるつるつる」」」とととおほどかおほどかおおどかににに聞聞きこえええ給給たまふふう。。。なになになにばかりばかりばかりのののことことことにににもももあらあらあらねねねどどどあはれあはれあわれとととおぼしおぼしおぼしたりたりたり。。。「「「にほどりにほどりにおどりにににかげかげかげをををならぶるならぶるならぶる若若わか駒駒こまはははいついついつかかかあやめあやめあやめにににひきひきひき別別わかるるるべきべきべき」」」。。。あいたちあいたちあいたちなきなきなき御御おん事事ことどもどもどもなりなりなりややや。。。
- 9「「「朝朝あさ夕夕ゆうののの隔隔へだてあるあるあるやうやうようなれなれなれどどど、、、かくかくかくててて見見み奉奉たてまつるるるははは心心こころ安安やすくくくこそこそこそあれあれあれ」」」とととたはぶれごとたはぶれごとたわぶれごとなれなれなれどどどのどやかのどやかのどやかにににおはするおはするおわする人人ひとざまざまざまなれなれなればばば靜靜しずまりまりまりててて聞聞きこえええなしなしなし給給たまふふう。。。
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現代語訳
舎人たちに禄をさまざまにお与えになる。夜がたいそう更けて、人々は皆散っていかれた。大臣(源氏)はこちら(花散里)でお休みになった。
お話などを申し上げなさって、「兵部卿宮は、人よりはこの上なくすぐれていらっしゃるね。容貌などはすぐれていないけれど、心づかいや様子などがたいそう趣があって、魅力のある方だ。こっそりご覧になりましたか。よいと言っても、やはりまだ足りないところがある」とおっしゃる。
花散里は「あなたの弟君でいらっしゃいますが、年上のようにお見えになりました。長年、このように折を逃さず、こちらに参ってお親しくなさっていると聞いておりましたが、昔の宮中のあたりでちらりとお見かけしてからは、はっきりとは存じません。たいそうよく容貌なども立派におなりになったのですね。帥の宮(源氏の異母弟)もご立派でいらっしゃるようですが、様子が劣って、ただの王族といった感じでいらっしゃいました」とおっしゃるので、
源氏は、ちらりと見ただけで見抜きなさったものだとお思いになるけれど、ほほえんで、ほかの人のことは、よいとも悪いともおっしゃらない。人の身の上を、けちをつけて見下すようなことを言う人を、気の毒なものとお思いになっているので、
右大将(髭黒)などをさえ、奥ゆかしい人と世間では言っているようだが、何ほどのことがあろう、身近な縁者として見るには物足りないのではないかとお思いになるけれど、ことさらに表に出してはおっしゃらない。
今はただ、おおよその親しみの仲で、御寝所なども別々にしてお休みになる。「どうしてこのように離れ始めたのだろう」と、殿はつらくお思いになる。
花散里は、おおよそ何やかやとすねたりもなさらず、長年このような折々の催し事を、人づてにばかりお聞きになっていたが、今日珍しいことがあったことだけを、この町の晴れがましい誉れとお思いになっている。
「馬さえも食べない草と名高い水辺の菖蒲を、今日は引いてくださったのでしょうか」とおっとりと申し上げなさる。たいしたことでもないけれど、源氏はしみじみとお思いになった。「かいつぶりのように仲よく影を並べている若駒が、いつ菖蒲と引き別れることがありましょう」。そっけないお二人の歌であることよ。
「朝夕の隔てがあるようだけれど、こうしてお会いするのは気楽です」と、冗談ではあるけれど、のんびりとしていらっしゃるご性分なので、落ち着いてお答えになる。
寝床はお譲り申し上げなさって、御几帳を引き隔ててお休みになる。親しく共寝をするような関係は、たいそう不似合いなことと思い離れ申し上げていらっしゃるようなので、源氏も無理にはお誘いにならない。
意訳
騎射の後、源氏は花散里のもとに泊まる。源氏が兵部卿宮を褒めると、花散里は帥の宮と比べて的確に評し、源氏はその目の確かさに感心する。
今は寝所も別にした穏やかな仲で、花散里は騎射の催しがこの町の誉れとなったことを喜び、菖蒲の歌を詠み交わす。源氏は寝床を譲り、几帳を隔てて休む。
語釈・文法注
- そちのみこ
- 帥の親王。大宰帥に任じられた親王で、源氏の異母弟。兵部卿宮(螢宮)とは別の人物。
文法
- 推定の「める」(心にくき人にすめるを)
- 「奥ゆかしい人と世間では言っているようだが」。
- 疑問の「や」(今日やひきつる)
- 「今日は引いてくださったのでしょうか」。
和歌
そのこまもすさめぬ草と名にたてる汀のあやめ今日やひきつる
- 詠者
- 花散里
- 状況
- 源氏に詠みかけた歌。馬さえも食べない草と名高い水辺の菖蒲(私)を、今日は引いてくださったのでしょうか。
修辞
- 本歌取り
- 「大荒木の森の下草老いぬれば駒もすさめず刈る人もなし」(古今集)による。年老いた自分を、馬も見向きもしない草にたとえる。
にほどりにかげをならぶる若駒はいつかあやめにひき別るべき
- 詠者
- 光源氏
- 状況
- 花散里への返歌。かいつぶりのように仲よく影を並べている若駒(私)が、いつ菖蒲(あなた)と引き別れることがありましょう。
修辞
- 掛詞
- 「ひき」に「(菖蒲を)引き」と「(若駒が)引き別れる」をかける。
解説
花散里は、人の悪口を言わない穏やかな人柄でありながら、宮たちの人物を見抜く鋭い目を持っている。源氏が「ふと見知り給ひにけり」と感心するのも、そのためである。
寝所を別にして穏やかに語り合う源氏と花散里の関係は、男女の愛を超えた信頼で結ばれている。語り手が「あいたちなき御事ども」と評するのも、二人の淡い関係を微笑ましく見ているからである。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、470–471頁(コマ240)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日