源氏物語 第25帖 蛍(5)
騎射の日
源氏は花散里のもとをのぞき、今日の近衛府の騎射の後に夕霧が男たちを連れて来るので、用意するよう伝える。馬場の御殿は夏の町の廊から近く、源氏は若い女房たちに見物を勧める。西の対からも女童たちが見物に来て、渡殿に御簾をかけ、色とりどりの装束で競い合う。午後、親王たちも集まり、近衛の官人たちが騎射を競い、打毬楽や落蹲が奏され、勝負を囃す声が夜まで続く。

- 1殿殿とのははは東東ひんがしののの御御おんかたかたかたにににもももさしさしさし覗覗のぞききき給給たまひひいててて、、、「「「中將中將ちゅうじょうののの今日今日きょうのののつかさつかさつかさののの手手てのののついでついでついでにににをのこをのこおのこどもどもども引引ひきききつれつれつれててて物物ものすすすべきべきべきさまさまさまにににいひいひいいしししををを、、、さるさるさる心心こころししし給給たまへへえ。。。まだまだまだあかきあかきあかき程程ほどにににきききなむなむなんものものものぞぞぞ。。。
- 2あやしくあやしくあやしくこゝこゝここにににはははわざとわざとわざとならならならずずず忍忍しのぶるぶるぶるとととをををももも、、、このこのこのみこみこみこたちたちたちののの聞聞ききききつけつけつけてててとぶらひとぶらひとぶらいものしものしものし給給たまへへえばばば、、、おのづからおのづからおのずからことごとしくことごとしくことごとしくなむなむなんあるあるあるををを、、、用意用意よういししし給給たまへへえ」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまふふう。。。うまうまうま塲塲ばのののおとゞおとゞおとどはははこなたこなたこなたののの廊廊ろうよりよりより見見みとほすとほすとおすほどほどほど遠遠とおからからからずずず。。。
- 3「「「若若わかききき人々人々びと、、、わたどのわたどのわたどのゝゝの戶戶とあけあけあけててて物物もの見見みよよよややや。。。左左ひだりのののつかさつかさつかさにににいといといとよしよしよしあるあるある官官かん人人にん多多おおかるかるかる頃頃ころなりなりなり、、、せうせうせうせうしょうしょうののの殿上人殿上人てんじょうびとににに劣劣おとるるるまじまじまじ」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、物物もの見見みむむんことことことをををいといといとをかしをかしおかしととと思思おもへへえりりり。。。
- 4たいたいたいののの御御おん方方かたよりよりよりもももわらはべわらはべわらわべなどなどなど物物もの見見みににに渡渡わたりりり來來きててて、、、廊廊ろうののの戶戶と口口ぐちにににみすみすみす靑靑あおやかやかやかににに懸懸かけけけ渡渡わたしししててて今今いまめきめきめきたるたるたるすそごすそごすそごののの御御おん几帳几帳きちょうどもどもども立立たてててわたしわたしわたし、、、わらはわらはわらわしもづかへしもづかへしもづかえなどなどなどさまよふさまよふさまよう。。。
- 5さうぶさうぶそうぶがさねがさねがさねのののあこめあこめあこめふだあゐふだあゐふたあいのののうすものうすものうすものゝゝの汗衫汗衫かざみ着着きたるたるたるわらはべわらはべわらわべぞぞぞ西西にしののの對對たいのののなななめるめるめる。。。このましくこのましくこのましくなれなれなれたるたるたるかぎりかぎりかぎり四四よ人人たり、、、しもづかへしもづかへしもづかえはははあふちあふちおうちのののすそごすそごすそごののの裳裳も、、、なでしこなでしこなでしこののの若若わか葉葉ばののの色色いろしししたるたるたるからからからぎぬぎぬぎぬ今日今日きょうのののよそひよそひよそいどもどもどもなりなりなり。。。
- 6こなたこなたこなたのののははは濃濃こききき單單ひとえがさねがさねがさねににになでしこなでしこなでしこがさねがさねがさねののの汗衫汗衫かざみなどなどなどおほどかおほどかおおどかにてにてにておのおのおのおのおのおのいどみいどみいどみ顏顏がおなるなるなるもてなしもてなしもてなし見見み所所どころありありあり若若わかやかやかやかなるなるなる殿上人殿上人てんじょうびとなどなどなどはははめめめをををたてたてたてつゝつゝつつけしきばむけしきばむけしきばむ。。。
- 7ひつじひつじひつじののの時時ときばかりばかりばかりににに、、、馬馬うま塲塲ばのののおとゞおとゞおとどににに出出いででで給給たまひひいててて、、、げにげにげにみこみこみこたちたちたちおはしおはしおわしつどひつどひつどいたりたりたり。。。てつがひてつがひてつがいのののおほやけおほやけおおやけごとごとごとにににはははさまさまさま變變かわりりりてててすけすけすけたちたちたちかきかきかきつれつれつれ參參まいりりりててて、、、さまさまさまことことことににに今今いまめかしくめかしくめかしく遊遊あそびびび暮暮くらししし給給たまふふう。。。
- 8女女おんなははは何何なにのののあやめあやめあやめももも知知しらららぬぬぬことことことなれなれなれどどど、、、舍人舍人とねりどもどもどもさへさへさへえんえんえんなるなるなるさうぞくさうぞくそうぞくをををつくしつくしつくしててて、、、身身みをををなげなげなげたるたるたる手手て惑惑まどはしはしわしなどなどなどををを見見みるるるぞぞぞをかしかりをかしかりおかしかりけるけるける南南みなみののの町町まちもももとほしとほしとおしてててはるばるはるばるはるばるとととあれあれあればばば、、、あなたあなたあなたにににもももかやうかやうかようののの若若わかききき人人ひとどもどもどもははは見見みけりけりけり。。。
- 9たぎうらくたぎうらくたぎゅうらく、、、などなどなど遊遊あそびびびてててかちかちかちまけまけまけのののらんざうらんざうらんぞうどもどもどものゝしるのゝしるののしるももも、、、夜夜よににに入入いりりりはてはてはてゝゝて何事何事なにごとももも見見みえええずずずなりなりなりはてはてはてぬぬぬ。。。
現代語訳
殿は東の御方(花散里)にもおのぞきになって、「中将が、今日の近衛府の手結のついでに、男たちを引き連れて来るようなことを言っていたから、そのつもりでいてください。まだ明るいうちに来るだろう。
不思議なことに、ここではわざわざでなく内輪にしていることも、親王たちが聞きつけて訪ねていらっしゃるので、自然と大げさになるのだから、用意をしてください」などと申し上げなさる。馬場の御殿は、こちらの廊から見通せるほど遠くない。
「若い女房たち、渡殿の戸を開けて見物しなさい。左近衛府には、たいそう趣のある官人が多いころだ。並の殿上人にも劣るまい」とおっしゃるので、見物することをたいそう楽しみに思っている。
対の御方(玉鬘)からも、女童などが見物にやって来て、廊の戸口に御簾を青々と掛け渡し、今風の裾濃の御几帳などを立て並べて、女童や下仕えなどが行き来している。
菖蒲襲の衵に、二藍の薄物の汗衫を着た女童が、西の対の者らしい。好ましく、もの慣れた者ばかり四人で、下仕えは楝の裾濃の裳に、撫子の若葉の色の唐衣が、今日の装いである。
こちら(花散里)の女童は、濃い単襲に撫子襲の汗衫などを着て、おっとりとしていて、それぞれ張り合っている様子が見どころがある。若々しい殿上人などは、目をとめては気どっている。
未の刻ごろに、源氏は馬場の御殿にお出ましになると、本当に親王たちが集まっていらっしゃった。手結の公事とは様子が変わって、次官たちが連れ立って参上して、格別に今風に遊び暮らしなさる。
女は何の区別もわからないことだけれど、舎人たちまで優美な装束を尽くして、身を投げ出すように馬上で技を競い合う様子などを見るのが面白かった。南の町まで通して、はるばると見渡せるので、あちらでもこのような若い女房たちは見物していた。
打毬楽や落蹲などを奏して、勝ち負けの乱声などで大騒ぎするのも、夜にすっかり入ってしまって、何も見えなくなってしまった。
意訳
源氏は花散里に、夕霧が騎射の後に男たちを連れて来るので用意するよう伝える。源氏は若い女房たちに見物を勧め、西の対や東の対の女童たちが色とりどりの装束で集まる。
午後、親王たちも集まり、近衛の官人たちが騎射を競い、打毬楽や落蹲が奏され、勝負を囃す声が夜まで続く。
語釈・文法注
- 手つがひ
- 手結(てつがい)。騎射や射礼の前に行う予行演習。五月の節会に先立ち、近衛府の官人たちが馬場で騎射を競った。
- たぎうらく、らくそん
- 打毬楽(たぎゅうらく)と落蹲(らくそん)。いずれも舞楽の曲名。騎射の勝負の際に奏された。
文法
- 推量の「なむ」(まだあかき程にきなむものぞ)
- 「きっと来るだろう」。強意の「ぬ」に推量の「む」。
- 推定の「なめる」(西の對のなめる)
- 「西の対の者のようだ」。「なるめる」の撥音便無表記。
解説
端午の節句の騎射の場面は、六条院の夏の町の華やかさを描く。女童たちの色とりどりの装束の描写は、源氏物語の色彩感覚の豊かさをよく示している。
西の対(玉鬘)の女童と、東の対(花散里)の女童とが、互いに装いを競い合う様子は、六条院の女君たちの間のささやかな張り合いを映している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、468–471頁(コマ239–240)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日