源氏物語 第25帖 蛍(4)
端午の節句
五月五日、源氏は馬場の御殿に出るついでに玉鬘を訪ね、宮は夜更かししたかと尋ねて、あまり親しくするなと、褒めたりけなしたりしながら戒める。その姿はいつまでも若く美しく、玉鬘も、思うことがなければ素晴らしい人だと思う。宮から菖蒲の根に結んだ歌が届き、源氏は返事を勧めて出ていく。玉鬘は、宮の浅い思いをたしなめる歌を返す。宮は、筆跡にもう少し趣があればと思う。薬玉などが方々から届き、玉鬘は、同じことなら人に傷つけられることなく終わりたいと願う。

- 1五日五日いつかにににはははうまうまうま塲塲ばのののおとゞおとゞおとどににに出出いででで給給たまひひいけるけるけるついでついでついでににに渡渡わたりりり給給たまへへえりりり。。。「「「いかにいかにいかにぞぞぞややや、、、宮宮みやははは夜夜よやややふかしふかしふかし給給たまひひいしししいたくいたくいたくもももならしならしならし聞聞きこえええじじじ。。。煩煩わずらはしきはしきわしきけけけそひそひそい給給たまへへえるるる人人ひとぞぞぞややや。。。人人ひとののの心心こころやぶりやぶりやぶり物物もののののあやまちあやまちあやまちすすすまじきまじきまじき人人ひとはははかたくかたくかたくこそこそこそありありありけれけれけれ」」」などなどなど、、、
- 2いけいけいけみみみ殺殺ころしししみみみ誡誡いましめめめおはするおはするおわする御御おんさまさまさまつきせつきせつきせずずず若若わかくくく淸淸きよげげげににに見見みえええ給給たまふふう。。。つやつやつやももも色色いろもももこぼるこぼるこぼるばかりばかりばかりなるなるなる御御おんぞぞぞににに薄薄うすききき御御おん直衣直衣なおしはかなくはかなくはかなく重重かさなれれれるるるあはひあはひあわいもももいづこいづこいずこににに加加くわはれはれわれるるる淸淸きよらららにににかかかあらあらあらむむん、、、このこのこの世世よののの人人ひとののの染染そめめめ出出いだしししたるたるたるととと見見みえええずずず。。。
- 3常常つねののの色色いろもももかへかへかへぬぬぬあやめあやめあやめももも今日今日きょうははは珍珍めずらからからかにににをかしうをかしうおかしゅうおぼゆるおぼゆるおぼゆる。。。かをりかをりかおりなどなどなどももも思思おもふふうことことことなくなくなくはははをかしかりをかしかりおかしかりぬぬぬべきべきべき御御おん有樣有樣ありさまかなかなかなととと姫君姫君ひめぎみはははおぼすおぼすおぼす。。。
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- 5ためしためしためしにににもももひきひきひき出出いでででつつつべきべきべき根根ねににに結結むすびびびつけつけつけ給給たまへへえれれればばば、、、今日今日きょうののの御御おん返返かえりりりなどなどなどそゝのかしそゝのかしそそのかし置置おきききててて出出いででで給給たまひひいぬぬぬ。。。
- 6これかれこれかれこれかれももも「「「なほなほなお」」」ととと聞聞きこゆれゆれゆればばば御心御心みこころにににもももいかゞいかゞいかがおぼしおぼしおぼしけむけむけん、、、「「「あらはれあらはれあらわれててていとゞいとゞいとど淺淺あさくくくももも見見みゆるゆるゆるかなかなかなあやめあやめあやめもももわかわかわかずずず流流ながれれれけるけるけるねねねのののわかわかしくわかわかしくわかわかしく」」」とととばかりばかりばかりほのかほのかほのかにににぞぞぞあああめるめるめる。。。手手てををを今今いま少少すこしししゆゑづけゆゑづけゆえずけたらたらたらばばばととと、、、宮宮みやははは好好このましきましきましき御心御心みこころににに聊聊いささか飽飽あかかかぬぬぬことことことゝゝと見見み給給たまひひいけむけむけんかしかしかし。。。
- 7くすくすくすなどなどなどえならえならえならぬぬぬさまさまさまにてにてにて所々所々ところどころよりよりより多多おおかりかりかり。。。おぼしおぼしおぼし沈沈しずみみみつるつるつる年年としごろごろごろののの名殘名殘なごりなきなきなき御御おん有樣有樣ありさまにてにてにて心心こころゆるびゆるびゆるび給給たまふふうことことことももも多多おおかるかるかるににに、、、同同おなじくじくじくははは人人ひとののの傷傷きずつくつくつくばかりばかりばかりのののことことことなくなくなくてててももも止止やみみみにににしししがががなななととといかゞいかゞいかがおぼさおぼさおぼさゞらゞらざらむむん。。。
現代語訳
五日には、馬場の御殿にお出ましになったついでに、玉鬘の所においでになった。「どうでしたか。宮は夜更かしなさったか。あまり親しくし申し上げますまい。厄介な性分が加わっている人ですよ。人の心を傷つけたり、間違いを起こしたりしない人は、めったにいないものだ」などと、
褒めたりけなしたりしながら戒めていらっしゃるご様子は、いつまでも若々しく美しくお見えになる。つやも色もこぼれるほどのお召し物に、薄い御直衣をさりげなく重ねた色合いも、どこから加わった美しさなのだろうか、この世の人が染め出したものとも見えない。
いつもの色と変わらない菖蒲襲も、今日は珍しく趣深く思われる。香りなども、思い悩むことがなかったら、すばらしいはずのご様子だなあと、姫君はお思いになる。
宮からお手紙がある。白い薄様に、ご筆跡はたいそう趣深くお書きになっている。見ている間は面白かったけれど、口まねして語ると、たいしたこともないことだ。「菖蒲を引く今日でさえ、引く人もなく水に隠れて生える菖蒲の根のように、私は声をあげて泣くばかりなのでしょうか」。
例にも引き出しそうなほど長い根に結びつけていらっしゃったので、源氏は、今日のお返事などを勧めておいてお出になった。
女房たちも「やはりお返事を」と申し上げるので、お心にもどうお思いになったのか、「表に現れて、いっそう浅く見えることです。わけもわからず流れて泣くというあなたの根は。子どもっぽいこと」とだけ、ほのかに書いてあるようだ。筆跡がもう少し趣があったらと、宮は風流好みのお心から、少し物足りないこととご覧になったことだろう。
薬玉などが、見事な様子で、あちこちからたくさん届いた。思い沈んでいらっしゃった長年の名残もないご様子で、心がくつろぎなさることも多いので、同じことなら、人に傷つけられるようなこともなく終わりたいものだと、どうしてお思いにならないことがあろうか。
意訳
五月五日、源氏は玉鬘を訪ね、宮とあまり親しくするなと、褒めたりけなしたりしながら戒める。その姿は若く美しく、玉鬘も、思うことがなければ素晴らしい人だと思う。
宮から菖蒲の根に結んだ歌が届き、玉鬘は、宮の浅い思いをたしなめる歌を返す。薬玉などが方々から届き、玉鬘は、同じことなら人に傷つけられることなく終わりたいと願う。
語釈・文法注
- くす玉
- 薬玉。麝香や沈香などの香料を錦の袋に入れ、菖蒲や蓬などで飾り、五色の糸を長く垂らしたもの。端午の節句に贈り合い、柱などに掛けて邪気を払った。
文法
- 推量の「けむ」(見給ひけむかし)
- 過去推量。「ご覧になったことだろうよ」。
- 反語の「いかゞ…ざらむ」(いかゞおぼさゞらむ)
- 「どうしてお思いにならないことがあろうか、いや、お思いになる」。
和歌
今日さへやひく人もなきみがくれに生ふるあやめのねのみながれむ
- 詠者
- 兵部卿宮(螢宮)
- 状況
- 端午の節句に玉鬘に贈った歌。菖蒲を引く今日でさえ、引く人もなく水に隠れて生える菖蒲の根のように、私は声をあげて泣くばかりなのでしょうか。
修辞
- 掛詞
- 「ね」に「(菖蒲の)根」と「音(泣く声)」をかける。「ながれ」に「流れ」と「泣かれ」をかける。
あらはれていとゞ淺くも見ゆるかなあやめもわかず流れけるねの
- 詠者
- 玉鬘
- 状況
- 宮への返歌。表に現れて、いっそう浅く見えることです。わけもわからず流れて泣くというあなたの根(音)は。
修辞
- 掛詞
- 「あやめ」に「菖蒲」と「文目(物の道理)」をかける。
解説
端午の節句には、菖蒲の根の長さを競ったり、薬玉を贈り合ったりした。宮が長い菖蒲の根に歌を結んで贈ったのも、節句にちなんだ風流である。
玉鬘は、源氏の美しさを認めながらも、その求愛には悩み続けている。「人の傷つくばかりのことなくても止みにしがな」という願いには、穏やかに暮らしたいという玉鬘の切実な思いが込められている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、468–469頁(コマ239)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日