源氏物語 第25帖 蛍(3)
宮の歌と玉鬘の嘆き
宮は、薄物の帷子の隙間から、ほのかな螢の光に照らされた玉鬘のすらりとした姿を垣間見て、深く心ひかれ、螢の思いを詠んだ歌を贈る。玉鬘は、声もなく身を焦がす螢こそ深い思いだと素早く返歌して、奥に引きこもる。宮は夜深く帰っていき、女房たちは宮の優美さを褒める。女房たちは源氏の心づかいをありがたがるが、玉鬘は、実の親に知られていれば、源氏の求愛も似つかわしくないことではなかったろうにと嘆く。源氏も、玉鬘を軽く扱うつもりはないが、人目につけば疑われそうな振る舞いもまじる。

- 1ははは人人ひとのののおはするおはするおわする程程ほどさばかりさばかりさばかりととと推推おしししはかりはかりはかり給給たまふふうががが、、、少少すこしししけぢかきけぢかきけじかき御御おんけはひけはひけわいするするするににに、、、御心御心みこころ時時ときめきめきめきせせせられられられ給給たまひひいてててえならえならえならぬぬぬうすものうすものうすものゝゝのかたびらかたびらかたびらのののひまひまひまよりよりより見見み入入いれれれ給給たまへへえるるるににに、、、ひとひとひとまままばかりばかりばかり隔隔へだてててたるたるたる見見み渡渡わたしししにににかくかくかくおぼえおぼえおぼえなきなきなき光光ひかりのののうちうちうちほのめくほのめくほのめくををををかしをかしおかしととと見見み給給たまふふう。。。
- 2程程ほどもももなくなくなくまぎらはしまぎらはしまぎらわしてててかくしかくしかくしつつつ。。。されどされどされどほのかほのかほのかなるなるなる光光ひかりえんえんえんなるなるなることことことのののつまつまつまにににもももしししつつつべくべくべく見見みゆゆゆ。。。ほのかほのかほのかなれなれなれどどどそびやかそびやかそびやかににに臥臥ふししし給給たまへへえりりりつるつるつるやうだいやうだいようだいのののをかしかりをかしかりおかしかりつるつるつるををを飽飽あかかかずずずおぼしおぼしおぼしててて、、、げにげにげにあああのののごとごとごと御心御心みこころにににしみしみしみにににけりけりけり
- 3「「「なくなくなく聲聲こえももも聞聞きこえええぬぬぬ蟲蟲むしのののおもひおもひおもいだにだにだに人人ひとのののけつけつけつにににはははきゆるきゆるきゆるものものものかかかははは。。。思思おもひひい知知しりりり給給たまひひいぬぬぬややや」」」ととと聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 4かやうかやうかようののの御御おん返返かえしししををを思思おもひひいまはさまはさまわさむむんもももねぢけねぢけねじけたれたれたればばば、、、ときときときはかりはかりはかりをををぞぞぞ、、、「「「聲聲こえはははせせせででで身身みをををのみのみのみこがすこがすこがす螢螢ほたるこそこそこそいふいふいうよりよりよりまさるまさるまさる思思おもひひいなるなるなるらめらめらめ」」」などなどなどはかなくはかなくはかなく聞聞きこえええなしなしなしててて、、、御御おんみづからみづからみずからはははひきひきひきいりいりいり給給たまひひいにににけれけれければばば、、、いといといと遙遙はるかにににもてもてもてなしなしなし給給たまふふううれはしさうれはしさうれわしさをををいみじくいみじくいみじく恨恨うらみみみ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 5すきずきしきすきずきしきすきずきしきやうやうようなれなれなればばば居居い給給たまひひいもももあかさあかさあかさででで、、、軒軒のきののの雫雫しずくももも苦苦くるしししさささにににぬれぬれぬれぬれぬれぬれ夜夜よ深深ぶかくくく出出いででで給給たまひひいぬぬぬ時鳥時鳥ほととぎすなどなどなど必必かならずずず打打うちちち鳴鳴なきききけむけむけんかしかしかし。。。うるさけれうるさけれうるさければばばえええこそこそこそ聞聞ききききもももとゞめとゞめとどめねねね。。。
- 6「「「御御おんけはひけはひけわいなどなどなどのののなまめかしさなまめかしさなまめかしさはははいといといとよくよくよくおとゞおとゞおとどののの君君きみににに似似に奉奉たてまつりりり給給たまへへえりりり」」」ととと人々人々びともももめでめでめで聞聞きこえええけりけりけり。。。よべよべよべいといといとめめめおやおやおやだちだちだちててて繕繕つくろひひい給給たまひひいししし御御おんけはひけはひけわいををを、、、うちうちうちうちうちうちははは知知しらららででで「「「あはれあはれあわれにににかたじけなしかたじけなしかたじけなし」」」ととと皆皆みないふいふいう
- 7姫君姫君ひめぎみはははかくかくかくさすがさすがさすがなるなるなる御御おんけしきけしきけしきををを、、、我我わがががみづからみづからみずからのののうさうさうさぞぞぞかしかしかし、、、親親おやなどなどなどににに知知しららられれれ奉奉たてまつりりり、、、世世よののの人人ひとめきめきめきたるたるたるさまさまさまにてにてにてかやうかやうかようなるなるなる心心こころばへばへばえならならならましかましかましかばばば、、、などなどなどいといといと似似にげなくげなくげなくもももあらあらあらましましまし、、、人人ひとににに似似にぬぬぬ有樣有樣ありさまこそこそこそ遂遂ついににに世世よがたりがたりがたりにににやややならならならむむんとととおきおきおきふしふしふしおぼしおぼしおぼしなやむなやむなやむ。。。
- 8さるはさるはさるは誠誠まことにににゆかしげゆかしげゆかしげなきなきなきさまさまさまにににはははもてもてもてなしなしなしはてはてはてじじじとととおとゞおとゞおとどはははおぼしおぼしおぼしけりけりけり
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- 10このこのこの君君きみははは人人ひとののの御御おんさまさまさまもももけけけ近近じかくくく今今いまめきめきめきたるたるたるににに、、、おのづからおのづからおのずから思思おもひひい忍忍しのびびび難難がたきききににに、、、をりをりをりをりおりおり人人ひと見見み奉奉たてまつりりりつけつけつけばばば疑疑うたがひひいおひおひおいぬぬぬべきべきべき御御おんもてなしもてなしもてなしなどなどなどうちうちうちまじるまじるまじるわざわざわざなれなれなれどどど、、、ありがたくありがたくありがたくおぼしおぼしおぼし返返かえしししつゝつゝつつさすがさすがさすがなるなるなる御御おん中中なかなりなりなりけりけりけり
現代語訳
宮は、姫君のいらっしゃる場所をそのあたりと推し量っていらっしゃったが、少し近い様子がするので、お心がときめいて、見事な薄物の帷子の隙間からのぞきなさると、一間ほど隔てた見通しの所に、このように思いがけない光がほのかに見えるのを、趣深いとご覧になる。
まもなく紛らわして隠してしまった。けれど、ほのかな光は、優美な恋のきっかけにもしてしまえそうに見える。ほのかではあったけれど、すらりと横になっていらっしゃった姿の美しかったのを、飽き足りなくお思いになって、本当にあのように、お心にしみてしまった。
「鳴く声も聞こえない螢の思いの火でさえ、人が消そうとして消えるものでしょうか。思い知りなさいましたか」と申し上げなさる。
このようなお返事を思いめぐらすのもひねくれているので、すばやさだけを取り柄に、「声を立てずに、ただ身を焦がしている螢こそ、口に出して言うよりもまさる深い思いなのでしょう」などと、さりげなく申し上げて、ご自分は奥に引っ込んでしまわれたので、宮は、たいそうよそよそしくお扱いになるつらさを、ひどくお恨み申し上げなさる。
好色めいているので、座って夜明かしもなさらず、軒の雫もつらいほどに濡れながら、夜深くお帰りになった。時鳥なども、きっと鳴いたことだろう。煩わしいので、聞きとめてもいない。
「宮のご様子の優美さは、たいそうよく大臣の君に似ていらっしゃる」と、女房たちもほめ申し上げた。昨夜、たいそう母親めいて身づくろいなさった源氏のご様子を、内情は知らずに、「しみじみと、もったいない」と皆言う。
姫君は、このように、さすがにただならぬ源氏のご様子を、自分自身のつらい運命なのだ、実の親などに知られ申し上げて、世間並みの様子で、このようなお心を受けるのであったら、どうしてそれほど似つかわしくないこともあろう、人と違う身の上こそ、ついには世間の語り草になるのではないかと、寝ても覚めても思い悩んでいらっしゃる。
とはいえ、本当に見苦しい扱いでは終わらせまいと、大臣はお思いになっていた。
やはりそのようなご性分なので、中宮なども、それほどきちんとした思いでばかりお思い申し上げていらっしゃるだろうか。何かにつけて、ただならぬ思いをほのめかして心を動かそうとなさるけれど、高貴な方への及びがたさに、面倒で、身を入れて表に出し申し上げることはなさらないが、
この君は、人柄も親しみやすく今風なので、自然と思い忍びがたくて、折々、人が見つけたら疑いを受けそうなお振る舞いなどがまじることもあるけれど、めったにないほど思い直されながら、さすがに一線を越えないお仲であった。
意訳
宮は、螢の光に照らされた玉鬘の姿を垣間見て深く心ひかれ、螢の思いを詠んだ歌を贈る。玉鬘は、声もなく身を焦がす螢こそ深い思いだと返歌して、奥に引きこもる。宮は夜深く帰っていく。
女房たちは源氏の心づかいをありがたがるが、玉鬘は、実の親に知られていればと、わが身の運命を嘆く。源氏も、人目につけば疑われそうな振る舞いを思い直しながら、一線を越えずにいる。
語釈・文法注
- 螢兵部卿宮
- この巻の螢の場面から、兵部卿宮は後世「螢兵部卿宮」「螢宮」と呼ばれる。源氏の異母弟で、風流人として知られる。
文法
- 反語の「ものかは」(きゆるものかは)
- 「消えるものだろうか、いや、消えはしない」。
- 推量の「けむ」(打ち鳴きけむかし)
- 過去推量。「鳴いたことだろうよ」。
和歌
なく聲も聞えぬ蟲のおもひだに人のけつにはきゆるものかは
- 詠者
- 兵部卿宮(螢宮)
- 状況
- 螢の光に玉鬘の姿を垣間見て詠んだ歌。鳴く声も聞こえない螢の思いの火でさえ、人が消そうとして消えるものでしょうか。まして私の恋の火は消えません。
修辞
- 掛詞
- 「おもひ」の「ひ」に「火」をかける。
聲はせで身をのみこがす螢こそいふよりまさる思ひなるらめ
- 詠者
- 玉鬘
- 状況
- 宮への返歌。声を立てずに、ただ身を焦がしている螢こそ、口に出して言うよりもまさる深い思いなのでしょう。
修辞
- 掛詞
- 「思ひ」の「ひ」に「火」をかける。口に出して思いを訴える宮を、やんわりとかわす。
解説
宮の歌と玉鬘の返歌は、螢の「火」と恋の「思ひ」を重ねた贈答である。玉鬘は、口に出して思いを訴える宮に対し、声を立てない螢の思いこそ深いと返して、宮の求愛をかわす。
玉鬘は、源氏の求愛を、実の親子でないという「人に似ぬ有樣」ゆえの苦しみとして受け止める。自分の素性が明かされないまま、源氏と求婚者たちの間で揺れる玉鬘の孤独が描かれる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、466–469頁(コマ237–239)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日