源氏物語 第25帖 蛍(2)
螢の光
玉鬘は東面に引きこもって休んでいたが、源氏は、宮をあまりに冷たく扱うのはよくない、もう少し近くで応対せよと諫める。源氏が入ってきそうなので、玉鬘は母屋の端の几帳のもとに出て横になる。源氏はそっと寄って、几帳の帷子を一枚かけたと同時に、夕方から薄い布に包んで隠しておいた多くの螢を放つ。急に明るく光ったので、玉鬘は驚いて扇で顔を隠すが、その横顔はたいそう美しい。源氏は、宮に玉鬘の姿を見せて心を惑わせようと企んだのである。源氏はそっと別の方から帰っていく。

- 1姫君姫君ひめぎみははは東東ひんがしおもておもておもてにににひきひきひき入入いりりりててて大殿籠大殿籠おおとのごもりりりにににけるけるけるををを、、、宰相宰相さいしょうののの君君きみののの御御おんせうそこせうそこしょうそこ傳傳つたへへえにににゐざりゐざりいざり入入いりりりたるたるたるにににつけつけつけててて
- 2「「「いといといとあまりあまりあまりあつかはしきあつかはしきあつかわしき御御おんもてなしもてなしもてなしなりなりなり萬萬よろずののの事事ことざまざまざまににに隨隨したがひひいてててこそこそこそめやすけれめやすけれめやすけれ。。。ひたぶるひたぶるひたぶるににに若若わかびびび給給たまふふうべきべきべきさまさまさまにににもももあらあらあらずずず。。。このこのこの宮宮みや達達たちをををさへさへさへさしさしさし放放はなちちちたるたるたる人人ひとづてづてずてににに聞聞きこえええ給給たまふふうまじきまじきまじきことことことなりなりなりかしかしかし。。。御御おん聲聲こえこそこそこそ惜惜おしみみみ給給たまふふうともともとも少少すこしししけけけ近近じかくくくだにだにだにこそこそこそ」」」などなどなど諫諫いさめめめ聞聞きこえええ給給たまへへえどどど、、、
- 3いといといとわりなくわりなくわりなくててて、、、ことことことつけつけつけてててもももはひはひはい入入いりりり給給たまひひいぬぬぬべきべきべき御御み心心こころばへばへばえなれなれなればばば、、、とざまとざまとざまかうざまかうざまこうざまににに侘侘わびしけれしけれしければばばすべりすべりすべり出出いでででゝゝて、、、もやもやもやのののきはきはきわなるなるなる御御おん几帳几帳きちょうのののもともともとにににかたはらかたはらかたわらふしふしふし給給たまへへえりりり
- 4何何なにくれくれくれととと事事こと長長ながききき御御おんいらへいらへいらえ聞聞きこえええ給給たまふふう事事こともももなくなくなく思思おぼしししやすらふやすらふやすらうににに寄寄よりりり給給たまひひいててて御御おん几帳几帳きちょうのののかたびらかたびらかたびらをををひとへひとへひとえうちうちうちかけかけかけ給給たまふふうにににあはせあはせあわせててて、、、さとさとさと光光ひかるるるものものものをををさしさしさし出出いでででたるたるたるかかかとととあきれあきれあきれたりたりたり
- 5螢螢ほたるをををうすきうすきうすきかたかたかたにににこのこのこの夕夕ゆうつつつ方方かたいといといと多多おおくくく包包つつみみみおきおきおきててて光光ひかりをををつゝみつゝみつつみ隱隱かくししし給給たまへへえりりりけるけるけるををを、、、さりげなくさりげなくさりげなくとかくとかくとかくひきひきひきつくろふつくろふつくろうやうやうようにてにてにて俄俄にわかにににかくかくかくけちえんけちえんけちえんににに光光ひかれれれるるるににに、、、あさましくあさましくあさましくててて扇扇おうぎをををさしさしさし隱隱かくししし給給たまへへえるるるかたはらめかたはらめかたわらめいといといとをかしげをかしげおかしげなりなりなり
- 6おどろおどろしきおどろおどろしきおどろおどろしき光光ひかり見見みえええばばば宮宮みやももも覗覗のぞききき給給たまひひいなむなむなん。。。我我わがががむすめむすめむすめとととおぼすおぼすおぼすばかりばかりばかりのののおぼえおぼえおぼえにににかくかくかくまでまでまでのたまふのたまふのたまうなななめりめりめり。。。人人ひとざまざまざまかたちかたちかたちなどなどなどいといといとかくかくかくしもしもしもぐしぐしぐしたらたらたらむむんとととはははえええ推推おしししはかりはかりはかり給給たまははわじじじ。。。いといといとよくよくよくすきすきすき給給たまひひいぬぬぬべきべきべき心心こころ惑惑まどはさはさわさむむんととと構構かまへへえありきありきありき給給たまふふうなりなりなりけりけりけり。。。
- 7まことまことまことののの我我わががが姫君姫君ひめぎみをををばばばかくかくかくしもしもしももてもてもて騷騷さわぎぎぎ給給たまははわじじじ。。。うたてうたてうたてあるあるある御心御心みこころなりなりなりけりけりけり。。。ことことことかたかたかたよりよりよりやをらやをらやおらすべりすべりすべり出出いでででゝゝて渡渡わたりりり給給たまひひいぬぬぬ。。。
現代語訳
姫君は東面に引き下がってお休みになっていたが、宰相の君が宮のお言葉を取り次ぎにいざって入ったのにつけて、源氏は
「あまりにもうっとうしいお扱いだ。何事も場合に応じてこそ見苦しくないものです。ひたすら子どもっぽくふるまいなさるべきお年でもない。この宮たちまでも遠ざけて、人づてにお返事なさるべきではないのですよ。お声こそ惜しみなさっても、せめて少し近くにでも」などと、お諫め申し上げなさるけれど、
玉鬘はたいそう困って、源氏がそれにかこつけて入ってきかねないご様子なので、どちらにしてもつらいので、すべり出て、母屋の端の御几帳のもとに、横になっていらっしゃった。
宮が何やかやと長々とおっしゃるお言葉にも、お返事を申し上げなさることもなく、ためらっていらっしゃるところに、源氏が寄っていらっしゃって、御几帳の帷子を一枚お掛けになると同時に、さっと光るものが、紙燭を差し出したのかとあきれるほどであった。
螢を薄い布に、この夕方たくさん包んでおいて、光を包み隠していらっしゃったのを、さりげなく、あれこれと身づくろいするようにして、急にこのようにはっきりと光らせたので、玉鬘はあきれて扇で顔を隠していらっしゃる横顔が、たいそう美しい。
驚くほどの光が見えたら、宮もおのぞきになるだろう。自分の娘とお思いになる程度の評判で、これほどまでおっしゃるのだろう。人柄や容貌などが、これほどまで整っているとは、とてもお推し量りにはなれまい。たいそうよく恋をしそうな宮の心を惑わそうと、たくらんで動き回っていらっしゃるのであった。
本当の自分の姫君なら、これほどまで騒ぎ立てはなさるまい。困ったお心であるよ。源氏は別の方からそっとすべり出て、お帰りになった。
意訳
源氏は、宮を冷たく扱う玉鬘を諫める。源氏が入ってきそうなので、玉鬘は几帳のもとに出て横になる。源氏はそっと寄って、隠しておいた多くの螢を放ち、その光で玉鬘の姿を宮に見せる。
驚いて扇で顔を隠す玉鬘の横顔は美しい。源氏は、宮の心を惑わせようと企んだのであった。語り手は、実の娘ならこんなことはしないだろうと、源氏の心を皮肉る。
語釈・文法注
- しそく
- 紙燭。松の木を細く削って先に油を塗り、手元を照らす照明具。紙を巻いて持ち手とした。
文法
- 推量の「なむ」(宮も覗き給ひなむ)
- 「きっとおのぞきになるだろう」。強意の「ぬ」に推量の「む」。
- 草子地(うたてある御心なりけり)
- 語り手の批評。「困ったお心であるよ」。
解説
螢の光で玉鬘の姿を照らし出す場面は、源氏物語の中でも特に印象深い場面の一つで、巻名の由来となっている。源氏は、宮に玉鬘の美しさを見せつけて、その心を惑わせようとする。
語り手は、実の娘ならこんなことはしないと源氏を批判する。親を装いながら、玉鬘をめぐる男たちの恋を演出して楽しむ源氏の屈折した心理が浮き彫りになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、466–467頁(コマ237)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日