源氏物語 第24帖 胡蝶(11)
添い臥しの夜
このような折はめったにないので、源氏は思い切って、柔らかな衣ずれの音を紛らわして玉鬘のそばに添い臥す。玉鬘は、実の親のもとならこんなつらいことはなかったろうにと涙をこぼす。源氏は、これ以上の無理な心は見せないと言って優しく慰め、夜が更けないうちに帰る。源氏は、昔恋しさの慰めに話をするだけだから、同じ心で返事をしてほしいと言うが、玉鬘はいっそうつらく思う。世慣れない玉鬘は、思いもよらない世の中だと嘆いて気分が悪くなり、女房たちは心配する。兵部の君までが源氏の厚意をありがたがるのを聞くにつけても、玉鬘は源氏の心をうとましく思い、わが身の不運を嘆く。

- 1常常つねににに見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふう御御おん中中なかなれなれなれどどど、、、かくかくかくよきよきよき折折おりしもしもしもありありあり難難がたけれけれければばば、、、ことことことににに出出いででで給給たまへへえるるるついでついでついでののの御御おんひたぶるひたぶるひたぶる心心こころにににややや、、、懷懷なつかしきしきしきほどほどほどなるなるなる御御おんぞぞぞどもどもどものののけはひけはひけわいはははいといといとようようようまぎらはしまぎらはしまぎらわしすべしすべしすべし給給たまひひいててて近近ちかやかやかやかににに臥臥ふししし給給たまへへえばばば、、、いといといと心心こころうくうくうく人人ひとののの思思おもははわむむん事事ことももも珍珍めずらからからかにににいみじういみじういみじゅうおぼゆおぼゆおぼゆ。。。
- 2まことまことまことののの親親おやののの御御おんあたりあたりあたりならならならましかましかましかばばば、、、おろかおろかおろかにににははは見見み放放はなちちち給給たまふふうともともともかくかくかくざまざまざまののの憂憂うききき事事ことはははあらあらあらましましましやややととと悲悲かなしきしきしきににに、、、つゝむつゝむつつむとととすれすれすれどどどこぼれこぼれこぼれ出出いでででつゝつゝつついといといと心苦心苦こころぐるしきしきしき御御おん氣色氣色けしきなれなれなればばば、、、
- 3「「「かうかうこうおぼすおぼすおぼすこそこそこそつらけれつらけれつらけれ。。。もてもてもてはなれはなれはなれ知知しらららぬぬぬ人人ひとだにだにだに世世よのののことわりことわりことわりにてにてにて皆皆みなゆるすゆるすゆるすわざわざわざなななめるめるめるををを、、、かくかくかく年年とし經經へぬるぬるぬるむつましさむつましさむつましさにににかばかりかばかりかばかり見見みえええ奉奉たてまつるるるややや何何なにのののうとましかるうとましかるうとましかるべきべきべきぞぞぞ。。。これこれこれよりよりよりあながちあながちあながちなるなるなる心心こころはははよもよもよも見見みせせせ奉奉たてまつらららじじじ。。。おぼろけおぼろけおぼろけににに忍忍しのぶるぶるぶるにににあまるあまるあまる程程ほどををを慰慰なぐさむるむるむるぞぞぞややや」」」とてとてとてあはれげあはれげあわれげににに懷懷なつかしうしうしゅう聞聞きこえええ給給たまふふう事事こと多多おおかりかりかり。。。
- 4ましてましてましてかやうかやうかようなるなるなるけはひけはひけわいははは唯唯ただ昔昔むかしののの心心ここちちちしししててていみじういみじういみじゅうあはれあはれあわれなりなりなり。。。我我わががが御心御心みこころながらながらながらもももゆくりかゆくりかゆくりかにににあはつけきあはつけきあわつけきことことことゝゝとおぼしおぼしおぼし知知しらららるれるれるればばば、、、いといといと能能よくくくおぼしおぼしおぼしかへしかへしかえしつゝつゝつつ人人ひともももあやしあやしあやしととと思思おもふふうべけれべけれべければばばいたういたういとう夜夜よもももふかさふかさふかさででで出出いででで給給たまひひいぬぬぬ。。。
- 5「「「思思おもひひい踈踈うとみみみ給給たまははわゞゞばいといといと心心こころうくうくうくこそこそこそあるあるあるべけれべけれべけれ。。。よそよそよそののの人人ひとはははかうかうこうはははあらあらあらぬぬぬものものものぞぞぞよよよ。。。かぎなりかぎなりかぎなり底底そこひひいしらしらしらぬぬぬ心心こころざしざしざしなれなれなればばば人人ひとののの咎咎とがむむむべきべきべきさまさまさまにににはははよもよもよもあらあらあらじじじ。。。唯唯ただ昔昔むかし戀戀こいしきしきしきなぐさめなぐさめなぐさめにににはかなきはかなきはかなき事事ことももも聞聞きこえええむむん。。。同同おなじじじ心心こころにににいらへいらへいらえなどなどなどししし給給たまへへえ」」」ととといといといとこまやかこまやかこまやかににに聞聞きこえええ給給たまへへえどどど、、、
- 6我我われにににもももあらあらあらぬぬぬさまさまさましししててていとゞいとゞいとど憂憂うしししとととおぼいおぼいおぼいたれたれたればばば、、、「「「いといといとさばかりさばかりさばかりにににははは見見み奉奉たてまつらららぬぬぬ御御み心心こころばへばへばえをををいといといとこよなくこよなくこよなくももも憎憎にくみみみ給給たまふふうべかべかべかめるめるめるかなかなかな」」」ととと歎歎なげききき給給たまひひいててて、、、「「「ゆめゆめゆめ氣色氣色けしきなくなくなくををを」」」とてとてとて出出いででで給給たまひひいぬぬぬ。。。
- 7女君女君おんなぎみももも御御おん年年としこそこそこそすぐしすぐしすぐし給給たまひひいにににたるたるたる程程ほどなれなれなれ。。。世世よののの中中なかををを知知しりりり給給たまははわぬぬぬ中中なかにににももも少少すこしししうちうちうち世世よなれなれなれたるたるたる人人ひとののの有樣有樣ありさまをををだにだにだに見見み知知しりりり給給たまははわねねねばばば、、、これこれこれよりよりよりけけけ近近じかきききさまさまさまにににもももおぼしおぼしおぼしよらよらよらずずず。。。思思おもいののの外外ほかにににもももありありありけるけるける世世よかなかなかなととと歎歎なげかしきかしきかしきにににいといといと氣色氣色けしきもももあしけれあしけれあしければばば、、、人々人々びと「「「御御おん心心ここちちち惱惱なやましげしげしげににに見見みえええ給給たまふふう」」」ととともてもてもてさわぎさわぎさわぎ聞聞きこゆゆゆ。。。
- 8「「「殿殿とのののの御御おん氣色氣色けしきのののこまやかこまやかこまやかにににかたじけなくかたじけなくかたじけなくもももおはしますおはしますおわしますかなかなかな。。。まことまことまことののの御御おん親親おやととと聞聞きこゆゆゆともともとも更更さらにににかばかりかばかりかばかりおぼしおぼしおぼしよらよらよらぬぬぬことことことなくなくなくはははもてもてもてなしなしなし聞聞きこえええ給給たまははわじじじ」」」などなどなど兵部兵部ひょうぶなどなどなどももも忍忍しのびびびててて聞聞きこゆるゆるゆるにににつけつけつけててて、、、いとゞいとゞいとど思思おもははわずずずににに心心こころづきなきづきなきずきなき御心御心みこころののの有樣有樣ありさまをををうとましううとましううとましゅう思思おもひひいはてはてはて給給たまふふうにににももも身身みぞぞぞ心心こころうかりうかりうかりけるけるける。。。
現代語訳
いつもお会いしていらっしゃる間柄だけれど、このようなよい折もめったにないので、口に出してしまったついでのひたむきなお心であろうか、柔らかくなったお召し物の衣ずれの音を、たいそううまく紛らわしてお脱ぎになって、近々と添い臥しなさったので、玉鬘はたいそうつらく、女房たちがどう思うかということも、異様なことで、ひどく恐ろしく思われる。
本当の親のおそばであったら、たとえおろそかに見捨てなさっても、このようなつらいことはあっただろうかと悲しくて、こらえようとしても涙がこぼれ出て、たいそうおいたわしいご様子なので、
「そうお思いになるのこそつらいのです。まったく知らない人でさえ、世の常として、皆許すことのようですのに、このように年を経た親しさから、これくらいのところをお見せ申し上げるのに、何のうとましいことがあろうか。これ以上の無理な心は、決してお見せしますまい。並々でなく忍ぶ思いの、こらえきれないほどを慰めるだけですよ」と、しみじみと親しげに申し上げなさることが多い。
まして、このような様子は、ただ昔(夕顔)のような気がして、たいそうしみじみとしている。自分のお心ながら、だしぬけで軽率なことだとお思い知られになるので、たいそうよく思い直しながら、女房たちも不審に思うだろうから、それほど夜も更かさずにお帰りになった。
「もし私をお嫌いになったら、たいそうつらいことでしょう。よその人は、これほど夢中にはならないものですよ。限りない、底知れない志なので、人に咎められるようなことは決してしません。ただ昔恋しさの慰めに、たわいないことも申し上げましょう。同じ心でお返事などしてください」と、たいそうこまやかに申し上げなさるけれど、
玉鬘は我を失ったような様子で、いっそうつらいとお思いになっているので、「それほどとは思っていなかったお心を、たいそうこの上なく憎みなさるようだね」とお嘆きになって、「決して人に気づかれないように」と言ってお帰りになった。
女君も、お年こそ大人になっていらっしゃるけれど、世の中をご存じない中でも、少し世慣れた人の様子さえご覧になったことがないので、これ以上親しい関係があるとも思い寄りなさらない。思いのほかのこともある世の中だなあと嘆かわしくて、たいそうご気分も悪いので、女房たちは「ご気分がお悪そうにお見えになる」と騒ぎ立て申し上げる。
「殿のご様子が、こまやかで、もったいないほどでいらっしゃいますこと。本当の親と申し上げても、これほど何から何まで行き届いてお世話申し上げなさることはないでしょう」などと、兵部の君なども、こっそり申し上げるにつけても、いっそう思いがけず、気に入らないお心の有様を、うとましく思い切りなさるにつけても、わが身がつらいのであった。
意訳
源氏は思い切って玉鬘のそばに添い臥す。玉鬘は、実の親のもとならこんなつらいことはなかったろうにと涙をこぼす。源氏は、これ以上の無理な心は見せないと慰め、夜が更けないうちに帰る。
世慣れない玉鬘は、思いもよらない世の中だと嘆いて気分が悪くなる。兵部の君までが源氏の厚意をありがたがるのを聞くにつけても、玉鬘は源氏の心をうとましく思い、わが身の不運を嘆く。
語釈・文法注
- ほれぼれしく
- ぼんやりと夢中になっているさま。恋に心を奪われて、我を失っていることをいう。
文法
- 反実仮想の「ましかば…まし」(御あたりならましかば…あらましや)
- 「実の親のおそばであったら、このようなつらいことはあっただろうか、いや、なかっただろう」。
- 打消推量の「じ」(よも見せ奉らじ)
- 「よも…じ」で「決して…しないつもりだ」。
解説
添い臥しの場面は、源氏の恋心がついに行動に表れた場面である。しかし源氏は、それ以上の無理はせず、夜が更けないうちに帰る。親としての立場と恋心との間で揺れる源氏の姿が描かれる。
世慣れない玉鬘にとって、親と頼んだ源氏からの求愛は、大きな衝撃であった。周囲の女房たちが源氏の厚意をありがたがるほど、玉鬘の孤独は深まっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、460–463頁(コマ234–235)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日