源氏物語 第24帖 胡蝶(9)
紫の上の疑い
源氏は紫の上に、玉鬘は母の夕顔よりも物の道理がわかり、親しみやすくて安心だと褒める。源氏の心をよく知る紫の上は、物の道理がわかる人なのに、すっかり打ち解けて源氏を頼っているのが気の毒だと言う。源氏が、頼りにならないことがあろうかと言うと、紫の上は、自分にも源氏の心に悩まされた折々があったと、ほほえんで返す。図星を指された源氏は、困った邪推をするものだと言いさして、心の内では、人にこう推し量られることにも思い乱れ、自分のよからぬ心を思い知る。

- 1殿殿とのはははいとゞいとゞいとどらうたしらうたしろうたしととと思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまふふう。。。うへうへうえにににももも語語かたりりり申申もうししし給給たまふふう。。。「「「あやしうあやしうあやしゅう懷懷なつかしきしきしき人人ひとののの有樣有樣ありさまにににもももあるあるあるかなかなかな。。。かのかのかのいにしへいにしへいにしえのののはははあまりあまりあまりはるけはるけはるけなくなくなくぞぞぞありありありししし。。。このこのこの君君きみははは物物ものののの有樣有樣ありさまももも見見み知知しりりりぬぬぬべくべくべく、、、けぢかきけぢかきけじかき心心こころざまざまざまそひそひそいてててうしろめたからうしろめたからうしろめたからずずずこそこそこそ見見みゆれゆれゆれ」」」などなどなど譽譽ほめめめ給給たまふふう。。。
- 2たゞたゞただにににしもしもしもおぼすおぼすおぼすまじきまじきまじき御御み心心こころざまざまざまををを見見み知知しりりり給給たまへへえれれればばばおぼしおぼしおぼしよりよりよりててて、、、「「「物物ものののの心心こころえええつつつべくべくべくははは物物ものししし給給たまふふうめるめるめるをををうらなくうらなくうらなくしもしもしもうちとけうちとけうちとけ賴賴たのみみみ聞聞きこえええ給給たまふふうらむらむらんこそこそこそ心苦心苦こころぐるしけれしけれしけれ」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、「「「などなどなどたのもしげたのもしげたのもしげなくなくなくやはやはやはあるあるあるべきべきべき」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、
- 3「「「いでいでいでやややわれわれわれにてにてにてももも又又また忍忍しのびびびがたうがたうがとう、、、物物もの思思おもはしきはしきわしき折々折々おりおりありありありししし御御み心心こころざまざまざまののの思思おもひひい出出いでででらるゝらるゝらるるふしぶしふしぶしふしぶしなくなくなくやはやはやは」」」とととほゝゑみほゝゑみほほえみててて聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、あなあなあな心心こころどどどとととおぼいおぼいおぼいててて、、、
- 4「「「うたてうたてうたてもももおぼしおぼしおぼしよるよるよるかなかなかな。。。いといといと見見み知知しらららずずずしもしもしもあらあらあらじじじ」」」とてとてとて煩煩わずらはしけれはしけれわしければばばのたまひのたまひのたまいさしさしさしててて、、、心心こころのののうちうちうちににに人人ひとのののかうかうこう推推おしししはかりはかりはかり給給たまふふうにににもももいかゞいかゞいかがはははあるあるあるべからべからべからむむんとととおぼしおぼしおぼし亂亂みだれれれ、、、かつかつかつはははひがひがしうひがひがしうひがひがしゅうけしからけしからけしからぬぬぬ我我わががが心心こころののの程程ほどももも思思おもひひいしらしらしられれれ給給たまひひいけりけりけり。。。
現代語訳
殿(源氏)は、いっそう玉鬘をかわいいとお思い申し上げなさる。上(紫の上)にもお話し申し上げなさる。「不思議なほど親しみやすい人柄だね。あの昔の人(夕顔)は、あまりにも晴れ晴れしたところがなかった。この君は、物事の道理もわかっていそうで、親しみやすい気立ても加わって、安心できるように見える」などとお褒めになる。
紫の上は、ただではお済ませになるまいご性分をご存じなので、思い当たりなさって、「物事の道理はおわかりになっていらっしゃるようですのに、何の疑いもなく打ち解けて、あなたを頼り申し上げていらっしゃるのが、お気の毒ですこと」とおっしゃるので、源氏が「どうして頼りにならないことがあろうか」と申し上げなさると、
「さあ、私の場合でも、また堪えがたく、物思いに沈んだ折々があった、あなたのご性分が思い出される節々がないでしょうか」とほほえんで申し上げなさるので、源氏は、ああ鋭いことよとお思いになって、
「困った邪推をなさるものだね。あの人がそれに気づかないこともあるまい」と言って、わずらわしいので、言いさしになって、心の中では、人がこのように推し量りなさるにつけても、どうしたものだろうかと思い乱れ、一方では、ひねくれたけしからぬ自分の心のほども思い知られなさるのであった。
意訳
源氏は紫の上に、玉鬘は母の夕顔よりも物の道理がわかり、親しみやすいと褒める。源氏の心をよく知る紫の上は、玉鬘が源氏を頼り切っているのが気の毒だと言い、自分にも源氏の心に悩まされた折々があったと返す。
図星を指された源氏は言いさして、心の内では、人にこう推し量られることにも思い乱れ、自分のよからぬ心を思い知る。
語釈・文法注
- はるけ所
- 心が晴れ晴れとするところ、明るさ。夕顔は、おっとりとしていて晴れやかなところに欠けていたと、源氏は振り返る。
文法
- 反語の「やは」(ふしぶしなくやは)
- 「節々がないでしょうか、いや、ある」。
- 自発の「る」(思ひしられ給ひけり)
- 「思い知られなさった」。
解説
紫の上は、源氏の玉鬘への関心が親の情だけではないことを見抜いている。自分もかつて源氏に引き取られ、やがて妻となった身であるだけに、その鋭さは痛烈である。
図星を指されて言葉に詰まる源氏の姿は、自分の心の「ひがひがしうけしからぬ」ところを自覚しながらも、玉鬘への思いを抑えきれない源氏の苦悩を表している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、460–461頁(コマ234)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日