源氏物語 第24帖 胡蝶(6)
求婚者たちの手紙
四月の衣更えのころ、玉鬘のもとには求婚者たちの手紙が増える。源氏はたびたび訪れて手紙を見ては、返事を勧める。兵部卿宮の恋に悩む手紙には、昔から恋の話は隠していた宮の好色ぶりを面白がる。髭黒の右大将の生まじめな恋文も見比べる中に、縹色の唐の紙を細く結んだ柏木の手紙がある。源氏は右近を呼んで、返事をする相手を選ぶようにと、女の恋文の扱い方を細かく教える。玉鬘は顔をそむけ、その横顔は美しい。右近は、二人が並ぶとまるで似合いの夫婦のようだと思う。

- 1ころもがへころもがへころもがえののの今今いまめかしうめかしうめかしゅう改改あらたまれれれるるる頃頃ころほひほひおい、、、空空そらののの氣色氣色けしきなどなどなどさへさへさへあやしうあやしうあやしゅうそこはかとなくそこはかとなくそこはかとなくをかしきをかしきおかしきをををのどやかのどやかのどやかにににおはしませおはしませおわしませばばば萬萬よろずののの御御おん遊遊あそびにてにてにて過過すぐしぐしぐし給給たまふふうににに、、、對對たいののの御御おん方方かたににに人々人々びとののの御御おん文文ふみしげくしげくしげくなりなりなり行行ゆくくくををを、、、
- 2おぼしおぼしおぼしゝゝしことことことゝゝとをかしうをかしうおかしゅうおぼいおぼいおぼいてててともすればともすればともすれば渡渡わたりりり給給たまひひいつゝつゝつつ御覽御覽ごらんじじじ、、、さるべきさるべきさるべきにににははは御御おんかへりかへりかえりそゝのかしそゝのかしそそのかし聞聞きこえええ給給たまひひいなどなどなどするするするををを、、、うちうちうち解解とけけけずずず苦苦くるしいしいしいことことことにににおぼいおぼいおぼいたりたりたり。。。
- 3兵部卿兵部卿ひょうぶきょうののの宮宮みやののの程程ほどなくなくなくいられがましきいられがましきいられがましきわびごとわびごとわびごとゞゞどもももををを書書かききき集集あつめめめ給給たまへへえるるる御御おんふみふみふみををを御覽御覽ごらんじじじつけつけつけてててこまやかこまやかこまやかににに笑笑わらひひい給給たまふふう。。。
- 4「「「早早はようううよりよりより隔隔へだつるつるつることことことなうなうのうあまたあまたあまたのののみこみこみこ達達たちののの御御おん中中なかににに、、、このこのこの君君きみをををなむなむなんかたみかたみかたみにににとりとりとり別別わきききててて思思おもひひいしししににに、、、唯唯ただかやうかやうかようのののすぢすぢすじのののことことことなむなむなんいみじういみじういみじゅう隔隔へだててて思思おもひひい給給たまひひいてててやみやみやみにににしししををを、、、世世よののの末末すえにににかくかくかくすきすきすき給給たまへへえるるる心心こころばへばへばえををを見見みるるるがががをかしうをかしうおかしゅうあはれあはれあわれにににもももおぼゆるおぼゆるおぼゆるかなかなかな。。。猶猶なお御御おんかへりかへりかえりなどなどなど聞聞きこえええ給給たまへへえ。。。少少すこしししもももゆゑゆゑゆえあらあらあらむむん女女おんなのののかのかのかのみこみこみこよりよりよりほかほかほかににに又又また言言ことののの葉葉はをををかはすかはすかわすべきべきべき人人ひとこそこそこそ世世よにににおぼえおぼえおぼえねねね。。。いといといと氣色氣色けしきあるあるある人人ひとののの御御おんさまさまさまぞぞぞややや」」」ととと若若わかききき人人ひとはははめでめでめで給給たまひひいぬぬぬべくべくべく聞聞きこえええ知知しらせらせらせ給給たまへへえどどど、、、つゝましくつゝましくつつましくのみのみのみおぼいおぼいおぼいたりたりたり。。。
- 5「「「右大將右大將うだいしょうのののいといといとまめやかまめやかまめやかにににことごとしきことごとしきことごとしきさまさまさましししたるたるたる人人ひとののの、、、こひこひこいののの山山やまにににはははくじくじくじのののまねびまねびまねびつつつべきべきべき氣色氣色けしきににに憂憂うれへへえたるたるたるもももさるさるさる方方かたにににをかしをかしおかし」」」ととと皆皆みな見見みくらべくらべくらべ給給たまふふう中中なかににに、、、
- 6唐唐からのののはなだはなだはなだののの紙紙かみのののいといといとなつかしうなつかしうなつかしゅうしみしみしみ深深ふこうううにほへにほへにおえるるるををを、、、いといといとほそくほそくほそくちひさくちひさくちいさく結結むすびびびたるたるたるありありあり。。。「「「これこれこれはははいかなれいかなれいかなればばばかくかくかくむすぼゝれむすぼゝれむすぼおれたるたるたるにににかかか」」」とてとてとて引引ひきききあけあけあけ給給たまへへえりりり。。。手手ていといといとをかしうをかしうおかしゅうててて、、、「「「思思おもふふうともともとも君君きみはははしらしらしらじじじなななわきわきわきかへりかへりかえり岩岩いわもるもるもる水水みずににに色色いろししし見見みえええねねねばばば」」」。。。書書かきききざまざまざま今今いまめかしうめかしうめかしゅうそぼれそぼれそぼれたりたりたり。。。
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- 8右近右近うこん召召めししし出出いでででゝゝて、、、「「「かやうかやうかようににに音音おとづれづれずれ聞聞きこえええむむん人人ひとをををばばば人人ひとえりえりえりしししててていらへいらへいらえなどなどなどはははせせせさせよさせよさせよ。。。すきずきしうすきずきしうすきずきしゅうあざれがましきあざれがましきあざれがましき今今いまやうやうようのののことことことのののびんないびんないびんないとととしししいでいでいでなどなどなどするするする、、、をのこをのこおのこのののとがとがとがにににしもしもしもあらあらあらぬぬぬことことことなりなりなりわれわれわれにてにてにて思思おもひひいしししににに、、、あなあなあななさけななさけななさけな、、、うらめしううらめしううらめしゅうもももととと、、、そのそのその折折おりにににこそこそこそむじんむじんむじんなるなるなるにににややや。。。もしはもしはもしはめざましかるめざましかるめざましかるべきべきべききはきはきわゝゝはけやけうけやけうけやきょうなどなどなどもももおぼえおぼえおぼえけれけれけれ。。。
- 9わざとわざとわざと深深ふかからからからででで花花はな蝶蝶ちょうにににつけつけつけたるたるたるたよりたよりたよりごとごとごとははは心心こころねたうねたうねとうもてもてもてないないないたるたるたる、、、なかなかなかなかなかなか心心こころだつだつだつやうやうようにににもももありありあり。。。又又またさてさてさて忘忘わすれれれぬるぬるぬるははは何何なにのののとがとがとがかかかはははあらあらあらむむん。。。物物もののののたよりたよりたよりばかりばかりばかりのののなほざりごとなほざりごとなおざりごとににに口口くちとうとうとう心心こころえええたるたるたるもももさらさらさらでででありありありぬぬぬべかりべかりべかりけるけるける後後のちのののなんなんなんとととありありありぬぬぬべきべきべきわざわざわざなりなりなり
- 10すべてすべてすべて女女おんなののの物物ものつゝみつゝみつつみせせせずずず、、、心心こころのののまゝまゝままににに物物ものののの哀哀あわれももも知知しりりり顏顏がおつくりつくりつくりをかしきをかしきおかしき事事ことをををももも見見み知知しらららむむんなむなむなんそのそのそのつもりつもりつもりあぢきなかるあぢきなかるあじきなかるべきべきべきををを、、、宮宮みや、、、大將大將だいしょうはははおほなおほなおほなおほなおおなおおななほざりごとなほざりごとなおざりごとをををうちうちうち出出いででで給給たまふふうべきべきべきにににもももあらあらあらずずず、、、又又またあまりあまりあまり物物ものののの程程ほど知知しらららぬぬぬやうやうようならならならむむんももも御御おん有樣有樣ありさまににに違違たがへへえりりり。。。そのそのそのきはきはきわよりよりよりしもしもしもははは心心こころざしざしざしのののおもむきおもむきおもむきににに隨隨したがひひいてててあはれあはれあわれをををもももわきわきわき給給たまへへえらうらうろうをををももも數數かぞへへへ給給たまへへえ」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、
- 11君君きみはははうちうちうち背背そむきききててておはするおはするおわするそばめそばめそばめいといといとをかしげをかしげおかしげなりなりなり。。。なでしこなでしこなでしこののの細細ほそ長長ながにににこのこのこの頃頃ころののの花花はなののの色色いろなるなるなる御御おんこうちきこうちきこうちきあはひあはひあわいけぢかうけぢかうけじこう今今いまめきめきめきててて、、、もてなしもてなしもてなしなどなどなどもももさささはははいへいへいえどどど田舎田舎いなかびびび給給たまへへえりりりししし名殘名殘なごりこそこそこそ唯唯ただありありありにににおほどかおほどかおおどかなるなるなるかたかたかたにににのみのみのみははは見見みえええ給給たまひひいけれけれけれ。。。
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- 13右近右近うこんもももうちうちうちゑみゑみえみつゝつゝつつ見見み奉奉たてまつりりりててて、、、親親おやととと聞聞きこえええむむんにににははは似似にげなうげなうげのう若若わかくくくおはしますおはしますおわしますめりめりめり、、、さしさしさしならびならびならび給給たまへへえらららむむんはははしもしもしもあはひあはひあわいめでたしめでたしめでたしかしかしかしととと思思おもひひい居居いたりたりたり。。。
現代語訳
衣更えの今風に改まるころ、空の様子などまでも、不思議なほど何となく趣深いので、のんびりとしていらっしゃる源氏は、さまざまな管弦の遊びをしてお過ごしになるが、対の御方(玉鬘)に人々からのお手紙が多くなっていくのを、
思っていたとおりだと面白くお思いになって、ともすればおいでになってはご覧になり、しかるべき相手にはお返事をお勧め申し上げなさったりするのを、玉鬘は打ち解けられず、つらいことにお思いになっている。
兵部卿宮が、まだ間もないのにじれったそうな恨み言を書き集めていらっしゃるお手紙をご覧になって、にこやかにお笑いになる。
「昔から隔てなく、大勢の親王たちの中でも、この君とは特に互いに親しく思っていたのに、ただこのような恋の方面のことだけは、ひどく隠し立てなさっていたが、晩年になって、このように好色めいていらっしゃるお心を見るのが、面白くもあり、しみじみともする。やはりお返事などを申し上げなさい。少しでも教養のある女で、あの親王よりほかに歌を交わすべき人など、世に思い当たらない。たいそう風情のある方のご様子ですよ」と、若い女房なら感心してしまいそうに申し聞かせなさるけれど、玉鬘は気恥ずかしくばかりお思いになっている。
「右大将(髭黒)が、たいそうまじめで、いかめしい様子をした人なのに、恋の山には孔子も倒れるというのをまねそうな様子で嘆いているのも、それなりに面白い」と、皆を見比べなさる中に、
唐の縹色の紙で、たいそう慕わしく香をたきしめたものを、たいそう細く小さく結んだのがある。「これはどういうわけで、こんなに結ぼれているのか」と言って、開けてご覧になった。筆跡はたいそう美しくて、「いくら思っていても、あなたはご存じないでしょうね。湧き返る岩間の水のように、私の思いも色に見えないのですから」。書きぶりは今風で洒落ている。
「これはどういう人か」とお尋ね申し上げなさるけれど、はっきりとはお答えにもならない。
右近を呼び出して、「このようにお便り申し上げる人は、人を選んで、お返事などをさせなさい。好色で浮ついた今風の者が、不都合なことをしでかしたりするのは、男の咎ばかりではないことだ。私の経験で思うと、ああ情けない、恨めしいと、その時こそ思いやりがないと思うのか、あるいは、身分の低い相手なら生意気だとも思ったものだ。
わざと深い思いもなく、花や蝶につけたちょっとした便りに、気をもたせるように返事をしないのは、かえって心を募らせることにもなる。また、そうして忘れてしまうのは何の咎があろう。何かのついでのいい加減な便りに、すぐに気をきかせて返事をするのも、しなくてもよかったと後で難が生じかねないことだ。
総じて女が、慎みもなく、思うままに物の情趣を知っているような顔をし、面白いことをわかったようにふるまうのは、その積み重ねがつまらない結果になるものだが、宮や大将は、いい加減な冗談をおっしゃるはずもなく、またあまり物の程度を知らないようなのも、あなたのご身分にふさわしくない。その身分より下の人は、志の深さに従って情けをかけ、誠意をも数えてあげなさい」などと申し上げなさると、
女君は顔をそむけていらっしゃる横顔が、たいそう美しい。撫子の細長に、この季節の花の色の御小袿を重ねた色合いが親しみやすく今風で、ふるまいなども、そうはいっても田舎びていらっしゃった名残こそ、ただひたすらおっとりとした方面にだけ見えていらっしゃったが、
人の様子を見知りなさるにつれて、たいそう姿よくしなやかに、化粧なども気をつけて身づくろいなさっているので、いっそう不足なところもなく、華やかでかわいらしい。他人として見るのは、たいそう惜しいとお思いになる。
右近もほほえみながらお見申し上げて、親と申し上げるには不似合いなほど若くていらっしゃるようだ、お並びになったら、さぞお似合いの仲だろうと思っている。
意訳
衣更えのころ、玉鬘のもとには求婚者たちの手紙が増え、源氏は手紙を見ては返事を勧める。兵部卿宮の恋文には宮の好色ぶりを面白がり、髭黒の生まじめな恋文も見比べる中に、柏木の結び文がある。
源氏は右近に、返事をする相手を選ぶように命じ、女の恋文の扱い方を細かく教える。顔をそむける玉鬘の横顔は美しく、右近は、二人が並ぶと似合いの夫婦のようだと思う。
語釈・文法注
- くじのたふれ
- 孔子の倒れ。「孔子も時には倒れる(失敗する)」という意のことわざ。聖人でも恋の山ではつまずくということ。生まじめな髭黒が恋に悩む様子をからかう。
文法
- 打消推量の「じ」(君はしらじな)
- 「あなたはご存じないでしょうね」。
- 推定の「めり」(若くおはしますめり)
- 「若くていらっしゃるようだ」。
和歌
思ふとも君はしらじなわきかへり岩もる水に色し見えねば
- 詠者
- 柏木
- 状況
- 玉鬘に贈った恋文の歌。いくら思っていても、あなたはご存じないでしょうね。岩間から漏れる水が、湧き返っていても色に見えないように、私の思いも表に見えないのですから。
修辞
- 序詞・見立て
- 「わきかへり岩もる水」に、表に出せずに胸の内で湧き返る恋心をたとえる。
解説
源氏が玉鬘に恋文の扱い方を教える場面は、当時の女性のたしなみを示す一方で、親の立場を装いながら玉鬘のそばにいる源氏の複雑な心理を描く。
右近の「さしならび給へらむはしもあはひめでたし」という感想は、源氏と玉鬘の関係が、親子の枠を越えつつあることを暗示している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、456–457頁(コマ232)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日