源氏物語 第24帖 胡蝶(5)
玉鬘の日々
六条院では毎日のように管弦の遊びが催され、女君たちも互いに便りを交わす。玉鬘も踏歌の夜の対面以来、紫の上と親しく文を交わす。玉鬘は人当たりがよく、誰からも好かれる。求婚者は多いが、源氏は簡単には決めかね、自分でも親になりきれない心を感じて、実の父の内大臣に知らせようかと思うこともある。夕霧は姉と信じて親しく接し、柏木たちは姉とも知らずに恋い焦がれる。玉鬘は、実の父に娘として認められたいと願いながら、源氏を頼る。その様子は母の夕顔によく似ているが、才気も備わっている。

- 1明暮明暮あけくれにににつけつけつけてててもももかやうかやうかようのののはかなきはかなきはかなき御御おん遊遊あそびしげくしげくしげく、、、心心こころををを遣遣やりりりててて過過すぐしぐしぐし給給たまへへえばばば、、、侍侍さぶらふふう人人ひともももおのづからおのづからおのずから物物もの思思おもひひいなきなきなき心心ここちちちしししてててなむなむなん、、、こなたこなたこなたかなたかなたかなたにににももも聞聞きこえええかはしかはしかわし給給たまふふう。。。
- 2西西にしののの對對たいののの御御おん方方かたはははかのかのかの踏踏とう歌歌かののの折折おりののの御御おん對面對面たいめんののの後後のちはははこなたこなたこなたにににももも聞聞きこえええかはしかはしかわし給給たまふふう。。。深深ふかききき御御おん心心こころもちゐもちゐもちいややや、、、淺淺あさくくくもももいかにいかにいかにもももあらあらあらむむん。。。氣色氣色けしきいといといとありありあり、、、懷懷なつかしきしきしき心心こころばへばへばえととと見見みえええててて、、、人人ひとののの心心こころへだつへだつへだつべくべくべくももも物物ものししし給給たまははわぬぬぬ人人ひとのののさまさまさまなれなれなればばば、、、いづかたいづかたいずかたにににももも皆皆みな心心こころよせよせよせ聞聞きこえええ給給たまへへえりりり
- 3聞聞きこえええ給給たまふふう人人ひといといといとあまたあまたあまたものしものしものし給給たまふふうされどされどされどおとゞおとゞおとどおぼろけおぼろけおぼろけにににおぼしおぼしおぼし定定さだむむむべくべくべくもももあらあらあらずずず。。。我我わががが御心御心みこころにににもももすくよかすくよかすくよかにににおやおやおやがりがりがりはつはつはつまじきまじきまじき御心御心みこころやややそふそふそうらむらむらん。。。父父ちちおとゞおとゞおとどにににももも知知しらせらせらせやややしししてててましましましなどなどなどおぼしおぼしおぼしよるよるよる折々折々おりおりもももありありあり。。。
- 4殿殿とのののの中將中將ちゅうじょうははは少少すこしししけぢかくけぢかくけじかくみすみすみすのののもともともとなどなどなどにににもももよりよりよりててて御御おんいらへいらへいらえみづからみづからみずから聞聞きこえええ給給たまひひいなどなどなどするするするももも、、、女女おんなはははつゝましうつゝましうつつましゅうおぼせおぼせおぼせどどど、、、さるべきさるべきさるべき程程ほどととと人々人々びとももも知知しりりり聞聞きこえええたれたれたればばば中將中將ちゅうじょうはははすぐすぐしくすぐすぐしくすぐすぐしくててて思思おもひひいもももよらよらよらずずず。。。
- 5內內うちのののおほいどのおほいどのおおいどのゝゝの君達君達きんだちはははこのこのこの君君きみににに引引ひかかかれれれてててよろづよろづよろずににに氣色氣色けしきばみばみばみわびわびわびありくありくありくををを、、、そのそのそのかたかたかたのののあはれあはれあわれにににはははあらあらあらでででしたしたしたににに心苦心苦こころぐるしうしうしゅうなむなむなん。。。まことまことまことののの親親おやにににさささもももあらあらあられれれ奉奉たてまつりりりにににしししがががなななととと人人ひとしれしれしれずずず心心こころにににかけかけかけ給給たまへへえれれれどどど、、、さやうさやうさようにににももも漏漏もらしらしらし聞聞きこえええ給給たまははわずずず。。。
- 6ひとへひとへひとえにににうちとけうちとけうちとけたのみたのみたのみ聞聞きこえええ給給たまふふう心心こころむけむけむけなどなどなどらうたげらうたげろうたげににに若若わかやかやかやかなりなりなり。。。似似にるるるとととはははなけれなけれなけれどどど猶猶なお母君母君ははぎみのののけはひけはひけわいにににいとゞいとゞいとど能能よくくくおぼえおぼえおぼえててて、、、これこれこれはははかどかどかどめいめいめいたるたるたる所所ところ添添そひひいたるたるたる。。。
現代語訳
朝夕につけても、このようなちょっとした管弦の遊びが多く、心を晴らしてお過ごしになるので、お仕えする女房たちも、自然と何の物思いもない気持ちがして、あちらこちらでも便りを交わしなさる。
西の対の御方(玉鬘)は、あの踏歌の折のご対面の後は、こちら(紫の上)とも便りを交わしなさる。深いお心づかいなのか、浅いのか、どうであろうか。様子はたいそう洗練されていて、親しみやすい気立てと見えて、人に心の隔てを置かせるようでもない人柄なので、どの方からも皆、心を寄せ申し上げられていらっしゃる。
求婚申し上げなさる人は、たいそう大勢いらっしゃるけれど、大臣は、並大抵のことではお決めになりそうもない。ご自分のお心にも、きっぱりと親としてふるまいとおせそうもないお気持ちが加わっているのだろうか。父大臣にも知らせてしまおうかなどと、お思いつきになる折々もある。
殿の中将(夕霧)は、少し近しく、御簾のもとなどにも寄って、お返事を自分で申し上げなさったりするのを、女君は気恥ずかしくお思いになるけれど、それが当然の間柄と女房たちも存じ上げているので、中将は生まじめで、思いも寄らない。
内大臣の御子息たちは、この中将に連れられて、何かにつけて思いをほのめかし、恋に悩んで歩き回っているのを、女君は、恋の情けとしてではなく、内心で気の毒に思っていらっしゃる。本当の親に、娘として認められたいものだと、人知れず心にかけていらっしゃるけれど、そのようにはお漏らしにもならない。
ひたすら打ち解けて源氏を頼り申し上げていらっしゃるお心ばえなどが、いじらしく若々しい。似ているというわけではないけれど、やはり母君(夕顔)の様子にたいそうよく似ていて、こちらは才気のあるところが加わっている。
意訳
六条院では管弦の遊びが続き、玉鬘も紫の上と親しく文を交わす。玉鬘は人当たりがよく、誰からも好かれる。求婚者は多いが、源氏は自分でも親になりきれない心を感じて、決めかねる。
夕霧は姉と信じて親しく接し、柏木たちは姉とも知らずに恋い焦がれる。玉鬘は、実の父に認められたいと願いながら、源氏を頼る。その様子は母の夕顔によく似ているが、才気も備わっている。
語釈・文法注
- らうあり
- 労あり。物事に慣れていて洗練されている、心配りが行き届いているの意。
文法
- 推量の「らむ」(御心やそふらむ)
- 「お気持ちが加わっているのだろうか」。語り手の推量。
- 願望の「にしがな」(あられ奉りにしがな)
- 「認められたいものだ」。
解説
源氏が「すくよかにおやがりはつまじき御心」を自覚し始めている点が注目される。親としての立場と、玉鬘への恋心との間で、源氏の心は揺れ動いている。
実の弟である柏木たちが玉鬘に恋し、血のつながらない夕霧が弟として親しく接するという皮肉な構図が、物語に緊張感を与えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、454–457頁(コマ231–232)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日