源氏物語 第24帖 胡蝶(3)
玉鬘への求婚者たち
六条院の西の対の姫君(玉鬘)の評判が世に広まり、心を寄せる人が多い。身分の高い人は手づるを求めて言い寄り、若い公達の中にも、口に出せずに思い焦がれる者がいる。内大臣の子の中将(柏木)は、姉とも知らずに恋をしている。三年ほど独り身の兵部卿宮は、今朝もひどく酔ったふりをして、藤の花をかざしてしなやかに戯れ、玉鬘への思いを歌に詠んで源氏に贈る。源氏は笑って、花のあたりを離れずに見ていよと返す。

- 1いつもいつもいつも春春はるののの光光ひかりをををこめこめこめ給給たまへへえるるるおほおほおお殿殿とのなれなれなれどどど、、、心心こころをををつくるつくるつくるよすがよすがよすがのののまたまたまたなきなきなきををを飽飽あかかかぬぬぬことことことにににおぼすおぼすおぼす人々人々びともももありありありけるけるけるににに、、、西西にしののの對對たいののの姫君姫君ひめぎみことことこともももなきなきなき御御おん有樣有樣ありさま、、、おとゞおとゞおとどののの君君きみもももわざとわざとわざとおぼしおぼしおぼしあがめあがめあがめ聞聞きこえええ給給たまふふう御御おん氣色氣色けしきなどなどなど皆皆みな世世よににに聞聞きこえええ出出いでででゝゝておぼしおぼしおぼしゝゝしもももしるくしるくしるく、、、心心こころなびかしなびかしなびかし給給たまふふう人人ひと多多おおかるかるかるべしべしべし。。。
- 2我我わががが身身みさばかりさばかりさばかりととと思思おもひひいあがりあがりあがり給給たまふふうきはきはきわののの人人ひとこそこそこそたよりたよりたよりにににつけつけつけつゝつゝつつけしきばみけしきばみけしきばみ言言ことににに出出いででで聞聞きこえええ給給たまふふうもももありありありけれけれけれ。。。えええしもしもしもうちうちうち出出いでででぬぬぬ中中なかののの思思おもひひいにににもえもえもえぬぬぬべきべきべきわかわかわかきんだちきんだちきんだちなどなどなどもももあるあるあるべしべしべし。。。そのそのそのうちうちうちにににことことことのののこゝろこゝろこころををを知知しらららででで內內うちのののおほいとのおほいとのおおいとのゝゝの中將中將ちゅうじょうなどなどなどはははすぎすぎすぎぬぬぬべかべかべかめりめりめり。。。
- 3兵部卿兵部卿ひょうぶきょうののの宮宮みやはたはたはた年年とし頃頃ごろおはしおはしおわしけるけるける北北きたののの方方かたもももうせうせうせ給給たまひひいてててこのこのこのみみみとせとせとせばかりばかりばかり獨獨ひとり住住ずみみみにてにてにてわびわびわび給給たまへへえばばば、、、うけばりうけばりうけばりててて今今いまははは氣色氣色けしきばみばみばみ給給たまふふう。。。
- 4今今け朝朝さもももいといといといたういたういとうそらそらそらみだれみだれみだれしししててて藤藤ふじののの花花はなをををかざしかざしかざしてててなよびなよびなよびさうどきさうどきそうどき給給たまへへえるるる御御おんさまさまさまいといといとをかしをかしおかし。。。おとゞおとゞおとどもももおぼしおぼしおぼしゝゝしさまさまさまかなふかなふかなうとととしたしたしたにににはははおぼせおぼせおぼせどどど、、、せめてせめてせめてしらしらしらずずず顏顏がおをををつくりつくりつくり給給たまふふう。。。
- 5御御おんかはらけかはらけかわらけのののついでついでついでにににいみじういみじういみじゅうもてもてもて惱惱なやみみみ給給たもうううててて、、、「「「思思おもふふう心心こころ侍侍はべらららずずずははは罷罷まかりりり逃逃にげげげなななましましまし。。。いといといと堪堪たへへえがたしがたしがたしややや」」」とととすまひすまひすまい給給たまふふう。。。
- 6「「「むらさきむらさきむらさきのののゆゑゆゑゆえににに心心こころをををしめしめしめたれたれたればばば淵淵ふちににに身身みなげなげなげむむん名名なやはやはやはをしけきをしけきおしけき」」」とてとてとておとゞおとゞおとどののの君君きみににに「「「かざしかざしかざしををを」」」とてとてとて奉奉たてまつれれれ給給たまふふう。。。
- 7いといといといたういたういとうほゝゑみほゝゑみほほえみたまひたまひたまいててて、、、「「「淵淵ふちににに身身みををを投投なげげげつつつべしべしべしやややとととこのこのこの春春はるははは花花はなのののあたりあたりあたりををを立立たちちちさらさらさらででで見見みよよよ」」」とととせちせちせちにににとゞめとゞめとどめ給給たまへへえばばば、、、えええ立立たちちちあがれあがれあがれ給給たまははわででで今今け朝朝さののの御御おんあそびあそびあそびましてましてましていといといとおもしろしおもしろしおもしろし。。。
現代語訳
いつも春の光を閉じこめていらっしゃる大殿ではあるけれど、心を寄せる相手がほかにないのを物足りなく思う人々もいたが、西の対の姫君の申し分のないご様子や、大臣の君も格別に大切にお扱いなさるご様子などが、皆世間に知れ渡って、源氏のお考えどおり、心を寄せなさる人が多いようだ。
自分こそ、それにふさわしい身分だと自負していらっしゃる人は、手づるをたどってほのめかし、言葉に出して申し上げなさる人もあった。とても口に出せずに、胸の内の思いに燃えている若い公達などもいるのだろう。その中には、事情を知らずに、内大臣の中将(柏木)なども恋い焦がれているようだ。
兵部卿宮は、また、長年連れ添っていらっしゃった北の方もお亡くなりになって、この三年ほど独り住みで寂しく過ごしていらっしゃるので、遠慮なく、今はご意向をお示しになっている。
今朝も、たいそうひどく酔ったふりをして、藤の花をかざして、しなやかに浮かれていらっしゃるご様子が、たいそう趣深い。大臣も、思っていたとおりになったと内心ではお思いになるけれど、努めて知らないふりをしていらっしゃる。
杯のついでに、宮はひどく困ったふりをなさって、「心に思うことがございませんでしたら、逃げ出してしまうところです。とても堪えられません」と、杯を辞退なさる。
「紫の藤の花ゆかりの方に心を寄せているので、淵に身を投げたという評判が立っても、惜しくはありません」と詠んで、大臣の君に「同じかざしを」と言って、藤の花を差し上げなさる。
源氏はたいそうほほえみなさって、「淵に身を投げるほどの値打ちがあるかどうか、この春は花のあたりを立ち去らずに、よく見定めなさい」と、しきりに引き止めなさるので、宮は立ち去ることもおできにならず、今朝の管弦の遊びは、いっそう趣深い。
意訳
玉鬘の評判が世に広まり、心を寄せる人が多い。内大臣の子の柏木は、姉とも知らずに恋をしている。三年ほど独り身の兵部卿宮は、遠慮なく求婚の意向を示している。
今朝も兵部卿宮は、酔ったふりをして藤の花をかざし、玉鬘への思いを歌に詠んで源氏に贈る。源氏は笑って、花のあたりを離れずに見ていよと返す。
語釈・文法注
- おなじかざしを
- 「わが宿の花のかざしを同じかざしとて手折りける人のゆかりを」による。源氏の娘とされる玉鬘を、同じ一族のゆかりとして求める気持ちを込める。
文法
- 反実仮想の「ずは…まし」(思ふ心侍らずは罷り逃げなまし)
- 「心に思うことがなかったら、逃げ出してしまうところです」。
- 反語の「やは」(名やはをしけき)
- 「評判が惜しいでしょうか、いや、惜しくない」。
和歌
むらさきのゆゑに心をしめたれば淵に身なげむ名やはをしけき
- 詠者
- 兵部卿宮(螢宮)
- 状況
- 藤の花をかざして、源氏に詠みかけた歌。紫の藤の花ゆかりの方(玉鬘)に心を寄せているので、藤の名にちなむ淵に身を投げたという評判が立っても、惜しくはありません。
修辞
- 掛詞
- 「ふち」に「淵」と「藤」をかける。「むらさき」は藤の色で、源氏のゆかりの人(玉鬘)を暗示する。
淵に身を投げつべしやとこの春は花のあたりを立ちさらで見よ
- 詠者
- 光源氏
- 状況
- 兵部卿宮への返歌。淵に身を投げるほどの値打ちがあるかどうか、この春は花のあたりを立ち去らずに、よく見定めなさい。
解説
源氏の思惑どおり、玉鬘は六条院に集う人々の心を騒がせる「くさはひ」となる。兵部卿宮、柏木、そして後に登場する髭黒の大将と、求婚者たちが次々に現れる。
柏木が実の姉とも知らずに玉鬘に恋するのは、悲劇とも喜劇ともつかない皮肉な状況である。物語は、玉鬘の素性が明らかになるまで、この緊張をはらんで進む。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、452–453頁(コマ230)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日