源氏物語 第24帖 胡蝶(2)
夜の宴
夕暮れ、皇麞の楽が聞こえるころ、船は釣殿に着き、女房たちは降りる。紫の上方の若い女房たちも、花に劣らぬ装いで並ぶ。夜になると庭に篝火をともし、上達部や親王たちも楽器を手に取って、管弦の遊びが夜通し続く。身分の低い者たちまで門のあたりに集まって聞き入り、春の調べの格別さを人々は思い知る。兵部卿宮が「青柳」を歌い、源氏も声を添える。夜明けの鳥のさえずりを、中宮は物越しにねたましく聞く。

- 1暮暮くれれれかゝるかゝるかかるほどほどほどにににととといふいふいうがくがくがくおもしろくおもしろくおもしろく聞聞きこゆるゆるゆるににに心心こころにににもももあらあらあらずずず釣殿釣殿つりどのにににさしさしさし寄寄よせせせられられられててておりおりおりぬぬぬ。。。こゝこゝここのののしつらひしつらひしつらいいといといとことことことそぎそぎそぎたるたるたるさまさまさまににになまめかしきなまめかしきなまめかしきににに、、、御御おんかたかたかたののの若若わかききき人人ひとどもどもども我我われももも劣劣おとらららじじじととと盡盡つくしししたるたるたるさうぞくさうぞくそうぞくかたちかたちかたち、、、花花はなをををこきこきこきまぜまぜまぜたるたるたる錦錦にしきににに劣劣おとらららずずず見見みえええわたるわたるわたる。。。
- 2世世よにににめめめなれなれなれずずず珍珍めずらからからかなるなるなるがくがくがくどもどもども仕仕つかうまつるうまつるうまつる。。。まひまひまい人人びとなどなどなど心心こころことことことににに選選えらばばばせせせ給給たまひひいててて人人ひとののの御心御心みこころゆくゆくゆくべきべきべき手手てののの限限かぎりををを盡盡つくさささせせせ給給たまふふう。。。
- 3夜夜よににに入入いりりりぬれぬれぬればばばいといといと飽飽あかかかぬぬぬ心地心地ここちしししててて御前御前おまえののの庭庭にわににに篝火篝火かがりびともともともしししててて、、、みはしみはしみはしのののもともともとののの苔苔こけのののうへうへうえにににがくがくがく人人ひと召召めしししててて上達部上達部かんだちめみこみこみこたちたちたちももも皆皆みなおのおのおのおのおのおの彈彈ひき物物もの吹吹ふき物物ものとりどりとりどりとりどりにににししし給給たまふふう。。。
- 4ものゝものゝものの師師しどもどもども殊殊ことににに勝勝すぐれれれたるたるたるかぎりかぎりかぎりそうでうそうでうそうぢょう吹吹ふきききたてたてたてゝゝて、、、うへうへうえににに待待まちちちとるとるとる御御おん琴琴ことどもどもどものののしらべしらべしらべいといといと華華はなやかやかやかににに搔搔かききき立立たてててゝゝて遊遊あそびびび給給たまふふう程程ほど生生いけけけるるるかひかひかいありありありととと、、、何何なにのののあやめあやめあやめもももしらしらしらぬぬぬしづしづしずのののをををもももみかどみかどみかどのののわたりわたりわたりひまひまひまなきなきなき馬馬うま車車くるまのののたちとたちとたちとにににまじりまじりまじりてててゑみゑみえみさかえさかえさかえ聞聞ききききけりけりけり
- 5空空そらののの色色いろものものものゝゝの音音ねももも春春はるのののしらべしらべしらべひゞきひゞきひびきはははいといといと殊殊ことにににまさりまさりまさりけるけるけるけぢめけぢめけじめををを人々人々びとおぼしおぼしおぼしわくわくわくらむらむらんかしかしかし。。。よもすがらよもすがらよもすがら遊遊あそびびび明明あかししし給給たまふふう。。。
- 6かへりかへりかえり聲聲ごえににに喜春樂喜春樂きしゅんらくたちたちたちそひそひそいててて、、、兵部卿兵部卿ひょうぶきょう宮宮みやをりをりおりかへしかへしかえしおもしろくおもしろくおもしろく謠謠うたひひい給給たまふふう。。。あるじあるじあるじのののおとゞおとゞおとどもももことことこと加加くわへへえ給給たまふふう。。。
- 7夜夜よももも明明あけけけぬぬぬ。。。朝朝あさぼらけぼらけぼらけののの鳥鳥とりのののさへづりさへづりさえずりををを中宮中宮ちゅうぐうははは物物もの隔隔へだてててゝゝてねたうねたうねとう聞聞きこしめししめししめしけりけりけり。。。
現代語訳
暮れかかるころに、皇麞という楽が趣深く聞こえる中、名残惜しくも釣殿に漕ぎ寄せられて、女房たちは船から降りた。ここの設えはたいそう簡素で優美なところに、こちら(紫の上)の若い女房たちが、我も劣るまいと尽くした装束や容貌が、花を混ぜ合わせた錦にも劣らず見渡される。
世に見慣れない珍しい楽などを奏する。舞人なども格別にお選びになって、人々が満足するような舞の手を尽くさせなさる。
夜になったので、たいそう名残惜しい気持ちがして、御前の庭に篝火をともして、御階のもとの苔の上に楽人をお召しになって、上達部や親王たちも皆、それぞれ弾き物や吹き物を手に取って演奏なさる。
楽師たちの中でも特にすぐれた者ばかりが、双調の音を吹き立てて、上で待ち受ける御琴などの調べを、たいそう華やかにかき鳴らして、「安名尊」を合奏なさるときは、生きているかいがあると、何の分別も知らない卑しい男たちまでも、御門のあたりに隙間もない馬や車の立ち並ぶ所に交じって、笑み栄えて聞き入っていた。
空の色も楽の音も、春の調べの響きは格別にまさっていたことの違いを、人々は思い知っていることだろう。夜通し管弦の遊びをして明かしなさる。
返り声に喜春楽が加わって、兵部卿宮が「青柳」を繰り返し趣深くお歌いになる。主人の大臣(源氏)も言葉を加えなさる。
夜も明けた。朝ぼらけの鳥のさえずりを、中宮は物を隔てて、ねたましくお聞きになった。
意訳
夕暮れ、船は釣殿に着き、女房たちは降りる。夜になると庭に篝火をともし、上達部や親王たちも楽器を手に取って、管弦の遊びが夜通し続く。身分の低い者たちまで門のあたりに集まって聞き入る。
兵部卿宮が「青柳」を歌い、源氏も声を添える。夜明けの鳥のさえずりを、中宮は物越しにねたましく聞く。
語釈・文法注
- わうじやう
- 皇麞(おうじょう)。唐楽の曲名。平調の曲。
- あなたうと
- 催馬楽「安名尊(あなとうと)」。「あな尊、今日の尊さや、古もはれ、古もかくやありけむや、今日の尊さ」。祝いの席で歌われる。
- あをやぎ
- 催馬楽「青柳」。「青柳を片糸に縒りて、や、おけや、鶯の縫ふてふ笠は、おけ、梅の花笠や」。
文法
- 推量の「らむ」(おぼしわくらむかし)
- 現在推量。「思い知っていることだろうよ」。
- 「けぢめ」
- 違い、区別。春の調べが格別だったことの違いを、人々が感じ取ったことをいう。
解説
夜を徹しての管弦の遊びは、六条院の春の栄華の極みである。身分の低い者たちまでが門の外に集まって聞き入る様子は、源氏の威勢が都中に及んでいることを示している。
夜明けの鳥のさえずりを、秋の町の中宮が「ねたう」聞くという結びは、春秋の争いの決着を、春の側の勝利としてほのめかしている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、452–453頁(コマ230)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日