源氏物語 第23帖 初音(8)
男踏歌
この年は男踏歌があり、一行は宮中から朱雀院を回って、夜明け近くに六条院に到着する。女君たちは、寝殿の左右の対や渡殿に集まって見物し、玉鬘は初めて明石の姫君や紫の上と対面する。月の澄む夜明けの薄雪の庭で、青色の袍に白襲の踏歌の人々が竹河を歌い、夕霧や内大臣の子息たちも目立って美しい。女君たちの袖口がこぼれ出るさまは、春の錦のようである。翌朝、源氏は夕霧の歌声を褒め、女君たちを集めて管弦の遊びを催そうと、琴を整えさせる。

- 1今年今年ことしははは男男おとこ踏踏とうありありあり、、、うちうちうちよりよりより朱雀院朱雀院すざくいんににに參參まいりりりててて次次つぎにににこのこのこの院院いんにににまゐるまゐるまいる。。。道道みちののの程程ほど遠遠とおくくくててて夜夜よののの明明あけ方方がたににになりなりなりにににけりけりけり。。。
- 2月月つきののの曇曇くもりりりなくなくなくすみすみすみまさりまさりまさりててて薄薄うす雪雪ゆき少少すこししし降降ふれれれるるる庭庭にわのののえならえならえならぬぬぬににに、、、殿上人殿上人てんじょうびとなどなどなどもももものものものゝゝの上手上手じょうず多多おおかるかるかるころほひころほひころおいにてにてにて、、、笛笛ふえののの音音ねもももいといといとおもしろくおもしろくおもしろく吹吹ふききき立立たてててゝゝてこのこのこのおまへおまへおまえははは殊殊ことににに心心こころづかひづかひずかいしししたりたりたり。。。
- 3御御おん方々方々かたがた物物もの見見みににに渡渡わたりりり給給たまふふうべくべくべくかねてかねてかねて御御おんせうそこせうそこしょうそこどもどもどもありありありけれけれければばば、、、左右左右さゆうののの對對たい、、、渡殿渡殿わたどのなどなどなどににに御御おんつぼねつぼねつぼねしししつゝつゝつつおはすおはすおわす。。。西西にしののの對對たいののの姫君姫君ひめぎみははは寢殿寢殿しんでんののの南南みなみののの御御おん方方かたににに渡渡わたりりり給給たまひひいててて、、、こなたこなたこなたののの姫君姫君ひめぎみににに御御おんたいめんたいめんたいめんありありありけりけりけり。。。上上うえもももひとゝころひとゝころひとところにににおはしませおはしませおわしませばばば御御おん几帳几帳きちょうばかりばかりばかり隔隔へだてててゝゝて聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 4朱雀院朱雀院すざくいん、、、きさいきさいきさいののの宮宮みやののの御御おん方方かたなどなどなどめぐりめぐりめぐりけるけるける程程ほどににに夜夜よもももやうやうやうやうようよう明明あけけけ行行ゆけけけばばば、、、みづうまやみづうまやみずうまやにてにてにてことことことそがそがそがせせせ給給たまふふうべきべきべきををを、、、例例れいあるあるあることことことよりよりより外外ほかにににさまさまさまことことことにににことことこと加加くわへへえててていみじくいみじくいみじくもてもてもてはやさはやさはやさせせせ給給たまふふう。。。
- 5影影かげすさまじきすさまじきすさまじき曉曉あかつき月月ずく夜夜よににに雪雪ゆきはははやうやうやうやうようよう降降ふりりり積積つむむむ。。。松松まつ風風かぜ木木こ高高だかくくく吹吹ふきききおろしおろしおろし物物ものすさまじくすさまじくすさまじくもももありありありぬぬぬべきべきべき程程ほどににに、、、靑靑あお色色いろのののなえばめなえばめなえばめるるるにににしらがさねしらがさねしらがさねののの色色いろあひあひあい何何なにのののかざりかざりかざりかかかははは見見みゆるゆるゆる。。。かざしかざしかざしののの綿綿わたははは匂匂においもももなきなきなきものものものなれなれなれどどど、、、所所ところからからからにににやややおもしろくおもしろくおもしろく心心こころゆきゆきゆき命命いのちのぶるのぶるのぶるほどほどほどなりなりなり。。。
- 6殿殿とのののの中將中將ちゅうじょうののの君君きみ內內うちののの大殿大殿おおとののののきんだちきんだちきんだちそこらそこらそこらにににすぐれすぐれすぐれてててめやすくめやすくめやすく華華はなやかやかやかなりなりなり。。。ほのぼのほのぼのほのぼのととと明明あけけけ行行ゆくくくににに雪雪ゆきやゝやゝやや散散ちりりりてててそゞろそゞろそぞろ寒寒さむきききににに竹竹たけ謠謠うたひひいてててかよれかよれかよれるるるすがたすがたすがたなつかしきなつかしきなつかしき聲々聲々こえごえののの、、、繪繪えにににももも書書かきききとめとめとめ難難がたからからからむむんこそこそこそ口惜口惜くちおしけれしけれしけれ。。。
- 7御御おん方々方々かたがたいづれいづれいずれもももいづれいづれいずれももも劣劣おとらららぬぬぬ袖袖そで口口ぐちどもどもどもこぼれこぼれこぼれ出出いでででたるたるたるこちたさこちたさこちたさ、、、物物ものののの色色いろあひあひあいなどなどなどももも曙曙あけぼのののの空空そらににに春春はるののの錦錦にしき立立たちちち出出いでででにににけるけるける霞霞かすみのののうちうちうちかかかととと見見み渡渡わたさささるるる怪怪あやしくしくしく心心こころゆくゆくゆく見見み物物ものにににぞぞぞありありありけるけるける。。。
- 8さるはさるはさるはかうごしかうごしこうごしのののよばなれよばなれよばなれたるたるたるさまさまさま、、、ことぶきことぶきことぶきのののみだりがはしきみだりがはしきみだりがわしき、、、をこめきをこめきおこめきたるたるたることことこともももことごとしくことごとしくことごとしくとりとりとりなしなしなしたるたるたる、、、なかなかなかなかなかなか何何なにばかりばかりばかりのののおもしろかるおもしろかるおもしろかるべきべきべき拍子拍子ひょうしももも聞聞きこえええぬぬぬものものものををを、、、例例れいののの綿綿わたかづきかづきかずき渡渡わたりりりてててまかでまかでまかでぬぬぬ。。。夜夜よ明明あけけけはてはてはてぬれぬれぬればばば御御おん方々方々かたがた歸歸かえりりり渡渡わたりりり給給たまひひいぬぬぬ。。。
- 9おとゞおとゞおとどののの君君きみ少少すこししし大殿大殿おおとのごもりごもりごもりててて日日ひたかくたかくたかく起起おききき給給たまへへえりりり。。。「「「中將中將ちゅうじょうののの聲聲こえははは辨辨べんののの少將少將しょうしょうにににをさをさをさをさおさおさ劣劣おとらららざざざめるめるめるははは。。。怪怪あやしくしくしくいうそくいうそくいうそくどもどもどもおひおひおい出出いづるづるずるころほひころほひころおいにににこそこそこそあれあれあれ。。。いにしへいにしへいにしえののの人人ひとははは誠誠まことににに賢賢かしこききき方方かたやややすぐれすぐれすぐれたるたるたる事事ことももも多多おおかりかりかりけむけむけん。。。なさけだつなさけだつなさけだつすぢすぢすじはははこのこのこの頃頃ころののの人人ひとにににえええしもしもしもまさらまさらまさらざりざりざりけむけむけんかしかしかし。。。
- 10中將中將ちゅうじょうなどなどなどをををばばば、、、すくすくしきすくすくしきすくすくしきおほやけおほやけおおやけ人人ひとにににしししなしなしなしてててむむんとととなむなむなん思思おもひひい置置おきききてててししし。。。自自みずからららのののあざればみあざればみあざればみたるたるたるかたくなしさかたくなしさかたくなしさはははもてもてもてはなれよはなれよはなれよととと思思おもひひいしかしかしかどどど、、、猶猶なおしたしたしたにににはははほのほのほのすきすきすきたるたるたるすぢすぢすじののの心心こころをををこそこそこそとゞむとゞむとどむべかべかべかめれめれめれ。。。もてもてもてしづめしづめしずめ、、、すくよかすくよかすくよかなるなるなるうはべうはべうわべばかりばかりばかりははは、、、うるさかうるさかうるさかめりめりめり」」」などなどなどいといといとうつくしうつくしうつくしとととおぼしおぼしおぼしたりたりたり。。。
- 11御御おん口口くちずさびずさびずさびにににのたまひのたまひのたまいててて、、、「「「人々人々びとのののこなたこなたこなたにににつどひつどひつどい給給たまへへえるるる序序ついでにににいかでいかでいかでものものものゝゝの音音ね試試こころみみみてててしししがががななな、、、私私わたくしのののごえんごえんごえんあるあるあるべしべしべし」」」とととののの給給たまひひいててて、、、御御おん琴琴ことどもどもどものののうるはしきうるはしきうるわしき袋袋ふくろどもどもどもしししててて、、、ひめひめひめ置置おかかかせせせ給給たまへへえるるる、、、皆皆みな引引ひききき出出いでででゝゝて押押おしししのごひのごひのごいてててゆるべゆるべゆるべるるるをををとゝのへとゝのへととのえさせさせさせ給給たまひひいなどなどなどすすす。。。御御おんかたがたかたがたかたがた心心こころづかひづかひずかいいたくいたくいたくしししつゝつゝつつ心心こころげさうげさうげそうををを盡盡つくししし給給たまふふうらむらむらんかしかしかし。。。
現代語訳
今年は男踏歌があって、宮中から朱雀院に参って、次にこの院に参る。道のりが遠くて、夜明け方になってしまった。
月が曇りなく澄みまさって、薄雪が少し降っている庭のすばらしさに、殿上人なども音楽の名手が多いころで、笛の音もたいそう趣深く吹き立てて、この御前では特に心づかいをしている。
御方々は見物においでになるようにと、前もってお便りがあったので、左右の対や渡殿などに局を設けていらっしゃる。西の対の姫君(玉鬘)は、寝殿の南の御方においでになって、こちらの姫君(明石の姫君)にご対面があった。上(紫の上)も同じ所にいらっしゃるので、御几帳だけを隔ててお話し申し上げなさる。
朱雀院や后の宮の御方などを回っているうちに、夜もしだいに明けてゆくので、本来は水駅として簡略になさるべきところを、例のあることよりほかに、格別に趣向を加えて、たいそうもてはやしなさる。
光の寒々とした暁の月夜に、雪はしだいに降り積もる。松風が木高く吹き下ろして、何となく寒々としそうなころに、青色の袍のなえたものに白襲の色合いは、何の飾りとも見えない。かざしの綿の花は色香もないものだけれど、場所柄のせいか、趣深く満ち足りて、命の延びるほどである。
殿の中将の君(夕霧)や内大臣の御子息たちは、大勢の中でひときわすぐれて、感じよく華やかである。ほのぼのと明けてゆくころに、雪が少し散って何となく寒いので、竹河を歌って舞い寄る姿や慕わしい声々が、絵にも描きとめがたいのは残念なことだ。
御方々の、どれも劣らない袖口などがこぼれ出ている仰々しさや、衣装の色合いなども、曙の空に春の錦が立ち出たような霞の中かと見渡されて、不思議なほど満ち足りる見物であった。
そうはいっても、高巾子の世離れした様子や、祝言の乱れがちなこと、滑稽なことも大げさに取りなしたのは、かえって何ほどの面白い拍子も聞こえないものだが、例によって綿をかずけられて退出した。夜がすっかり明けたので、御方々はお帰りになった。
大臣の君は少しお休みになって、日が高くなってからお起きになった。「中将の声は、弁の少将にほとんど劣らないようだ。不思議なほど、すぐれた人々が育つ時代だね。昔の人は、本当に学識の方面ですぐれたことも多かったろう。情趣のある方面では、この頃の人にまさってはいなかったろうよ。
中将などは、まじめな朝廷の役人にしようと心に決めていた。私自身の浮ついた愚かさからは離れてほしいと思っていたけれど、やはり内心には、少し好色めいた心をとどめておくべきだろう。取り澄まして、まじめな表面だけでは、うるさいようだ」などと、たいそうかわいらしくお思いになっている。
「万春楽」を口ずさみなさって、「方々がこちらに集まっていらっしゃるついでに、何とかして楽器の音を試してみたいものだ。私的な後宴があってよいだろう」とおっしゃって、御琴などの、立派な袋に入れてしまっておかせなさっていたのを、皆取り出して、ぬぐって、緩んだ弦を調えさせなさったりする。御方々は、たいそう心づかいをして、緊張していらっしゃることだろう。
意訳
男踏歌が六条院に回ってきて、女君たちは集まって見物し、玉鬘は初めて明石の姫君や紫の上と対面する。夜明けの薄雪の庭で、踏歌の人々が竹河を歌い、夕霧や内大臣の子息たちも目立って美しい。
翌朝、源氏は夕霧の歌声を褒め、まじめな役人にしようと思っていたが、少しは風流な心も持つべきだと語る。源氏は、女君たちを集めて管弦の遊びを催そうと、琴を整えさせる。
語釈・文法注
- 男踏歌
- 正月十四日に、男性が足を踏み鳴らして歌い舞いながら、宮中や上皇・后の御所を回る行事。夜を徹して行われた。
- 竹川
- 催馬楽「竹河」。「竹河の橋の詰なるや、花園に、はれ、花園に、我をば放てや、少女たぐへて」。踏歌の際に歌われた。
- ばんすらく
- 万春楽。踏歌の際に歌われる祝いの詞。「万春楽」と繰り返し唱える。
文法
- 推量の「べかめれ」(とゞむべかめれ)
- 「とどめておくべきだろう」。「べかるめれ」の撥音便無表記。
- 願望の「てしがな」(試みてしがな)
- 「試してみたいものだ」。
解説
男踏歌の場面は、六条院の女君たちが一堂に会する華やかな場面である。玉鬘はここで初めて紫の上や明石の姫君と対面し、六条院の一員として迎え入れられる。
源氏が夕霧に少しは風流な心も持つべきだと語るのは、学問一筋に育てた息子への親心である。初音の巻は、六条院の正月の華やぎを描き尽くして閉じられ、次の胡蝶の巻の春の宴へと続く。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、448–451頁(コマ228–229)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日