源氏物語 第23帖 初音(5)
臨時客
臨時客の宴には、上達部や親王たちが残らず参上し、管弦の遊びや引き出物も比べるものがないほど盛大である。優れた人々も、源氏の前では気おされてしまう。若い上達部たちは、玉鬘のことを思って心を浮き立たせている。梅の花がほころびる夕暮れ、催馬楽「此殿」が華やかに歌われ、源氏も声を添える。御簾の内で聞いている女君たちは、まだ開かない蓮の中にいるような、もどかしい思いをしている。

- 1上達部上達部かんだちめみこみこみこ達達たちなどなどなど、、、例例れいののの殘殘のこりりりなくなくなく參參まいりりり給給たまへへえりりり。。。御御おん遊遊あそびありありありててて。。。引引ひき出出いで物物もの祿祿ろくなどなどなどににになしなしなし。。。そこらそこらそこら集集つどひひい給給たまへへえるるるががが我我われももも劣劣おとらららじじじととともてもてもてなしなしなし給給たまへへえるるる中中なかにににももも、、、少少すこしししなづらひなづらひなずらいなるなるなるだにだにだに見見みえええ給給たまははわぬぬぬものものものかなかなかな。。。
- 2とりとりとりはなちはなちはなちてててはははいうそくいうそくいうそく多多おおくくく物物ものししし給給たまふふうころころころなれなれなれどどど、、、御前御前おまえにてにてにてはははけおさけおさけおされれれ給給たまふふうわるしわるしわるしかしかしかし。。。何何なにののの數數かずならならならぬぬぬ下下しも部部べどもどもどもなどなどなどだにだにだに、、、このこのこの院院いんににに參參まいるるるにににははは心心こころづかひづかひずかいことことことなりなりなりけりけりけり。。。
- 3ましてましてまして若若わかやかやかやかなるなるなる上達部上達部かんだちめなどなどなどははは思思おもふふう心心こころなどなどなど物物ものししし給給たまひひいててて、、、すゞろすゞろすずろににに心心こころげさうげさうげそうししし給給たまひひいつゝつゝつつ常常つねののの年年としよりよりよりももも殊殊ことなりなりなり。。。
- 4花花はなのののかかか誘誘さそふふう夕夕ゆう風風かぜ長閑長閑のどかににに打打うちちち吹吹ふきききたるたるたるににに、、、おおお前前まえののの梅梅うめやうやうやうやうようようひもときひもときひもときてててあれあれあれははは誰誰たどきどきどきなるなるなるににに、、、物物もののののしらべしらべしらべどもどもどもおもしろくおもしろくおもしろくこのこのこのうちうちうち出出いでででたるたるたる拍子拍子ひょうしいといといと華華はなやかやかやかなりなりなり。。。
- 5おとゞおとゞおとどももも時々時々ときどき聲聲こえうちうちうち添添そへへえ給給たまへへえるるるさきくささきくささきくさののの末末すえつかたつかたつかた、、、いといといと懷懷なつかしうしうしゅうめでたくめでたくめでたく聞聞きこゆゆゆ。。。何事何事なにごともももさしさしさしいらへいらへいらえししし給給たまふふう御御おん光光ひかりにににはやさはやさはやされれれててて、、、色色いろをををももも香香かをををもももますますますけぢめけぢめけじめことことことににになむなむなんわかれわかれわかれけるけるける。。。
- 6かくかくかくのゝしるのゝしるののしる馬馬うま車車くるまののの音音おとをををももも物物もの隔隔へだてててゝゝて聞聞きききき給給たまふふう御御おん方々方々かたがたははは、、、はちすはちすはちすののの中中なかののの世界世界せかいにににまだまだまだ開開ひらけけけざらざらざらむむん心地心地ここちもももかくかくかくやややととと心心こころやましげやましげやましげなりなりなり。。。
現代語訳
上達部や親王たちなどが、例年のように残らず参上なさった。管弦の遊びがあって、引き出物や禄なども比べるものがない。大勢集まっていらっしゃる方々が、我も劣るまいと振る舞っていらっしゃる中にも、少しでも源氏に並ぶ方さえお見えにならないことよ。
一人一人を取り出してみれば、教養のある方々が多くいらっしゃるころだけれど、源氏の御前では気おされてしまわれるのは、気の毒なことよ。何の数にも入らない下部たちでさえ、この院に参上するときは、心づかいが格別であった。
まして若々しい上達部などは、思う心(玉鬘への思い)などがおありになって、何となく緊張して気取っていらっしゃるので、いつもの年とは格別である。
花の香を誘う夕風がのどかに吹いているところに、御前の梅がしだいにほころんで、人の顔も見分けにくい黄昏時に、楽器の調べなどが趣深く、「此殿」を歌い出した拍子がたいそう華やかである。
大臣も時々お声を添えなさる「さきくさ」の末のあたりが、たいそう慕わしくすばらしく聞こえる。何事も、源氏が相手をなさるご威光に引き立てられて、色も香も増す違いが格別に見分けられた。
このように騒がしい馬や車の音を、物を隔てて聞いていらっしゃる御方々は、極楽の蓮の中にまだ開かないでいる心地も、このようなものかと、もどかしそうである。
意訳
臨時客の宴には、上達部や親王たちが残らず参上し、管弦の遊びも盛大である。優れた人々も、源氏の前では気おされてしまう。若い上達部たちは、玉鬘のことを思って心を浮き立たせている。
夕暮れ、催馬楽「此殿」が華やかに歌われ、源氏も声を添える。御簾の内で聞いている女君たちは、まだ開かない蓮の中にいるような、もどかしい思いをしている。
語釈・文法注
- このとの
- 催馬楽「此殿」。「この殿は、むべも富みけり、さきくさの、あはれ、さきくさの、はれ、さきくさの、三つ葉四つ葉の中に、殿造りせりや」。家の繁栄を祝う歌。
文法
- 「だに」(少しなづらひなるだに見え給はぬ)
- 「少しでも並ぶ方さえ見えない」。
- 推量の「む」(まだ開けざらむ心地)
- 婉曲。「まだ開かないでいるような心地」。
解説
臨時客の宴は、六条院の栄華を示す華やかな場面である。若い上達部たちが玉鬘を意識して緊張している様子は、源氏が姫君を「すきものどもの心つくさするくさはひ」にしようとした思惑が、早くも実を結びつつあることを示している。
御簾の内で宴の音を聞く女君たちを、極楽の蓮のつぼみの中にいる者にたとえる表現は、華やかな宴から隔てられた女性たちの立場を印象的に描く。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、444–447頁(コマ226–227)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日