源氏物語 第23帖 初音(3)
花散里と玉鬘
源氏は夏の町の花散里を訪ねる。今は夫婦の睦びはなく、穏やかな情愛で結ばれた仲である。花散里は盛りを過ぎ、髪も少なくなっているが、源氏は、自分を頼り続けてくれる心の重さをうれしく思う。続いて西の対の玉鬘を訪ねると、山吹の衣装の映える華やかな美しさで、物思いのせいか髪の裾が少し細くなっているのも、かえって清らかに見える。源氏は、紫の上のもとにも遊びに行き、明石の姫君と琴を習うよう勧める。

- 1夏夏なつののの御御おんすまひすまひすまいををを見見み給給たまへへえばばば、、、時時ときならならならぬぬぬけけけにににやややいといといとしづかしづかしずかににに見見みえええてててわざとわざとわざと好好このましきましきましきことことこともももなくなくなく、、、あてやかあてやかあてやかににに住住すみみみなしなしなし給給たまへへえるるるけはひけはひけわい見見みえええわたるわたるわたる。。。年年とし月月つきににに添添そへへえててて御心御心みこころのののへだてへだてへだてもももなくなくなく、、、あはれあはれあわれなるなるなる御御おんなからひなからひなからいなりなりなり。。。
- 2今今いまはははあながちあながちあながちににに近近ちかやかやかやかなるなるなる御御おん有樣有樣ありさまももももてもてもてなしなしなし聞聞きこえええ給給たまははわざりざりざりけりけりけり。。。いといといと睦睦むつましくしくしくありがたからありがたからありがたからむむんいもせいもせいもせののの契契ちぎりばかりばかりばかり聞聞きこえええかはしかはしかわし給給たまふふう。。。御御おん几帳几帳きちょう隔隔へだてててたれたれたれどどど少少すこししし押押おししし遣遣やりりり給給たまへへえばばばまたまたまたさてさてさておはすおはすおわす。。。
- 3はなだはなだはなだはははげにげにげににほひにほひにおい多多おおからからからぬぬぬあはひあはひあわいにてにてにて、、、御御おんぐしぐしぐしなどなどなどもももいたくいたくいたく盛盛さかり過過すぎぎぎにににけりけりけり。。。やさしきやさしきやさしき方方かたにににあらあらあらねねねどどどしししてててぞぞぞつくろひつくろひつくろい給給たまふふうべきべきべき、、、われわれわれならならならざらざらざらむむん人人ひとはははみみみざめざめざめしししぬぬぬべきべきべき御御おん有樣有樣ありさまをををかくかくかくててて見見みるるるこそこそこそ嬉嬉うれしくしくしくほいほいほいあれあれあれ、、、かろきかろきかろき人人ひとのののつらつらつらにてにてにて我我われにににそむきそむきそむき給給たまひひいなななましかましかましかばばばなどなどなど、、、
- 4御御おん對面對面たいめんののの折々折々おりおりにににはははまづまづまず我我わががが御心御心みこころのののながさながさながさももも人人ひとののの御心御心みこころののの重重おもきききをををももも嬉嬉うれしくしくしく思思おもふふうやうやうようなりなりなりとととおぼしおぼしおぼしけりけりけり。。。こまやかこまやかこまやかにににふるふるふる年年としののの御御おん物語物語ものがたりなどなどなどなつかしくなつかしくなつかしく聞聞きこえええ給給たまひひいててて西西にしののの對對たいへへへ渡渡わたりりり給給たまふふう。。。
- 5まだまだまだいたくいたくいたくももも住住すみみみ馴馴なれれれ給給たまははわぬぬぬ程程ほどよりよりよりはははけはひけはひけわいをかしくをかしくおかしくしししなしなしなしててて、、、をかしげをかしげおかしげなるなるなるわらはべわらはべわらわべののの姿姿すがたなまめかしくなまめかしくなまめかしく、、、人人ひとかげかげかげのののあまたあまたあまたしししててて御御おんしつらひしつらひしつらいあるあるあるべきべきべき限限かぎりなれなれなれどもどもども、、、こまやかこまやかこまやかなるなるなる御御おん調度調度ちょうどはははいといといとしもしもしも整整ととのへへえ給給たまははわぬぬぬをををさるさるさる方方かたににに物物もの淸淸きよげげげににに住住すみみみなしなしなし給給たまへへえるるる。。。
- 6さうじみさうじみそうじみもももあなあなあなをかしげをかしげおかしげとととふとふとふと見見みえええててて、、、山吹山吹やまぶきにににもてもてもてはやしはやしはやし給給たまへへえるるる御御おんかたちかたちかたちなどなどなどいといといと花花はなやかやかやかにににこゝこゝここににに曇曇くもれれれるるるととと見見みゆるゆるゆる所所ところなくなくなく、、、隈隈くまなくなくなくにほひにほひにおいきらきらしくきらきらしくきらきらしく見見みまほしきまほしきまほしきさまさまさまぞぞぞししし給給たまへへえるるる。。。
- 7物物もの思思おもひひいににに沈沈しずみみみ給給たまへへえるるる程程ほどのののしわざしわざしわざにににややや、、、髮髮かみののの裾裾すそ少少すこしししほそりほそりほそりてててさばらかさばらかさばらかにににかゝれかゝれかかれるるるしもしもしもいといといとものものもの淸淸きよげげげににに、、、此處此處ここ彼處彼處かしこいといといとけざやかけざやかけざやかなるなるなるさまさまさまししし給給たまへへえるるるををを、、、かくかくかくててて見見みざらざらざらましかましかましかばばばとととおもほすおもほすおもおすにににつけつけつけてててはははえええしもしもしも見見みすぐしすぐしすぐし給給たまふふうまじくまじくまじくややや。。。
- 8かくかくかくいといといと隔隔へだてなくなくなく見見み奉奉たてまつりりりなれなれなれ給給たまへへえどどど、、、なほなほなおおもふおもふおもうにににへだゝりへだゝりへだたり多多おおくくく怪怪あやしきしきしきがががうつゝうつゝうつつののの心地心地ここちもももししし給給たまははわねねねばばば、、、まほまほまほならならならずずずもてもてもてなしなしなし給給たまへへえるるるもももいといといとをかしをかしおかし。。。
- 9「「「年年とし頃頃ごろににになりなりなりぬるぬるぬる心地心地ここちしししててて見見み奉奉たてまつるるるももも心心こころ安安やすくくくほいほいほいかなひかなひかないぬるぬるぬるをををつゝみつゝみつつみなくなくなくもてもてもてなしなしなし給給たまひひいててて、、、あなたあなたあなたなどなどなどにににももも渡渡わたりりり給給たまへへえかしかしかし。。。いはけなきいはけなきいわけなきうひうひうい琴琴ごとならふならふならう人人ひともももあああめるめるめるををを諸共諸共もろともににに聞聞ききききならしならしならし給給たまへへえ。。。後後うしろめたくめたくめたくあはつけきあはつけきあわつけき心心こころもたもたもたるるる人人ひとなきなきなき所所ところなりなりなり」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、「「「のたまはのたまはのたまわむむんまゝまゝままにににこそこそこそははは」」」ととと聞聞きこえええ給給たまふふう。。。さささもももあるあるあることことことぞぞぞかしかしかし。。。
現代語訳
夏の町のお住まいをご覧になると、季節でないためか、たいそう静かに見えて、特に風流めいたこともなく、上品に住みなしていらっしゃる様子がうかがえる。年月とともに、お心の隔てもなく、しみじみとしたお仲である。
今は、無理に男女として近しくお扱い申し上げることもなさらなかった。たいそう睦まじく、めったにないような夫婦の契りだけを申し交わしていらっしゃる。御几帳を隔てていらっしゃるけれど、源氏が少し押しやりなさると、そのままでいらっしゃる。
縹色の衣は、なるほど華やかさの乏しい色合いで、御髪などもひどく盛りを過ぎてしまった。優美な方面ではないけれど、かもじを足してでも身づくろいなさるべきだろう、私以外の人なら見て興ざめしてしまうだろうご様子を、こうして世話をしているのがうれしく本望である、軽々しい人のように私に背きなさったらなどと、
ご対面の折々には、まず自分の心の長さも、相手の心の重々しさも、うれしく思い通りだとお思いになった。こまやかに去年のお話などを親しく申し上げなさって、西の対(玉鬘)においでになる。
まだそれほど住み慣れていらっしゃらないわりには、様子を趣深く整えて、かわいらしい女童の姿も優美で、人影も多くて、お部屋の設えはあるべき限りそろっているけれど、細々とした御調度は、それほどお整えになっていないのを、それなりにこざっぱりと住みなしていらっしゃる。
ご本人も、ああ美しいとぱっと目に入って、山吹の衣装に引き立てられていらっしゃるご容貌などは、たいそう華やかで、ここが曇っていると見える所もなく、隅々まで照り輝くように美しく、いつまでも見ていたいご様子をしていらっしゃる。
物思いに沈んでいらっしゃったころのせいだろうか、髪の裾が少し細くなって、さらりとかかっているのも、かえってたいそう清らかで、あちらこちらがたいそうくっきりとしたご様子でいらっしゃるのを、こうして世話をしなかったらとお思いになるにつけては、とても見過ごしにはおできになれないのではないか。
こうしてたいそう隔てなくお会いし慣れていらっしゃるけれど、姫君は、やはり考えると隔たりが多く、妙な間柄で現実のこととも思えないので、まともに向き合わないようにしていらっしゃるのも、たいそう趣がある。
「長年連れ添った気がして、お会いするのも気楽で、本望がかなったのだから、遠慮なくふるまいなさって、あちら(紫の上の方)などにもおいでなさい。幼い初めての琴を習う人(明石の姫君)もいるようだから、一緒にお聞きになって習いなさい。気がかりな、軽薄な心を持った人はいない所です」と申し上げなさると、「おっしゃるとおりにいたします」と申し上げなさる。それももっともなことよ。
意訳
源氏は夏の町の花散里を訪ねる。今は夫婦の睦びはなく、穏やかな情愛で結ばれた仲である。花散里は盛りを過ぎているが、源氏は、自分を頼り続けてくれる心の重さをうれしく思う。
続いて西の対の玉鬘を訪ねると、山吹の衣装の映える華やかな美しさである。源氏は、紫の上のもとにも遊びに行き、明石の姫君と琴を習うよう勧める。
語釈・文法注
- えびかづら
- 葡萄葛。ここでは、かもじ(添え髪)のこと。髪の少なくなった花散里は、かもじで補って身づくろいするのがよいと源氏は思う。
文法
- 反実仮想の「ましかば」(そむき給ひなましかば)
- 「背きなさったら(どうだっただろう)」。後半が省略されている。
- 反実仮想の「ましかば」(かくて見ざらましかば)
- 「こうして世話をしなかったら(惜しかっただろう)」。
解説
花散里と源氏の関係は、男女の愛情を超えた、穏やかな信頼で結ばれている。源氏は、容貌が衰えても自分を頼り続ける花散里の誠実さを高く評価している。
玉鬘の華やかな美しさに、源氏は「え見すぐし給ふまじくや」と、心を動かされつつある。語り手の言葉は、のちの源氏の恋心を予告している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、442–445頁(コマ225–226)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日