古典ライブラリー

源氏物語 第20帖 朝顔(8)

雪の夜の女性評

登場人物:光源氏・紫の上・藤壺・朝顔の姫君・朧月夜・明石の君・花散里

雪の積もった月夜、源氏は御簾を巻き上げさせ、冬の月と雪の光こそ身にしみると語る。童女たちに雪まろばしをさせながら、源氏は紫の上に、昔藤壺が雪の山を作らせたことを思い出して、藤壺の人柄を語る。さらに朝顔の姫君、朧月夜、明石の君、花散里のことを語り合い、夜が更ける。紫の上は月を見て歌を詠み、源氏はその姿に藤壺の面影を見て心を取り戻し、鴛鴦の鳴く声に昔を恋う歌を詠む。

雪の積もった月夜の二条院で、御簾を巻き上げた縁先から、源氏と紫の上が、童女たちが雪まろばしをする姿を眺めている場面(AI生成)
雪の積もった月夜の二条院で、御簾を巻き上げた縁先から、源氏と紫の上が、童女たちが雪まろばしをする姿を眺めている場面
  1. 1雪ゆき雪ゆきゆきののの痛いた痛いたいとううう降ふ降ふふりりり積つも積つもつもりりりたるたるたる上うへ上うへうえににに今いま今いまいまももも散ち散ちちりりりつゝつゝつつ松まつ松まつまつととと竹たけ竹たけたけとととのののけぢめけぢめけじめをかしうをかしうおかしゅう見み見みみゆるゆるゆる夕暮ゆふぐれ夕暮ゆふぐれゆうぐれににに人ひと人ひとひとののの御おん御おんおんかたちかたちかたちももも光ひかり光ひかりひかりまさりまさりまさりててて見み見みみゆゆゆ。。。
  2. 2「「「時々ときどき時々ときどきときどきにににつけつけつけてててももも人ひと人ひとひとののの心こころ心こころこころをををうつすうつすうつすめるめるめる花はな花はなはな紅葉もみぢ紅葉もみぢもみじのののさかりさかりさかりよりよりよりももも冬ふゆ冬ふゆふゆののの夜よ夜よよのののすめすめすめるるる月つき月つきつきににに雪ゆき雪ゆきゆきののの光ひか光ひかひかりりりあひあひあいたるたるたる空そら空そらそらこそこそこそ怪あや怪あやあやしうしうしゅう色いろ色いろいろなきなきなきものものものゝゝの身み身みみにににしみしみしみてててこのこのこの世よ世よよののの外ほか外ほかほかののの事こと事ことことまでまでまで思おも思おもおもひひい流なが流ながながささされれれ面おも面おもおも白しろ白しろしろさささももも哀あはれ哀あはれあわれさささももも殘のこ殘のこのこらららぬぬぬをりをりおりなれなれなれ。。。すさまじきすさまじきすさまじきににに言い言いいひひい置お置おおきききけむけむけん人ひと人ひとひとののの心こころ心こころこころあさゝあさゝあささよよよ」」」とととてててみすみすみす卷ま卷ままきききあげあげあげさせさせさせ給たま給たまたまふふう。。。
  3. 3月つき月つきつきははは隈くま隈くまくまなくなくなくさしさしさし出い出いいでででゝゝてひとつひとつひとつ色いろ色いろいろににに見み見みみえええ渡わた渡わたわたささされれれたるたるたるにににしをれしをれしおれたるたるたる前栽せんざい前栽せんざいせんざいのののかげかげかげ心苦こころぐる心苦こころぐるこころぐるしうしうしゅう遣水やりみづ遣水やりみづやりみずもももいといといと痛いた痛いたいとうううむせびむせびむせびててて池いけ池いけいけののの氷こほり氷こほりこおりもももえもえもえもいはいはいわずずずすごきすごきすごきににに、、、わらはべわらはべわらわべおろしおろしおろしててて雪ゆき雪ゆきゆきまろばしまろばしまろばしせせせさせさせさせ給たま給たまたまふふう、、、
  4. 4をかしげをかしげおかしげなるなるなる姿すがた姿すがたすがたかしらつきかしらつきかしらつきどもどもども月つき月つきつきにににはえはえはえててて大おほ大おほおおきやかきやかきやかににになれなれなれたるたるたるがががさまざまさまざまさまざまののの袙あこめ袙あこめあこめ亂みだ亂みだみだれれれ着き着きき、、、帶おび帶おびおびしどけなきしどけなきしどけなき宿直とのゐ宿直とのゐとのい姿すがた姿すがたすがたなまめいなまめいなまめいたるたるたるににに、、、こよなうこよなうこよのう餘あま餘あまあまれれれるるる髮かみ髮かみかみののの末すゑ末すゑすえ、、、白しろ白しろしろききき庭には庭にはにわにににはははましてましてましてもてもてもてはやしはやしはやしたるたるたるいといといとけざやかけざやかけざやかなりなりなり。。。
  5. 5小ちひさ小ちひさちいさきききはははわらはげわらはげわらわげててて喜よろこ喜よろこよろこびびびはしるはしるはしるににに扇あふぎ扇あふぎおうぎなどなどなどももも落おと落おとおとしししてててうちとけうちとけうちとけ顏がほ顏がほがおをかしげをかしげおかしげなりなりなり。。。いといといと多おほ多おほおおうううまろばさまろばさまろばさむむんとととふくつけがれふくつけがれふくつけがれどどどえええももも押お押おおししし動うご動うごうごかさかさかさでででわぶわぶわぶめりめりめり。。。かたへかたへかたえははは東ひんがし東ひんがしひんがしのののつまつまつまなどなどなどににに出い出いいででで居ゐ居ゐいててて心こころ心こころこころもとなげもとなげもとなげににに笑わら笑わらわらふふう。。。
  6. 6「「「一ひと一ひとひととせとせとせ中宮ちゆうぐう中宮ちゆうぐうちゅうぐうののの御おん御おんおんまへまへまえににに雪ゆき雪ゆきゆきののの山やま山やまやま造つく造つくつくららられれれたりたりたりししし世よ世よよにににふりふりふりたるたるたることことことなれなれなれどどど猶なほ猶なほなお珍めづら珍めづらめずらしくしくしくもももはかなきはかなきはかなき事こと事ことことをををしししなしなしなし給たま給たまたまへへえりりりしししかなかなかな。。。何なに何なになにののの折々をりをり折々をりをりおりおりにににつけつけつけてててももも口惜くちを口惜くちをくちおしうしうしゅう飽あ飽ああかかかずずずもももあるあるあるかなかなかな。。。
  7. 7いといといとけどほくけどほくけどおくもてなしもてなしもてなし給たま給たまたまひひいてててくはしきくはしきくわしき御おん御おんおん有樣ありさま有樣ありさまありさまををを見み見みみならしならしならし奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりしししことことことはははなかりなかりなかりしかしかしかどどど御おん御おんおんまじらひまじらひまじらいののの程ほど程ほどほどににに後うしろ後うしろうしろやすきやすきやすきものものものにににはははおぼしおぼしおぼしたりたりたりきききかしかしかし。。。うちうちうち賴たの賴たのたのみみみ聞きこ聞きこきこえええてててとととあるあるある事こと事ことことかゝるかゝるかかる折をり折をりおりにににつけつけつけててて何事なにごと何事なにごとなにごとももも聞きこ聞きこきこえええ通かよ通かよかよひひいしししににに、、、もてもてもて出い出いいでででゝゝてらうらうしきらうらうしきろうろうしき事こと事ことことももも見み見みみえええ給たま給たまたまははわざりざりざりしかしかしかどどど、、、いふかひいふかひいうかいありありありててて思おも思おもおもふふうさまさまさまにににはかなきはかなきはかなき事こと事ことことわざわざわざをををもももしししなしなしなし給たま給たまたまひひいしししはははややや。。。
  8. 8世よ世よよににに又また又またまたさばかりさばかりさばかりのののたぐひたぐひたぐいありありありなむなむなんややや。。。やはらかやはらかやわらかにににおびれおびれおびれたるたるたるものものものからからから深ふか深ふかふこううう由よし由よしよしづきづきずきたるたるたる所ところ所ところところののの並なら並ならならびびびなくなくなく物もの物ものものししし給たま給たまたまひひいしししををを君きみ君きみきみこそこそこそはははさささいへいへいえどどど紫むらさき紫むらさきむらさきのののゆゑゆゑゆえこよなからこよなからこよなからずずず物もの物ものものししし給たま給たまたまふふうめれめれめれどどど少すこ少すこすこししし煩わづら煩わづらわずらはしきはしきわしきけけけそひそひそいてててかどかどしさかどかどしさかどかどしさのののすゝみすゝみすすみ給たま給たまたまへへえるるるややや苦くる苦くるくるしからしからしからむむん。。。
  9. 9前齋院さきのさいゐん前齋院さきのさいゐんさきのさいいんののの御心こころ御心こころこころばへばへばえははは又また又またまたさまさまさまことことことにににぞぞぞ見み見みみゆるゆるゆる。。。さうざうしきさうざうしきそうぞうしきににに、、、何なに何なになにとととかかかはははなくなくなくともともとも聞きこ聞きこきこえええ合あは合あはあわせせせわれわれわれももも心こころ心こころこころづかひづかひづかいせせせらるらるらるべきべきべき御おん御おんおんあたりあたりあたり唯ただ唯ただただこのこのこのひとひとひとゝころゝころところややや世よ世よよににに殘のこ殘のこのこりりり給たま給たまたまへへえらむらむらん」」」とととのののたまふたまふたまう。。。
  10. 10「「「ないしのかみないしのかみないしのかみこそこそこそはははらうらうしくらうらうしくろうろうしくゆゑゆゑしきゆゑゆゑしきゆえゆえしき方かた方かたかたははは人ひと人ひとひとにににまさりまさりまさり給たま給たまたまへへえれれれ。。。淺あさ淺あさあさはかはかはかなるなるなるすぢすぢすじなどなどなどもてもてもてはなれはなれはなれ給たま給たまたまへへえりりりけるけるける人ひと人ひとひとののの御心みこころ御心みこころみこころををを怪あや怪あやあやしくしくしくもももありありありけるけるける事こと事ことことどもどもどもかなかなかな」」」とととのののたまへたまへたまえばばば「「「さかしさかしさかし。。。なまめかしうなまめかしうなまめかしゅうかたちかたちかたちよきよきよき女をんな女をんなおんなのののためしためしためしにににははは猶なほ猶なほなお引ひ引ひひききき出い出いいづづずべきべきべき人ひと人ひとひとぞぞぞかしかしかし。。。
  11. 11さささももも思おも思おもおもふふうにににいとほしくいとほしくいとおしく悔くや悔くやくやしきしきしきことことことののの多おほ多おほおおかるかるかるかなかなかな。。。まいてまいてまいてうちうちうちあたけあたけあたけすぎすぎすぎたるたるたる人ひと人ひとひとののの年とし年としとし積つも積つもつもりりり行ゆ行ゆゆくくくまゝまゝままにににいかにいかにいかに悔くや悔くやくやしきしきしきことことこと多おほ多おほおおからからからむむん。。。人ひと人ひとひとよりよりよりはははこよなきこよなきこよなきしづけさしづけさしずけさととと思おも思おもおもひひいしししだにだにだに」」」などなどなどのののたまひたまひたまい出い出いいでででゝゝて、、、かんのかんのかんの君きみ君きみきみののの御おん御おんおんことことことにににももも淚なみだ淚なみだなみだ少すこ少すこすこしししはははおとしおとしおとし給たま給たまたまひひいつつつ。。。
  12. 12「「「このこのこの數かず數かずかずにににもももあらあらあらずずずおとしめおとしめおとしめ給たま給たまたまふふう山里やまざと山里やまざとやまざとののの人ひと人ひとひとこそこそこそははは身み身みみのののほどほどほどにににはははやゝやゝややうちうちうちすぎすぎすぎ物もの物ものものののの心こころ心こころこころなどなどなどえええつつつべけれべけれべけれどどど人ひと人ひとひとよりよりより異こと異ことことなるなるなるべきべきべきものものものなれなれなればばば思おも思おもおもひひいあがれあがれあがれるるるさまさまさまをををももも見み見みみけちけちけちててて侍はべ侍はべはべるるるかなかなかな。。。いふかひなきいふかひなきいうかいなききはきはきわののの人ひと人ひとひとはははまだまだまだ見み見みみずずず。。。人ひと人ひとひとははは勝すぐ勝すぐすぐれれれたるたるたるははは難かた難かたかたききき世よ世よよなりなりなりややや。。。
  13. 13東ひんがし東ひんがしひんがしののの院ゐん院ゐんいんにににながむるながむるながむる人ひと人ひとひとののの心こころ心こころこころばへばへばえこそこそこそふりふりふりがたくがたくがたくらうたけれらうたけれろうたけれ。。。さささはははたたた更さら更さらさらにににえええあらあらあらぬぬぬものものものをををさるさるさる方かた方かたかたにににつけつけつけてててののの心こころ心こころこころばせばせばせ人ひと人ひとひとにににとりとりとりつゝつゝつつ見み見みみそめそめそめしししよりよりより同おな同おなおなじじじやうやうようににに世よ世よよをををつゝましげつゝましげつつましげににに思おも思おもおもひひいててて過す過すすぎぎぎぬるぬるぬるよよよ。。。今いま今いまいまはははたたたかたみかたみかたみににに背そむ背そむそむくくくべくべくべくもももあらあらあらずずず。。。深ふか深ふかふこううう哀あはれ哀あはれあわれととと思おも思おもおもひひい侍はべ侍はべはべるるる」」」などなどなど昔むかし昔むかしむかし今いま今いまいまののの御おん御おんおん物語ものがたり物語ものがたりものがたりににに夜よ夜よよふけふけふけゆくゆくゆく。。。
  14. 14月つき月つきつきいよいよいよいよいよいよすみすみすみててて靜しづか靜しづかしずかにににおもしろしおもしろしおもしろし。。。女君をんなぎみ女君をんなぎみおんなぎみ「「「氷こほり氷こほりこおりとぢとぢとじいしいしいしまままののの水みづ水みづみずはははゆきゆきゆきなやみなやみなやみそらそらそらすむすむすむ月つき月つきつきのののかげかげかげぞぞぞながるゝながるゝながるる」」」。。。とととををを見み見みみ出いだ出いだいだしししててて少すこ少すこすこししし傾かたぶ傾かたぶかたぶききき給たま給たまたまへへえるるるほどほどほど似に似ににるるる物もの物ものものなくなくなく美うつく美うつくうつくしげしげしげなりなりなり。。。
  15. 15かんざしかんざしかんざしおもやうおもやうおもようののの戀こ戀ここひひい聞きこ聞きこきこゆるゆるゆる人ひと人ひとひとののの面おも面おもおもかげかげかげにににふとふとふとおぼえおぼえおぼえてててめでたけれめでたけれめでたければばばいさゝかいさゝかいささかわくるわくるわくる御心みこころ御心みこころみこころもももとりとりとりかへしかへしかえしつつつべしべしべし。。。鴛鴦をし鴛鴦をしおしのののうちうちうち鳴な鳴ななきききたるたるたるににに、、、「「「かきかきかきつめつめつめてててむかしむかしむかし戀こひ戀こひこいしきしきしき雪ゆき雪ゆきゆきもよもよもよににに哀あはれ哀あはれあわれをををそふるそふるそうるをしをしをしのののうきねうきねうきねかかか」」」。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

雪がひどく降り積もった上に、今もちらちらと降り続いて、松と竹との違いが趣深く見える夕暮れに、源氏のご容貌も光が増して見える。「時々につけて人の心を移すような花や紅葉の盛りよりも、冬の夜の澄んだ月に雪の光が映り合った空こそ、不思議に色のないものなのに、身にしみて、この世の外のことまで思いが流れ、おもしろさも哀れさも残らず感じられる折なのです。興ざめなものの例として言い残した人の心の浅さよ」と言って、御簾を巻き上げさせなさる。

月は隈なく差し出て、一色に見渡されるところに、しおれた前栽の姿も痛々しく、遣水もひどくむせび泣くような音を立てて、池の氷も言いようもなくもの寂しい中に、童女たちを庭に下ろして、雪まろばしをおさせになる。かわいらしい姿や頭つきが月に映えて、大柄で物慣れた子が、さまざまの衵を乱れ着て、帯もしどけない宿直姿が優美なうえに、たいそう長く余る髪の末が、白い庭にいっそう映えて、たいそうくっきりしている。

小さい子は子どもらしくはしゃいで走り回るので、扇なども落として、打ち解けた顔がかわいらしい。たいそう大きく転がそうと欲張るけれど、押し動かすこともできずに困っているようだ。一部の子は東の妻戸などに出て座って、もどかしそうに笑っている。

「ある年、中宮(藤壺)の御前に雪の山をお造りになったのは、世間でもよくあることだけれど、やはり珍しく、ちょっとしたことも趣深くなさったものだ。何の折々につけても、残念で、心残りであることよ。たいそうよそよそしくお扱いになって、詳しいご様子をお見慣れ申し上げたことはなかったけれど、宮中でのお付き合いの間には、安心できる者とお思いになってくださったよ。

こちらもお頼り申し上げて、何かある折につけて何事もご相談申し上げたが、表立って才気を見せなさることもなかったけれど、頼りがいがあって、思いどおりにちょっとしたことも上手になさったものだ。世にまたあれほどの方がいるだろうか。柔らかでおっとりとしていながら、奥深い嗜みの点で並ぶ方もなくいらっしゃったが、あなたこそは、そうは言っても、紫のゆかりで、それほど劣らずいらっしゃるようだけれど、少し面倒な気性が加わって、才気が勝ちすぎていらっしゃるのが困りものでしょう。

前斎院のお心ばえは、また格別に見える。物寂しい時に、何ということもなく話を交わし、私も気をつかわずにはいられないお相手としては、ただこの方だけが世に残っていらっしゃるのだろうか」とおっしゃる。紫の上が「尚侍(朧月夜)こそは、才気があって嗜みの深い方面では人にまさっていらっしゃいます。軽々しい筋などとは縁遠くていらっしゃった方なのに、不思議なこともあったものですね」とおっしゃると、源氏は「そうだね。優美で器量のよい女の例としては、やはり引き合いに出すべき人だね。

そう思うにつけても、気の毒で悔しいことが多いことよ。まして、浮ついたことが過ぎた人は、年が積もるにつれて、どんなに悔しいことが多いだろう。人よりはこの上なく落ち着いていると思っていた私でさえ」などとおっしゃり出して、尚侍の君のことにも、涙を少しお落としになった。

「この人数にも入らないと、あなたがさげすみなさる山里の人(明石の君)こそは、身分のわりには少し出過ぎて、物の道理などはわきまえているようだが、他の人とは違って扱うべき身分なので、思い上がった様子も見て見ぬふりをしております。言う甲斐のない身分の人はまだ知りません。すぐれた人はめったにいない世の中ですね。

東の院で物思いにふけっている人(花散里)の心ばえこそ、いつまでも変わらずいじらしい。ああはなかなかできないものだが、そういう方面での心ばせを人に認めて、初めて会ってから、同じように世を遠慮がちに思って過ごしてきたことよ。今はもうお互いに背き合うこともできない。深くいとおしく思っております」などと、昔と今のお話に夜が更けていく。

月はいよいよ澄んで、静かで趣深い。女君は「氷に閉ざされて、石の間の水は流れ悩んでいるのに、空に澄む月の光だけは、滞りなく流れていくことです」。外を見やって、少し首を傾けていらっしゃる様子は、似るものもなくかわいらしい。髪の具合や顔立ちが、恋い慕い申し上げる人(藤壺)の面影にふと思われて、すばらしいので、少しほかに分けていたお心も、取り戻しそうである。鴛鴦が鳴いたので、「昔を恋しく思い集める雪の夜に、哀れを添える鴛鴦の憂き寝の声であることよ」。

意訳

雪の積もった月夜、源氏は御簾を巻き上げさせ、冬の月と雪の光こそ身にしみると語る。童女たちに雪まろばしをさせながら、源氏は紫の上に、藤壺の人柄を語る。

源氏は、朝顔の姫君、朧月夜、明石の君、花散里のことを紫の上と語り合い、夜が更ける。紫の上は月を見て歌を詠み、源氏はその姿に藤壺の面影を見て心を取り戻し、鴛鴦の鳴く声に昔を恋う歌を詠む。

語釈・文法注

すさまじきためし
冬の月を興ざめなものの例とすること。清少納言の『枕草子』に「すさまじきもの…師走の月夜」とある説がよく引かれる。源氏はこれに異を唱え、冬の月と雪の美を賞美する。

文法

「こそ…なれ」(空こそ…をりなれ)
「空こそが…折なのです」。断定の「なり」が「こそ」の結びで已然形となる。
反語の「や」(世に又さばかりのたぐひありなむや)
「世にまたあれほどの方がいるだろうか、いや、いない」。

和歌

氷とぢいしまの水はゆきなやみそらすむ月のかげぞながるゝ

詠者
紫の上
状況
月夜の庭を見て詠んだ歌。氷に閉ざされて、石の間の水は流れ悩んでいるのに、空に澄む月の光だけは、滞りなく流れていくことです。

修辞

寓意
流れ悩む水に、源氏の心が自分から離れて思い悩む自らの身を、澄んで流れる月に、他の女性に心を移す源氏をたとえるとも解される。

かきつめてむかし戀しき雪もよに哀をそふるをしのうきねか

詠者
光源氏
状況
鴛鴦の鳴く声を聞いて詠んだ歌。昔を恋しく思い集める雪の夜に、哀れを添える鴛鴦の憂き寝の声であることよ。

修辞

掛詞
「うきね」に「浮き寝」と「憂き寝」、「かきつめて」に「かき集めて」と「(雪を)掻き集めて」をかける。

解説

雪の夜の女性評は、帚木の巻の「雨夜の品定め」と対をなす場面である。若い源氏が友人たちと女性論を交わしたのに対し、ここでは成熟した源氏が、関わってきた女性たちを紫の上に語る。

源氏が紫の上の中に藤壺の面影を見る場面は、紫の上が藤壺の「ゆかり」として愛されてきたことを改めて示す。源氏は紫の上への愛情を取り戻すが、その愛の根底には常に藤壺への思慕がある。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、378–381頁(コマ192–193)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日