源氏物語 第20帖 朝顔(7)
紫の上の嘆き
源氏は、朝顔の姫君のつれなさに負けて終わるのも悔しく、二条院に夜離れを重ねる。紫の上は涙をこらえきれず、源氏は髪をかきやりながら慰める。源氏は、藤壺や太政大臣の亡き後、政務が忙しくて訪れが途絶えたと言い、紫の上の子どもっぽさを愛しく思う。源氏は、朝顔の姫君とは本気の仲ではないから心配しないようにと、一日中紫の上を慰める。

- 1おとゞおとゞおとどはははあながちあながちあながちにににおぼしおぼしおぼしいらるゝいらるゝいらるるにににしもしもしもあらあらあらねねねどどど、、、つれなきつれなきつれなき御御おん氣色氣色けしきのののうれたきうれたきうれたきにににまけまけまけててて止止やみみみなむなむなんももも口惜口惜くちおしくしくしくげにげにげにはたはたはた人人ひとののの御御おん有樣有樣ありさま世世よのののおぼえおぼえおぼえ殊殊ことにににあらまほしくあらまほしくあらまほしく物物ものををを深深ふかくくくおぼしおぼしおぼし知知しりりり世世よののの人人ひとのののとととあるあるあるかゝるかゝるかかるけぢめけぢめけじめももも聞聞きききき集集あつめめめ給給たまひひいててて昔昔むかしよりよりよりもももあまたあまたあまた經經へまさりまさりまさりててておぼさるれおぼさるれおぼさるればばば
- 2今今いまさらさらさらののの御御おんあだげあだげあだげもももかつはかつはかつわ世世よのののもどきもどきもどきをををもももおぼしおぼしおぼしながらながらながら、、、むなしからむなしからむなしからむむんはははいよいよいよいよいよいよ人人ひと笑笑わらへへえなるなるなるべしべしべし、、、いかにいかにいかにせせせむむんととと御心御心みこころ動動うごきききててて二條院二條院にじょういんににに夜夜よがれがれがれ重重かさねねね給給たまふふうををををんなをんなおんな君君きみははは、、、戯戯たわぶれぶれぶれにくゝにくゝにくくのみのみのみおぼすおぼすおぼす。。。
- 3忍忍しのびびび給給たまへへえどどど、、、いかゞいかゞいかがうちうちうちこぼるゝこぼるゝこぼるる折折おりもももなからなからなからむむん。。。「「「怪怪あやしくしくしく例例れいならならならぬぬぬ御御おん氣色氣色けしきこそこそこそ心心こころ得得えがたけれがたけれがたけれ」」」とととてててみぐしみぐしみぐしをををかきかきかきやりやりやりつゝつゝつついとほしいとほしいとおしとととおぼしおぼしおぼしたるたるたるさまさまさまももも繪繪えににに書書かかかかまほしきまほしきまほしき御御おんあはひあはひあわいなりなりなり。。。
- 4「「「宮宮みやうせうせうせ給給たまひひいててて後後のち上上うえのののいといといとさうざうしげさうざうしげそうぞうしげにににのみのみのみ世世よをををおぼしおぼしおぼしたるたるたるももも心苦心苦こころぐるしうしうしゅう見見み奉奉たてまつるるる。。。おほきおほきおおきおとゞおとゞおとどももも物物ものししし給給たまははわででで、、、見見みゆづるゆづるゆずる人人ひとなきなきなき事事ことしげさしげさしげさににになむなむなん。。。このこのこの程程ほどののの絕間絕間たえまなどなどなどををを見見み習習ならははわぬぬぬことことことにににおぼすおぼすおぼすらむらむらんもももことわりことわりことわりににに哀哀あわれなれなれなれどどど、、、今今いまはははさりともさりともさりとも心心こころのどかのどかのどかにににおぼせおぼせおぼせ。。。
- 5おとなびおとなびおとなび給給たまひひいためためためれれれどどどまだまだまだいといといと思思おもひひいやりやりやりもももなくなくなく人人ひとののの心心こころももも見見み知知しらららぬぬぬさまさまさまににに物物ものししし給給たまふふうこそこそこそらうたけれらうたけれろうたけれ」」」などなどなどまろかれまろかれまろかれたるたるたる御御おんひたひひたひひたいひきひきひきつくろひつくろひつくろい給給たまへへえどどどいよいよいよいよいよいよ背背そむきききててて物物ものももも聞聞きこえええ給給たまははわずずず。。。「「「いといといといたくいたくいたく若若わかびびび給給たまへへえるるるはははたたたがががならはしならはしならわし聞聞きこえええたるたるたるぞぞぞ」」」とととててて常常つねなきなきなき世世よにににかくかくかくまでまでまで心心こころおかおかおかるゝるゝるるももも味氣味氣あじきなななのののわざわざわざやややとととかつはかつはかつわうちうちうちながめながめながめ給給たまふふう。。。
- 6「「「齋院齋院さいいんにににはかなしごとはかなしごとはかなしごと聞聞きこゆるゆるゆるややや。。。もしもしもし思思おぼししし僻僻ひがむるむるむるかたかたかたあるあるある、、、それそれそれはははいといといともてもてもてはなれはなれはなれたるたるたることことことぞぞぞよよよ。。。おのづからおのづからおのずから見見み給給たまひひいてててむむん。。。昔昔むかしよりよりよりこよなうこよなうこよのうけどほきけどほきけどおき御心御心こころばへばへばえなるなるなるをををさうざうしきさうざうしきそうぞうしき折々折々おりおりたゞたゞただならならならででで聞聞きこえええなやますなやますなやますににに、、、
- 7彼處彼處かしこももも徒然徒然つれずれににに物物ものししし給給たまふふう所所ところなれなれなればばばたまさかたまさかたまさかののの御御おんいらへいらへいらえなどなどなどししし給給たまへへえどどどまめまめしきまめまめしきまめまめしきさまさまさまにににもももあらあらあらぬぬぬをををかくかくかくなむなむなんあるあるあるとととしもしもしもうれへうれへうれえ聞聞きこゆゆゆべきべきべき事事ことにににやややははは。。。後後うしろめたうめたうめとうはははあらあらあらじじじとととををを思思おもひひいなほしなほしなおし給給たまへへえ」」」などなどなど日一日日一日ひひとい慰慰なぐさめめめ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
現代語訳
大臣(源氏)は、それほど無理にお心をいらだたせていらっしゃるわけではないけれど、姫君のつれないご様子が悔しく、それに負けて終わってしまうのも残念で、また本当に、姫君のご様子や世間の評判も格別に理想的で、物事を深くわきまえ、世の人のさまざまな違いも聞き集めて、昔よりもずっと経験を重ねていらっしゃるとお思いになるので、
今さらの浮気沙汰も、一方では世間の非難もお考えになりながら、このまま何事もなく終わったら、いよいよ物笑いになるだろう、どうしたものかとお心が動いて、二条院に夜の訪れのない日を重ねなさるので、女君(紫の上)は、冗談にもできないほどつらくばかりお思いになる。
我慢していらっしゃるけれど、どうして涙のこぼれる折がないことがあろうか。源氏は「妙にいつもと違うご様子なのが、わけがわかりません」と言って、御髪をかきやりながら、お気の毒にとお思いになっている様子も、絵に描きたいほどのお似合いのご夫婦である。
「宮(藤壺)がお亡くなりになって後、帝がたいそう寂しそうにばかり世の中をお思いになっているのも、お気の毒に拝見しております。太政大臣もいらっしゃらなくて、お任せする人もいないので、政務が多くて。このところの訪れの途絶えなどを、今までになかったこととお思いになるのももっともで、かわいそうだけれど、今はいくら何でも、安心していなさい。大人になられたようだけれど、まだたいそう思いやりもなく、人の心もわからないようでいらっしゃるのが、かわいらしいですね」などと言って、涙で固まった額髪を整えなさるけれど、紫の上はいよいよ背を向けて何もおっしゃらない。
「ひどく子どもっぽくなさっているのは、誰がお教え申し上げたのでしょう」と言って、無常な世の中に、これほどまで心の隔てを置かれるのもつまらないことだと、一方では物思いにふけりなさる。「斎院にちょっとしたことを申し上げるのを、もし邪推なさっているなら、それはまったく見当違いなことですよ。そのうちおわかりになるでしょう。昔からこの上なくよそよそしいお心なのを、物足りない折々に、ただならぬ思いでお便りしてお困らせしているのですが、
あちらも所在なくお過ごしの所なので、たまにお返事などをなさるけれど、本気の様子でもないのを、こうでしたなどと、あなたに訴え申し上げるべきことでしょうか。心配なことはないと思い直してください」などと、一日中お慰め申し上げなさる。
意訳
源氏は、朝顔の姫君のつれなさに負けて終わるのも悔しく、二条院に夜離れを重ねる。紫の上は涙をこらえきれない。
源氏は紫の上の髪をかきやりながら、政務が忙しくて訪れが途絶えたと言い訳し、紫の上の子どもっぽさを愛しく思う。源氏は、朝顔の姫君とは本気の仲ではないから心配しないようにと、一日中紫の上を慰める。
語釈・文法注
- まろかれたる御ひたひ髮
- 涙に濡れて固まった額髪。紫の上が人知れず泣いていたことを示す。
文法
- 反語の「いかゞ…む」(いかゞうちこぼるゝ折もなからむ)
- 「どうして涙のこぼれる折がないことがあろうか、いや、ある」。
- 反語の「やは」(うれへ聞ゆべき事にやは)
- 「訴え申し上げるべきことでしょうか、いや、そうではない」。
解説
紫の上の涙は、源氏の朝顔への執着によって引き起こされたものだが、源氏はそれを子どもっぽさとして愛しく思う。源氏と紫の上の心のすれ違いが、繊細に描かれている。
源氏が政務の忙しさを口実にするのは、藤壺や太政大臣の死によって実際に負担が増えたためでもある。しかし、その裏で朝顔の姫君への求愛を続けていることを、紫の上は見抜いている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、376–379頁(コマ191–192)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日