源氏物語 第20帖 朝顔(4)
雪の日の外出
冬、神事も止まって所在ない源氏は、また女五の宮を見舞うと言って出かける。雪の散る夕暮れ、念入りに装った源氏が暇乞いをすると、紫の上は姫君と遊んで顔を向けない。源氏が冗談めかしてなだめても、紫の上は「なれ行くこそうき事多かりけれ」と背を向ける。源氏は気が進まないまま出かけ、紫の上は、こんなこともある世の中を疑いもせずに過ごしてきたと思い続ける。

- 1冬冬ふゆつつつ方方かたかんわざかんわざかんわざなどなどなどもももとまりとまりとまりてててさうざうしきさうざうしきそうぞうしきににに徒然徒然つれずれとととおぼしおぼしおぼしあまりあまりあまりててて五五ごののの宮宮みやににに例例れいののの近近ちかづきづきずき參參まいりりり給給たまふふう。。。雪雪ゆきうちうちうち散散ちりりりててて艶艶えんなるなるなるたそがれたそがれたそがれ時時ときににに、、、なつかしきなつかしきなつかしき程程ほどににになれなれなれたるたるたる御御おんぞぞぞどもどもどもをををいよいよいよいよいよいよたきたきたきしめしめしめ給給たまひひいててて心心こころことことことにににけさうじけさうじけそうじ暮暮くらししし給給たまへへえれれればばば、、、いとゞいとゞいとど心心こころ弱弱よわからからからむむん人人ひとはははいかゞいかゞいかがととと見見みえええたりたりたり。。。
- 2さすがさすがさすがにににまかりまかりまかり申申もうしししはははたたた聞聞きこえええ給給たまふふう「「「女女おんな五五ごののの宮宮みやのののなやましくなやましくなやましくししし給給たまふふうなるなるなるをををとぶらひとぶらひとぶらい聞聞きこえええににになむなむなん」」」とととてててついついつい居居い給給たまへへえれれればばば見見みもももやりやりやり給給たまははわずずず。。。若君若君わかぎみととともてあそびもてあそびもてあそび紛紛まぎらはしはしわしおはするおはするおわするそばめそばめそばめのののたゞたゞただならならならぬぬぬををを
- 3「「「怪怪あやしくしくしく御御おん氣色氣色けしきののの變變かわれれれるるる頃頃ころかなかなかな。。。罪罪つみもももなしなしなしややや。。。しほやきしほやきしおやきのののあまりあまりあまりめめめなれなれなれみだてみだてみだてなくなくなくおぼさるゝおぼさるゝおぼさるるにににややや」」」とととてててとだえとだえとだえおくおくおくををを「「「又又またいかゞいかゞいかが」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまへへえばばば「「「なれなれなれ行行ゆくくくこそこそこそげにげにげにうきうきうき事事こと多多おおかりかりかりけれけれけれ」」」とととばかりばかりばかりにてにてにてうちうちうち背背そむきききててて臥臥ふししし給給たまへへえるるるははは
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- 6ごぜんごぜんごぜんなどなどなど忍忍しのびやかびやかびやかなるなるなるかぎりかぎりかぎりしししててて「「「うちうちうちよりよりよりほかほかほかのののありきありきありきははは物物ものうきうきうき程程ほどににになりなりなりにににけりけりけりややや。。。桃園桃園ももぞのののの宮宮みやののの心心こころ細細ぼそきききさまさまさまにてにてにて物物ものししし給給たまふふう式部卿式部卿しきぶきょうののの宮宮みやににに年頃年頃としごろははは讓讓ゆずりりり聞聞きこえええつるつるつるををを今今いまははは賴賴たのむむむなななととと思思おぼしししのののたまふたまふたまうもももことわりことわりことわりにににいとほしけれいとほしけれいとおしければばば」」」などなどなど、、、
- 7人々人々びとにににももものののたまひたまひたまいなせなせなせどどど「「「いでいでいでややや御御おんすきすきすき心心こころのののふりふりふり難難がたきききぞぞぞあたらあたらあたら御御おん瑕瑕きずなめるなめるなめる。。。かるがるしきかるがるしきかるがるしきことことことももも出出いででで來來こなむなむなん」」」などなどなどつぶやきつぶやきつぶやきあへあへあえりりり。。。
現代語訳
冬のころ、神事なども止まって物寂しいので、所在なさのあまり、源氏はまた女五の宮のもとに、例によって近しく参上なさる。雪が少し散って優美なたそがれ時に、親しみのある程度に着慣れたお召し物に、いっそう香をたきしめなさって、念入りに化粧をして一日をお過ごしになったので、ますます心弱い人はどうなるだろうかと見えた。
さすがにお暇乞いだけは申し上げなさる。「女五の宮がご病気だそうなので、お見舞い申し上げに」と言って、ひざまずいていらっしゃると、紫の上は見向きもなさらない。若君(姫君)をあやして紛らわしていらっしゃる横顔が、ただごとでないのを、
源氏は「妙にご機嫌の変わるこのごろですね。罪もないのに。塩焼き衣のように、あまりに見慣れて目新しさもなくお思いになるのでしょうか」と言って、しばらく来ないでおくのを、「またどうなさるのか」などと申し上げなさると、紫の上は「慣れていくにつれて、本当につらいことが多いものですね」とだけ言って、背を向けて横になっていらっしゃるのは、
見捨てて出かけなさる道も気が進まないけれど、宮にお便りを申し上げてしまったので、お出かけになった。紫の上は、こういうこともある世の中を、疑いもせずに過ごしてきたことよと思い続けて、横になっていらっしゃる。
鈍色のお召し物だけれど、色合いの重なりも好ましく、かえってよく見えて、雪の光にたいそう優美なお姿を見送って、本当にこのまま心が離れていってしまわれたらと、紫の上はこらえきれない思いでいらっしゃる。
源氏は御前駆なども忍びやかな者だけを連れて、「宮中以外への外出は、億劫な年になってしまったよ。桃園の宮が心細い様子でいらっしゃるのを、式部卿の宮に長年お任せしていたのに、今はお前が頼りだと、宮がおっしゃるのももっともで、お気の毒なので」などと、人々にも言いつくろいなさるけれど、人々は「さてもまあ、ご浮気心のいつまでも変わらないのが、惜しいご欠点のようだ。軽々しいことも起こりそうだ」などとつぶやき合っている。
意訳
冬、源氏はまた女五の宮を見舞うと言って、念入りに装って出かける。紫の上は姫君と遊んで顔を向けず、源氏が冗談めかしてなだめても、「なれ行くこそうき事多かりけれ」と背を向ける。
源氏は気が進まないまま出かけ、紫の上は、こんなこともある世の中を疑いもせずに過ごしてきたと思い続ける。供人たちは、源氏の浮気心を惜しい欠点だとささやき合う。
語釈・文法注
- しほやき衣
- 塩焼き衣。海人が塩を焼く時に着る粗末な衣。「須磨の海人の塩焼き衣なれゆけば」のように、着慣れて新鮮さを失うことのたとえとして和歌に詠まれる。
文法
- 推定の「なり」(なやましくし給ふなる)
- 「ご病気だそうだ」。伝聞を表す。
- 「こそ…けれ」(なれ行くこそげにうき事多かりけれ)
- 「慣れていくにつれて、本当につらいことが多いものですね」。
解説
紫の上が姫君をあやしながら源氏に顔を向けない場面は、紫の上の嫉妬と悲しみを、言葉少なに描いている。紫の上の「なれ行くこそげにうき事多かりけれ」という言葉は、源氏の「しほやき衣」のたとえを受けて、長年連れ添った関係の脆さを嘆くものである。
雪の中を出かける源氏の美しい姿を見送りながら、紫の上は不安に揺れる。この場面は、源氏と紫の上の関係に生じた最初の大きな亀裂として、のちの若菜の巻の伏線ともなっている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、372–375頁(コマ189–190)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
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