古典ライブラリー

源氏物語 第20帖 朝顔(2)

朝顔の姫君との対話

登場人物:光源氏・朝顔の姫君・宣旨

源氏は朝顔の姫君の住む東側を訪れ、南の廂で女房の宣旨を介して語りかける。源氏は、長年の思いを神の許しを待つ心にたとえて訴えるが、姫君は、神の戒めを口実に返歌して受け入れない。源氏は物足りない思いで帰る。翌朝、源氏は枯れた花の中に咲く朝顔を折らせて歌を贈り、姫君も控えめな返歌をする。源氏はその返歌を手放しがたく眺める。

秋の朝霧の中、枯れた花々の間に咲き残る朝顔を折らせ、源氏が歌を添えて朝顔の姫君に贈ろうとしている場面(AI生成)
秋の朝霧の中、枯れた花々の間に咲き残る朝顔を折らせ、源氏が歌を添えて朝顔の姫君に贈ろうとしている場面
  1. 1あなたあなたあなたののの御おん御おんおんまへまへまえををを見み見みみ遣や遣ややりりり給たま給たまたまへへえれれればばばかれがれかれがれかれがれなるなるなる前栽せんざい前栽せんざいせんざいののの心こころ心こころこころばへばへばえももも殊こと殊ことことににに見み見みみ渡わた渡わたわたささされれれててて、、、のどやかのどやかのどやかににに眺なが眺ながながめめめ給たま給たまたまふふうらむらむらん御おん御おんおん有樣ありさま有樣ありさまありさまかたちかたちかたちもももいといといとゆかしくゆかしくゆかしく哀あはれ哀あはれあわれにてにてにてえええ念ねん念ねんねんじじじ給たま給たまたまははわででで「「「かくかくかくさぶらひさぶらひさぶらいたるたるたるついでついでついでををを過す過すすぐしぐしぐし侍はべ侍はべはべらららむむんははは志こころざし志こころざしこころざしなきなきなきやうやうようなるなるなるをををあなたあなたあなたののの御おん御おんおんとぶらひとぶらひとぶらい聞きこ聞きこきこゆゆゆべかりべかりべかりけりけりけり」」」とととてててやがてやがてやがて簀子すのこ簀子すのこすのこよりよりより渡わた渡わたわたりりり給たま給たまたまふふう。。。
  2. 2暗くら暗くらくろうううなりなりなりたるたるたる程ほど程ほどほどなれなれなれどどど、、、にびにびにび色いろ色いろいろのののみすみすみすににに黑くろ黑くろくろききき御おん御おんおん几帳きちやう几帳きちやうきちょうののの透影すきかげ透影すきかげすきかげあはれあはれあわれににに、、、追風おひかぜ追風おひかぜおいかぜなまめかしくなまめかしくなまめかしく吹ふ吹ふふきききとほしとほしとおし、、、けはひけはひけわいあらまほしあらまほしあらまほし。。。簀子すのこ簀子すのこすのこはははかたはらいたけれかたはらいたけれかたわらいたければばば南みなみ南みなみみなみののの廂ひさし廂ひさしひさしににに入い入いいれれれ奉たてまつ奉たてまつたてまつるるる。。。宣旨せんじ宣旨せんじせんじたいめんたいめんたいめんしししててて御おん御おんおんせうそこせうそこしょうそこきこゆきこゆきこゆ。。。
  3. 3「「「今いま今いまいまさらさらさらにににわかわかしきわかわかしきわかわかしき心地ここち心地ここちここちするするする御簾みす御簾みすみすののの前まへ前まへまえかなかなかな。。。神かみ神かみかみさびさびさびにににけるけるける年月としつき年月としつきとしつきのののらうらうろう數かぞ數かぞかぞへへへられられられ侍はべ侍はべはべるるるににに今いま今いまいまははは內外うちと內外うちとうちとももも許ゆる許ゆるゆるさささせせせ給たま給たまたまひひいてててむむんとととぞぞぞ賴たの賴たのたのみみみ侍はべ侍はべはべりりりけるけるける」」」とととててて飽あ飽ああかかかずずずおぼしおぼしおぼしたりたりたり。。。
  4. 4ありありありししし世よ世よよははは皆みな皆みなみな夢ゆめ夢ゆめゆめににになしなしなしててて今いま今いまいまなむなむなんさめさめさめてててはかなきはかなきはかなきにににやややととと思おも思おもおもひひい給たま給たまたまへへえ定さだ定さださだめめめ難がた難がたがたくくく侍はべ侍はべはべるるるにににらうらうろうなどなどなどはははしづかしづかしずかにににややや定さだ定さださだめめめ聞きこ聞きこきこえええさすさすさすべうべうびょう侍はべ侍はべはべらららむむん」」」ととと聞きこ聞きこきこえええ出いだ出いだいだししし給たま給たまたまへへえりりり。。。げにげにげにこそこそこそ定さだ定さださだめめめ難がた難がたがたききき世よ世よよなれなれなれととと、、、はかなきはかなきはかなき事こと事ことことにににつけつけつけてててもももおぼしおぼしおぼしつゞけつゞけつづけらるらるらる。。。
  5. 5「「「人ひと人ひとひと知し知ししれれれずずず神かみ神かみかみのののゆるしゆるしゆるしををを待ま待ままちちちしししまままにににこゝらこゝらここらつれなきつれなきつれなき世よ世よよをををすぐすすぐすすぐすかなかなかな。。。今いま今いまいまははは何なに何なになにのののいさめいさめいさめにににかこたかこたかこたせせせ給たま給たまたまははわむむんとととすすすらむらむらん。。。なべてなべてなべて世よ世よよににに煩わづら煩わづらわずらはしきはしきわしきことことことさへさへさへ侍はべ侍はべはべりりりししし後のち後のちのち樣々さまざま樣々さまざまさまざまににに思おも思おもおもひひい給たま給たまたまへへえあつめあつめあつめしかしかしかななな。。。いかでいかでいかで片端かたはし片端かたはしかたわしをををだにだにだに」」」とととあながちあながちあながちににに聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう。。。
  6. 6御おん御おんおん用意ようい用意よういよういなどなどなどももも昔むかし昔むかしむかしよりよりよりももも今いま今いまいま少すこ少すこすこしししなまめかしきなまめかしきなまめかしきけけけさへさへさへそひそひそい給たま給たまたまひひいにににけりけりけり。。。さるはさるはさるはいといといといたういたういとう過す過すすぐしぐしぐし給たま給たまたまへへえどどど御おん御おんおん位くらゐ位くらゐくらいののの程ほど程ほどほどにににはははあはあはあわざざざめりめりめり。。。
  7. 7「「「なべてなべてなべて世よ世よよのののあはれあはれあわればかりばかりばかりをををとふとふとうからからからににに誓ちか誓ちかちかひひいしししことことことゝゝと神かみ神かみかみやややいさめいさめいさめむむん」」」とととあれあれあればばば「「「あなあなあなこゝろうこゝろうこころう、、、そのそのその世よ世よよののの罪つみ罪つみつみははは皆みな皆みなみな科戶しなど科戶しなどしなどのののにににたぐへたぐへたぐえてててききき」」」とととののの給たま給たまたまふふう。。。あいぎやうあいぎやうあいぎょうもももこよなしこよなしこよなし。。。
  8. 8「「「みそぎみそぎみそぎををを神かみ神かみかみはははいかゞいかゞいかが侍はべ侍はべはべりりりけむけむけん」」」などなどなどはかなきはかなきはかなき事こと事ことことををを聞きこ聞きこきこゆるゆるゆるもももまめやかまめやかまめやかにににいといといと傍かたはら傍かたはらかたわらいたしいたしいたし。。。世よ世よよづかづかずかぬぬぬ御おん御おんおん有樣ありさま有樣ありさまありさまははは年月としつき年月としつきとしつきにににそへそへそえてててももも物もの物ものもの深ふか深ふかふかくくくのみのみのみひきひきひき入い入いいりりり給たま給たまたまひひいてててえええ聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまははわぬぬぬををを見み見みみ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりなやめなやめなやめりりり。。。
  9. 9「「「すきずきしきすきずきしきすきずきしきやうやうようににになりなりなりぬるぬるぬるををを」」」などなどなど淺あさ淺あさあさはかはかはかならならならずずずうちうちうち歎なげ歎なげなげきききててて立た立たたちちち給たま給たまたまふふうににに「「「齡よはひ齡よはひよわいのののつもりつもりつもりにににはははおもおもおもなくなくなくこそこそこそなるなるなるわざわざわざなりなりなりけれけれけれ。。。世よ世よよににに知し知ししらららぬぬぬやつれやつれやつれををを今いま今いまいまぞぞぞとととだにだにだに聞きこ聞きこきこえええさすさすさすべくべくべくやややはははもてなしもてなしもてなし給たま給たまたまひひいけるけるける」」」とととててて出い出いいででで給たま給たまたまふふう名殘なごり名殘なごりなごり所ところ所ところところせきせきせきまでまでまで例れい例れいれいののの聞きこ聞きこきこえええあへあへあえりりり。。。
  10. 10大方おほかた大方おほかたおおかたののの空そら空そらそらもももをかしきをかしきおかしき程ほど程ほどほどににに木こ木ここののの葉は葉ははののの音おと音おとおとなひなひないにににつけつけつけてててももも過す過すすぎぎぎにににしししものものものゝゝの哀あはれ哀あはれあわれとりとりとり返かへ返かへかえしししつゝつゝつつそのそのその折々をりをり折々をりをりおりおりをかしくをかしくおかしくもももあはれあはれあわれにににももも深ふか深ふかふかくくく見み見みみえええ給たま給たまたまひひいししし御心こころ御心こころこころばへばへばえなどなどなどももも思おも思おもおもひひい出い出いいででで聞きこ聞きこきこえええさすさすさす。。。
  11. 11心こころ心こころこころやましくやましくやましくててて立た立たたちちち出い出いいででで給たま給たまたまひひいぬるぬるぬるはははましてましてまして寢覺ねざめ寢覺ねざめねざめがちがちがちにににおぼしおぼしおぼし續つづ續つづつづけゝるけゝるけける。。。疾と疾ととくくく御おん御おんおん格子かうし格子かうしこうしまゐらまゐらまいらせせせ給たま給たまたまひひいててて朝霧あさぎり朝霧あさぎりあさぎりをををながめながめながめ枯か枯かかれれれたるたるたる花はな花はなはなどもどもどもののの中なか中なかなかににに朝顏あさがほ朝顏あさがほあさがおのののこれかれこれかれこれかれにににはひはひはいまつはれまつはれまつわれてててあるあるあるかかかなきなきなきかかかににに咲さ咲ささきききててて匂にほひ匂にほひにおいももも殊こと殊ことことにににかはれかはれかわれるるるををを折を折をおらららせせせ給たま給たまたまひひいててて奉たてまつ奉たてまつたてまつれれれ給たま給たまたまふふう。。。
  12. 12「「「けざやかけざやかけざやかなりなりなりししし御おん御おんおんもてなしもてなしもてなしににに人ひと人ひとひとわろきわろきわろき心地ここち心地ここちここちししし侍はべ侍はべはべりりりててて、、、うしろでうしろでうしろでもももいとゞいとゞいとどいかゞいかゞいかが御覽ごらん御覽ごらんごらんじじじけむけむけんとととねたくねたくねたく。。。されどされどされど、、、見み見みみしししをりをりおりののの露つゆ露つゆつゆ忘わす忘わすわすららられれれぬぬぬあさがほあさがほあさがおののの花はな花はなはなのののさかりさかりさかりははは過す過すすぎぎぎやまぬやまぬやまぬらむらむらん。。。年頃としごろ年頃としごろとしごろのののつもりつもりつもりももも哀あはれ哀あはれあわれとととばかりばかりばかりはははさりともさりともさりともおぼしおぼしおぼし知し知ししるるるらむらむらんとととなむなむなん。。。かつはかつはかつわ」」」などなどなど聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまへへえりりり。。。
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  14. 14靑あを靑あをあおにびにびにびののの紙かみ紙かみかみのののなよびかなよびかなよびかなるなるなる墨すみ墨すみすみつきつきつきはははしもしもしも、、、をかしくをかしくおかしく見み見みみゆゆゆめりめりめり。。。人ひと人ひとひとののの御おん御おんおんほどほどほど書か書かかきききざまざまざまなどなどなどにににつくろはつくろはつくろわれれれつゝつゝつつ、、、そのそのその折をり折をりおりははは罪つみ罪つみつみなきなきなきことことこともももつきづきしうつきづきしうつきずきしゅうまねびまねびまねびなすなすなすにににはははほゝゆがむほゝゆがむほほゆがむことことこともももあああめれめれめればばばこそこそこそ、、、さかしらさかしらさかしらににに書か書かかききき紛まぎら紛まぎらまぎらはしはしわしつゝつゝつつ覺束おぼつか覺束おぼつかおぼつかなきなきなき事こと事ことことももも多おほ多おほおおかりかりかりけりけりけり。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

源氏は、あちら(朝顔の姫君)のお住まいの前を見やりなさると、枯れ枯れになった前栽の趣も格別に見渡されて、のどかに物思いにふけっていらっしゃるだろうご様子やご容貌もたいそう見たく、しみじみとして、我慢しきれずに、「こうしてお伺いしたついでを素通りしますのは、誠意がないようですから、あちらのお見舞いを申し上げなければ」と言って、そのまま簀子伝いにお渡りになる。

暗くなったころだけれど、鈍色の御簾に黒い御几帳の透き影がしみじみとして、追い風が優美に吹き通して、雰囲気が申し分ない。簀子では失礼なので、南の廂にお入れ申し上げる。宣旨が対面して、源氏のお言葉を取り次ぐ。源氏は「今さら、若者めいた気持ちのする御簾の前ですね。神々しくなるほど長い年月の労も数えられますので、今はもう内外の隔ても許してくださるだろうと頼みにしておりましたのに」と言って、物足りなくお思いになっている。

姫君は「昔のことは、皆夢と思いなして、今は目が覚めて、はかないことだったのかと判断しかねておりますので、ご苦労のほどは、ゆっくりとご判断申し上げましょう」と、宣旨を通して申し上げなさった。源氏は、本当に判断しがたい世の中だと、ちょっとしたことにつけても思い続けなさる。

「人知れず、あなたが斎院を退いて神の許しが出るのを待っていた間に、長い年月をつれなく過ごしてきたことです。今は何の戒めにかこつけなさるおつもりでしょう。総じて世の中に煩わしいことまでありました後、さまざまに思いを重ねてまいりました。せめてその一端だけでも」と、無理に申し上げなさる。ご心づかいなども、昔よりももう少し優美な様子までが加わっていらっしゃった。とはいえ、たいそうお年を重ねていらっしゃるけれど、ご身分のわりには若々しく見えるようだ。

姫君は「世間並みの同情ばかりのお見舞いに対してさえ、斎院の時に誓ったことに背くと、神がいさめるでしょう」とあるので、源氏は「ああ情けない。あの頃の罪は、皆科戸の風に乗せて吹き払ってしまいましたのに」とおっしゃる。愛嬌もこの上ない。宣旨が「禊を、神はどのようにお受けになったでしょう」などと、たわいないことを申し上げるのも、まじめな話としてはたいそうきまりが悪い。世間離れしたご様子で、年月とともにますます奥深く引き籠もっていらっしゃって、お返事も申し上げなさらないのを、女房たちは見て困っている。

源氏は「色好みめいたことになってしまいましたが」などと、浅からずため息をついてお立ちになると、「年をとると、厚かましくなるものですね。世にないほどやつれた姿を、今こそご覧くださいとだけでも申し上げられるように、お扱いくださったでしょうか」と言ってお出になる名残を、女房たちは例によって、うるさいほど褒め合っている。

空もちょうど趣深いころで、木の葉の音につけても、過ぎ去ったことの哀れさを思い返しながら、その折々に、おもしろくも、しみじみとも深く見えていらっしゃったお心ばえなどを、女房たちは思い出し申し上げる。源氏は、心が晴れないままお帰りになったので、まして寝覚めがちに思い続けなさった。早々に御格子を上げさせなさって、朝霧を眺めると、枯れた花々の中に、朝顔があちこちにはいまつわって、あるかないかに咲いて、色つやもすっかり変わっているのを折らせなさって、姫君に差し上げなさる。

「きっぱりとしたお扱いに、きまりの悪い気持ちがいたしまして、後ろ姿もどんなにご覧になったかと悔しくて。けれども、昔見た時の露を置いた朝顔の美しさが忘れられないが、その花の盛りは過ぎてしまったのでしょうか。長年の思いの積もりも、哀れとだけは、いくら何でもおわかりいただけるでしょうと思いまして。一方では」などと申し上げなさった。

姫君は、大人びたお手紙の趣に、知らないふりをするのも、物の情趣を解さないようではないかとお思いになり、女房たちも御硯を用意してお勧めするので、「秋も終わって、霧の立ちこめる垣根にまつわりつき、あるかないかに色あせていく朝顔、それが今の私です。似つかわしいおたとえにつけても、涙がちで」とだけあるのは、何の趣ある点もないのに、源氏はどういうわけか、手から放しがたくご覧になっているようだ。

青鈍色の紙の柔らかなものに書いた墨の具合は、趣深く見えるようだ。人のご身分や書きぶりなどに取り繕われて、その時には何ということのないことも、もっともらしく書き写すと、ゆがんで伝わることもあるようなので、さかしらに書き紛らわしながら、はっきりしないことも多かったのだ。

意訳

源氏は朝顔の姫君の住む東側を訪れ、宣旨を介して長年の思いを訴える。姫君は、神の戒めを口実に返歌して受け入れず、源氏は物足りない思いで帰る。

翌朝、源氏は枯れた花の中に咲く朝顔を折らせて歌を贈る。姫君も、盛りを過ぎた朝顔に自らをたとえた控えめな返歌をする。源氏はその返歌を手放しがたく眺める。

語釈・文法注

科戶の風
科戸(しなど)の風。罪や穢れを吹き払う風。大祓の祝詞に「科戸の風の天の八重雲を吹き放つ事の如く」とある。

文法

反語の「やは」(聞えさすべくやはもてなし給ひける)
「申し上げられるようにお扱いくださったでしょうか、いや、くださらなかった」。
「こそ…けれ」(おもなくこそなるわざなりけれ)
「厚かましくなるものですね」。

和歌

人知れず神のゆるしを待ちしまにこゝらつれなき世をすぐすかな

詠者
光源氏
状況
朝顔の姫君に訴えた歌。人知れず、あなたが斎院を退いて神の許しが出るのを待っていた間に、長い年月をつれなく過ごしてきたことです。

なべて世のあはればかりをとふからに誓ひしことゝ神やいさめむ

詠者
朝顔の姫君
状況
源氏への返歌。世間並みの同情ばかりのお見舞いに対してさえ、斎院の時に誓ったことに背くと、神がいさめるでしょう。

見しをりの露忘られぬあさがほの花のさかりは過ぎやまぬらむ

詠者
光源氏
状況
翌朝、朝顔の花に添えて贈った歌。昔見た時の露を置いた朝顔の美しさが忘れられないが、その花の盛りは過ぎてしまったのでしょうか。

修辞

掛詞
「あさがほ」に「朝顔(花)」と「朝の顔(姫君の容貌)」をかける。

秋はてゝ霧のまがきにむすぼゝれあるかなきかにうつるあさがほ

詠者
朝顔の姫君
状況
源氏への返歌。秋も終わって、霧の立ちこめる垣根にまつわりつき、あるかないかに色あせていく朝顔、それが今の私です。

修辞

縁語
「霧」「むすぼゝれ」「うつる」は朝顔の縁語。姫君は自らを、盛りを過ぎた朝顔にたとえる。

解説

巻名「朝顔」は、源氏と姫君が交わした朝顔の歌に由来する。盛りを過ぎた朝顔に自らをたとえる姫君の歌は、源氏の求愛を拒む意思を、控えめでありながらきっぱりと示している。

朝顔の姫君は、若い時から源氏の求愛を拒み続けてきた女性である。六条御息所の苦しみを見て、源氏との恋に身を任せることを避けてきた姫君の姿勢は、この巻でも一貫している。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、370–373頁(コマ188–189)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日