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源氏物語 第13帖 明石(8)

明石の君との文と都の異変

登場人物:光源氏・明石の君・明石の入道・朱雀帝・桐壺院・弘徽殿大后・太政大臣(右大臣)

源氏は岡辺の家の娘に文を送るが、娘は身分の差を恥じて返事を書かず、入道が代筆する。源氏は重ねて文を送り、娘はようやく紫の紙に歌を書いて返す。その筆跡は都の高貴な人にも劣らない。二人は、互いに気位を張り合って文を交わし続ける。一方、都では天変地異が続き、朱雀帝の夢に故桐壺院が現れて睨む。帝は目を患い、太政大臣は亡くなり、大后も病む。帝は源氏を許そうとするが、大后に反対される。

明石の岡辺の家で、明石の君が源氏への返歌をしたため、そばで入道が見守っている場面(AI生成)
明石の岡辺の家で、明石の君が源氏への返歌をしたため、そばで入道が見守っている場面
  1. 1思おも思おもおもふふう事こと事ことことかつかつかつかつかつかつかなひかなひかないぬるぬるぬる心地ここち心地ここちここちしししてててすゞしうすゞしうすずしゅう思おも思おもおもひひい居ゐ居ゐいたるたるたるににに、、、又また又またまたののの日ひ日ひひののの晝ひる晝ひるひるつつつ方かた方かたかた、、、岡邊をかべ岡邊をかべおかべににに御おん御おんおん文ふみ文ふみふみつかはすつかはすつかわす。。。心こころ心こころこころ恥はづか恥はづかはずかしきしきしきさまさまさまなななめるめるめるもももなかなかなかなかなかなかかゝるかゝるかかるものものものゝゝのくまくまくまにににぞぞぞ思おもひ思おもひおもいののの外ほか外ほかほかなるなるなる事こと事ことこともももこもるこもるこもるべかべかべかめるめるめるととと心こころ心こころこころづかひづかひづかいししし給たま給たまたまひひいててて、、、
  2. 2こまこまこまのののくるみくるみくるみ色いろ色いろいろののの紙かみ紙かみかみにににえならずえならずえならず引ひ引ひひきききつくろひつくろひつくろいててて、、、「「「をちこちをちこちおちこちももも知し知ししらららぬぬぬ雲居くもゐ雲居くもゐくもいにににながめながめながめわびわびわびかすめかすめかすめししし宿やど宿やどやどののの梢こずゑ梢こずゑこずえをををぞぞぞとふとふとう。。。思おも思おもおもふふうにににははは」」」とととばかりばかりばかりやややありありありけむけむけん。。。
  3. 3入道にふだう入道にふだうにゅうどうももも人ひと人ひとひと知し知ししれれれずずずまちまちまち聞きこ聞きこきこゆゆゆとととてててかのかのかの家いへ家いへいえににに來き來きき居ゐ居ゐいたりたりたりけるけるけるもももしるけれしるけれしるければばば、、、御おん御おんおん使つかひ使つかひつかいいといといとまばゆきまばゆきまばゆきまでまでまで醉ゑ醉ゑえはすはすわす。。。御おん御おんおんかへりかへりかえりいといといとひさしひさしひさし。。。內うち內うちうちににに入い入いいりりりてててそゝのかせそゝのかせそそのかせどどどむすめむすめむすめははは更さら更さらさらににに聞き聞ききかかかずずず。。。
  4. 4いといといと恥はづか恥はづかはずかしげしげしげなるなるなる御おん御おんおん文ふみ文ふみふみのののさまさまさまにににさしさしさし出い出いいでででむむん手て手ててつきつきつきもももはづかしうはづかしうはずかしゅうつゝましうつゝましうつつましゅう人ひと人ひとひとののの御おん御おんおんほどほどほど我身わがみ我身わがみわがみのののほどほどほど思おも思おもおもふふうにににこよなくこよなくこよなくててて、、、心地ここち心地ここちここちあしあしあしとととててて寄よ寄よよりりり臥ふ臥ふふしししぬぬぬ。。。言い言いいひひいわびわびわびててて入道にふだう入道にふだうにゅうどうぞぞぞかくかくかく。。。
  5. 5「「「いといといともももかしこきかしこきかしこきははは田舎ゐなか田舎ゐなかいなかびてびてびて侍はべ侍はべはべるるるたもとたもとたもとににに、、、つゝみつゝみつつみあまりあまりあまりぬるぬるぬるにににややや、、、更さら更さらさらににに見み見みみ給たま給たまたまひひいももも及およ及およおよびびび侍はべ侍はべはべらららぬぬぬかしこさかしこさかしこさににになむなむなん。。。さるはさるはさるは、、、ながむながむながむらむらむらん同おな同おなおなじじじ雲居くもゐ雲居くもゐくもいをををながむるながむるながむるははは思おも思おもおもひひいもももおなじおなじおなじおもひおもひおもいなるなるなるらむらむらん。。。とととなむなむなん見み見みみ給たま給たまたまふるふるうる。。。いといといとすきずきしすきずきしすきずきしややや」」」ととと聞きこ聞きこきこえええたりたりたり。。。
  6. 6みちのくにがみみちのくにがみみちのくにがみにににいたういたういとうふるめきふるめきふるめきたれたれたれどどど書か書かかきききざまざまざまよしばみよしばみよしばみたりたりたり。。。げにげにげにもももすきすきすきたるたるたるかなかなかなととと目め目めめざましうざましうざましゅう見み見みみ給たま給たまたまふふう。。。御おん御おんおん使つかひ使つかひつかいににに、、、なべてなべてなべてならならならぬぬぬ玉たま玉たまたまもももなどなどなどかづけかづけかずけたりたりたり。。。
  7. 7又また又またまたののの日ひ日ひひ「「「ははは見み見みみ知し知ししらららずずずなむなむなん」」」とととててて「「「いぶせくいぶせくいぶせくももも心こころ心こころこころにににものものものをををなやむなやむなやむかなかなかなやよややよややよやいかにいかにいかにととと問と問ととふふう人ひと人ひとひともももなみなみなみ。。。いひいひいいがたみがたみがたみ」」」とととこのこのこの度たび度たびたびはははいといといといたういたういとうなよびなよびなよびたるたるたる薄樣うすやう薄樣うすやううすようにににいといといと美うつ美うつうつくしげくしげくしげににに書か書かかききき給たま給たまたまへへえりりり。。。
  8. 8若わか若わかわかききき人ひと人ひとひとのののめでめでめでざらざらざらむむんもももいといといと餘あま餘あまあまりりりうもれいたからうもれいたからうもれいたからむむん。。。めでたしめでたしめでたしとととははは見み見みみれれれどどどなずらひなずらひなずらいならならならぬぬぬ身み身みみのののほどほどほどのののいみじういみじういみじゅうかひかひかいなけれなけれなければばば、、、なかなかなかなかなかなか世よ世よよにににあるあるあるものものものととと尋たづ尋たづたずねねね知し知ししりりり給たま給たまたまふふうにににつけつけつけててて淚なみだ淚なみだなみだぐまぐまぐまれれれててて、、、
  9. 9更さら更さらさらににに例れい例れいれいのののどうなきどうなきどうなきをををせめてせめてせめていはいはいわれれれててて、、、淺あさ淺あさあさからからからずずずしめしめしめたるたるたる紫むらさき紫むらさきむらさきののの紙かみ紙かみかみににに墨すみ墨すみすみつきつきつき濃こ濃ここくくく薄うす薄うすうすくくくまぎらはしまぎらはしまぎらわしててて、、、「「「思おも思おもおもふふうらむらむらん心こころ心こころこころのののほどほどほどややややよやよやよいかにいかにいかにまだまだまだ見み見みみぬぬぬ人ひと人ひとひとののの聞き聞きききききかなやまかなやまかなやまむむん」」」。。。手て手ててのののさまさまさま書か書かかきききたるたるたるさまさまさまなどなどなどやんごとなきやんごとなきやんごとなき人ひと人ひとひとにににいたういたういとう劣おと劣おとおとるるるまじうまじうまじゅう上じやう上じやうじょうずめきずめきずめきたりたりたり。。。
  10. 10京きやう京きやうきょうのののことことことおぼえおぼえおぼえてててをかしをかしをかしととと見み見みみ給たま給たまたまへへえどどど、、、うちうちうちしきりしきりしきりててて遣つかは遣つかはつかわさささむむんももも人ひと人ひとひとめめめつゝましけれつゝましけれつつましければばば、、、二三日ふつかみか二三日ふつかみかふつかみかへだてへだてへだてつゝつゝつつ、、、つれづれつれづれつれづれなるなるなる夕暮ゆふぐれ夕暮ゆふぐれゆうぐれ、、、もしはもしはもしは物もの物ものもの哀あはれ哀あはれあわれなるなるなる曙あけぼの曙あけぼのあけぼのなどなどなどやうやうようににに紛まぎ紛まぎまぎらはしらはしらわしててて
  11. 11折々をりをり折々をりをりおりおり人ひと人ひとひとももも同おな同おなおなじじじ心こころ心こころこころににに見み見みみ知し知ししりりりぬぬぬべきべきべき程ほど程ほどほど推お推おおししし量はか量はかはかりりりてててかきかきかきかはしかはしかわし給たま給たまたまふふうににに似に似ににげなからげなからげなからずずず。。。
  12. 12心こころ心こころこころ深ふか深ふかふかくくく思おも思おもおもひひいあがりあがりあがりたるたるたる氣色けしき氣色けしきけしきももも見み見みみでででははは止や止ややまままじじじとととおぼすおぼすおぼすものものものからからから、、、良淸よしきよ良淸よしきよよしきよががが、、、らうじらうじろうじててていひいひいいししし氣色けしき氣色けしきけしきももも目め目めめざましうざましうざましゅう、、、年頃としごろ年頃としごろとしごろ心こころ心こころこころづけづけづけてててあらあらあらむむんををを目め目めめののの前まへ前まへまえににに思おも思おもおもひひい違たが違たがたがへへえむむんもももいとほしういとほしういとおしゅう思おも思おもおもしししめぐらさめぐらさめぐらされれれててて、、、人ひと人ひとひとすゝみすゝみすすみ參まゐ參まゐまいらららばばばさるさるさる方かた方かたかたにてにてにてももも紛まぎ紛まぎまぎらはしらはしらわしてててむむんととと覺おぼ覺おぼおぼせせせどどど、、、
  13. 13女をんな女をんなおんなはははたたたなかなかなかなかなかなかやんごとなきやんごとなきやんごとなき際きは際きはきわののの人ひと人ひとひとよりよりよりももも、、、いたういたういとう思おも思おもおもひひいあがりあがりあがりててて妬ねた妬ねたねたげげげにににもてなしもてなしもてなし聞きこ聞きこきこえええたれたれたればばば心こころ心こころこころくらべくらべくらべにてにてにてぞぞぞ過す過すすぎぎぎけるけるける。。。
  14. 14京きやう京きやうきょうののの事こと事ことことをををかくかくかくせきせきせき隔へだ隔へだへだたりたりたりてててはははいよいよいよいよいよいよ覺束おぼつか覺束おぼつかおぼつかなくなくなく思おも思おもおもひひい聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまひひいててて、、、いかにいかにいかにせせせましましまし戯たは戯たはたわぶれぶれぶれにくゝにくゝにくくもももあるあるあるかなかなかな、、、忍しの忍しのしのびびびてててややや迎むか迎むかむかへへえ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりてててましましましととと思おも思おもおもししし弱よわ弱よわよわるるる折々をりをり折々をりをりおりおりあれあれあれどどどさりともさりともさりともかくかくかくてててやややははは年とし年としとしををを重かさ重かさかさねねねむむん、、、今いま今いまいま更さら更さらさらににに人ひと人ひとひとわろきわろきわろき事こと事ことことをををやややはははととと思おも思おもおもししししづめしづめしずめたりたりたり。。。
  15. 15そのそのその年とし年としとしおほやけおほやけおおやけににに物もの物ものもののののさとしさとしさとししきりしきりしきりててて物もの物ものものさわがしきさわがしきさわがしき事こと事ことこと多おほ多おほおおかりかりかり。。。三月やよひ三月やよひやよい十三日じふさんにち十三日じふさんにちじゅうさんにち神かみ神かみかみなりなりなりひらめきひらめきひらめき、、、雨風あめかぜ雨風あめかぜあめかぜさわがしきさわがしきさわがしき夜よ夜よよ、、、帝みかど帝みかどみかどののの御おん御おんおん夢ゆめ夢ゆめゆめににに院ゐん院ゐんいんののの帝みかど帝みかどみかどおまへおまへおまえのののみはしみはしみはしのののもともともとににに渡わた渡わたわたらららせせせ給たま給たまたまひひいててて御おん御おんおん氣色けしき氣色けしきけしきいといといと惡あ惡ああしうしうしゅうててて睨にら睨にらにらみみみ聞きこ聞きこきこえええさせさせさせ給たま給たまたまふふうををを、、、畏かしこ畏かしこかしこまりまりまりててておはしますおはしますおわします。。。
  16. 16聞きこ聞きこきこえええさせさせさせ給たま給たまたまふふう事こと事ことことどもどもども多おほ多おほおおかりかりかり。。。源氏げんじ源氏げんじげんじののの御おん御おんおん事こと事ことことどもどもどもなりなりなりけむけむけんかしかしかし。。。いとゞいとゞいとど恐おそろ恐おそろおそろしうしうしゅういとほしいとほしいとおしととと思おぼ思おぼおぼしししててて、、、后きさき后きさききさきににに聞きこ聞きこきこえええさせさせさせ給たま給たまたまひひいけれけれければばば「「「雨あめ雨あめあめなどなどなどふりふりふり空そら空そらそら亂みだ亂みだみだれれれたるたるたる夜よ夜よよははは、、、思おも思おもおもひひいなしなしなしなるなるなる事こと事ことことはははさささぞぞぞ侍はべ侍はべはべるるる。。。かろがろしきかろがろしきかろがろしきやうやうようににに覺おぼ覺おぼおぼししし驚おどろ驚おどろおどろくくくまじきまじきまじき事こと事ことこと」」」ととと聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう。。。
  17. 17睨にら睨にらにらみみみ給たま給たまたまひひいしししににに見み見みみ合あは合あはあわせせせ給たま給たまたまふふうととと見み見みみしししけにけにけにややや、、、御目め御目めめ煩わづら煩わづらわずらひひい給たま給たまたまひひいててて堪た堪たたへへえ難がた難がたがとううう惱なや惱なやなやみみみ給たま給たまたまふふう。。。御おん御おんおんつゝしみつゝしみつつしみ內うち內うちうちにににももも宮みや宮みやみやにににももも限かぎ限かぎかぎりりりなくなくなくせせせさせさせさせ給たま給たまたまふふう。。。おほきおほきおおきおとゞおとゞおとどうせうせうせ給たま給たまたまひひいぬぬぬ。。。
  18. 18ことわりことわりことわりののの御おん御おんおん齡よはひ齡よはひよわいなれなれなれどどど次々つぎつぎ次々つぎつぎつぎつぎにににおのづからおのづからおのずから騷さわが騷さわがさわがしきしきしき事こと事ことことあるあるあるににに大宮おほみや大宮おほみやおおみやもももそこはかとなうそこはかとなうそこはかとのう煩わづら煩わづらわずらひひい給たま給たまたまひひいててて程ほど程ほどほど經ふ經ふふれれればばば弱よわ弱よわよわりりり給たま給たまたまふふうやうやうようなるなるなる、、、內うち內うちうちににに思おも思おもおもししし歎なげ歎なげなげくくく事こと事ことことさまざまさまざまさまざまなりなりなり。。。
  19. 19猶なほ猶なほなおこのこのこの源氏げんじ源氏げんじげんじののの君きみ君きみきみ誠まこと誠まことまことににに犯をか犯をかおかすすすことことことなきなきなきにてにてにて、、、かくかくかくしづむしづむしずむならならならばばば、、、必かなら必かならかならずずずこのこのこのむくいむくいむくいありありありなななむむんとととなむなむなん覺おぼ覺おぼおぼえええ給たま給たまたまふふう。。。今いま今いまいまははは猶なほ猶なほなおもともともとののの位くらゐ位くらゐくらいをををももも給たま給たまたまひひいてててむむんととと度々たびたび度々たびたびたびたびおぼしおぼしおぼしののの給たま給たまたまふふうををを
  20. 20「「「世よ世よよのののもどきもどきもどきあはあはしきあはあはしきあわあわしきやうやうようなるなるなるべしべしべし。。。罪つみ罪つみつみににに落お落おおちちちててて都みやこ都みやこみやこををを去さ去ささりりりししし人ひと人ひとひとをををみとせみとせみとせをををだにだにだにすぐさすぐさすぐさずずず許ゆる許ゆるゆるささされれれむむんことことことははは世よ世よよののの人ひと人ひとひともももいかゞいかゞいかが言い言いいひひい傳つた傳つたつたへへえ侍はべ侍はべはべらららむむん」」」などなどなど后きさき后きさききさき固かた固かたかとううう諫いさ諫いさいさめめめ給たま給たまたまふふうにににおぼしおぼしおぼしはゞかるはゞかるはばかる程ほど程ほどほどににに月日つきひ月日つきひつきひかさなりかさなりかさなりててて、、、御おん御おんおんなやみなやみなやみどもどもどもさまざまさまざまさまざまににに重おも重おもおもりりり增まさ增まさまさらららせせせ給たま給たまたまふふう。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

入道は、願いがようやくかないそうな気持ちがして、すがすがしく思っていると、翌日の昼ごろ、源氏は岡辺の家にお手紙をお遣わしになる。こちらが気後れするような人のようだから、かえってこのような思いがけない所に、意外な人が隠れているものなのだろうと、心づかいをなさって、高麗の胡桃色の紙に、格別に念を入れて、「遠くも近くもわからない旅の空で物思いにふけりかねて、入道がほのめかした宿の梢を訪ねるのです。思う心には」とだけ書いてあったのだろうか。

入道も、人知れずお待ち申し上げようとして、あの岡辺の家に来ていたのもそのとおりで、お使いをまばゆいほどに酔わせる。ご返事はたいそう時間がかかる。入道が中に入って促すが、娘はまったく聞き入れない。たいそうこちらが恥ずかしくなるようなお手紙の様子に、返事を差し出す手つきも恥ずかしく気がひけて、源氏のご身分と自分の身のほどを思うと、比べものにならないので、気分が悪いと言って横になってしまった。

入道は言いあぐねて、自分で書く。「たいそう恐れ多いお手紙は、田舎びた娘の袂には包みきれないのでしょうか、まったく拝見することもできないほどの恐れ多さでございます。けれども、あなたが眺めていらっしゃるのと同じ空を眺めている娘は、思いも同じ思いでございましょう、と拝見いたします。たいそう色めいたことで」と申し上げた。陸奥紙に、たいそう古風ではあるが、書きぶりは由緒ありげである。本当に色好みなことだと、あきれてご覧になる。お使いには、並々でない女の装束などをかずけた。

翌日、源氏は「代筆の手紙は、まだ見たことがありません」と言って、「気がふさぐほど、心に物思いをして悩むことよ。『どうですか』と尋ねてくれる人もいないので。言いにくいので」と、今度はたいそうしなやかな薄様に、たいそう美しくお書きになった。若い女性が感動しないとしたら、あまりにも引っ込み思案すぎるだろう。

すばらしいとは思うが、比べものにならない身のほどが、たいそうどうしようもないので、かえってこの世に生きている者として尋ね知ってくださるにつけても涙ぐまれて、まったくいつものように書こうとしないのを、入道に責め立てられて、深く香をたきしめた紫の紙に、墨の色を濃く薄くまぎらわして、

「思っていらっしゃるというお心のほどは、さあどれほどでしょう。まだ見たこともない人が、噂を聞いただけで悩んだりするものでしょうか」。筆跡や書きぶりなどは、高貴な人にもたいして劣らないほど上手である。源氏は、京のことが思い出されて、趣深いとご覧になるが、しきりに手紙を送るのも人目がはばかられるので、二、三日おきに、所在ない夕暮れや、しみじみとした明け方などのように、それとなく、折々、相手も同じ気持ちで情趣を解するだろう時を推し量って、手紙を交わしなさると、似つかわしくなくはない。

源氏は、心深く気位の高い様子を、会って見ないではすまないとお思いになるものの、良清が自分のものと言っていた様子も心外で、長年思いをかけていただろう女を、目の前で横取りするのも気の毒だと思いめぐらされて、相手の方から進んで参上するならば、そういうことにしてまぎらわそうとお思いになるが、

女はまた、かえって高貴な身分の人よりも、ひどく気位が高く、憎らしいほどの態度をとり申し上げているので、互いに意地の張り合いで過ぎていった。

京のことを、このように関を隔てて遠く離れると、いっそう気がかりにお思い申し上げなさって、どうしよう、冗談ではすまないことだ、こっそりと紫の上をお迎えしようかと、気弱になられる時々もあるが、それでも、このまま何年も過ごすことがあろうか、今さら体裁の悪いことをしようかと、思いとどまっていらっしゃった。

その年、朝廷では物のさとしがしきりにあって、騒がしいことが多かった。三月十三日、雷が鳴りひらめき、雨風が騒がしい夜、帝の御夢に、院の帝が御前の階段の下にお立ちになって、ご機嫌がたいそう悪く、にらみ申し上げなさるので、帝はかしこまっていらっしゃる。院は、申し上げなさることが多かった。源氏のことなどであったのだろう。

帝はたいそう恐ろしく、気の毒だとお思いになって、大后に申し上げなさると、大后は「雨などが降って空の荒れた夜は、思いこんでいることがそのように見えるものです。軽々しくお驚きになってはいけません」と申し上げなさる。

にらまれなさった時に目が合ったと見たせいか、帝はお目をわずらいなさって、耐えがたくお苦しみになる。御物忌みを、内裏でも大后の宮でも、この上なくおさせになる。太政大臣(もとの右大臣)が亡くなった。当然のお年ではあるが、次々と自然に騒がしいことがあるうえに、大宮(大后)も何となくわずらいなさって、日がたつにつれて弱っていかれるようなので、帝は内心さまざまにお嘆きになる。

やはりこの源氏の君が、本当に罪を犯したわけでもないのに、このように沈んでいるのなら、必ずこの報いがあるだろうとお思いになる。今はやはり、もとの位をお返しになろうと、たびたびお考えになりおっしゃるが、

大后は「世間の非難を受けて、軽々しいことのようでしょう。罪に当たって都を去った人を、三年も過ぎないうちに許されることは、世間の人もどのように言い伝えるでしょう」などと、かたくお諫めになるので、帝がためらっていらっしゃるうちに月日が重なって、ご病気などが、さまざまに重くおなりになる。

意訳

源氏は明石の君に文を送るが、明石の君は身分の差を恥じて返事を書かず、入道が代筆する。源氏が重ねて文を送ると、明石の君はようやく返歌する。その筆跡は都の高貴な人にも劣らない。二人は、互いに気位を張り合って文を交わし続ける。

一方、都では天変地異が続き、朱雀帝の夢に故桐壺院が現れて睨む。帝は目を患い、太政大臣は亡くなり、大后も病む。帝は源氏を許そうとするが、大后に反対される。

語釈・文法注

せんじがき
宣旨書き(せんじがき)。本人に代わって、他人が書いた手紙。代筆。

文法

反語の「やは」(かくてやは年を重ねむ)
「このまま何年も過ごすことがあろうか、いや、ない」。
強意+推量の「てむ」(給ひてむ)
「きっとお返しになろう」。

和歌

をちこちも知らぬ雲居にながめわびかすめし宿の梢をぞとふ

詠者
光源氏
状況
岡辺の家の明石の君に初めて送った歌。遠くも近くもわからない旅の空で物思いにふけりかねて、入道がほのめかした宿の梢を訪ねるのです。

ながむらむ同じ雲居をながむるは思ひもおなじおもひなるらむ

詠者
明石の入道(代筆)
状況
返事をしない娘に代わって、入道が書いた歌。あなたが眺めていらっしゃるのと同じ空を眺めている娘は、思いも同じ思いでございましょう。

いぶせくも心にものをなやむかなやよやいかにと問ふ人もなみ

詠者
光源氏
状況
代筆の返事を受けて、重ねて送った歌。気がふさぐほど、心に物思いをして悩むことよ。「どうですか」と尋ねてくれる人もいないので。

思ふらむ心のほどややよいかにまだ見ぬ人の聞きかなやまむ

詠者
明石の君
状況
源氏への初めての返歌。思っていらっしゃるというお心のほどは、さあどれほどでしょう。まだ見たこともない人が、噂を聞いただけで悩んだりするものでしょうか。

解説

明石の君は、源氏からの文に容易には応じない。身分の差を自覚するがゆえに、かえって気位を高く保とうとする明石の君の姿は、物語の中でも独特の魅力を持っている。二人の関係は「心くらべ」、すなわち意地の張り合いとして描かれる。

都では、故桐壺院の霊が朱雀帝の夢に現れ、源氏の召還を促す。須磨の嵐の夜に院が源氏に告げた「内裏に奏すべき事」とは、このことであった。帝の目の病、太政大臣の死、大后の病と、右大臣方に災いが続く。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、268–271頁(コマ137–138)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日