源氏物語 第2帖 帚木(3)
妻選びの難しさ
くつろいだ源氏の姿は女にして見たいほど美しい。左馬頭は、一生の妻とすべき人を選ぶのは国の柱石となる人物を選ぶより難しいと語り、気取りすぎる女、家事一辺倒の女、子どもっぽい女などを例に、理想の妻がいないことを嘆く。

- 1白白しろききき御御おんどもどもどものののなるなるなるにににばかりばかりばかりをををしどけなくしどけなくしどけなく着着きなしなしなし給給たまひひいててて紐紐ひもなどなどなどもももうちうちうち捨捨すてゝてゝてて添添そひひい臥臥ふししし給給たまへへえるるる御御おん火影火影ほかげいとゞいとゞいとどめでたくめでたくめでたく、、、女女おんなにてにてにて見見み奉奉たてまつらららまほしまほしまほし。。。
- 2このこのこの御御おん爲爲ためにはにはにはかみかみかみががが上上かみををを選選えらりりり出出いでゝでゝでてももも猶猶なお飽飽あくくくまじくまじくまじく見見みえええ給給たまふふう。。。
- 3さまざまさまざまさまざまののの人人ひとのののうへうへうえどもどもどもををを語語かたりりり合合あわせせせつゝつゝつつ、、、「「「大方大方おおかたののの世世よにににつけつけつけててて見見みるるるにににははは咎咎とがなきなきなきももも、、、我我わががが物物ものとととうちうちうち賴賴たのむむむべきべきべきををを撰撰えらばばばむむんににに、、、多多おおかるかるかる中中なかにもにもにもえええなむなむなん思思おもひひい定定さだむむむまじかりまじかりまじかりけるけるける。。。
- 4をのこをのこおのこのののおほやけおほやけおおやけににに仕仕つこううう奉奉たてまつりりりはかばかしきはかばかしきはかばかしき世世よのののなるなるなるべきべきべきももも、、、誠誠まことのののとととなるなるなるべきべきべきををを、、、取取とりりり出出いださささむむんにににはははかたかるかたかるかたかるべしべしべしかしかしかし。。。
- 5されどされどされど畏畏かしこしししとてもとてもとても一人一人ひとり二人二人ふたり世世よののの中中なかをををまつりごちまつりごちまつりごちしるしるしるべきべきべきならならならねねねばばば、、、かみかみかみはははしもしもしもににに助助たすけけけられられられ下下しもははは上上かみににに靡靡なびきききててて事事こと廣廣ひろきききにににらむらむらん、、、
- 6せばきせばきせばき家家いえのののうちうちうちのののあるじあるじあるじとととすすすべきべきべき人人ひと一人一人ひとりををを思思おもひひいめぐらすめぐらすめぐらすににに、、、たらはたらはたらわででで惡惡あしかるしかるしかるべきべきべき大事大事だいじどもどもどもなむなむなんかたがたかたがたかたがたおほかるおほかるおおかる。。。
- 7とあれとあれとあればばばかゝりかゝりかかりにてにてにてさてもさてもさてもありぬべきありぬべきありぬべき人人ひとののの少少すこきききををを、、、すきずきしきすきずきしきすきずきしき心心こころのののすさびすさびすさびにてにてにて人人ひとののの有樣有樣ありさまをををあまたあまたあまた見見み合合あわせせせむむんののの好好このみみみならならならねねねどどど、、、偏偏ひとえににに思思おもひひい定定さだむむむべきべきべきよるべよるべよるべとととすすすばかりばかりばかりににに、、、
- 8同同おなじくじくじくばばば我我わがががをををししし直直なおしししひきひきひき繕繕つくろふふうべきべきべき所所ところなくなくなく、、、心心こころにににかなふかなふかなうやうやうようもももやややととと撰撰えらりりりそめそめそめつるつるつる人人ひとののの定定さだまりまりまり難難かたきききなるなるなるべしべしべし。。。
- 9必必かならずずずしもしもしも我我わががが思思おもふふうにににかなはかなはかなわねねねどどど、、、見見みそめそめそめつるつるつる契契ちぎりばかりばかりばかりををを捨捨すててて難難かたくくく思思おもひひいとまるとまるとまる人人ひとははは物物ものまめやかまめやかまめやかなりなりなりととと見見みえええ、、、さてさてさてたもたたもたたもたるゝるゝるる女女おんなののの爲爲ためももも心心こころにくゝにくゝにくく推推おししし量量はからららるゝるゝるるなりなりなり。。。
- 10されどされどされど何何なにかかか世世よののの有樣有樣ありさまををを見見み給給たまへへえ集集あつむるむるむるまゝまゝままににに、、、心心こころににに及及およばばばずずずいといといとゆかしきゆかしきゆかしき事事こともももなしなしなしややや。。。君君きみたちたちたちののの上上うえなきなきなき御御おんえらびえらびえらびにはにはには、、、ましてましてましていかばかりいかばかりいかばかりののの人人ひとかかかはははたぐひたぐひたぐい給給たまははわむむん。。。
- 11せくせくせく思思おもひひい給給たまへへえぬぬぬだにだにだにかたちかたちかたちきたなげきたなげきたなげなくなくなく若若わかやかやかやかなるなるなる程程ほどののの己己おのがががじゝじゝじしははは塵塵ちりももも附附つかかかじじじととと身身みをををもてなしもてなしもてなし、、、文文ふみををを書書かけけけどどどおほどかおほどかおおどかにににをををししし墨墨すみつきつきつきほのかほのかほのかににに心心こころもとなくもとなくもとなく思思おもはせはせわせつゝつゝつつ、、、
- 12又又またさやかさやかさやかにもにもにも見見みとととすべなくすべなくすべなく待待またせたせたせ、、、わづかわづかわずかなるなるなる聲聲こえ聞聞きくくくばかりばかりばかり言言いひひいよれよれよれどどど、、、息息いきののの下下しもにににひきひきひき入入いれれれことずくなことずくなことずくななるなるなるがががいといといとよくよくよくもてもてもて隱隱かくすすすなりなりなりけりけりけり。。。
- 13なよびかなよびかなよびかににに女女おんなしししととと見見みれれればばばあまりあまりあまりなさけなさけなさけにににひきひきひき籠籠こめめめられられられててて、、、とりなせとりなせとりなせばばばあだめくあだめくあだめく。。。これこれこれををを初初はじめののの難難なんとととすすすべしべしべし。。。
- 14事事ことががが中中なかににになのめなのめなのめなるなるなるまじきまじきまじき人人ひとののの後見後見うしろみののの方方かたははは物物もののののあはれあはれあわれ知知しりりりすぐしすぐしすぐし、、、はかなきはかなきはかなきついでついでついでののの情情なさけありありあり、、、をかしきをかしきおかしきににに進進すすめめめるるる方方かたなくなくなくてててもももよかるよかるよかるべしべしべしととと見見みえええたるたるたるににに、、、
- 15又又またまめまめしきまめまめしきまめまめしきすぢすぢすじををを立立たてゝてゝてて、、、はさみはさみはさみがちがちがちににになきなきなきとうじとうじとうじののの偏偏ひとえにににうちとけうちとけうちとけたるたるたる後見後見うしろみばかりばかりばかりをををしししててて朝夕朝夕あさゆうのののいでいりいでいりいでいりにににつけつけつけてててももも公私公私おおやけわたくしののの人人ひとのののたゝずまひたゝずまひたたずまい善善よききき惡惡あしきしきしき事事ことののの目目めにもにもにも耳耳みみにもにもにもとまるとまるとまる有樣有樣ありさまををを疎疎うとききき人人ひとにににわざとわざとわざとうちうちうちまねばまねばまねばむむんやはやはやは。。。
- 16近近ちかくくくててて見見みむむん人人ひとののの聞聞ききききわきわきわき思思おもひひい知知しるるるべからべからべからむむんににに、、、語語かたりりりももも合合あわせせせばやばやばやとととうちうちうちももも笑笑えまままれれれ淚淚なみだもももさしぐみさしぐみさしぐみ、、、もしはもしはもしはあやなきあやなきあやなきだゝしくだゝしくだたしく心心こころひとつひとつひとつににに思思おもひひいあまるあまるあまる事事ことなどなどなどおほかるおほかるおおかるををを、、、
- 17何何なににににかかかははは聞聞きかかかせせせむむんととと思思おもへへえばばばうちうちうち背背そむかかかれれれててて人人ひと知知しれれれぬぬぬ思思おもひひいいでいでいで笑笑わらいもももせせせられられられ、、、哀哀あわれともともともうちうちうちひとりごたひとりごたひとりごたるるるるるるににに、、、何事何事なにごとぞぞぞなどなどなどにににさしさしさしあふぎあふぎあおぎ居居いたらたらたらむむんはははいかゞいかゞいかがははは口惜口惜くちおしからしからしからぬぬぬ。。。
- 18唯唯ただひたぶるひたぶるひたぶるににに子子こめきめきめきててて柔柔やわらかかかならならならむむん人人ひとををを、、、とかくとかくとかく引引ひききき繕繕つくろひひいてててはははなどなどなどかかか見見みざらざらざらむむん。。。心心こころもとなくもとなくもとなくともともとも直直なおししし所所ところあるあるある心地心地ここちすすすべしべしべし。。。
- 19實實げにににさしさしさし向向むかひひいててて見見みむむん程程ほどははは、、、さてもさてもさてもらうたきらうたきろうたき方方かたににに罪罪つみ免免ゆるししし見見みるるるべきべきべきををを、、、立立たちちち離離はなれれれてててはははさるべきさるべきさるべき事事ことをををももも言言いひひいやりやりやり折節折節おりふしにににししし出出いでででむむんわざわざわざのののあだごとあだごとあだごとにもにもにもまめごとまめごとまめごとにもにもにも我我わががが心心こころととと思思おもひひい得得えるるる事事ことなくなくなく深深ふかきききいたりいたりいたりなからなからなからむむんはははいといといと口惜口惜くちおしくしくしくたのもしげたのもしげたのもしげなきなきなき咎咎とがややや猶猶なお苦苦くるしからしからしからむむん。。。
- 20常常つねははは少少すこしししそばそばしくそばそばしくそばそばしく、、、づきなきづきなきずきなき人人ひとののの、、、折節折節おりふしにににつけつけつけてててするするするやうやうようもももありありありかしかしかし」」」などなどなど、、、隈隈くまなきなきなき物物もの言言いひひいももも定定さだめめめかねかねかねててていたくいたくいたくうちうちうち歎歎なげくくく。。。
現代語訳
源氏は、白い柔らかなお召し物を何枚も重ねた上に、直衣だけを無造作に羽織って、紐なども結ばずに、物に寄り添って横になっていらっしゃる。その灯影に照らされたお姿はいっそうすばらしく、女にして拝見したいほどである。この方のためには、上の上の女性を選び出しても、まだ物足りないように見える。
左馬頭はさまざまな人の身の上を語り合いながら言う。「普通に世間づきあいをする相手として見るなら、欠点のない女でも、いざ自分の妻として頼みにする人を選ぶとなると、多くの女の中からでも、なかなか決められないものです。
男が朝廷にお仕えして、しっかりと世の支えになるような人物でも、本当に器量のある人を選び出すのは難しいでしょう。けれども、どれほど賢くても、一人二人で世の中の政治をとりしきれるわけではないので、上の者は下の者に助けられ、下の者は上の者に従って、広い政務を分担しているのでしょう。ところが、狭い家の中の主婦とすべき人を一人と思いめぐらすと、足りないと困る大事なことが、あれこれと多いのです。
ああであればこうで、こちらを立てればあちらが立たず、まあまあの程度で、それでよいとすませられる人さえ少ないのです。私は色好みの心の慰みとして、多くの女の様子を見比べようというのではありませんが、ひたすら生涯の伴侶と決めるために、同じことなら、自分が骨を折って直したり繕ったりする必要がなく、心にかなう人はいないかと選びはじめるので、なかなか決まらないのでしょう。必ずしも自分の思いどおりではなくても、見そめた縁ばかりは捨てがたいと思いとどまる男は、誠実な人だと見え、そうして連れ添われている女の方も、奥ゆかしい人なのだろうと推し量られるのです。
けれども、どうでしょう、世の中の様子を見ておりますと、思い及ばないほどすばらしいことなどありません。まして、あなた方の最上のお選びには、どれほどの人がふさわしいでしょう。
私のように、たいしたことのない者でも、容貌が見苦しくなく、若々しい年頃の女は、それぞれに、塵ひとつつけまいと身を取り繕い、手紙を書いても、おっとりと言葉を選び、墨の色もほのかに書いて、男をじれったく思わせ、もう一度はっきり会いたいと、どうしようもなく待たせ、やっとかすかな声が聞けるほどに近づいても、息をひそめて言葉少なにしているのが、実はたいそう上手に欠点を隠しているのでした。もの柔らかで女らしいと思って見ると、あまりにも情に流されすぎて、男の機嫌をとれば浮気っぽくなる。これをまず第一の欠点とすべきでしょう。
何事の中でもおろそかにできないのは、夫の世話の方面ですが、それは、物の情趣を知りすぎて、ちょっとした折に風流をきかせ、趣深いことに熱心である、といった面はなくてもよさそうに見えます。しかし、だからといって、実直一点張りで、髪を耳にはさみ、なりふりかまわない主婦が、ひたすら所帯じみた世話ばかりしているのも困りものです。夫が朝夕の出仕につけても、公私にわたる人々の振る舞い、よいことも悪いことも、目にも耳にもとまる様子を、他人にわざわざ話して聞かせるでしょうか。
身近にいる妻で、話を聞き分けて理解してくれるような人に、語り合いたいと思って、ひとりでに笑みがこぼれたり、涙ぐんだり、あるいは、筋の通らない公のことに腹が立って、胸ひとつに収めかねることなども多いのに、こんな妻に話してどうなるものかと思うと、つい顔をそむけて、人知れず思い出し笑いをしたり、ああとひとりごとを言ったりするのに、何ごとですかと、間の抜けた顔で見上げられたら、どんなにがっかりすることでしょう。
ただひたすら子どもっぽくて素直な人を、あれこれと教え直して妻にしたらどうでしょう。頼りなくても、直しがいのある気がするでしょう。たしかに、向かい合っている間は、かわいらしさに免じて許せるでしょうが、離れているときに、用事を言いつけたり、折々にする行事などで、遊びのことでもまじめなことでも、自分の判断でできることがなく、考えの浅いのは、まことに残念で頼りないという欠点が、やはり困るでしょう。ふだんは少しとげとげしく、気に入らない人が、何かの折には思いがけず見ばえがすることもあるのです」などと、何でも知り尽くしたような論客も、結論を出しかねて、ひどくため息をつく。
意訳
左馬頭の話は、妻選びの難しさを、国の政治をになう人物を選ぶことにたとえるところから始まる。政治は大勢で分担できるが、家の切り盛りは妻一人が担う。だからこそ妻選びは難しい、という理屈である。
気取って本心を見せない女、家事ばかりで夫の話し相手にならない女、素直だが自分で判断できない女。左馬頭が挙げる欠点は、どれも具体的で、当時の貴族の結婚生活の実感がこもっている。夫が外で見聞きしたことを分かち合える妻を求める左馬頭の言葉には、妻に教養と理解力を求める平安貴族の理想が表れている。一方で、子どもっぽい人を自分好みに育てるという考えは、のちに源氏が若紫(紫の上)を引き取って育てる話を予告している。
語釈・文法注
- 御ぞ
- お召し物。「ぞ」は衣(そ)。
- なよゝか
- 柔らかくしなやかなさま。着慣れて柔らかくなった衣のさま。
- 直衣(のうし)
- 貴族の男性の平常服。
- かため
- 守り、支え。国の柱石となる人。
- うつはもの
- 器量のある人物、才能のある人。
- ゆづらふ
- 互いに譲り合う、分担する。
- あふさきるさ
- ああすればこうなる、と一方がよければ他方が悪いさま。
- なのめに
- いいかげんに、ほどほどに。
- ちからいり
- 力を入れること、骨を折ること。
- 所せく
- 窮屈なほどに、たいそうに。「所せく思ひ給へぬ」で、たいしたことはないと思っております(者)。左馬頭が自分を謙遜する言い方。
- ことえり
- 言葉を選ぶこと。
- てしがな
- 願望の終助詞。「…したいものだ」。
- 耳はさみ
- 長い髪をじゃまにならないよう耳にはさむこと。家事にいそしむ主婦の、なりふりかまわぬ様子。
- びさう
- 美相(びそう)。見た目の美しさ。「びさうなき」で、身なりをかまわない。
- 家とうじ
- 家刀自(いえとうじ)。一家の主婦。
- おほやけばらだゝし
- 公(おおやけ)のことで腹立たしい。朝廷の不当な処置などに対する憤り。
- あはつか
- 浅はかなさま、ぼんやりしているさま。
- 心づきなし
- 気に入らない、好感がもてない。
- いでばえ
- 人前に出たときの見ばえ、引き立つこと。
文法
- 願望の終助詞「まほし」(見奉らまほし)
- 願望の助動詞「まほし」。「女にて見奉らまほし」で、女にして拝見したい。源氏の美しさを、女性として見たいほどだと語り手がたたえる言い方。
- 反語「やは」(うちまねばむやは)
- 「…だろうか、いや…ない」。他人にわざわざ話すだろうか、いや話さない。
- 不可能「え…じ」の形(えなむ思ひ定むまじかりける)
- 副詞「え」と打消推量「まじ」で「…できそうにない」。間に係助詞「なむ」が入り、「ける」で結ばれている。
解説
この場面で左馬頭は、妻選びを国家の人材登用にたとえる。政治は多くの人の分担で成り立つが、家の切り盛りは妻一人にかかっている、という論は、平安貴族の家における北の方(正妻)の役割の重さを物語っている。貴族の男性にとって、妻の実家の後ろ盾と、妻自身の家政の能力は、出世にも関わる大事であった。
「女にて見奉らまほし」は、源氏の美しさを表す有名な言い回しで、物語の中でたびたび使われる。男たちの女性論が続く場面の冒頭に、まず源氏自身の美しさを置いているところに、語りの工夫がある。
子どもっぽい人を自分好みに教え育てる、という話題は、のちに源氏が紫の上を育てることにつながる。品定めの中には、源氏のこれからの恋を予告するような話がいくつもちりばめられている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、21–23頁(コマ12–13)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日