古典ライブラリー

源氏物語 第2帖 帚木(2)

中の品

登場人物:光源氏・頭中将・左馬頭・藤式部丞

頭中将は、欠点のない女性はめったにいないと語り、女性を上・中・下の三つの品に分ける。そこへ左馬頭と藤式部丞が加わり、議論は中流の女性へと移る。左馬頭は、荒れた家にひっそり暮らす思いがけず美しい女性こそ心ひかれる、と語る。

雨の夜、宮中の一室で、灯火を囲んだ若い貴族たちが女性について熱心に語り合い、源氏が脇息に寄りかかって聞いている場面(AI生成)
雨の夜、宮中の一室で、灯火を囲んだ若い貴族たちが女性について熱心に語り合い、源氏が脇息に寄りかかって聞いている場面
  1. 1「「「そこそこそこにににこそこそこそ多おほ多おほおおくくく集つど集つどつどへへえ給たま給たまたまふふうらめらめらめ。。。少すこ少すこすこししし見み見みみばやばやばや。。。さてさてさてなむなむなんこのこのこの厨子づし厨子づしずしももも心こころ心こころこころよくよくよく開あ開ああくくくべきべきべき」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、
  2. 2「「「御覽ごらん御覽ごらんごらんじじじ所ところ所ところところあらあらあらむむんこそこそこそ難かた難かたかたくくく侍はべ侍はべはべらららめめめ」」」などなどなど聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう序ついで序ついでついでににに
  3. 3「「「女をんな女をんなおんなのののこれこれこれはははしもしもしもとととつくつくつくまじきまじきまじきははは難かた難かたかたくくくもももあるあるあるかなかなかなととと、、、やうやうやうやうようようなむなむなん見み見みみ給たま給たまたまへへえ知し知ししるるる。。。
  4. 4唯ただ唯ただただうはべうはべうわべばかりばかりばかりのののなさけなさけなさけににに手て手てて走はし走はしはしりりりききき、、、折節をりふし折節をりふしおりふしのののいらへいらへいらえ心得こころえ心得こころえこころえてててうちしうちしうちしなどなどなどばかりばかりばかりははは隨分ずいぶん隨分ずいぶんずいぶんににによろしきよろしきよろしきももも多おほ多おほおおかりかりかりととと見み見みみふれふれうれどどど、、、そもそもそも誠まこと誠まことまことにににそのそのその方かた方かたかたををを取と取ととりりり出い出いいでででむむん選えら選えらえらににに必かならず必かならずかならず漏も漏ももるるるまじきまじきまじきはははいといといと難かた難かたかたしししややや。。。
  5. 5我わ我わわががが心得こころえ心得こころえこころえたるたるたる事こと事ことことばかりばかりばかりをををおのがじゝおのがじゝおのがじし心こころ心こころこころをををててて人ひと人ひとひとをををばばばおとしめおとしめおとしめなどなどなど、、、傍痛かたはらいた傍痛かたはらいたかたわらいたききき事こと事ことこと多おほ多おほおおかりかりかり。。。
  6. 6親おや親おやおやなどなどなど立た立たたちちち添そ添そそひひいてててもてあがめもてあがめもてあがめててておひさきおひさきおいさき籠こも籠こもこもれれれるるる窓まど窓まどまどのののなるなるなる程ほど程ほどほどははは唯ただ唯ただただををを聞き聞ききききき傳つた傳つたつたへへえててて心こころ心こころこころををを動うご動うごうごすすす事こと事ことこともももあめりあめりあめり。。。
  7. 7かたちかたちかたちをかしくをかしくおかしく若わか若わかわかやかやかやかにてにてにて紛まぎ紛まぎまぎるゝるゝるる事こと事ことことなきなきなき程ほど程ほどほど、、、はかなきはかなきはかなきをををももも人ひと人ひとひとまねまねまねににに心こころ心こころこころををを入い入いいるゝるゝるる事こと事ことこともももあるあるあるにににおのづからおのづからおのずから一ひと一ひとひとつつつゆゑづけゆゑづけゆえずけてててししし出い出いいづるづるずる事こと事ことこともももありありあり。。。
  8. 8見み見みみるるる人ひと人ひとひと後おく後おくおくれれれたるたるたる方かた方かたかたをををばばば言い言いいひひい隱かく隱かくかくしししさてさてさてありぬべきありぬべきありぬべき方かた方かたかたをををばばば繕つくろ繕つくろつくろひひいててて、、、出いだ出いだいだすすすにににそれそれそれしかしかしかあらあらあらじじじとととそらそらそらにににいかゞいかゞいかがははは推お推おおししし量はか量はかはかりりり思おも思おもおもひひいさささむむん。。。
  9. 9誠まこと誠まことまことかかかととと見み見みみもてもてもて行ゆ行ゆゆくくくににに見み見みみ劣おと劣おとおとりりりせせせぬぬぬやうやうようはははなくなくなくなむなむなんあるあるあるべきべきべき」」」とととうめきうめきうめきたるたるたる氣色けしき氣色けしきけしきももも耻はづか耻はづかはずかしげしげしげなれなれなればばば、、、
  10. 10いといといとなべてなべてなべてはははあらあらあらねねねどどど我わ我わわももも覺おぼ覺おぼおぼししし合あは合あはあわするするすることことことやややあらあらあらむむん、、、うちほゝゑみうちほゝゑみうちほほえみててて、、、「「「そのそのそのかたかどかたかどかたかどもももなきなきなき人ひと人ひとひとはははあらあらあらむむんややや」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、
  11. 11「「「いといといとさばかりさばかりさばかりならならならむむんあたりあたりあたりにはにはには誰たれ誰たれたれかかかはははすかさすかさすかされれれ寄よ寄よよりりり侍はべ侍はべはべらららむむん。。。取と取ととるるる方かた方かたかたなくなくなく口惜くちを口惜くちをくちおしきしきしききはきはきわととと優いう優いうゆうなりなりなりととと覺おぼ覺おぼおぼゆゆゆばかりばかりばかり優すぐ優すぐすぐれれれたるたるたるとととははは數かず數かずかず等ひと等ひとひとしくしくしくこそこそこそ侍はべ侍はべはべらららめめめ。。。
  12. 12人ひと人ひとひとのののしなしなしな高たか高たかたかくくく生うま生うまうまれれれぬれぬれぬればばば、、、人ひと人ひとひとにににもてもてもてかしづかかしづかかしずかれれれててて隱かく隱かくかくるゝるゝるることことこと多おほ多おほおおくくくにににそのそのそのけはひけはひけわいこよなかるこよなかるこよなかるべしべしべし。。。
  13. 13中なか中なかなかののの品しな品しなしなになむになむになむ人ひと人ひとひとののの心々こころごころ心々こころごころこころごころ己おの己おのおのがががじゝじゝじしののの立た立たたてててたるたるたる趣おもむき趣おもむきおもむきももも見み見みみえええててて分わ分わわかるかるかるべきべきべき事こと事ことことかたがたかたがたかたがた多おほ多おほおおかるかるかるべきべきべき。。。
  14. 14下しも下しもしものののととといふいふいうきはきはきわににになれなれなればばば、、、殊こと殊ことことににに耳みみ耳みみみみたゝたゝたたずずずかしかしかし」」」とととててていといといと隈くま隈くまくまなるなるなる氣色けしき氣色けしきけしきなるなるなるもももゆかしくゆかしくゆかしくててて、、、
  15. 15「「「そのそのその品々しなじな品々しなじなしなじなやややいかにいかにいかに。。。いづれいづれいずれををを三み三みみつつつののの品しな品しなしなにににおきおきおきてててかかか分わ分わわくくくべきべきべき。。。もともともとのののしなしなしなたかくたかくたかく生うま生うまうまれれれながらながらながら身み身みみははは沈しづ沈しづしずみみみ位くらゐ位くらゐくらい短みじか短みじかみじかくくくててて人ひと人ひとひとげげげなきなきなき、、、又また又またまたののの上達部かんだちめ上達部かんだちめかんだちめなどなどなどまでまでまでなりなりなりのぼりのぼりのぼりたるたるたる我わ我わわはははがほがほがおにてにてにて家いへ家いへいえののの內うち內うちうちををを飾かざ飾かざかざりりり人ひと人ひとひとににに劣おと劣おとおとらららじじじととと思おも思おもおもへへえるるる、、、そのそのそのけぢめけぢめけじめをををばばばいかゞいかゞいかが別わ別わわくくくべきべきべき」」」ととと問と問ととひひい給たま給たまたまふふう程ほど程ほどほどににに、、、
  16. 16左ひだり左ひだりひだりののの馬むま馬むまうまののの、、、藤式部とうしきぶ藤式部とうしきぶとうしきぶののの御物忌おほんものいみ御物忌おほんものいみおおんものいみににに籠こも籠こもこもらららむむんとととててて參まゐ參まゐまいれれれりりり。。。
  17. 17世よ世よよのののにてにてにて物もの物ものものよくよくよく言い言いいひひい通とほ通とほとおれれれるるるををを、、、中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょう待ま待ままちちちとりとりとりてててこのこのこの品々しなじな品々しなじなしなじな辨わきま辨わきまわきまへへえ定さだ定さださだめめめ爭あらそ爭あらそあらそふふう。。。いといといと聞き聞ききききき憎にく憎にくにくききき事こと事ことこと多おほ多おほおおかりかりかり。。。
  18. 18「「「なりなりなりのぼれのぼれのぼれどもどもども素もと素もともとよりよりよりさるべきさるべきさるべきすぢすぢすじならならならぬぬぬははは世よ世よよののの人ひと人ひとひとののの思おも思おもおもへへえるるる事こと事ことことももも、、、さはいへどさはいへどさわいえど猶なほ猶なほなお異こと異ことことなりなりなり。。。
  19. 19又また又またまたもともともとはははやんごとなきやんごとなきやんごとなきすぢすぢすじなれなれなれどどど、、、世よ世よよにににふるふるふるすくなくすくなくすくなく時世ときよ時世ときよときようつろひうつろひうつろいててておぼえおぼえおぼえ衰おとろ衰おとろおとろへへえぬれぬれぬればばば、、、心こころ心こころこころはははこゝろこゝろこころとととしししててて事こと事ことこと足た足たたらららずずず、、、わろびわろびわろびたるたるたる事こと事ことことどもどもども出い出いいででで來き來ききるるるわざわざわざなななめれめれめればばば、、、とりどりとりどりとりどりにににことわりことわりことわりててて中なか中なかなかののの品しな品しなしなにににぞぞぞ置お置おおくくくべきべきべき。。。
  20. 20受領ずりやう受領ずりやうずりょうととと言い言いいひひいててて人ひと人ひとひとののの國くに國くにくにののの事こと事ことことにににかゝづらひかゝづらひかかずらいいとなみいとなみいとなみててて品しな品しなしな定さだ定さださだまりまりまりたるたるたる中なか中なかなかにもにもにも又また又またまたきざみきざみきざみきざみきざみきざみありありありててて中なか中なかなかののの品しな品しなしなのののけしうけしうけしゅうはははあらあらあらぬぬぬえりえりえり出い出いいでででつつつべきべきべき頃ころ頃ころころなりなりなり。。。
  21. 21ののの上達部かんだちめ上達部かんだちめかんだちめよりよりよりももも、、、ののの四位しゐ四位しゐしいどもどもどもののの世よ世よよのののおぼえおぼえおぼえ口惜くちを口惜くちをくちおしからしからしからずずずもともともとののの根ね根ねねざしざしざし賤いや賤いやいやしからしからしからぬぬぬががが安やす安やすやすらからからかににに身み身みみをををもてなしもてなしもてなしふるまひふるまひふるまいたるたるたる、、、いといといとなりなりなりややや。。。
  22. 22家いへ家いへいえののの內うち內うちうちににに足た足たたらららぬぬぬ事こと事ことことなどなどなどはははたたた無な無ななかかかめるめるめるまゝまゝままににに、、、省はぶ省はぶはぶかかかずずずまばゆきまばゆきまばゆきまでまでまでもてもてもてかしづけかしづけかしずけるるるむすめむすめむすめなどなどなどのののおとしめおとしめおとしめ難かた難かたかたくくく生お生おおひひい出い出いいづるづるずるももも數多あまた數多あまたあまたあるあるあるべしべしべし。。。
  23. 23宮仕みやづかへ宮仕みやづかへみやずかえににに出い出いいででで立た立たたちちちててて、、、思おも思おもおもひひいかけかけかけぬぬぬさいはひさいはひさいわいとりとりとり出い出いいづるづるずる例れい例れいれいどもどもども多おほ多おほおおかりかりかりかしかしかし」」」などなどなどいへいへいえばばば、、、
  24. 24「「「すべてすべてすべてににによるよるよるべきべきべきななななりなりなり」」」とととててて笑わら笑わらわらひひい給たま給たまたまふふうををを、、、「「「ことことこと人ひと人ひとひとののの言い言いいははわむむんやうやうようににに心得こころえ心得こころえこころえずずず仰おほ仰おほおおせせせらるらるらる」」」とととててて中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうにくむにくむにくむ。。。
  25. 25「「「もともともとのののしなしなしな時世ときよ時世ときよときよのののおぼえおぼえおぼえうちあひうちあひうちあい、、、やんごとなきやんごとなきやんごとなきあたりあたりあたりののの內々うちうち內々うちうちうちうちのののもてなしもてなしもてなしけはひけはひけわい後おく後おくおくれれれたらたらたらむむんははは更さら更さらさらにににもももいはいはいわずずず、、、何なに何なになにをををしししてててかくかくかく生お生おおひひい出い出いいでででけむけむけんととといふがひなくいふがひなくいうがいなく覺おぼ覺おぼおぼゆゆゆべしべしべし。。。
  26. 26うちあひうちあひうちあいててて優すぐ優すぐすぐれれれたらたらたらむむんもももことわりことわりことわり、、、これこれこれこそこそこそはははさるべきさるべきさるべき事こと事ことこととととおぼえおぼえおぼえててて珍めづら珍めづらめずらかかかなるなるなる事こと事ことことともともとも心こころ心こころこころももも驚おどろ驚おどろおどろくくくまじまじまじ。。。
  27. 27ががが及およ及およおよぶぶぶべきべきべき程ほど程ほどほどならならならねねねばばば、、、かみかみかみがががはははうちうちうち置お置おおききき侍はべ侍はべはべりりりぬぬぬ。。。
  28. 28さてさてさて世よ世よよにににありありありととと人ひと人ひとひとににに知し知ししららられれれずずずさびしくさびしくさびしくあばれあばれあばれたらたらたらむむん葎むぐら葎むぐらむぐらのののににに思おも思おもおもののの外ほか外ほかほかにににらうたげらうたげろうたげならならならむむん人ひと人ひとひとののの閉と閉ととぢぢじられられられたらたらたらむむんこそこそこそ限かぎり限かぎりかぎりなくなくなく珍めづら珍めづらめずらしくしくしくははは覺おぼ覺おぼおぼえええめめめ。。。
  29. 29いかでいかでいかではははたたたがゝりがゝりかかりけむけむけんととと思おも思おもおもふふうよりよりより違たが違たがたがへへえるるる事こと事ことことなむなむなん、、、怪あや怪あやあやしくしくしく心こころ心こころこころとまるとまるとまるわざわざわざなななべきべきべき。。。
  30. 30父ちち父ちちちちののの年とし年としとし老お老おおいいい物もの物ものものむつかしげむつかしげむつかしげにににふとりふとりふとりすぎすぎすぎ、、、ののの顏かほ顏かほかおにくげにくげにくげににに思おも思おもおもひやりひやりいやりことことことなるなるなる事こと事ことことなきなきなき閨ねや閨ねやねやののの內うち內うちうちににに、、、いといといといたくいたくいたく思おも思おもおもひひい、、、はかなくはかなくはかなくししし出い出いいでででたるたるたる事こと事ことことわざわざわざももも故ゆゑ故ゆゑゆえなからなからなからずずず見み見みみえええたらたらたらむむん、、、かたかどかたかどかたかどにてもにてもにてもいかゞいかゞいかが思おも思おもおもののの外ほか外ほかほかにににをかしからをかしからおかしからざらざらざらむむん。。。
  31. 31優すぐ優すぐすぐれれれててて疵きず疵きずきずなきなきなき方かた方かたかたのののえらびえらびえらびにこそにこそにこそ及およ及およおよばばばざらざらざらめめめ。。。さるさるさるかたかたかたにてにてにて捨す捨すすててて難かた難かたかたききき物もの物ものものをををばばば」」」とととててて式部しきぶ式部しきぶしきぶををを見み見みみやれやれやればばば、、、
  32. 32「「「我わ我わわががが妹いも妹いもいもうとゞもうとゞもうとどものののよろしきよろしきよろしき聞きこ聞きこきこえええあるあるあるををを思おも思おもおもひひいてててのたまふのたまふのたまうにににややや」」」とととややや心得こころえ心得こころえこころえらむらむらん、、、ものものものももも言い言いいははわずずず。。。
  33. 33いでやいでやいでやかみかみかみののの品しな品しなしなととと思おも思おもおもふふうだにだにだに難かた難かたかたげげげなるなるなる世よ世よよをををととと君きみ君きみきみはははおぼすおぼすおぼすべしべしべし。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

源氏が「あなたのところにこそ、たくさんお集めになっているのでしょう。少し見たいものです。そうしてこそ、この厨子も気持ちよく開けましょう」とおっしゃると、頭中将は「ご覧になる値打ちのあるものは、なかなかございませんでしょう」などと申し上げるついでに、こう語る。

「女で、これこそはと非の打ちどころのない人は、なかなかいないものだと、だんだんわかってまいりました。ただ表面だけの風流心で、手紙をさらさらと書き、折々の返事を心得て気のきいたことを言う程度なら、それなりにまあよい人も多いと見ておりますが、それも、本当にその方面ですぐれた人を選び出そうとすると、必ず選に漏れないという人はたいそう少ないものです。自分の得意なことばかりを、それぞれ得意げにして、人をけなしたりするなど、見ていられないことが多いのです。

親などがそばについて大切に育て、将来に望みをかけて家の奥にこもっている間は、ちょっとした一つの取り柄を聞き伝えて心を動かすこともあるでしょう。容貌が美しく、おっとりとして若々しく、ほかに気をとられることのない頃は、ちょっとした慰みごとも、人のまねをして熱心にすることがあるので、自然と一つくらいは見どころのある出来ばえになることもあります。世話をする人が、劣っているところは言い隠し、まあまあのところは取り繕って言いふらすので、それを、そうではあるまいと、見もしないで、どうして推し量ってけなすことができましょう。本当かと思って付き合っていくと、見劣りしないということは、まずないでしょう」と、ため息をつく様子も、こちらが気恥ずかしくなるほどなので、源氏は、すべてがそうではないにしても、ご自身にも思い当たることがあるのだろうか、ほほえんで、「その一つの取り柄さえない人はいるだろうか」とおっしゃる。

頭中将は「そんなひどいところには、誰がだまされて寄りつきましょう。何の取り柄もなくつまらない身分の女と、すばらしいと思うほどすぐれた女とは、数は同じくらいでございましょう。身分の高い家に生まれると、人に大切にかしずかれて、欠点も隠れることが多く、自然とその様子もこのうえなく見えるでしょう。中くらいの身分の者にこそ、人それぞれの気立てや、めいめいの考えも見えて、区別できることがあれこれ多いでしょう。下の身分ということになると、ことさら耳にとまることもありません」と言って、何でも知り尽くしたような様子なのも興味深くて、源氏は「その品々とはどういうものか。何を基準に三つの品に分けるのか。もとは家柄が高く生まれながら、落ちぶれて位も低く、人並みでない者と、また、普通の家柄から上達部にまで成り上がって、得意顔で家の中を飾り立て、人に劣るまいと思っている者と、その区別はどうつけたらよいのだろう」とお尋ねになる。

そこへ、左馬頭と藤式部丞が、御物忌に籠もろうとして参上した。世に知られた色好みで、弁舌もさわやかなので、頭中将は待ってましたとばかりに迎えて、この品々の区別を論じて言い争う。たいそう聞き苦しいことも多い。

左馬頭は言う。「成り上がっても、もともとふさわしい家柄でない者は、世間の人の見る目も、何と言ってもやはり違います。また、もとは高貴な家柄でも、世渡りの手段が乏しく、時勢が移って評判も衰えてしまうと、気位ばかり高くて暮らしが立ちゆかず、みっともないことも出てくるようですから、どちらもそれぞれに判断して、中の品に置くべきでしょう。受領といって地方の国の政治に携わり、身分の定まった者の中にも、また段階があって、中の品でもなかなか悪くない人を選び出せる時世です。中途半端な上達部よりも、非参議の四位の人で、世間の評判も悪くなく、もとの家柄も賤しくない人が、ゆったりと暮らしているのは、まことにさっぱりとしたものです。家の中に足りないものなどもないようなので、出費を惜しまず、まばゆいほどに大切に育てた娘などで、見下せないほど立派に成長した人も大勢いるでしょう。宮仕えに出て、思いがけない幸運をつかんだ例も多いのです」と言うと、源氏は「結局は金持ちかどうかで決まるようだね」と笑いなさるのを、頭中将は「ほかの人が言うようなことを、わかっていないようにおっしゃる」と憎らしがる。

左馬頭は続ける。「もとの家柄と時勢の評判がそろっていて、高貴な家の、内々の振る舞いや様子が劣っているような人は、言うまでもなく、どうしてこんなふうに育ったのだろうと、言いようもなく思われるでしょう。家柄も評判もそろってすぐれているのは当然のことで、こうあるべきだと思って、珍しいこととも驚かないでしょう。私などの手の届くところではありませんので、上の上の方々のことはさておきます。

さて、世の中にいるとも人に知られず、さびしく荒れはてた葎の門の家に、思いのほかに愛らしい人がひっそり閉じこもっていたら、それこそこのうえなく珍しく思われるでしょう。どうしてこんな人がこんなところにいたのだろうと、予想と違っていることが、不思議と心ひかれるものなのです。父親は年をとって見苦しく太りすぎ、兄弟の顔も憎らしげで、想像したところたいしたこともない家の奥に、たいそう気位が高く、ちょっとしたこともたしなみ深く見える人がいたら、たとえ一つの取り柄にしても、どうして思いのほかにおもしろく思われないことがありましょう。すぐれて欠点のない人を選ぶ場合には及ばないでしょうが、そういう人として捨てがたいものですよ」と言って、式部丞の方を見やると、式部丞は「自分の妹たちが少し評判がよいのを思っておっしゃるのだろうか」と思ったのだろうか、何も言わない。

いやいや、上の品と思う人でさえ、なかなかいない世の中なのに、と源氏はお思いになったのだろう。

意訳

いわゆる「雨夜の品定め」の始まりである。頭中将は女性を上・中・下の三つに分け、上の品は隠れて欠点が見えにくく、下の品は話題にもならない、本当に見ておもしろいのは中の品だ、と言う。この「中の品」という考え方が、帚木・空蟬・夕顔の三帖を通して、源氏の恋を導いていく。

左馬頭が語る、荒れた家に思いがけず美しい女性がひっそり暮らしている、という話は、男たちの理想の一つの型である。夕顔や末摘花、のちの宇治の姫君たちなど、源氏物語にはこの型をふまえた出会いがくり返し描かれる。源氏が「金持ちかどうかで決まるのか」と茶化すのは、まだ若い源氏が、議論を少し離れたところから聞いていることを示している。

語釈・文法注

難つく
非難する、欠点を指摘する。「難つくまじき」で、非の打ちどころがない。
手走り書き
手紙をすらすらと書くこと。
見給ふれ
「給ふ」は下二段活用の謙譲の補助動詞(「…ております」)。「見給ふれど」で、見ておりますが。
心をやる
得意になる、いい気になる。
窓の內
家の奥、深窓。白居易「長恨歌」の「養はれて深閨に在り人未だ識らず」などをふまえ、娘が家の奥で大切に育てられることをいう。
かたかど
一つの取り柄、一芸。
おほどく
おっとりとしている。
すさび
慰みごと、手すさび。
まねぶ
見聞きしたことをそのまま人に語り伝える。
思ひくたす
見下す、軽んじる。
じねん
自然(じねん)。おのずから。
きざみ
段階、身分。
隈なげ
何でも知りつくしている様子。形容詞「隈なし」から。
直人(ただびと)
普通の家柄の人、臣下。
左の馬のかみ
左馬頭(さまのかみ)。左馬寮の長官。品定めでいちばん多く語る人物。
藤式部の丞
藤原氏の式部丞。式部省の三等官。
すきもの
色好みの人。風流に通じた人。
たつき
生活の手段、よりどころ。
頃ほひ
時節、時世。
なまなま
中途半端な、未熟な。
非參議
三位以上で参議になっていない人、または四位で参議の資格がある人。ここでは公卿に準じる位の人。
かはらか
さっぱりとして感じがよい。
にぎはゝし
裕福である、富み栄えている。
なにがし
自称の謙譲語。私め。
かみがかみ
上の上。最上級の身分の人。
葎の門
雑草のむぐらが生い茂った門。荒れはてたさびしい家のたとえ。
せうと
女性から見た兄弟。
思ひあがる
誇りを高く持つ、気位が高い。

文法

願望の終助詞「ばや」(少し見ばや)
未然形について、自分の願望を表す。「少し見たい」。
推量の助動詞「らむ」(集へ給ふらめ)
目の前にないことを推量する現在推量。係助詞「こそ」の結びで已然形「らめ」になる。
当然・推量の「べし」の連体形(多かるべき)
係助詞「なむ」(中の品になむ)を受けて、連体形「べき」で結ばれている。
断定「なり」+推定「めり」(わざなめれば)
「なるめれ」の撥音便「なんめれ」の撥音無表記。「…ことのようなので」。

解説

「雨夜の品定め」は、源氏物語の中で最も有名な場面の一つである。五月雨の夜、宮中に籠もる若い男たちが、それぞれの経験から理想の女性を論じ合う。議論の中心は「中の品」、つまり受領(地方官)や非参議の四位などの中流貴族の娘である。紫式部自身も受領階級の娘であり、この場面には作者の身分への意識がにじんでいるともいわれる。

左馬頭の「葎の門」の話は、のちに源氏が夕顔の宿を訪ねる場面や、末摘花・宇治の大君と中の君などの物語で、くり返し形を変えて現れる。品定めは単なる雑談ではなく、この後の源氏の恋の道筋を予告する役割をもっている。

最後の「いでやかみの品と思ふだに難げなる世を」は、源氏の心中を語り手が推し量った言葉である。上の品の女性でさえ理想の人はなかなかいないのに、と源氏が思い浮かべているのは、藤壺のことだと考えられている。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、18–21頁(コマ11–12)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日