古典ライブラリー

源氏物語 第1帖 桐壺(2)

玉のをのこ皇子

登場人物:桐壺帝・桐壺更衣・光源氏・弘徽殿の女御・第一皇子

更衣は輝くばかりに美しい皇子を産む。帝の寵愛はいっそう深まり、第一皇子の母である弘徽殿の女御は、この皇子が東宮に立つのではと疑う。更衣への嫌がらせは激しくなるが、皇子は誰もがねたみきれないほど美しく育っていく。

生まれたばかりの若宮を抱く更衣を、帝がいとおしそうに見つめている場面(AI生成)
生まれたばかりの若宮を抱く更衣を、帝がいとおしそうに見つめている場面
  1. 1ののの世よ世よよにもにもにもおほんおほんおおんややや深ふか深ふかふかかりけむかりけむかりけん、、、世よ世よよににになくなくなく淸きよ淸きよきよのののをのこをのこおのこ皇子みこ皇子みこみこさへさへさへ生うま生うまうまれれれたまひたまひたまいぬぬぬ。。。
  2. 2ととと心こころ心こころこころせせせたまひたまひたまいててて、、、急いそ急いそいそぎぎぎ參まゐ參まゐまいらせらせらせててて御覽ごらん御覽ごらんごらんずるずるずるににに珍めづ珍めづめずなるなるなるちごちごちごのののおほんおほんおおんかたちかたちかたちなりなりなり。。。
  3. 3一いち一いちいちのののははは右大臣うだいじん右大臣うだいじんうだいじんののの女御にようご女御にようごにょうごのののおほんおほんおおん腹はら腹はらはらにてにてにて重おも重おもおもくくく疑うたがひ疑うたがひうたがいなきなきなきののの君きみ君きみきみととと世よ世よよにににもてもてもて聞きこ聞きこきこゆれゆれゆれどどど
  4. 4このこのこのおほんおほんおおん匂にほ匂にほにおにはにはには並なら並ならならびびび給たま給たまたまふふうべくべくべくもももあらあらあらざりざりざりけれけれければばばのののやんごとなきやんごとなきやんごとなき御おん御おんおんおもひおもひおもいにてにてにてこのこのこの君きみ君きみきみをばをばをばにににおぼほしおぼほしおぼおしかしづきかしづきかしずきたまふたまふたまうことことこと限かぎり限かぎりかぎりなしなしなし。。。
  5. 5始はじめ始はじめはじめよりよりよりのののしししたまふたまふたまうべきべきべききはきはきわにはにはにはあらあらあらざりざりざりききき。。。
  6. 6おぼえおぼえおぼえやんごとなくやんごとなくやんごとなくめかしけれめかしけれめかしけれどどどせせせたまふたまふたまうあまりあまりあまりににに、、、御おん御おんおん遊あそび遊あそびあそびののの折々をりをり折々をりをりおりおり何事なにごと何事なにごとなにごとにもにもにも故ゆゑ故ゆゑゆえあるあるある事こと事ことことののの節々ふしぶし節々ふしぶしふしぶしにはにはにはまづまづまず參ま參まもううう上のぼ上のぼのぼたまふたまふたまう。。。
  7. 7あるあるある時とき時ときときにはにはにはりりりすぐしすぐしすぐしてててさぶらさぶらさぶらせせせたまふたまふたまうなどなどなど、、、
  8. 8にににおまへおまへおまえ去さ去ささらずらずらずもてもてもてなさなさなさせせせたまひたまひたまいししし程ほど程ほどほどににに、、、おのづからおのづからおのずから輕かろ輕かろかろ方かた方かたかたにもにもにも見み見みみえええしししををを、、、
  9. 9このこのこの皇子みこ皇子みこみこ生うま生うまうまれれれたまひたまひたまいててて後のち後のちのちはははいといといと心こころ心こころこころ殊こと殊ことことににに思おも思おもおもほしほしおしたれたれたればばば、、、にもにもにもうううせせせずずずはははこのこのこの皇子みこ皇子みこみこののの居ゐ居ゐいたまふたまふたまうべきべきべきととと、、、一いち一いちいちのののみこみこみこののの女御にようご女御にようごにょうごははは覺おぼ覺おぼおぼししし疑うたが疑うたがうたがへりへりえり。。。
  10. 10人ひと人ひとひとよりよりより先さき先さきさきににに參まゐ參まゐまいりりりたまひたまひたまいてててやんごとなきやんごとなきやんごとなき御おん御おんおん思おも思おもおもひひいなべてなべてなべてならならならずずず皇子みこ皇子みこみこたちたちたちなどなどなどももも坐おは坐おはおわしませしませしませばばば、、、このこのこのおほんおほんおおん方かた方かたかたののの御おん御おんおんをのみぞをのみぞをのみぞ猶なほ猶なほなお煩わづら煩わづらわずらはしくはしくわしく心苦こころぐる心苦こころぐるこころぐるしうしうしゅう思おも思おもおもひひい聞きこ聞きこきこえええさせさせさせたまひたまひたまいけるけるける。。。
  11. 11畏かしこ畏かしこかしこききき御おん御おんおんをばをばをば賴たの賴たのたのみみみ聞きこ聞きこきこえええながらながらながら、、、おとしめおとしめおとしめ疵きず疵きずきずををを求もと求もともと給たま給たまたまふふう人ひと人ひとひとははは多おほ多おほおおくくく我わ我わわががが身み身みみはははかよわくかよわくかよわく、、、ものものものはかなきはかなきはかなき有樣ありさま有樣ありさまありさまにてにてにてなるなるなる物思ものおもひ物思ものおもひものおもいをぞをぞをぞしししたまふたまふたまう。。。
  12. 12はははなりなりなり。。。
  13. 13數多あまた數多あまたあまたのののおほんおほんおおん方々かたがた方々かたがたかたがたををを過す過すすぎぎぎさせさせさせたまひたまひたまいつゝつゝつつ隙ひま隙ひまひま御おん御おんおんまへまへまえわたりわたりわたりににに人ひと人ひとひとののの御心みこころ御心みこころみこころををを盡つく盡つくつくしししたまふたまふたまうももも、、、實げ實げげにににととと見み見みみえええたりたりたり。。。
  14. 14參ま參まもううう上のぼ上のぼのぼりりりたまふたまふたまうにもにもにも、、、あまりあまりあまり打う打ううちちち頻しき頻しきしきるるる折々をりをり折々をりをりおりおりははは、、、、、、此處ここ此處ここここ彼處かしこ彼處かしこかしこののの道みち道みちみちににに怪あや怪あやあやしきしきしきわざわざわざをををしししつゝつゝつつ、、、御おん御おんおん送おく送おくおくりりり迎むか迎むかむかへへえののの人ひと人ひとひとのののきぬきぬきぬののの裾すそ裾すそすそ堪た堪たたへへえ難がた難がたがとううう事こと事ことことどもどもどもありありあり。。。
  15. 15又また又またまたあるあるある時とき時ときときはははののの戶と戶ととをををさしこめさしこめさしこめ此方こなた此方こなたこなた彼方かなた彼方かなたかなた心こころ心こころこころををを合あは合あはあわせせせててて煩わづら煩わづらわずらはせはせわせ給たま給たまたまふふう時とき時ときときももも多おほ多おほおおかりかりかり。。。
  16. 16事こと事ことことにににふれふれふれててて數かず數かずかず知し知ししらずらずらず苦くる苦くるくるしきしきしきことことことのみのみのみ増まさ増まさまされれればばばいといといと痛いた痛いたいとううう思おも思おもおもひひいたるたるたるをををいとゞいとゞいとど哀あはれ哀あはれあわれととと御覽ごらん御覽ごらんごらんじじじててて、、、
  17. 17にににもともともとよりよりよりさぶらひさぶらひさぶらい給たま給たまたまふふう更衣かうい更衣かういこういのののをををほかほかほかににに移うつ移うつうつさせさせさせたまひたまひたまいててて、、、うへうへうえにににたまはすたまはすたまわす。。。
  18. 18そのそのその怨うらみ怨うらみうらみましてましてまして方かた方かたかたなしなしなし。。。
  19. 19このこのこのみこみこみこ三み三みみつつつににになりなりなりたまふたまふたまう年とし年としとしおほんおほんおおんのののことことこと一いち一いちいちののの宮みや宮みやみやののの奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりしししににに劣おと劣おとおとらずらずらず、、、をさめをさめおさめののの物もの物ものものををを盡つく盡つくつくしししててていみじういみじういみじゅうせせせさせさせさせ給たま給たまたまふふう。。。
  20. 20それそれそれにににつけつけつけてててももも世よ世よよのののそしりそしりそしりのみのみのみ多おほ多おほおおかれかれかれどどど、、、このこのこのみこみこみこのののもてもてもて坐おは坐おはおわするするする御おん御おんおんかたちかたちかたち、、、心こころ心こころこころばへばへばえありがたくありがたくありがたく珍めづら珍めづらめずらしきしきしきまでまでまで見み見みみえええ給たま給たまたまふふうををを得え得ええ猜そね猜そねそねみみみたまはたまはたまわずずず。。。
  21. 21ゝゝの心こころ心こころこころ知し知ししりりりたまふたまふたまう人ひと人ひとひとははは、、、かゝるかゝるかかる人ひと人ひとひとももも世よ世よよににに出い出いいでででおはするおはするおわするものものものなりなりなりけりけりけりととと淺あさ淺あさあさまでまでまで目め目めめををを驚おどろ驚おどろおどろかしかしかしたまふたまふたまう。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

前世からのご縁が深かったのだろうか、世にまたとないほど清らかで美しい、玉のような男の皇子までもお生まれになった。帝は早く会いたいと待ちきれずにお思いになって、急いで参内させてご覧になると、めったにないほど美しい幼子のご容貌である。

第一皇子は右大臣の娘である女御のお生まれで、後ろ盾がしっかりしており、疑いなく東宮となる方として世間も大切にお仕え申し上げていたが、この若宮の輝くような美しさには並びようもなかった。そのため帝は、第一皇子に対しては一通りの大切なお気持ちを持たれるだけで、この若宮をご自分だけの宝物のようにお思いになって、限りなく大切にお育てになる。

母の更衣は、もともと普通の女房のように帝のおそば近くの雑事にお仕えするような身分ではなかった。評判も高く、身分の高い人らしく振る舞っていたのだが、帝がむやみにおそばにまとわりつかせなさるあまり、しかるべき管弦の遊びの折々や、何事につけても由緒ある催しのたびごとに、まずこの更衣をお召しになる。ある時にはお寝過ごしになって、そのままおそばに置いておかれるなど、無理にもおそばから離さずにお扱いになっていたので、自然と軽い身分の者のようにも見えていた。

ところが、この皇子がお生まれになってからは、帝は格別のお気持ちでお取り計らいになったので、「悪くすると、東宮の位にはこの皇子がお就きになるのではないか」と、第一皇子の母の女御はお疑いになった。この女御は誰よりも先に入内なさって、帝が大切に思うお気持ちもひととおりではなく、皇女たちもいらっしゃるので、帝はこの方のご意見だけは、やはり気が重く、心苦しくお思い申し上げていた。

更衣は、おそれ多い帝のご庇護を頼りにしてはいたが、さげすみ、あら探しをなさる人は多く、自分の身はか弱く頼りない有様なので、なまじご寵愛を受けたためにかえって物思いをなさる。お部屋は桐壺である。

帝が多くの方々のお部屋の前を素通りなさって、絶え間なく更衣のもとへお通いになるので、ほかの方々が心をすり減らしなさるのも、もっともなことと見えた。更衣が帝のもとへ参上なさるときも、あまりたび重なる折々には、打橋や渡殿のあちらこちらの通り道にけしからぬ仕掛けをして、送り迎えの女房の着物の裾が台無しになるような、ひどいことがあった。またある時は、どうしても通らなければならない馬道の戸を閉ざして中に閉じこめ、こちらとあちらで示し合わせて恥をかかせ、困らせなさることも多かった。

何かにつけて数知れずつらいことばかりが増えるので、更衣がひどく思い悩んでいるのを、帝はいよいよかわいそうにご覧になって、後涼殿に以前からお仕えしていた更衣の部屋をよそへ移させて、桐壺の更衣の上局としてお与えになる。追い出された更衣の恨みは、なおさら晴らしようがない。

この皇子が三歳におなりの年、袴着の儀式を、第一皇子がなさったときに劣らぬよう、内蔵寮や納殿の品を使い尽くして、盛大におさせになる。それにつけても世間の非難ばかりが多かったが、この皇子が成長していかれるご容貌やお人柄が、めったにないほどすばらしくお見えになるので、誰もねたみきることがおできにならない。物の道理がわかる人は、このような人も世に生まれてくるものなのだなあと、驚きあきれるほど目をみはっておられる。

意訳

光源氏の誕生は、物語の中で「前世からの縁」として語られる。けれども、それは更衣の立場を救うものではなかった。皇子が生まれたことで、更衣はただの寵愛を受ける女性から、東宮の地位を争いかねない皇子の母になった。弘徽殿の女御の疑いは、嫉妬というより、自分の子の将来と右大臣家の権勢を守ろうとする政治的な警戒である。

帝は更衣を守ろうとして、上局を与えるなど特別な扱いを重ねる。しかし、そのたびに別の誰かが押しのけられ、恨みは更衣に向かう。帝の愛情が深いほど更衣が追い詰められていくという構図が、ここでくり返し描かれている。その中で、皇子の美しさだけは、誰も否定できないものとして際立っている。

語釈・文法注

さきの世
前世。仏教の因果の考えから、現世の縁や幸不幸は前世の行いによって決まると考えられた。
契
約束、宿縁。ここでは前世からの因縁。
淸らなり
気品があって美しい。最上級の美しさに使う語で、主に皇族などに用いる。
玉の
宝玉のように美しい、の意。「玉のをのこ皇子」で、玉のように美しい男の皇子。
いつしか
早く(…したい)。待ち遠しい気持ちを表す。
心もとながる
じれったく思う、待ち遠しく思う。形容詞「心もとなし」の動詞形。
珍らかなり
めったにない。すばらしい。
一のみこ
第一皇子。母は右大臣の娘の弘徽殿の女御。のちの朱雀帝。
よせ
後ろ盾、後援。母方の実家の勢力。
まうけの君
皇太子(東宮)となるべき人。「儲けの君」。
かしづく
大切に育てる、大事に仕える。
匂ひ
色つやの美しさ、輝くような美しさ。古語の「にほひ」は主に視覚的な美しさをいう。
大方の
一通りの、普通の。「大方のやんごとなき御おもひ」で、一通りの大切なお気持ち。
私物
自分だけの大切なもの、秘蔵の宝。
おしなべて
普通の、並の。
上宮仕へ
帝のおそば近くで、日常の雑事に仕えること。女房のする仕事で、更衣の身分の者がすることではない。
じやうずめかし
「上衆めかし」。身分の高い人らしく見える。
わりなし
道理に合わない。ここでは「むやみに」。
まつはす
そばにまとわりつかせる、離さずに置く。
さるべき
しかるべき、ふさわしい。
參う上る(まうのぼる)
「まゐのぼる」の音便。宮中で、帝のおそばへ参上する。
大殿籠る
「寝(ぬ)」の尊敬語。お休みになる。主に帝・后に使う。
やがて
そのまま、引き続いて。現代語の「まもなく」とは意味が違う。
あながちなり
無理やりだ、ひたすらだ。
輕き方
身分の軽い者。帝がいつもそばに置くので、女房のような軽い身分の者のようにも見えた、ということ。
思ほしおきつ
心に決めておかれる。帝が皇子の扱いを特別にお決めになったこと。
坊
東宮坊。皇太子の御所で、転じて皇太子の位。
善うせずは
「ようせずは」。悪くすると、ひょっとすると。
なめり
断定の助動詞「なり」の連体形「なる」の撥音便「なん」の無表記+推定の助動詞「めり」。「…であるようだ」。
いさめ
忠告、意見。弘徽殿の女御が帝に意見をすること。
御陰
お守り、ご庇護。帝の愛情と保護。
疵を求む
欠点を探し出そうとする。あら探しをする。
なかなかなる
なまじっか…なために、かえって(よくない)。ご寵愛を受けたためにかえって苦しむこと。
御局
宮中で后妃や女房に与えられる部屋。
桐壺
淑景舎(しげいさ)の別名。中庭に桐が植えられていたことによる。帝の住む清涼殿から最も遠い殿舎の一つで、通うたびにほかの方々の部屋の前を通ることになる。
隙なし
絶え間がない。
ことわり
道理、もっともなこと。
內階(うちはし)
打橋。殿舎と殿舎の間に掛け渡した、取り外しのできる板の橋。
渡殿
殿舎と殿舎をつなぐ屋根付きの渡り廊下。
まさなし
よくない、とんでもない。汚物をまいたことを、遠回しに言ったものと解されている。
えさらぬ
避けることのできない。どうしても通らなければならない。
めだう
馬道(めどう)。殿舎の中を通り抜ける板敷きの通路。
はしたなむ
きまりの悪い思いをさせる。恥をかかせる。
思ひわぶ
思い悩む、つらく思う。
後涼殿(こうろうでん)
清涼殿の西隣の殿舎。帝のいる清涼殿にすぐ近い。
曹子(ぞうし)
宮中で女官などに与えられる部屋。
うへ局
上局。帝の御座所の近くに設けられた、后妃の控えの部屋。
やらむ方なし
晴らしようがない。「やる」は気持ちを晴らすこと。
袴着
幼児が初めて袴をつける儀式。三歳から七歳ごろに行われた。
くらづかさ
内蔵寮(くらりょう)。宮中の宝物や装束などを管理する役所。
をさめ殿
納殿(おさめどの)。宮中の衣服・調度・宝物などをしまっておく所。
およすぐ
成長する、大人びる。
…あへず
「あふ」は「すっかり…しきる」の意。打消を伴い「…しきれない」。「猜みあへたまはず」で、ねたみきることがおできにならない。
ものゝ心
物事の道理。「ものゝ心知りたまふ人」で、物事の道理がわかる人。
淺まし
驚きあきれるほどだ。良い意味にも悪い意味にも使う。ここでは良い意味。

文法

疑問の係助詞「や」の結び(契や深かりけむ)
係助詞「や」を受けて、過去推量の助動詞「けむ」が連体形で結ばれている。「…だったのだろうか」。
添加の副助詞「さへ」(玉のをのこ皇子さへ)
「…までも」。帝の寵愛に加えて、皇子までもが生まれた、という意。
推定の助動詞「めり」(居たまふべきなめり)
目に見えることから推し量る「…ようだ」。断定「なり」と結んで「なめり」となる。
強意の係助詞「ぞ」の結び(いさめをのみぞ…思ひ聞えさせたまひける)
係助詞「ぞ」を受けて、過去の助動詞「けり」が連体形「ける」で結ばれている。

解説

平安時代の皇位継承では、生まれた順だけでなく、母方の実家の勢力(後ろ盾)が大きな意味を持った。第一皇子は右大臣家という強い後ろ盾を持つが、帝の愛情は明らかに若宮に向いている。弘徽殿の女御が若宮の立太子を恐れるのは、母としてだけでなく、右大臣家の娘としても当然の警戒だった。

更衣への嫌がらせとして描かれる打橋・渡殿での「怪しきわざ」や、馬道の戸を閉ざすことは、内裏の建物の配置を知ると生々しく見えてくる。桐壺(淑景舎)は内裏の東北の隅にあり、清涼殿へ行くには多くの殿舎の前を通らなければならなかった。帝が後涼殿の部屋を上局として与えたのは、この道のりを短くするためでもあった。

袴着は、子どもの成長を祝う大切な通過儀礼である。第一皇子の時に劣らない盛大な袴着は、帝が若宮を第一皇子と同等に扱おうとしていることを周囲に示すものであり、非難が集まるのも無理はなかった。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1–2頁(コマ2–3)。国立国会図書館デジタルコレクション
校合
塚本哲三編『源氏物語』1(有朋堂文庫) 有朋堂書店、昭和7年(1932)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日