竹取物語 第14章
富士の煙
頭中将から報告を受け、かぐや姫の手紙と不死の薬を受け取った帝は、深く悲しむ。天に最も近い山が駿河国にあると聞き、かぐや姫に会えないのなら不死の薬も無用だと詠んで、手紙と薬をその山の頂で焼かせる。多くの兵士(士)を連れて登ったことから、その山を「ふじの山」と名づけ、その煙は今も雲の中へ立ち上っていると伝えられる。
- 1中中ちゅう將將じょう人人ひと々々びとをををひきひきひき具具ぐしししてててかへりかへりかえり參參まいりりりててて、、、かぐやかぐやかぐや姫姫ひめをををえええ戰戰たたかひひい留留とどめめめずずずなりなりなりぬるぬるぬることことことをををこまごまこまごまこまごまとととそうすそうすそうす。。。藥藥くすりののの壺壺つぼににに御御お文文ふみそへそへそえてててまゐらすまゐらすまいらす。。。ひろげひろげひろげててて御御ご覽覽らんじじじててて、、、いたくいたくいたくあはれあはれあわれがらがらがらせせせ給給たまひひいててて、、、物物ものもももきこしめさきこしめさきこしめさずずず、、、御御お遊遊あそびなどなどなどもももなかりなかりなかりけりけりけり。。。大大だい臣臣じんかんだちめかんだちめかんだちめををを召召めしししててて「「「いづれいづれいずれののの山山やまかかか天天てんににに近近ちかききき」」」ととととはとはとはせせせたまふたまふたまうににに、、、あるあるある人人ひと奏奏そうすすす「「「駿駿する河河がののの國國くににににあるあるある山山やまなむなむなん、、、このこのこの都都みやこももも近近ちかくくく天天てんもももちかくちかくちかく侍侍はべるるる」」」ととと奏奏そうすすす。。。これこれこれをををきかきかきかせせせ給給たまひひいててて、、、
- 2「「「あふあふあうことことことももも涙涙なみだにににうかぶうかぶうかぶわわわががが身身みにににはははしなしなしなぬぬぬくすりくすりくすりももも何何なににににかかかはははせせせむむん」」」。。。
- 3かのかのかの奉奉たてまつるるる不不ふ死死しののの藥藥くすりののの壺壺つぼににに、、、御御お文文ふみ具具ぐしししててて御御お使使つかいにににたまはすたまはすたまわす。。。勅勅ちょく使使しにににはははつきつきつきののの岩岩いわととといふいふいう人人ひとををを召召めしししててて、、、駿駿する河河がののの國國くににににあああなるなるなる山山やまのののいたゞきいたゞきいただきにににもてもてもて行行ゆくくくべきべきべきよしよしよし仰仰おおせせせ給給たまふふう。。。峯峯みねにににてててすすすべきべきべきやうやうよう敎敎おしへへへさせさせさせたまふたまふたまう。。。御御お文文ふみ不不ふ死死しののの藥藥くすりののの壺壺つぼならべならべならべててて、、、火火ひをををつけつけつけてててもやすもやすもやすべきべきべきよしよしよし仰仰おおせせせたまふたまふたまう。。。そのそのそのよしよしよしうけたまはりうけたまはりうけたまわりててて、、、つはものつはものつわものどもどもどもあまたあまたあまた具具ぐしししててて山山やまへへへ登登のぼりりりけるけるけるよりよりよりなむなむなん、、、そのそのその山山やまをををののの山山やまとととははは名名なづけづけずけゝるゝるける。。。そのそのそのけぶりけぶりけぶりいまだいまだいまだ雲雲くもののの中中なかへへへたちたちたちのぼるのぼるのぼるとととぞぞぞいひいひいい傳傳つたへへえたるたるたる。。。
現代語訳
頭中将は人々を引き連れて宮中に帰り、かぐや姫を戦って引きとめることができなかったことを、こまごまと奏上する。薬の壺に、かぐや姫のお手紙を添えて差し上げる。帝は広げてご覧になって、たいそう悲しくお思いになって、何もお召し上がりにならず、管弦の遊びなどもなさらなかった。大臣や上達部を召して、「どの山が天に近いか」とお尋ねになると、ある人が「駿河の国にある山が、この都にも近く、天にも近うございます」と奏上する。これをお聞きになって、
「かぐや姫に会うこともないので、悲しみの涙に浮かんでいるようなわが身にとって、死なない薬が何の役に立とうか」
かぐや姫が献上した不死の薬の壺に、お手紙を添えて、お使いの者にお渡しになる。勅使には、調石笠という人を召して、駿河の国にあるという山の頂上に持って行くように命じなさる。山頂でなすべき方法をお教えになる。お手紙と不死の薬の壺を並べて、火をつけて燃やすようにお命じになる。その旨を承って、兵士たちを大勢引き連れて山へ登ったことから、その山を「ふじの山」と名づけたのである。その煙は、今もまだ雲の中へ立ち上っていると言い伝えている。
意訳
物語は帝の悲しみで閉じられる。かぐや姫の最後の手紙と不死の薬を受け取った帝は、食事も遊びも絶ち、「姫に会えないのなら、死なない薬も何になろう」と詠む。帝は天に最も近い山の頂で、手紙と薬を焼かせる。それは天に昇った姫へ思いを届けようとする行為であり、同時に、永遠の命よりも、限りある命の中で人を思う心を選んだことを示している。多くの兵士(士)が登ったので「士に富む山」、あるいは不死の薬を焼いたので「不死の山」として、富士山の名の由来が語られる。今も富士山から立ち上る煙は、帝のかぐや姫への思いの名残として、物語を美しく締めくくっている。
語釈・文法注
- つきの岩笠
- 調石笠(つきのいはかさ)。「調(つき)」は氏の名。架空の人物とみられる。
- ふじ
- 「士(兵士)に富む」から「富士」と名づけたとする語源説話。不死の薬を焼いたことから「不死」の山とする説も古くからある。
文法
- 「何にかはせむ」
- 「かは」は反語。何になろうか、いや何にもならない。
- 「駿河の國にあなる山」
- 「あなる」は「あるなる」の撥音便「あんなる」の撥音無表記。「なる」は伝聞の助動詞。あるという山。
- 「名づけゝる」
- 係助詞「なむ」を受けて、過去の助動詞「けり」が連体形「ける」で結ばれている(係り結び)。
和歌
あふことも涙にうかぶわが身にはしなぬくすりも何にかはせむ
- 詠者
- 帝
- 状況
- かぐや姫の手紙と不死の薬を受け取った帝が、悲しみの中で詠んだ歌。
修辞
- 掛詞
- 「涙にうかぶ」に「涙に浮かぶ」と「(会うことも)無み(なみ)」をかけ、会うこともないので涙に浮かぶ、とする説がある。
解説
『竹取物語』は、富士山の名の由来を語る語源説話で終わる。五人の貴公子の話がそれぞれ語源説明で結ばれていたのと同じ形であり、物語全体が語源説話の枠組みで統一されている。
富士山は平安時代には活発な火山で、たびたび噴煙を上げていた。『古今和歌集』の仮名序にも「富士の煙によそへて人を恋ひ」とあり、富士の煙は恋の思いの象徴として和歌に詠まれた。物語の結びは、こうした当時の人々の富士山のイメージをふまえている。
帝が不死の薬を飲まずに焼いたことは、永遠の命よりも、かぐや姫を思う心を選んだことを意味する。天上界の不老不死と、地上の限りある命と情との対比という、物語全体の主題がここで締めくくられている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部三 雑上(竹取物語) 板倉屋書房、明治36年(1903)、27–28頁(コマ17–18)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日