古典ライブラリー

万葉集 巻第四 703〜704番

吾背子を 相見しその日

巫部麻蘇娘子(かんなぎべのまそおとめ)

あなたに逢ったその日から今日まで、私の袖は乾く時もない。長い命を欲しいと思うのは、絶えずあなたに逢いたいからこそ。巫部麻蘇娘子の歌二首。

女性が、涙にぬれた袖を膝の上に広げ、乾かそうともせずに見つめている

題詞巫部麻蘇娘子の歌二首

  1. 1吾わが吾わがわが背せ背せせ子こ子ここををを吾背子乎703
  2. 2相あひ相あひあい見み見みみしししそのそのその日ひ日ひひ相見之其日
  3. 3今日けふ今日けふきょうまでまでまでににに至于今日
  4. 4吾わ吾わわががが衣ころも衣ころもころも手で手ででははは吾衣手者
  5. 5乾ひ乾ひひるるる時とき時ときときももも無な無ななししし乾時毛奈志
  6. 6栲たく栲たくたく繩なは繩なはなわののの栲繩之704
  7. 7永なが永ながながききき命いのち命いのちいのちををを永命乎
  8. 8欲ほ欲ほほしけくしけくしけくははは欲苦波
  9. 9絕た絕たたえええずずずててて人ひと人ひとひとををを不絕而人乎
  10. 10見み見みみまくまくまく欲ほ欲ほほれれれこそこそこそ欲見社

引用の仕方

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現代語訳

〔703〕あなたにお逢いしたその日から今日まで、私の袖は乾く時もありません。

〔704〕(栲繩の)長い命を欲しいと思うのは、絶えずあなたにお逢いしたいからこそです。

意訳

恋しい人に出会ってから、涙で袖が乾くことがないと歌い、長生きしたいと願うのは、いつまでもあなたに逢い続けたいからだと、ひたむきな思いを伝えている。

語釈・文法注

文法・本文

欲しけくは
欲しいと思うことは。

和歌

作者
巫部麻蘇娘子(生没年未詳)
伝未詳。大伴家持と歌を交わした女性とみられる。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・703〜704番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
巫部麻蘇娘子の歌二首。

修辞

枕詞
「栲繩の」が「永き」にかかる。

解説

長命を願う理由を恋人に逢うためとした704番は、素直で印象的な歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、175頁(コマ91)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、185頁(コマ98)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日