古文書を読もう · 04
アマビエを解読する
江戸時代の図を見ながら、アマビエが何を語ったと書かれているのか読んでみましょう。
新型コロナウイルスの流行時に広く知られるようになったアマビエ。その姿を描いた一枚の資料には、海に現れたものの言葉が記されています。まずは絵の右側を眺めて、読める文字を探してみてください。
資料を見る
右上から縦に読む
本文は右端の列から左へ進みます。絵の左にある「弘化三年四月中旬」は日付です。画像を押すと拡大できます。

文字を確かめる
翻刻と見比べる
下は京都大学が掲載する翻刻例です。画像の右上から順に、見つけられる文字をたどってみましょう。「縦書き」にすると、資料と同じ向きで読めます。「ふりがな」「現代仮名遣い」に切り替えると読み方が分かり、点線のことばを押すと意味が出ます。
- 1海中海中かいちゅう毎夜毎夜まいよ出出いずルルる 所所ところ之之の役人役人やくにん行行ゆき
- 2見見みるるる ののの如之如之ごとき者者もの現現あらわススす 私私わたくしハハは海中海中かいちゅうニニに住住すむトトと申申もうす
- 3者者もの也也なり よりよりより六ヶ年六ヶ年ろくかねん之之の間間あいだ 諸国諸国しょこく豊作豊作ほうさく也也なり
- 4病病やまい流行流行りゅうこう 早々早々そうそう私私わたくしヲヲをシシし人々人々ひとびとニニに見見みセセせととと
- 5申申もうしててて海中海中かいちゅうへへへ入入いりけりけりけり ハハは写写うつシシし役人役人やくにんよりよりより江戸江戸えど
- 6申申もうし来来きたルルる写写うつし也也なり
- 7三年三年さんねん四月四月しがつ中旬中旬ちゅうじゅん年記
ふりがな・現代仮名遣いの読みは、当サイトが付けた一案です。
現代語訳
肥後国の海に、毎晩光るものが現れた。その土地の役人が見に行くと、この絵のような姿の者が現れて、こう言った。
「私は海の中に住む、アマビエという者だ。今年から六年の間、諸国は豊作になる。しかし、病が流行する。早く私の姿を写して、人々に見せなさい」
そう言うと、海の中へ入っていった。以上は、役人から江戸へ知らせてきたものを写したものである。
弘化三年(1846)四月中旬
読み解く手がかり
知っておきたい文字と言葉
- 肥後国(ひごのくに)
- 現在の熊本県にあたる地域です。文章は「肥後国の海中」から始まります。
- 江(へ)
- 助詞の「へ」にあたります。漢字の「江」を字源とする仮名で、古文書では「江戸江(江戸へ)」のように、方向を表す「へ」によく使われます。
- 光物(ひかりもの)
- 夜に光って見える、正体の分からないもの。
- ニ・ハ・ヲ・ト
- カタカナで書かれた助詞で、現在の「に・は・を・と」にあたります。
- づの如之者
- 「づ」は「図」のこと。「図の如き者」、つまり左の絵に描かれたような姿の者、と読めます。読み方には異説があります。
- アマビヱ
- 「ヱ」は昔の仮名です。今なら「アマビエ」と書きます。
- 當年(とうねん)
- 「當」は「当」の旧字体。「當年」は今年のことです。
- 併(しかし)
- 「しかし」と読みます。豊作の知らせから病の話へ移る目印です。
- 写シ
- 自分の姿を写し取って、人々に見せるように、という部分です。
- 候得(さふらへ)
- 「候ふ」は古い文章で使われる丁寧な言い方。「見セ候得」で「見せなさい」と求める言い方になります。
- 右ハ
- 縦書きの文書では、前に書いた内容を「右」と呼びます。ここでは「以上の話は」という意味です。
- 弘化三年
- 西暦1846年。江戸時代の後期、孝明天皇が即位した年です。
内容をつかむ
どんな話だった?
肥後国の海で毎晩光るものが現れ、役人が見に行くと、不思議な姿のものが現れました。それは「海中に住むアマビエ」と名乗り、これから六年は豊作になる一方、病が流行するので、自分の姿を写して人々に見せるよう告げ、海に戻ったと書かれています。
末尾には、役人から江戸に伝わった写しであることと、「弘化三年四月中旬」という日付が記されています。
本文には「姿を写して人々に見せる」とあります。病が必ず治るといった効能までは書かれていません。
出典
- 資料
- 『肥後国海中の怪(アマビエの図)』 京都大学附属図書館所蔵(京都大学貴重資料デジタルアーカイブ)
- 翻刻
- 同アーカイブ「画像『肥後国海中の怪(アマビエの図)』のご利用について」の「翻刻(例)」
- 読み・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日