古今和歌集 巻第十三 恋歌三 645番
君やこし
あなたが来たのか、私が行ったのか、わかりません。あれは夢だったのか現実だったのか、寝ていたのか覚めていたのか。

- 1業平業平なりいら朝臣朝臣あそんののの伊勢伊勢いせののの國國くににまかりけるにまかりけるにまかりける時時とき齋宮齋宮さいくうなりけるなりけるなりける人人ひとにいとみそかににいとみそかににいとみそかに逢逢あひてひていて又又またのあしたにのあしたにのあしたに人人ひとやるすべなくてやるすべなくてやるすべなくて思思おもひひいをををりけるりけるりける間間まににに女女おんなのもとよりおこせたりけるのもとよりおこせたりけるのもとよりおこせたりける詞書
- 2君君きみやこしやこしやこし初句
- 3われやゆきけむわれやゆきけむわれやゆきけむ二句
- 4おもほえずおもほえずおもおえず三句
- 5夢夢ゆめかかか現現うつつかかか四句
- 6ねてかねてかねてか覺覺さめてかめてかめてか結句
現代語訳
〔詞書〕業平朝臣が伊勢の国へ下った時、斎宮であった人とひそかに逢って、翌朝、使いをやる手立てもなく思い悩んでいた間に、女のもとからよこした歌。
あなたが来たのか、私が行ったのか、わかりません。あれは夢だったのか現実だったのか、寝ていたのか覚めていたのか。
意訳
斎宮という禁忌の身で業平と逢った夜のことを、夢か現かわからないと、動揺と陶酔をこめて詠む。
語釈・文法注
- 斎宮
- 伊勢神宮に仕える未婚の皇女。
- おもほえず
- わからない。
和歌
- 作者
- 読人しらず(よみびとしらず)
作者の名が伝わらない歌。『古今和歌集』の約四割を占め、撰者の時代より古い歌や、民謡・宴席で歌い継がれた歌、身分の低い人や女性の歌などを含む。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第十三・恋歌三・645番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「業平朝臣の伊勢の國にまかりける時齋宮なりける人にいとみそかに逢ひて又のあしたに人やるすべなくて思ひをりける間に女のもとよりおこせたりける」(業平朝臣が伊勢の国へ下った時、斎宮であった人とひそかに逢って、翌朝、使いをやる手立てもなく思い悩んでいた間に、女のもとからよこした歌)。
修辞
- 対句
- 「君やこし」「われやゆきけむ」。
解説
『伊勢物語』第六十九段(狩の使)の中心となる歌。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、115頁(コマ71)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日