古今和歌集 巻第十三 恋歌三 632番
人しれぬ
人に知られない私の通い路の関守は、毎晩毎晩、ちょっと眠ってくれればいいのに。

- 1東東ひむがしののの五條五條ごじょうわたりにわたりにわたりに人人ひとををを知知しりおきてりおきてりおきて罷罷まかりりり通通かよひけりひけりひけり忍忍しのびなるびなるびなる所所ところなりければなりければなりければ門門かどよりしもえいらでよりしもえいらでよりしもえいらで垣垣かきのくづれよりのくづれよりのくずれより通通かよひけるひけるひけるをををたびたびたび重重かさなりければりければりければ主主ぬし人人ひと聞聞ききつけてかのきつけてかのきつけてかの道道みちににに夜每夜每よごとににに人人ひとをををふせてふせてふせて守守もらすればいきけれどえあはでのみらすればいきけれどえあはでのみらすればいきけれどえあわでのみ歸歸かえりてよみてやりけるりてよみてやりけるりてよみてやりける詞書
- 2人人ひとしれぬしれぬしれぬ初句
- 3我我わががが通通かよひひい路路じののの二句
- 4關守關守せきもりははは三句
- 5よひよひごとによひよひごとによいよいごとに四句
- 6うちもねななむうちもねななむうちもねななむ結句
現代語訳
〔詞書〕東の五条のあたりに人を知り合いにして通っていた。人目を忍ぶ所だったので、門からは入れず、垣根の崩れた所から通っていたが、たび重なったので、その家の主人が聞きつけて、その道に毎夜人を置いて見張らせたので、行っても会えずに帰って、詠んで贈った歌。
人に知られない私の通い路の関守は、毎晩毎晩、ちょっと眠ってくれればいいのに。
意訳
恋人のもとへ通う道に見張りを置かれ、その見張りを「関守」と呼んで、眠ってほしいと願う。
語釈・文法注
- 関守
- 関所の番人。ここでは見張りの人。
- うちも寝ななむ
- 眠ってほしい。
和歌
- 作者
- 在原業平(ありわらのなりひら) 825–880
平城天皇の皇子阿保親王の子。右近衛権中将などを務め、「在五中将」と呼ばれた。仮名序は「その心餘りて詞たらず」と評する。『伊勢物語』の主人公「昔男」のモデルとされる。六歌仙・三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第十三・恋歌三・632番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「東の五條わたりに人を知りおきて罷り通ひけり忍びなる所なりければ門よりしもえいらで垣のくづれより通ひけるをたび重りければ主人聞きつけてかの道に夜每に人をふせて守らすればいきけれどえあはでのみ歸りてよみてやりける」(東の五条のあたりに人を知り合いにして通っていた。人目を忍ぶ所だったので、門からは入れず、垣根の崩れた所から通っていたが、たび重なったので、その家の主人が聞きつけて、その道に毎夜人を置いて見張らせたので、行っても会えずに帰って、詠んで贈った歌)。
解説
在原業平の歌。『伊勢物語』第五段にも見える。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、113頁(コマ70)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日