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源氏物語 第54帖 夢浮橋(10)

夢浮橋

登場人物:浮舟・妹の尼君・小君・薫

このように細々とお書きになっている様子は紛らわしようもないが、かといって昔の自分とは違う尼姿を思いがけず見つけられ申し上げた時のきまり悪さなどを思い乱れて、いっそう晴れない心は言いようもない。さすがに泣いてひれ伏していらっしゃるので、妹尼たちは、たいそう世慣れないご様子だと扱いかねた。「どうお返事申し上げましょう」などと責められて、浮舟は「気分がかき乱れるようでございますので、落ち着いてから後で申し上げましょう。昔のことを思い出そうとしましたが、全く思い当たることもなく、不思議にどういう夢だったのかとばかり、納得もできません。少し落ち着いたら、このお手紙なども分かることもありましょう。今日はやはり持ち帰ってください。人違いでもあったら、たいそういたたまれないでしょう」と言って、広げたまま妹尼に押しやりなさると、妹尼は「たいそう見苦しいことです。あまりに失礼なのは、お世話申し上げる者も罪を逃れようがないでしょう」などと言い騒ぐのも、たいそう嫌で聞きにくく思われるので、顔も引き入れて臥していらっしゃる。主人の妹尼がこの君(小君)に少し話をして、「物の怪のせいでいらっしゃるのでしょう。普段の様子にお見えになる時もなく患い続けなさって、ご容貌も変わってしまわれたので、お尋ね申し上げる人があったらたいそう厄介なことになるだろうと拝見して嘆いておりましたとおり、このようにたいそう哀れで心苦しい事情がございましたのを、今になってたいそう恐れ多く思います。日ごろも気分が引き続きすぐれないようですのに、いっそうこのようなことにお心を乱されたのか、いつもよりも正気でいらっしゃらない様子で」と申し上げる。土地柄に応じた趣のあるもてなしなどをしたが、幼い心にはどことなく落ち着かない心地がして、小君は「わざわざお遣わしになったしるしに、何を申し上げようというのでしょう。ただ一言でもおっしゃってくださいよ」などと言うので、妹尼は「本当に」などと言って、このようにと浮舟に伝えて語るが、何もおっしゃらないので甲斐もなくて、「ただこのようにはっきりしないご様子を申し上げなさるのがよいでしょう。雲の遥かに隔たるほどでもない所のようですから、山風が吹いても、また必ずお立ち寄りになるでしょう」と言うので、小君は、むやみに日を暮らすのも妙なので帰ろうとする。人知れず見たかった姉君のご様子も見られずに終わったのを、気がかりで残念に思って、心満たされないまま帰参した。早くと待っていらっしゃったのに、このように要領を得ずに帰って来たので、薫は興ざめで、かえってなまじ遣わさなければよかったと、さまざまにお思いになって、誰かが隠し住まわせているのではないかと、ご自分のお心の、思い寄らぬ隈もないほどに、かつて浮舟を宇治に放っておきなさった経験から推し量りなさった、とか。

  1. 1かくかくかくつぶつぶつぶつぶつぶつぶととと書か書かかききき給たま給たまたまへへえるるるさまさまさまのののまぎらはまぎらはまぎらわむむん方かた方かたかたなきなきなきににに、、、さりとてさりとてさりとてそのそのその人ひと人ひとひとにににもももあらあらあらぬぬぬさまさまさまををを思おもひ思おもひおもいののの外ほか外ほかほかににに見み見みみつけつけつけられられられ聞きこ聞きこきこえええたらたらたらむむんほどほどほどのののはしたなさはしたなさはしたなさなどなどなどををを思おも思おもおもひひい亂みだ亂みだみだれれれててて、、、いとゞいとゞいとどはれはれしからはれはれしからはればれしからぬぬぬ心こころ心こころこころはははいひいひいいやるやるやるべきべきべき方かた方かたかたもももなしなしなし。。。さすがさすがさすがにににうちうちうちなきなきなきてててひれひれひれふしふしふし給たま給たまたまへへえれれればばば、、、いといといとよよよつかつかつかぬぬぬ御おん御おんおんありさまありさまありさまかなかなかなととと見み見みみわづらひわづらひわずらいぬぬぬ。。。「「「いかゞいかゞいかが聞きこ聞きこきこえええむむん」」」などなどなどせめせめせめられられられててて「「「心こころ心こころこころちちここちのののかきかきかき亂みだ亂みだみだるるるやうやうようにににししし侍はべ侍はべはべるるるほどほどほどためらひためらひためらいててて今いま今いまいま聞きこ聞きこきこえええむむん。。。昔むかし昔むかしむかしのののことことこと思おも思おもおもひひい出い出いいつれつれづれどどど更さら更さらさらににに聞きこ聞きこきこゆるゆるゆることことことなくなくなく、、、あやしうあやしうあやしゅういかいかいかなりなりなりけるけるける夢ゆめ夢ゆめゆめにににかかかとととのみのみのみ心こころ心こころこころももも得え得ええずずずなむなむなん。。。少すこ少すこすこししししづまりしづまりしずまりてててやややこのこのこの御おん御おんおん文ふみ文ふみふみなどなどなどももも見み見みみ知し知ししらららるゝるゝるることことこともももあらあらあらむむん。。。今日けふ今日けふきょうははは猶なほ猶なほなおもてもてもてまゐりまゐりまいり給たま給たまたまひひいねねね。。。所ところ所ところところ違たが違たがたがへへえにににもももあらあらあらむむんにににいといといとかたはらかたはらかたわらいたかるいたかるいたかるべしべしべし」」」とてとてとてひろげひろげひろげながらながらながら尼あま尼あまあま君ぎみ君ぎみぎみにににさしさしさしやりやりやり給たま給たまたまへへえれれればばば「「「いといといと見み見みみ苦ぐる苦ぐるぐるしきしきしき御おん御おんおんことことことかなかなかな。。。あまりあまりあまりけしからけしからけしからぬぬぬははは、、、見み見みみ奉たてまつ奉たてまつたてまつるるる人ひと人ひとひとももも罪つみ罪つみつみさりさりさり所どころ所どころどころなかるなかるなかるべしべしべし」」」などなどなどいひいひいいさわぐさわぐさわぐももも、、、いといといとうたてうたてうたて聞き聞きききききにくゝにくゝにくく覺おぼ覺おぼおぼゆれゆれゆればばば、、、顏かほ顏かほかおももも引ひ引ひひききき入い入いいれれれててて臥ふ臥ふふししし給たま給たまたまへへえりりり。。。あるじあるじあるじぞぞぞこのこのこの君きみ君きみきみににに物もの物ものもの語がたり語がたりがたり少すこ少すこすこししし聞きこ聞きこきこえええててて「「「ものものものゝゝのけけけにてにてにておはすおはすおわすらむらむらん。。。例れい例れいれいのののさまさまさまににに見み見みみえええ給たま給たまたまふふう折をり折をりおりなくなくなくなやみなやみなやみわたりわたりわたり給たま給たまたまひひいててて御おん御おんおんかたちかたちかたちもももことことことににになりなりなり給たま給たまたまへへえるるるををを、、、尋たづ尋たづたずねねね聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう人ひと人ひとひとあらあらあらばばばいといといとわづらはしかるわづらはしかるわずらわしかるべきべきべき御おん御おんおん事こと事ことことととと見み見みみ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり歎なげ歎なげなげききき侍はべ侍はべはべりりりしししもももしるくしるくしるく、、、かくかくかくいといといとあはれあはれあわれににに心こゝろ心こゝろこころ苦ぐる苦ぐるぐるしきしきしき御おん御おんおん事こと事ことことどもどもどもののの侍はべ侍はべはべりりりけるけるけるををを、、、今いま今いまいまなむなむなんいといといとかたじけなくかたじけなくかたじけなく思おも思おもおもひひい侍はべ侍はべはべるるる。。。日ひ日ひひ比ごろ比ごろごろももも心地ここち心地ここちここちうちうちうちはへはへはえなやまなやまなやませせせ給たま給たまたまふふうめるめるめるををを、、、いとゞいとゞいとどかゝるかゝるかかる事こと事ことことどもどもどもにににおぼしおぼしおぼし亂みだ亂みだみだるゝるゝるるにににややや、、、常つね常つねつねよりよりよりももも物もの物ものもの覺おぼ覺おぼおぼえええさせさせさせ給たま給たまたまははわぬぬぬさまさまさまにてにてにてなむなむなん」」」ととと聞きこ聞きこきこゆゆゆ。。。
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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

このように細々とお書きになっている様子は紛らわしようもないが、かといって昔の自分とは違う姿を思いがけず見つけられ申し上げた時のきまり悪さなどを思い乱れて、いっそう晴れない心は言いようもない。さすがに泣いてひれ伏していらっしゃるので、たいそう世慣れないご様子だと扱いかねた。「どうお返事申し上げましょう」などと責められて、「気分がかき乱れるようでございますので、落ち着いてから後で申し上げましょう。昔のことを思い出そうとしましたが、全く思い当たることもなく、不思議にどういう夢だったのかとばかり、納得もできません。少し落ち着いたら、このお手紙なども分かることもありましょう。今日はやはり持ち帰ってください。人違いでもあったら、たいそういたたまれないでしょう」と言って、広げたまま尼君に押しやりなさると、「たいそう見苦しいことです。あまりに失礼なのは、お世話申し上げる者も罪を逃れようがないでしょう」などと言い騒ぐのも、たいそう嫌で聞きにくく思われるので、顔も引き入れて臥していらっしゃる。主人がこの君に少し話をして、「物の怪のせいでいらっしゃるのでしょう。普段の様子にお見えになる時もなく患い続けなさって、ご容貌も変わってしまわれたので、お尋ね申し上げる人があったらたいそう厄介なことになるだろうと拝見して嘆いておりましたとおり、このようにたいそう哀れで心苦しい事情がございましたのを、今になってたいそう恐れ多く思います。日ごろも気分が引き続きすぐれないようですのに、いっそうこのようなことにお心を乱されたのか、いつもよりも正気でいらっしゃらない様子で」と申し上げる。

土地柄に応じた趣のあるもてなしなどをしたが、幼い心にはどことなく落ち着かない心地がして、「わざわざお遣わしになったしるしに、何を申し上げようというのでしょう。ただ一言でもおっしゃってくださいよ」などと言うので、「本当に」などと言って、このようにと伝えて語るが、何もおっしゃらないので甲斐もなくて、「ただこのようにはっきりしないご様子を申し上げなさるのがよいでしょう。雲の遥かに隔たるほどでもない所のようですから、山風が吹いても、また必ずお立ち寄りになるでしょう」と言うので、むやみに日を暮らすのも妙なので帰ろうとする。人知れず見たかったご様子も見られずに終わったのを、気がかりで残念に思って、心満たされないまま帰参した。早くと待っていらっしゃったのに、このように要領を得ずに帰って来たので、興ざめで、かえってなまじ遣わさなければよかったと、さまざまにお思いになって、誰かが隠し住まわせているのではないかと、ご自分のお心の、思い寄らぬ隈もないほどに、かつて放っておきなさった経験から推し量りなさった、とか。

意訳

浮舟は薫の手紙に心を乱すが、尼姿を見られることを恥じ、泣き伏す。返事を迫られた浮舟は、昔のことは思い出せない、人違いかもしれないので手紙を持ち帰ってほしいと言い、顔を隠して臥してしまう。妹尼は小君に、浮舟は物の怪のせいで正気でないと詫びる。小君は一言でも返事をと頼むが、浮舟は何も言わない。小君は姉の姿も見られず、心残りのまま帰る。待ちわびていた薫は、要領を得ない報告に興ざめし、誰かが浮舟を隠し住まわせているのではないかと、かつて浮舟を宇治に放っておいた自分の経験から邪推する。こうして源氏物語は幕を閉じる。

語釈・文法注

文法

「所違へ」(所違へにもあらむにいとかたはらいたかるべし)
宛先違い。人違い。
「おとしおき給へりしならひ」(おとしおき給へりしならひにとぞ)
かつて浮舟を宇治に放っておいた経験。薫は自分の過去の振る舞いから、他の男が浮舟を隠しているのではと邪推する。
「とぞ」(ならひにとぞ)
「とぞ言ふ」などの省略。伝聞の形で物語を結ぶ。

解説

源氏物語は、浮舟の沈黙と薫の邪推という、決着のつかない形で終わる。浮舟が救われたのか、薫が浮舟と再会するのか、物語は何も語らない。この余韻のある終わり方は、古来さまざまな解釈を呼んできた。

巻名「夢浮橋」は本文には見えず、「世の中は夢の渡りの浮橋か打ち渡りつつ物をこそ思へ」の古歌によるとされる。夢のようにはかない人の世の架け橋を渡りながら、人は物思いを続けていく。五十四帖の大長編は、その物思いのただ中で筆を擱く。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1244–1246頁(コマ333–334)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日